ACT15.0[やわらかなきずあと] 02

フウゲツ:「………………」

ヴァイス:「………………」

フウゲツ:「…………ヴァイス、犯人に心辺りは?」

ヴァイス:「あるわけないでしょう! ……でも、一番怪しいのはタンです」

フウゲツ:「──タンを取り押さえろ! 早くいけ!」

ヴァイス:「スノウをここに残してはいけません!」

フウゲツ:「俺が守る。……いや、俺が連れていくから」

ヴァイス:せめて短剣を抜いてあげよう。それから、瞳を閉じさせる。

エミリー:そして死姦を。

ヴァイス:(エミリーを)……殺していい? 殺していい?

GM:……どーぞ。

フウゲツ:服の乱れを直して……お姫様だっこで、連れていく。

ヴァイス:………………。

フウゲツ:「ヴァイス! 早くいけ! タンを取り押さえろ!」

ヴァイス:それは、ちょっと即答できない。

フウゲツ:即答しろ!

シュリ:戦略的には間違っているよね。

ユリア:でも、ヴァイスにスノウを運べるとも思えないれすが。

フウゲツ:「何回言わせるつもりだ! タンを探せ! ……スノウは俺が連れていく。文句あるか」

ヴァイス:(悔しそうに顔を歪めた後)「……ありません。いきます」
 

 ヴァイスは、走った。

 オルドレース家──

セツ:(スノウの身体にすがって)「スノウ……スノウ……。ああ……スノウ……」

ゲイン:「どうして……こんな……」

フウゲツ:「すみません……。俺がずっと傍にいれば……。二度までもこんなことには……」

GM:まったく、ねえ……。

フウゲツ:まったく、と言いたいのはこっちだ! ノエルに続いてスノウまで……。

エミリー:両親はフウゲツを責めたりはしないの?

シュリ:しないと思うよ。……言葉の外で「お前が悪いお前が悪い」と言ってるかもしれないけど。

GM:こらこら。──教会に運んでお葬式の準備をしましょう、とセツが言い出すよ。

フウゲツ:「俺……ずっとスノウの傍にいたいけど、それ以上にこんなことをした犯人が許せません。だから……これから俺も自警団に合流します。──スノウのこと、お願いします」

エミリー:犯人は……この中にいる!

シュリ:そりゃ、アーケインの中にはいるでしょうね。大きな密室みたいなもんだから。

ヴァイス:みんなは今どこにいるの?

エミリー:教会。たぶん、もう少ししたらスノウが運ばれてくるんじゃないかと。

レイチェル:『古の民』のところ。

ユリア:『月の民』のところ。

シュリ:(コロコロ)珍しく寮にいる。

エミリー:なぜサイコロを振る?

シュリ:1が出たらどこか男の部屋にいることにしようと思って。

エミリー:こんなときに、そういうとこにいるんだ。

シュリ:うん。そういう場合も、ある。

GM:シアやカーキも寮だね。オーキッドとタンは見回り。スリーアイは食糧庫の見張り(笑)。

ヴァイス:一番人がいるのは寮か。じゃあ、寮にいこう。
 

 自警団の寮──

ヴァイス:みんなをたたき起こすよ。「みんな起きろー!」と言いながら、ドアをドンドンとたたく。

ここにいないレイチェル:そんなことで起きると思っているのか。

GM:そうきたか(苦笑)。

シュリ:さすがにそこまでは言わないけど……ちょっと考えた。はたしてそれで起きるもんかしら。

フウゲツ:起きろよ(怒)。

カーキ:(ドアを開けて)「ンだよ……こんな夜中に」

シュリ:何があったのか分かんないまま、起きてこよう。──ちなみにプレイヤーはこのぐらいでは起きないけどね。

GM:オーキッドとブルーは見回りで、寮にはいない。そのまま食糧庫の見張りをスリーアイと交代することになってる。だから砦にいるのは、シュリ・カーキ・シアだけか。
 

 一同を作戦会議室(という名の食堂)に集めたヴァイスは、口を開いた。
 

ヴァイス:「いきなりだけど……スノウが殺された」

シュリ&カーキ:「「……は?」」(←言葉の意味が飲み込めてない)

ヴァイス:「だから…………冗談でも何でもなく、スノウが殺された」

カーキ:「いったい……誰がどうしてなんで?」

シュリ:「どういう……こと?」

ヴァイス:「僕にもどういうことなのかはさっぱりだけど……スノウが死んだことだけは確かなんだ」

シア:「………………え。あう……えっと……え? ……そう、なんだ……」
 

 ゆっくりと、その言葉が持つ意味を咀嚼していく。
 

カーキ:(ヴァイスの胸倉をつかんで)「話せ。……詳しく話せよ、おい!」

ヴァイス:「僕だって詳しいことなんて分かんないんだ!」(カーキを突き飛ばす)

