ACT15.0[やわらかなきずあと] 05

 自警団の砦──

フウゲツ:知らせを聞いたら、光の速さで駆けつけるぞ。

GM:しばらく待てば、他のみんなも帰ってくるだろう。

シュリ:場所は……そうね、村長を閉じ込めてた部屋で。その真ん中にタンを座らせる。

エミリー:ヴァイスやフウゲツがおとなしく話を聞くとも思えないけど。

シュリ:だから、タンをこの部屋に入れておくの。
 

 やがて、全員が砦に集まった。
 

シュリ:(タンを閉じ込めている部屋の扉をちらりと見ながら)「これから、タンの話を聞こうと思ってる。──その前に約束してほしいのは、まだ彼だと決まったワケじゃないから」

ヴァイス:「冷静になれと?」

シュリ:「もちろん彼が一番怪しいけど……早まった真似をすると、もしそうじゃなかったときに取り返しのつかないことになるから」

一同:(神妙な顔でうなずく)

シュリ:「あたしだって腹の中は煮えくりかえってるけど、今は我慢するから。みんなも、ね」

ヴァイス:「分かってる」

エミリー:「異論はないわ」

フウゲツ:「いいだろう」

シュリ:「心で動く自分と頭で動く自分を持って──今は頭で動いて。……じゃあ、レイチェル、タンを連れてきて」

レイチェル:「分かった」
 

 タンを中央の椅子に座らせ、全員でその周りを囲む。

 重い沈黙を破り──シュリが、口を開いた。
 

シュリ:「さあ、話してもらいましょうか──何を見たのか」

タン:「ボ、ボクじゃないんだ。ボクは見てただけなんだ」

シュリ:「だから、何を見たの」

タン:「スノウが……刺されるのを」

ユリア:「誰たちに?」

タン:「それは……。それは──」
 

 タンは3人の男の名前を挙げた。

 20代半ばの、チンピラみたいな連中の名だった。

 その連中に前から目をつけられて、脅されていたこと。

 あの晩、スノウを連れ出してくるように言われたこと。

 仕方なく、やったのだということ。

 そこまで語り、タンは暗い目を向け、言った。
 

タン:「だから……ボクは悪くないんだ」

シュリ:「そんなことは知りません」
 

 タンの話は続く。

 暗い、洞窟の中で。

 最初、スノウは抵抗しようとしていたこと。

 短刀を取り出そうとしたところで殴られ、転倒したこと。

 組み伏せられ、3人がかりで押さえたこと。

 抵抗していたスノウが、急におとなしくなったこと。

 ズボンに手をかけた男が──突然、何かに脅えたように悲鳴を上げ、短刀に手をのばし。

 スノウに突き刺したこと。
 

一同:「………………」

シュリ:「何があったのか分かんないけど……スノウの『何か』が変わった、ってことね……」

タン:「ボクが見たのは、それで全部だよ……」

ヴァイス:「……その3人を、探そう」

タン:「ボクだって被害者なんだ!」

シュリ:(銃をタンのおでこに押し当て)「まだ言いたいことある?」

ヴァイス:「それ以上つまらないことを言うと……どうなるか分からんぞ」

シュリ:「てゆーか……こうなるんだけどね」
 

 引き金を引く。

 前にスライドした銃身がタンの額を打ち付け──みっともなく失禁し、タンを意識を失った。
 

シュリ:「いこうか」

エミリー:「場所は分かるの?」

シュリ:ヴァイスが知ってる。街の人間データベースだから。

ヴァイス:(地図のある場所を指差して)ヤツらのたまり場はここだ。

エミリー:(データベースであることを)自ら認めてしまったわね。

ヴァイス:そんなことはどうでもいい。──急ごう。

 結局、シュリが(残ると言い出したオーキッドとブルーの見張りも兼ねて)砦に残り、ヴァイス・フウゲツ・ユリア・レイチェル・カーキが現場へ向かった。
 

GM:裏通りの片隅。奪ったのであろう食料を食べ散らかして、男が3人ほどたむろっている。

ヴァイス:そこは、行き止まり?

