ACT9.0[ゆがみのむこう] 02


 オーレオリン帝国帝都カーディナル──

GM:今回は食料の他に、馬も買うことになっている。

シュリ:そうなの?

GM:シュリが前に通勤用に欲しいって言ってたからね。

シュリ:……言ったっけ?

GM:(忘れてたのか……)(サイコロを振って)うお、5頭も買ってしまったぞ。

フウゲツ:どこからそんな金が……。

シュリ:元競走馬を安く買ったんじゃない?

ヴァイス(留守番):てことは八歳馬?

シュリ:十分じゃない? 馬は20年ぐらいは生きるんだから。

ユリア(留守番):5頭……ヴァイスの首と両手両足に結んで、一斉に違う方向へ……。

ヴァイス(留守番):処刑に使うな(笑)。

GM:んで……手違いで食料を買う前に馬を買ってしまったんで、マーロが困ってる。

マーロ:「シュリ、フウゲツ、お前らだけ先に馬連れてアーケインに帰っとくか?」

シュリ:「なに、そうしてほしいの?」

マーロ:「いや……もちろんお前らふたりで帰るのにはいろいろと……(ブツブツ)」

シュリ:「あたし的にはフウゲツとふたり旅ってのはとっても魅力的だけど──」

フウゲツ:「いや、そんなことはない」

シュリ:「一応護衛だし……冷静に考えたらみんなで帰った方がいいって。あたしにだって責任感ぐらいあるし」

マーロ:「そうか……。じゃあ、みんなで帰るとするか!」

GM:(馬を連れてマーロと一緒だから……シナリオはこっちへ分岐だな)

 アーケイン 自警団の砦──

GM:さてヴァイス。砦でぼぉーっとしてると、門のところに人影が見えるよ。

ヴァイス:例の結界の門だよね。じゃあ外へ……ひとりでいくのはイヤだから……誰か砦にいる?

GM:(コロコロ)ブルーとタンが(笑)。

ヴァイス:よりによってそのふたりか。

タン:「そんなの、オタクひとりでいけばいいんだ」

ブルー:(無言。だが動こうともしない)

レイチェル:一番タチが悪い……。

ヴァイス:「あっそ、じゃあいいよ」
 

 ひとり門へ向かうヴァイス。

 門のところに立っていたのは、フードをかぶった女性だった。フードの隙間からわずかに赤い髪が見える。
 

シュリ:警戒のために、肩を揺らしながら近づくんだ!

フウゲツ:またか! またもや面妖な動きを……。

シュリ:肩を揺らして、魔を祓うのよ。

ヴァイス:警戒しつつ近づく。──この街って侵入者……というか来客ってあんまり歓迎してないんだっけ?

シュリ:歓迎してないってことはないんじゃない? ……ヴァイスは歓迎してないかもしれないけど。

ユリア:覚える人が増えるかられすね(ヴァイスは住民全員の詳細なデータを所持している、という噂がある)

エミリー:「ねーちゃん、茶ぁしばかへん?」ぐらい言ってみればいいのに。

フウゲツ:それ、絶対キャラが違う。

ヴァイス:「ちょっと待って」

フードの女性:「はい?」

ヴァイス:「えっと……私はここの自警団のリーダーをしてる者なんですが、一応あなたは外からの侵入者なんで──」

一同:侵入者!?(笑)

ヴァイス:違った違った、「外からの来訪者なので……」──ボディチェックとかするのかな?

フウゲツ:身元の確認だろ?

ヴァイス:じゃあとりあえず……

GM:(いやらしい手つきで)ボ、ボディチェックを……。

ヴァイス:それじゃ変態じゃないか!

シュリ:変態じゃなかったんだ。

ヴァイス:アイタタタ……。──じゃあ、とりあえずフードを取ってもらって顔の確認と、それから……。

レイチェル:全部いっぺんに言うのはどうだろう。

GM:レイチェル、よく言った(笑)。ちゃんと会話しよう。

ヴァイス:「……フードを取って、顔を見せてください」
 

 口元に妖艶な笑みを浮かべ……女性はフードを取った。やや猫っ毛の、赤く長い髪があらわになる。
 

フードの女性:「これでいい?」

ヴァイス:「では……名前と、この街に来た目的を……」

フードの女性:「名前は……グレイウッド」

ヴァイス(のプレイヤー):ぶほっ!(飲んでたお茶を吹き出す)

フードの女性(グレイウッド):「ちょっと、観光に来たんだけど」

ヴァイス:観光? この街って観光するような場所ってあったっけ?