カーキ:「上等だよテメエ。……死体を見たんだろ? 場所ぐらい分かるだろうが! どうやって見つけたのかぐらいは話せるだろうが!」

ヴァイス:「洞窟だ。『魔王の森』の……君たちが『五分厘』の洞窟と呼んでるところだ」

カーキ:「何でこんな時間にそこにいった? まさかお前が殺ったってんじゃないだろうな」

ヴァイス:「違うよ!」

シュリ:あたし……ちょっと部屋に戻る。

カーキ:(再びヴァイスの胸倉をつかんで)「詳しく話せ。全部だ」

ヴァイス:「スノウは……自分の家にいた。フウゲツさんがちょっと家を空けた間に、自警団の人が──たぶんタンが──スノウを呼びに来て、そのまま戻らなかったんだ。それに気づいたフウゲツさんが僕を呼びにきて……ふたりでずっと探して……それで……」

カーキ:「あのときか……。オレらが粥食ってたあのときか……」
 

 鈍い音とともに、カーキの拳がヴァイスの頬にめり込んだ。

 胸倉をつかまれていたヴァイスは、倒れることもできない。

 そのまま2回、右の拳が更にヴァイスの顔を捕らえ──今度こそ、ヴァイスは床に倒れた。
 

カーキ:「なんで……もっと早くオレたちに言わなかった。死んじまったら手遅れだろーが!」

まだたどりついてないフウゲツ:おっしゃるとーりです。

ここにいないエミリー:こういうときに素直に殴られるのもいいけど……リーダーのくせに逆ギレもできないの?

GM:(逆ギレするリーダーもどうかと思うぞ……)

ヴァイス:「それはそうかもしれないけど、こんなことになってるなんて思わなかったし、き、君たちだって連日の見張りで疲れてただろ!? あ、頭だって回らなかったよ!」(←……逆ギレ?)

プレイヤーG:舌も回ってないようだけどね。

カーキ:「それは、それは。……お心遣い、感謝するぜ!」
 

 更につかみかかろうとするカーキを、シアが制した。顔が腫れてきたヴァイスの頬に、そっと触れる。

 そして……ヴァイスの頬が、パンと鳴った。
 

シア:(平手打ちをした手を押さえて)「いろいろ考えた結果だと思います。仕方なかったんだと思います。でも……やっぱり、ヒドイですよヴァイスさん」

カーキ:「……スノウは、今どこに?」

ヴァイス:「スノウのことはフウゲツさんに任せてきたから」

レイチェル:オルドレース家に戻ることぐらいは聞いてるだろう。

ヴァイス:それもそうか。じゃあ、そう伝える。
 

 そこに、シュリがやってきた。フル装備で、防寒用のマントを羽織っている。
 

シュリ:「はいヴァイス立って。いくよ」

ここにいないユリア:え、今度は殴る代わりに銃で……?(笑)

レイチェル:「ヴァイス、逃げな」とか言って、後ろから。

ヴァイス:それはさすがに勘弁してほしい。

シュリ:「ヴァイス、立って。いくよ」

ヴァイス:「いくよ……って?」

シュリ:「どこかなんて知らない。──起こってしまったものは仕方ないでしょ。誰が一番怪しい?」

ヴァイス:「タン」

シュリ:「どこにいそうか、見当つく?」

ユリア:ああいうタイプは、自分の部屋にいるんじゃ。

エミリー:確かにその可能性は高い。

ユリア:でも……これで部屋を覗いてみて、いたらイヤれすね(笑)。

シュリ:「ヴァイス、ユリアとエミリーに連絡取って、タンを探させて。あたしは砦の方にいってみる」

カーキ:「オレはシアを着替えさせて、スノウちに送ってくる」

シュリ:「ん、お願い」(すたすたと出口の方へ歩いていく)

ヴァイス:ああ、この統率力と行動力を見習いたい……。

エミリー:ほーんと、どうしてヴァイスがリーダーなのか未だに不思議。

シュリ:それはね、いざってときに責任を取るため。

ヴァイス:だから始末書機能までついてます。

GM:ショムニに出てくる森本レオみたいなもんか。

レイチェル:あはは。

シュリ:「さすがに分かってると思うけど……みんなに連絡ついたら、砦に来るのよ」

ヴァイス:「それくらいは分かってるよッ!」
 

 それぞれがそれぞれの成すべきことを成すために……行動を開始した。



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