フウゲツ:「……なぜ殺した」
チンピラ3:「ンなこと、本人に聞けよ」
チンピラ1:「知らねえよ!」
レイチェル:「知らないということはないだろう」
ヴァイス:「お前は理由もなく人を殺すのか?」
チンピラ1:「俺にだって! ……俺にだって、分からねぇんだ。ただ、怖くて。スゲー……怖くて……」
シュリ:理由もなく怖い……?
GM:生理的に、本能的に、恐怖を感じて……思わず、刺したらしい。
ヴァイス:そんな理由で……納得しろと……?
GM:と言われても。彼にとっては、そうだったらしいから。
シュリ:(ため息をついて)「ここまでみたいね。──レイチェル、今までの会話、プリントアウトして。調書にするから。ヴァイス、ここにサインして。(チンピラたちに)アンタたちはここにサインと捺印ね」
GM:よく分からんまま、サインしよう(笑)。
シュリ:裁判権とかあるかどうか分かんないけど、これが調書になると思うから。
ユリア:自警団って私刑とかできるの?
エミリー:リンチ?
ヴァイス:僕にある程度権限はあるけど……やっぱりきちんとした裁きは、帝都に送検してからだろうね。
チンピラ1:(ぼそっと)「くそ……そもそも5年前のアレが、ケチのつきはじめだ……」
フウゲツ:「なに……?」(ピクッッ)
ヴァイス:「げ……」
レイチェル:最悪だ。
ヴァイス:フウゲツさんは……5年前のこと、知ってるんだっけ。
フウゲツ:さっき、レイチェルから聞いた。──どうやらこの男は、もう少し歌いたいらしいな。
エミリー:余罪の追及は、帝国の方に任せたら?
シュリ:………………。そうね。その方が……いいかもね。
フウゲツ:その……スノウを刺したってヤツに歩み寄る。
エミリー:ち、ちょっと……!
バキィッ!
鈍い音とともに、椅子ごと男が床に転がった。
宙に、血が舞う。
ぽたぽたと、フウゲツの拳から血がしたたり落ちる。
何度も何度も強く握り締めたその手のひらは……裂けて血まみれだった。
GM:他のみんなは、教会へいくのかな?
エミリー:その前にチンピラどもをどうにかしないと。
シュリ:村長を閉じ込めておいた地下牢に入れておけばいいんじゃない?
ヴァイス:地下牢なんてあったんだ。
GM:初耳ですなー。それに、村長を地下牢に閉じ込めたという事実もない……はず。
レイチェル:軟禁はしたが。
GM:オーキッドとブルーは食糧庫の見張りか見回りにいった方がいいのかな?
エミリー:そうね。タンもいるから、コイツらの見張りをさせるのはちょっとね……。
シュリ:レイチェルは『古の民』のところに戻らないといけないだろうから……見張りは、あたしとユリアでいいんじゃないかな。
ヴァイス:じゃあ、僕、いくから。
シュリ:そーね。あたしは……とりあえず、フウゲツの手の治療かな。
ヴァイスはひとり、寮へと続く道を歩いていた。いつの間にか、すっかり夜が明けてしまっている。
ヴァイス:スノウの事件は一段落したけど……食料ももうないんだよなぁ……。
GM:さてヴァイス──突然、君の視界が二重、三重にぶれ、狭まっていく。
ここにいないフウゲツ:貧血のときみたいなかんじか?
GM:近いかも。──オマケに、耳鳴りもする。そして……記憶のフラッシュバック。
鋼がぶつかり合う音。炎の熱さ。血の匂い。
──幼い頃の記憶。
『月影の民』と『地の民』の紛争。
傷を負った自分。両親とともに『アーケイン』へ来たとき……そう、そのときスノウに出逢ったのだ。
GM:幻覚とは思えない圧倒的なリアリティ。時間軸を無視した完全な追体験。
ヴァイス:目を強くつぶって、首を振って、それから目を開けてみるけど?
GM:幻は消える。──でも、まだ幻の中にいるような感覚がある。『現実感』が減った、とでも言うのかな。フィルタを通してモノを見ているような。
ここにいないシュリ:眠りに落ちる直前の光景みたいなかんじ? 風景も音もはっきりしてるのに、自分がそこにいないみたいな。
フウゲツ:あー、分かる分かる。客観的に自分のことを見てるんだよな。
ここにいないレイチェル:それは、脳が情報の選別をしなくなるからだ。
ヴァイス:うーん……。そのへんの壁を触ってみるけど?
GM:触れられるよ。間違いなく壁である。
フウゲツ:またヴァイスが怪しい行動を……。
シュリ:怪しまれないように、ノートに材質をメモしてるフリをすればいいよ。
フウゲツ:材質、石。
エミリー:それでも十分怪しいって。
ヴァイス:自分の体も触ってみる。
GM:問題なく触れる。
フウゲツ:……またヴァイスが怪しい行動を。
ヴァイス:何がどうなってるんだ……?
