フウゲツ:知らせを聞いたら、光の速さで駆けつけるぞ。
GM:しばらく待てば、他のみんなも帰ってくるだろう。
シュリ:場所は……そうね、村長を閉じ込めてた部屋で。その真ん中にタンを座らせる。
エミリー:ヴァイスやフウゲツがおとなしく話を聞くとも思えないけど。
シュリ:だから、タンをこの部屋に入れておくの。
やがて、全員が砦に集まった。
シュリ:(タンを閉じ込めている部屋の扉をちらりと見ながら)「これから、タンの話を聞こうと思ってる。──その前に約束してほしいのは、まだ彼だと決まったワケじゃないから」
ヴァイス:「冷静になれと?」
シュリ:「もちろん彼が一番怪しいけど……早まった真似をすると、もしそうじゃなかったときに取り返しのつかないことになるから」
一同:(神妙な顔でうなずく)
シュリ:「あたしだって腹の中は煮えくりかえってるけど、今は我慢するから。みんなも、ね」
ヴァイス:「分かってる」
エミリー:「異論はないわ」
フウゲツ:「いいだろう」
シュリ:「心で動く自分と頭で動く自分を持って──今は頭で動いて。……じゃあ、レイチェル、タンを連れてきて」
レイチェル:「分かった」
タンを中央の椅子に座らせ、全員でその周りを囲む。
重い沈黙を破り──シュリが、口を開いた。
シュリ:「さあ、話してもらいましょうか──何を見たのか」
タン:「ボ、ボクじゃないんだ。ボクは見てただけなんだ」
シュリ:「だから、何を見たの」
タン:「スノウが……刺されるのを」
ユリア:「誰たちに?」
タン:「それは……。それは──」
タンは3人の男の名前を挙げた。
20代半ばの、チンピラみたいな連中の名だった。
その連中に前から目をつけられて、脅されていたこと。
あの晩、スノウを連れ出してくるように言われたこと。
仕方なく、やったのだということ。
そこまで語り、タンは暗い目を向け、言った。
タン:「だから……ボクは悪くないんだ」
シュリ:「そんなことは知りません」
タンの話は続く。
暗い、洞窟の中で。
最初、スノウは抵抗しようとしていたこと。
短刀を取り出そうとしたところで殴られ、転倒したこと。
組み伏せられ、3人がかりで押さえたこと。
抵抗していたスノウが、急におとなしくなったこと。
ズボンに手をかけた男が──突然、何かに脅えたように悲鳴を上げ、短刀に手をのばし。
スノウに突き刺したこと。
一同:「………………」
シュリ:「何があったのか分かんないけど……スノウの『何か』が変わった、ってことね……」
タン:「ボクが見たのは、それで全部だよ……」
ヴァイス:「……その3人を、探そう」
タン:「ボクだって被害者なんだ!」
シュリ:(銃をタンのおでこに押し当て)「まだ言いたいことある?」
ヴァイス:「それ以上つまらないことを言うと……どうなるか分からんぞ」
シュリ:「てゆーか……こうなるんだけどね」
引き金を引く。
前にスライドした銃身がタンの額を打ち付け──みっともなく失禁し、タンを意識を失った。
シュリ:「いこうか」
エミリー:「場所は分かるの?」
シュリ:ヴァイスが知ってる。街の人間データベースだから。
ヴァイス:(地図のある場所を指差して)ヤツらのたまり場はここだ。
エミリー:(データベースであることを)自ら認めてしまったわね。
ヴァイス:そんなことはどうでもいい。──急ごう。
結局、シュリが(残ると言い出したオーキッドとブルーの見張りも兼ねて)砦に残り、ヴァイス・フウゲツ・ユリア・レイチェル・カーキが現場へ向かった。
GM:裏通りの片隅。奪ったのであろう食料を食べ散らかして、男が3人ほどたむろっている。
ヴァイス:そこは、行き止まり?