GM:行き止まりだね。

ヴァイス:じゃあはさみうちにする必要はないか。「そこを動くな!」

レイチェル:どたどたどた。

GM:男たちは、ナイフを取り出す。

ヴァイス:「抵抗すると、腕の1、2本飛ぶぞ」

ここにいないシュリ:みんな、頭で行動してね。

エミリー:ヴァイスとフウゲツは下がって。今のアンタたちだと、殺しかねない。

シュリ:そしてヴァイスの場合、返り討ちにあうかもしれないし。

GM:あっはっは(笑)。

ユリア:「じゃあ、ボクがいこう」

レイチェル:……ぼく? 私も前へ。エミリーはヴァイスとフウゲツとカーキを押さえていてくれ。

エミリー:この3人はさすがにキツイ気が……。

ヴァイス:「彼我の戦力差から見れば抵抗は無意味だ。おとなしく縛につけ」

チンピラ1:(小声で)「……おい、ヒガってなんだ?」

チンピラ2:(小声で)「知るかよ」

シュリ:死んだ後の世界よ。

ヴァイス:それは彼岸(笑)。

フウゲツ:(苦笑して)彼我ってのは、こっちとあっちって意味だ。

チンピラ3:「おい、どうするよ……」

ユリア:こそこそ言ってる間に近づいて、いつの間にかナイフを取り上げている。

ヴァイス:ユリアがマジモードだ……。

レイチェル:では、確保しよう。

GM:うむ。今のところ、抵抗はしないから。

 自警団の砦──

GM:帰ってきたよ。

シュリ:みんな、よくそいつらを生かしたまま帰ってきたわね。偉い偉い。──そしてなぜかタンはいない、と(笑)。

ユリア:そして床に赤いシミが。

シュリ:薬莢も3つほど転がってたり。

ヴァイス:殺ったか……。まあ、仕方あるまい。

シュリ:それはさすがにないけど。タンは奥の部屋に閉じ込めたままよ。まだ気絶してる。

レイチェル:チンピラ3人は、縄で縛って床に転がしておこう。

エミリー:床じゃなくて、椅子に座らせておくから。

GM:了解。

ヴァイス:──じゃあ、尋問を開始しようか。証人の名前は……隠してもムダか。

GM:そうだね。「タンのやろー、ブッ殺す」とか言ってるし。

ヴァイス:「タンを殺すチャンスなんて、これから先あると思ってるのか?」

フウゲツ:「殺されるのはお前たちだ」

シュリ:(ぼそっと)お前たちはタンの本当の力を知らない。

ヴァイス:そうくるか(笑)。

シュリ:タンをなめるな。舌(タン)でなめるんだ。

ユリア:それはまあ、そうだね。タンでタンをなめることもできるけど。

エミリー:(想像して)気持ち悪いこと言わないで。

ヴァイス:「スノウを殺したこと、認めるな? 証人もいる」

チンピラ1:(へらへら笑って)「誰がンなこと言ったんだよ、誰がよぉ〜」

フウゲツ:……マジで殴っていい?

シュリ:いいんじゃない?

エミリー:まあまあ、待ちなさいって。押さえて押さえて。

フウゲツ:いや、止まらん!

シュリ:フウゲツ待って──あたしがやるから。
 

 無造作に銃を抜き、太ももを撃ち抜く。男の絶叫が響き渡った。
 

エミリー:「これじゃただの拷問よ……」

チンピラ2:「そ、そうだそうだ! こんなことして、タダで済むと思ってんのか?」

シュリ:傷は治すから、跡は残らない。……床が血で汚れないうちに、治しておこうか。

フウゲツ:エミリー、そこをどけ。どかないならお前と戦ってでもコイツら殴る。

エミリー:なによ、やる気……?

チンピラ3:「まずは証拠を出せよ、証拠を」

ユリア:今何か言ったヤツを椅子ごと回転させる。くるっと回して、元に戻す。

GM:それは……ビックリするだろうな……。

ヴァイス:「まだ何か言うことは?」

シュリ:「言うことというか……まだ質問に一つも答えてないのよね」

一同:「………………」

ユリア:(タンのいる部屋へいこうとする)

レイチェル:「ユリア、どうした」

ユリア:「いや……奥の部屋に転がってるタンの首を取ってこようと思って」

シュリ:いつの間に(笑)。

ヴァイス:なるほど、脅しか。

GM:(そろそろ限界……かな)

チンピラ3:「ヤ、ヤベーよなんか……。分かった、言う、言うよ……。俺は殺ってねえ、俺は押さえてただけだ。殺ったのはコイツだよ!」(チンピラ1を見る)

チンピラ1:「テメー、裏切りやがったな!」

シュリ:「話すなら……詳しく話して」



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