グレイウッド:「知り合いに話を聞いたもんでね。お祭りに間に合うように来たかったんだけど、いろいろあってそれは無理になったってワケ」

ヴァイス:「知り合いとは?」

グレイウッド:「ヴァルト=ラィヒ族──森の民よ」

フウゲツ:トパーズたちか。……てことはやっぱり彼女はサリース……?

ヴァイス:ぱっと見て危険物とか持ってそう?

シュリ:空き缶とか?

ユリア:それはイヤれすね(笑)。

GM:ナイフとかなら。

ヴァイス:それぐらいは護身用だよな……。でも髪が赤い……。

レイチェル:やはりボディチェックを。

GM:ヴァイス、はあはあ息を荒くしない(笑)。

ヴァイス:し、してないよッ!

フウゲツ:やだなぁ、もう……。

シュリ:相手が皇族ってことで、ヴァイスは言葉遣い変わったりしないの?

GM:フードで隠してたってことはお忍びの旅だし。何より、一般に知られてる皇族にこういう人はいない。

エミリー:隠し子?

GM:まあそんなもんだ。

グレイウッド:「で? 入っていいの? ダメなの?」

ヴァイス:「……どうぞ。観光を楽しんでください」

グレイウッド:「はーい、ありがと。──で……アンタに案内頼みたいんだけど?」

ヴァイス:「案内……ですか」

レイチェル:案内してまわるような場所があるのか?

シュリ:一軒一軒の詳細なパーソナルデータを披露していけば?

フウゲツ:そんな観光イヤだぞ……。

ヴァイス:仕事もたまってないし……「分かりました、いいですよ」

レイチェル:常識的に考えれば監視しないといけないから。好都合だろう。

GM:では、フードをかぶりなおしてヴァイスについていこう。

ヴァイス:なぜ?

GM:髪が赤いだけで「皇族だ皇族だ」って言われるからね。それはやっぱうっとーしいんで。

フウゲツ:さあ、さりげなくいろいろ聞いてみるんだ。

シュリ:サリだけにさりげなーく。

レイチェル:何カップですか?(一同大笑い)

フウゲツ:いきなり直球デッドボール……。

ヴァイス:そんなこと聞かないってば。

シュリ:聞かないんだ、残念。

ヴァイス:で、観光か……どこへいけばいいんだろ?

シュリ:一番街に詳しい人のところに連れていって押しつければいいんだって──データベースな人に。

ヴァイス:じゃあ、レイチェルのところに(街の中央の噴水へ)。

レイチェル:本当に私のところに来るのか(笑)。

ヴァイス:「レイチェル、どこか観光にいい場所知らない?」

レイチェル:「観光……」

シュリ:さあ、ここで言ったことは本当になるわよ。「裏山に温泉がある」って言えば、温泉がぽーんと出現。それがTRPG!

レイチェル:『魔王の森』の奥に温泉があることに。

フウゲツ:あんな難所に……。

レイチェル:「いってみてはどうですか」とさりげなくすすめておこう。

シュリ:……極悪。

レイチェル:あとは街の猫案内とか。……そんなかんじ。

フウゲツ:つまり突き返されたってことか。

レイチェル:そして私は『赤髪の殺人鬼』の話を聞いてないから、警戒もしない。

シュリ:そっか、あたしとフウゲツしか聞いてないんだ。

グレイウッド:「んー……まあいいわ。適当に見てまわるから、もういいわよ。いってよし」

ヴァイス:「はあ……」

GM:(リアクションなし、と)んじゃ、グレイウッドは適当に街をぶらぶらしたり、酒場の2階の宿屋に泊まったりしてるってことで。

グレイウッド:(残念だな……彼はあたしに似てると思ったんだけど……)



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