ACT15.0[やわらかなきずあと] 01


 青く彩られた世界の中で。
 

 光を反射するナイフ。

 乱れた髪。白い顔。乱れた着衣。力の抜けた手足。

 そこに、スノウがいた。

 彼女はもう、動かなかった。その瞳はもう……何も映していない。
 

「じゃあ何でそこまでして街を守るの? 彼らは守るに値する人たちなワケ?」
 

 声が……聞こえた気がした。



GM:街中を捜し回り、最後の最後にたどり着いた場所で、ヴァイスとフウゲツは冷たくなったスノウを見つけた。

ヴァイス:ホントに、ねえ……。

フウゲツ:これが『黒ヒゲ危機一髪』の正しい攻め方だ。

ここにいないレイチェル:これは『黒ヒゲ』ではないし。

ここにいないエミリー:もっと早く見つかってたらどうなってたの?

GM:すぐに見つけてたら、殺害直前。2〜3時間後なら殺害直後、かな。最初からスノウの居場所は決めていたからね。『探して回って最後にたどり着いた場所にいる』というシナリオではなかったんだよ。

ヴァイス:それなのに……くっ……。

ここにいないシュリ:このGMのことだから、『このときは死なない』けど『また別の場所で結局死ぬ』ことになってたんじゃ。

一同:ありそう……。

GM:(苦笑して)珍しく今回はスノウが助かったときはスノウ殺害は諦めようと思ってたのに。──まあ、過ぎてしまったことをアレコレ言っても仕方がないね。──冷たくなったスノウが目の前にいる。それが現実だ。

レイチェル:そう思うなら、最初からシナリオの裏なんか話さなければいいのに。

ヴァイス:うまくやってればスノウは助かったんだと思うと、ますます後悔が……。

エミリー:こうなってしまったのだから、それを悔いても仕方ないって。居場所のヒントもなかったし。GMにハメられたようなもんよ。

シュリ:その片棒かついでたくせに……。

エミリー:あれはわたしであってわたしでないもの。

プレイヤーG(今回から参加):まあいい。話を進めようではないか。

 青い光の中に浮かび上がった光景は、未だに現実感に欠けていた。
 

フウゲツ:「誰がこんなことを……」

ヴァイス:ナイフは、ぐっさり?

GM:そうだね。──んで、そのナイフに、フウゲツは見覚えがある。

フウゲツ:なにィ!!!(心底びっくり)

ここにいないユリア:犯人はヴァイスだったのれすね。

シュリ:見覚えがあるのはフウゲツなのに、それでも犯人にはヴァイスなんだ(笑)。

レイチェル:ヴァイスが持っていたのを、見ていたのか。

ユリア:そして、ヴァイスの懐からナイフの鞘が落ちる。

エミリー:それ、ナイス。

ヴァイス:ちーがーうー!

フウゲツ:GM、見覚えがあるとはどういうことだ? ……まさかホントにヴァイスが……。

GM:ナイフ──というか短刀──にはよく見ると凝った装飾がされている。『月の民』が使ってるものだね。──昔、フウゲツがノエル(スノウの姉)に護身用として渡したものであり……スノウが姉の形見として、同じく護身用として持っていたものだ。

ユリア:え、じゃあ自殺……?

エミリー:いくらなんでもそれはないでしょ。犯人に奪われて、それで刺されたのね。

ヴァイス:つまり、凶器から犯人を断定することはできないってことか……。

フウゲツ:………………。

ヴァイス:………………。──洞窟って広いんだっけ?

GM:人が住んでたぐらいだから、そこそこの広さはあるだろう。
 

 ふたりは、スノウの身体を中央の方に移動させた。その身体は、驚くほど冷たい。生き物としての存在感が全く感じられない。
 

フウゲツ:「応急処置を試みたいが……もう、無駄か?」

ヴァイス:「おそらく。専門的なことは分かりませんが……もうスノウは……」

フウゲツ:「誰が……誰がこんなことを……」
 

 ノエル……
 

フウゲツ:うぉおおッ! うぉおおおおおおお……!
 

 フウゲツは吼えた。

 それは残響し、やがて、闇に吸い込まれて消えた。
 

GM:ではここで気配チェック。

フウゲツ:(コロコロ)失敗だ。

ヴァイス:(コロコロ)成功してます。

GM:では、フウゲツの後ろに『仮面のもの』が立っているのに気づいた。

ヴァイス:……こんなところで……。

フウゲツ:ん?

GM:『仮面のもの』が次々と姿を現す。スノウを囲むように、円環を成し、8体。

ヴァイス:全員集合か……。

仮面のもの:『我は“喜”なり。されど分かたれた我は"哀"なり』

フウゲツ:「これをやったのはお前たちか!」

“喜”の仮面:『我ではない。我はただ、自らを“言葉”にのせて発するのみ』

フウゲツ:「自ら……? 自らとは何だ?」

“喜”の仮面:『自らは我なり。そして汝なり』

フウゲツ:汝……?

“喜”の仮面:『我は"喜"なり。されど分かたれた我は"哀"なり』

“哀”の仮面:『我は“哀”なり。“喜”より分かたれしものなり』

“光”の仮面:『我は“光”なり。されど分かたれた我は“重力”なり』

“重力”の仮面:『我は“重力”なり。“光”より分かたれしものなり』

“結”の仮面:『我は“結”なり。されど分かたれた我は“裂”なり』

“裂”の仮面:『我は“裂”なり。“結”より分かたれしものなり』

“愛”の仮面:『我は“愛”なり。されど分かたれた我は“憎”なり』

“憎”の仮面:『我は“憎”なり。“愛”より分かたれしものなり』

ヴァイス:「一体何をしに出てきたんです……?」

“喜”の仮面:『我らはただの波動』

“哀”の仮面:『生まれ』

“光”の仮面:『響き』

“重力”の仮面:『消えてゆくもの』

“結”の仮面:『消えゆくものを捕らえ』

“裂”の仮面:『形を変え』

“愛”の仮面:『響かせるもの』

“憎”の仮面:『想いを、伝えゆく……』
 

 8人の『仮面のもの』は、祈りをささげるように頭を垂れた。

 そして揺らぎ、消えていく……



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