ACT9.0[ゆがみのむこう] 03

GM:では5日ほど経過して……

レイチェル:街の人が20人ばかり殺された。

GM:んなことはないが。

エミリー:旅の人は?

GM:サリースなら……

エミリー:あ、サリースだったのね。

シュリ:今頃何言ってるの?

フウゲツ:サリーヌとかかもしれない。

GM:グレイウッドは、街の中をぶらぶらしてるみたい。適当に男を引っかけて寝泊まりしてるのかも。──そしてシュリたちも帝都から帰ってきた。

シュリ:「あー、いい旅だった!」

フウゲツ:「……疲れた……」

エミリー:このリアクションの差はなに……?

フウゲツ:気持ちの問題ではないかと。

GM:そしてヴァイスの駄馬の隣には、5頭の馬が。これでPC全員分の馬が手に入ったことになるのだね。

ヴァイス:駄馬って……。……そりゃ、あんまりいい馬ではないけどさ。

レイチェル:馬車が戻ってきたなら、荷物運びの手伝いをしよう。

シュリ:そうね、あたしも一服したら商店街の方に手伝いにいく。

GM:ではここで『心』判定。『知覚』系、目で見えるかどうかの判定だ。

ヴァイス&フウゲツ&ユリア&エミリー:成功。

GM:東の方──『結界』の辺りで、赤い光が地面から天に向かって走る。赤い稲妻、だね。パリバリッてかんじで。

フウゲツ:「何だあの赤い稲妻は。なぜ下から上に?」

GM:アーケインの街は半球体の『結界』(透明)に覆われている。今光ったのはちょうど収穫祭のときに刈り入れを手伝った畑の辺りだ。結界に干渉すると──例えば石をぶつけるとかすると──ああいう風に光ることがある。

ユリア:雨は問題なく通り抜けるのに。

GM:不思議な結界だ(笑)。

エミリー:教室(教会の一室)には東向きの窓はないのに、よく気づいたわねわたし。

シュリ:窓ないの?

ユリア:窓が全然ない部屋なんれすね。

GM:そして鍵は外からかけるようになっている。

フウゲツ:それ、絶対教室じゃないと思う。

エミリー:窓から覗いて……それで終わるのもつまらないですね。自警団の寮にいってみます。

フウゲツ:俺も寮に。東の空が光ったざますよ。

ヴァイス:ざますよって報告を受けるんだ。

フウゲツ:赤い稲妻が僕を責める。

レイチェル:僕を責める、助けてくれ〜、と。

ユリア:赤い稲妻、レッドサンダー。……男塾だね。
 

 珍しく情報伝達がうまくいった結果、PC全員が街の東へ向かうことに。
 
 

GM:これだけ集まって行動するのって珍しいね。

ユリア:『青編』では珍しいれすね。

GM:東の畑の外れ。ちょうど結界石と結界石の間のところだね。その結界の壁の一部が赤く発光している。

シュリ:結界は普段は透明なのよね?

GM:そう、今は光のせいで向こう側は見えないけど。……そして光ってる壁からにゅっと腕が出てくる。

一同:んな!?

GM:光の壁から浮き出るようにして、フードを被った人影が現れる。──『結界』に干渉し、通り抜けたんだね。
 

 顔はよく見えないが、どうやら女性のようだ。ちらりとのぞいた髪は──真紅。
 

フウゲツ:「ここは入り口じゃありませんよー」

エミリー:わたしたちは、赤い髪の来訪者(グレイウッド)のことはヴァイスから聞いてないですよね?

GM:聞いてない、かな。街の中を赤い髪の人がうろうろしてるってのは聞いてるかもしれないけど。そして夜な夜な男を食ってるという噂が。

フウゲツ:怖かぁ〜。

ユリア:この軟骨がうめぇんだよ、と。

GM:どんなヤツだよ、それは。──で、またしても赤い髪の来訪者が君たちの前に現れたのだが。

エミリー:「アナタ何者?」

シュリ:妥当な反応だね。

赤い髪の女性:「あ、ごめんなさい。『結界』に穴が開いてることを教えてあげようと思って」

シュリ:「開けたんじゃなくて?」

赤い髪の女性:「そ。もともとヒビ入ってたわよ、ここ」

ヴァイス:「どうしてそんなことが分かるんです……?」

赤い髪の女性:「ちょっと魔法力の高い人なら、『見える』はずだけど」

シュリ:分からない……。

GM:レベル1じゃさすがにねー……。3レベルぐらいはほしいとこかも。

エミリー:その女性の声に聞き覚えは?

