2004年03月31日

馳夫

ところで「地獄とは神の不在なり」の話で出てきた指輪の「馳夫」というのはなんかカッコ悪い翻訳だ。ぐぐるとどうにかならんのかという記述が出てくる。
でも劇場版字幕の当初の訳の「韋駄天」や英語そのままのストライダーでは「二つの塔」でのエオメルの台詞がおかしなことになる。
アラゴルン一行が徒歩でかなりの距離を移動してきたと聞いて驚いたエオメルは「馳夫とはあまりに貧弱な名。」「翼のある足と申し上げたい。~」と言うのだが、神様の名である韋駄天が貧弱な名というのはちょっと合わないし、ストライダーというはかっこよさげに響くのでなんか変になる。けれどもストライダーは「大またで歩く人」という意味なわけで、実はあまりかっこよくない。(water striderはアメンボ。ジーニアスにはstriderだけでアメンボと載っている)
原作ではアラゴルンはエオメルに「わたしは馳夫と呼ばれる者だ」と最初は言っていて、本名を名乗るように言われるまで本名を言わない。
映画ではいきなり名乗っているので「馳夫とはあまりに貧弱な名。」というところはカットされていた。この辺は流れを簡潔にするためか、エオメルに対してギムリとレゴラスの態度が挑発的な理由があるのに飛ばされていたりしている。エオメルがロスロリアンの奥方に対してちょっと失礼な発言をしたのでそれにカチンときたのだ。

指輪にカタカナのままでよさそうなのにわざわざ和訳してあるような名詞があるのは、言語にこだわりのある原作者が決めた翻訳ルールに従って訳されているためらしい。

Posted by sachiwo at 23:39 | Comments (1)

地獄とは神の不在なり

テッド・チャン「あなたの人生の物語」(ハヤカワ文庫)の一篇。
タイトルを見て映画「ゴッド・アーミー」を思い出した。物語終盤で出てくるルシファーが「地獄は神の信仰のないところ」というような台詞を言っていて、なんだかそれに似ているなと思っていたら、作中に出てくる地獄もまさしくそういうところで、地上と違うところは神への信仰がないという点だけだった。
本編を読み終わり作者の作品覚え書きを見たら、まさしくその映画を見て天使にまつわる話を書きたくなったということだった。

ゴッド・アーミー(一作目しか見てない)はガブリエル役のクリストファー・ウォーケンの怪演が素敵な映画で非常にお勧め。
ルシファーはとてもかっこいいのに最後にしか出てこなくて残念。ちなみにルシファー役はヴィゴ・モーテンセン。指輪の馳夫を見てどっかで見たような俳優だと思っていたのだけど、やはり見たことあったのだった。

Posted by sachiwo at 23:36 | Comments (1)