GM:行き止まりだね。
ヴァイス:じゃあはさみうちにする必要はないか。「そこを動くな!」
レイチェル:どたどたどた。
GM:男たちは、ナイフを取り出す。
ヴァイス:「抵抗すると、腕の1、2本飛ぶぞ」
ここにいないシュリ:みんな、頭で行動してね。
エミリー:ヴァイスとフウゲツは下がって。今のアンタたちだと、殺しかねない。
シュリ:そしてヴァイスの場合、返り討ちにあうかもしれないし。
GM:あっはっは(笑)。
ユリア:「じゃあ、ボクがいこう」
レイチェル:……ぼく? 私も前へ。エミリーはヴァイスとフウゲツとカーキを押さえていてくれ。
エミリー:この3人はさすがにキツイ気が……。
ヴァイス:「彼我の戦力差から見れば抵抗は無意味だ。おとなしく縛につけ」
チンピラ1:(小声で)「……おい、ヒガってなんだ?」
チンピラ2:(小声で)「知るかよ」
シュリ:死んだ後の世界よ。
ヴァイス:それは彼岸(笑)。
フウゲツ:(苦笑して)彼我ってのは、こっちとあっちって意味だ。
チンピラ3:「おい、どうするよ……」
ユリア:こそこそ言ってる間に近づいて、いつの間にかナイフを取り上げている。
ヴァイス:ユリアがマジモードだ……。
レイチェル:では、確保しよう。
GM:うむ。今のところ、抵抗はしないから。
GM:帰ってきたよ。
シュリ:みんな、よくそいつらを生かしたまま帰ってきたわね。偉い偉い。──そしてなぜかタンはいない、と(笑)。
ユリア:そして床に赤いシミが。
シュリ:薬莢も3つほど転がってたり。
ヴァイス:殺ったか……。まあ、仕方あるまい。
シュリ:それはさすがにないけど。タンは奥の部屋に閉じ込めたままよ。まだ気絶してる。
レイチェル:チンピラ3人は、縄で縛って床に転がしておこう。
エミリー:床じゃなくて、椅子に座らせておくから。
GM:了解。
ヴァイス:──じゃあ、尋問を開始しようか。証人の名前は……隠してもムダか。
GM:そうだね。「タンのやろー、ブッ殺す」とか言ってるし。
ヴァイス:「タンを殺すチャンスなんて、これから先あると思ってるのか?」
フウゲツ:「殺されるのはお前たちだ」
シュリ:(ぼそっと)お前たちはタンの本当の力を知らない。
ヴァイス:そうくるか(笑)。
シュリ:タンをなめるな。舌(タン)でなめるんだ。
ユリア:それはまあ、そうだね。タンでタンをなめることもできるけど。
エミリー:(想像して)気持ち悪いこと言わないで。
ヴァイス:「スノウを殺したこと、認めるな? 証人もいる」
チンピラ1:(へらへら笑って)「誰がンなこと言ったんだよ、誰がよぉ〜」
フウゲツ:……マジで殴っていい?
シュリ:いいんじゃない?
エミリー:まあまあ、待ちなさいって。押さえて押さえて。
フウゲツ:いや、止まらん!
シュリ:フウゲツ待って──あたしがやるから。
無造作に銃を抜き、太ももを撃ち抜く。男の絶叫が響き渡った。
エミリー:「これじゃただの拷問よ……」
チンピラ2:「そ、そうだそうだ! こんなことして、タダで済むと思ってんのか?」
シュリ:傷は治すから、跡は残らない。……床が血で汚れないうちに、治しておこうか。
フウゲツ:エミリー、そこをどけ。どかないならお前と戦ってでもコイツら殴る。
エミリー:なによ、やる気……?
チンピラ3:「まずは証拠を出せよ、証拠を」
ユリア:今何か言ったヤツを椅子ごと回転させる。くるっと回して、元に戻す。
GM:それは……ビックリするだろうな……。
ヴァイス:「まだ何か言うことは?」
シュリ:「言うことというか……まだ質問に一つも答えてないのよね」
一同:「………………」
ユリア:(タンのいる部屋へいこうとする)
レイチェル:「ユリア、どうした」
ユリア:「いや……奥の部屋に転がってるタンの首を取ってこようと思って」
シュリ:いつの間に(笑)。
ヴァイス:なるほど、脅しか。
GM:(そろそろ限界……かな)
チンピラ3:「ヤ、ヤベーよなんか……。分かった、言う、言うよ……。俺は殺ってねえ、俺は押さえてただけだ。殺ったのはコイツだよ!」(チンピラ1を見る)
チンピラ1:「テメー、裏切りやがったな!」
シュリ:「話すなら……詳しく話して」