GM:異変が起きてるのはヴァイスだけじゃない。──シュリは暗闇の中で過ごした頃の記憶が。ユリアは「強くなりたい」と思っていた記憶が。エミリーはお金を持ち逃げした姉と義兄を追っていた記憶が。それぞれ蘇る。
シュリ:ちょっと気が抜けたときにふっと思い出すのかな? 白昼夢みたいに。
GM:そんなかんじかな。
ユリア:「強くなりたい」と思っていたのは今の記憶ではないね。今は、そうは思っていないから。
エミリー:わたし……あんまりカッコイイ記憶ぢゃないんだけど……。
GM:んなこと言われても。こういう設定にしたのは君だ。
シュリ:そうそう。教会のお金を持ち逃げした姉と義兄を追って、なぜかアーケインに住み着いたエミリー。ちなみに妹の名前はウェンディ。
ヴァイス:ウェンディって、あのウェンディ?
GM:そう、第三部に出てきたあのウェンディ。
フウゲツ:へー、そうだったのか……。
GM:実はみんないろいろ過去があるんだよね。
レイチェル:……GM、その幻覚は私には見えないのか?
GM:レイチェルには見えない。だからホフヌング時代を思い出すこともない。
エミリー:そう言いながらチラリと過去を明かすあたりが。
GM:ふふ、やはり日本人はチラリズムでしょう(?)。
ヴァイス:あのさ、僕の症状はどうなったの?
GM:しばらくすると治るよ。
ヴァイス:何だったんだろう……。
シュリ:あたしたちも同じようなかんじになるの?
GM:いや。耳鳴りとか目眩とか現実感が薄れたりというのはヴァイスだけ。
ヴァイス:僕だけなの!?
GM:はいな。他の人はリアルな幻覚を見るだけ。
ヴァイス:ますますワケが分からない……。
GM:仮面のもの、銀髪の少女、猫、ノエル、過去の追体験、薄れる現実感……。
ヴァイス:そうか。考えてみたら、幻覚とか幻とかそういう現象が多いな……。……原因を調べてみるべきなのかもしれない。
自分の手のひらに巻かれていく白い包帯を、フウゲツはぼんやりと眺めていた。
これが……現実なのか……
こんな事実を知るために、俺は帰ってきたわけじゃない……
別の自分が問いかける。
俺は……どんな真実が待ってると思ってたんだ……?
納得がいくような、自分の悲しみが少しでも薄れるような、そんな真実を夢見ていたのか……?
シュリ:「はい、これでいいわ」
包帯を巻いたところを、ぽんと軽くたたいて、シュリは言った。
フウゲツ:「ああ、かたじけない」
でも……でもよ。
こんな真実……かなしすぎるだろ……?
シュリ:そうね。
GM:そこへ、シルヴァばーちゃんが走り込んでくる。
シュリ:ばーちゃん、無理したらダメだって。
シルヴァ:「ぜー、ぜー、ぜー……」
フウゲツ:「ばーちゃん、何事だ?」
シルヴァ:「ス、スノウが……」
フウゲツ:「スノウがどうした?!」(立ち上がる)
シルヴァ:「スノウの遺体が……消えてしもうたんじゃ……」
一同:「はあぁ!?」
ヴァイス:僕もそこにいっていい?
GM:んー、まあ、誰か連絡にきたことにしよう。
フウゲツ:「詳しいことを聞かせてくれ」
シア:「私、眠ってしまってて……それで……」
セツ:「代わりに私が起きてはいたんですけど……」
ヴァイス:目が見えない人に見張りをさせたの?
GM:見張りというか……まさか誰も遺体が消えるなんて思ってなかったしねえ。
フウゲツ:それもそうか。
シュリ:遺体の周りに足跡とか残ってない? 歩いて移動したような。
エミリー:床が石だから足跡は期待できないのでは? ……いくら掃除が行き届いていないとはいえ。
GM:そうだね。スノウを安置していた台の周りに、不審な足跡はないよ。
ヴァイス:突然、消えてしまったと……?
GM:スノウにかけられていた白い布も乱れていない。忽然と消えてしまったようだ。
ユリア:種は落ちてないれすか?(←懐かしの第一部ネタ)
GM:ないよ(笑)。
シュリ:キョンシーになったりしたわけでもないのね。
GM:ないだろうね。
ヴァイス:誰かがこっそり運び出したというのも、今のところ考えられない……。
フウゲツ:他のところも探そう!
教会内は隈無く調べた。
教会周辺も、オルドレース家も調べた。
しかし……ついにスノウの遺体が見つかることはなかった。
仲間を信じること。人を愛すること。
自分を犠牲にしてでも、何かを守ること。 それは素晴らしいことなのだと、人は言う。 だけど……僕には何もない。 僕はただ、待つだけ。 僕の世界が終わるときを、待つだけ。 無限に続く螺旋の果てを……望むだけ。 |