GM:(ちょっと考えて)ヴァイスは会ったことあるかな。判定してみて。

ヴァイス:(コロコロ)……失敗してる。

GM:なんでいつも失敗するかなー……。じゃあ、聞いたことある気はするけど、思い出せない。
 

 と──再び『結界』に光が走り、今度は人影が4つ、通り抜けてきた。
 

レイチェル:増えた……。

シュリ:(警戒しつつ)「何者なの……?」

フードの人(男):「ヴァイス君とは会ったことあるんだけど……覚えてないかな?」

エミリー:相変わらず他人に興味がないんだから……。

フウゲツ:役立たず……。

シュリ:他人の『情報』にしか興味がないのね……。

GM:では、フードを取りましょうか。
 

 目にも鮮やかな、色とりどりの髪と瞳──

 緑の髪と茶色い瞳の、グルン=ベート。

 赤い髪と緑の瞳の、カーミン=ロウジ。

 青い髪と赤い瞳の、キャン。

 白い髪と紫の瞳の、ウェイブ=ブランク。

 紫の髪と青い瞳の、ロトリラ=マウベ。

 15年前に世界を救ったと言われている、英雄たちだった。
 

グルン:「ヴァイス君とは魔術師団の詰め所で会ったことあるはずなんだけど……」

ヴァイス:「………………」

フウゲツ:「すみません、役立たずで」

シュリ:えーと……シアのお父さんとお母さんだっけ?

GM:キャンとウェイブがそうだね。

エミリー:シアは……ここに来てないのね。──髪の赤い人は、やっぱり皇族なの?

GM:そうだよ。先代皇帝とヴァルト=ラィヒ族の──しかも先代『雪の神子』との隠し子。

フウゲツ:なにぃ!?

GM:この連中の生まれについて語り出したら長いんで……やめておきます。リプレイとは直接関係ないしね。

フウゲツ:「あのー……何でまたこんなところにこんなところから?」

カーミン:「結界の穴のことを教えにきたのと……村長に会いに」

フウゲツ:「村長って……ジジイの?」

カーミン:「そうそう、ジジイの」

フウゲツ:てことは村長が……シエナ=サブレなのか、やっぱり。

GM:そのようだね。

フウゲツ:「じゃ、村長の家まで案内しますよ」

エミリー:「わたし、シアを呼んできます」

 村長の家──

フウゲツ:「村長〜」

村長:「ひょ?」

フウゲツ:「ひょ?」

シュリ:現れたな、月の民全ホモ疑惑の元凶。

フウゲツ:そうなのか?

GM:違うと信じたいです。──てことで、6人はしばし再会を喜びあったりしてるのだな。

 自警団の砦──

 砦には、シアとカーキがいた。
 

シア:「くぅー」(寝てる)

エミリー:「シアー、お父さんとお母さんがいらしてるわよー」

シア:「むにゃ……会いたくありましぇん」

エミリー:カーキと一緒に引っ張っていく。

カーキ:「やめろよ、会いたくねーってんだから」

エミリー:カーキはそういうキャラか。まあいいですわ、無理矢理引きずっていきます。

カーキ:「やめろってんだよ」

エミリー:「まあまあ、こうやって来てるのも何かの縁なんだし……。向こうにも何か目的があるにしても、その中にシアに会うってのもあるかもしれないから」

フウゲツ:何で会いたくないんだ?

GM:子供の頃にこの街に預けられて、それ以来ほとんど会ってないからね。

エミリー:ああ、捨てられたと思ってるのね。

GM:そういうこと。頭では違うと分かってるんだけど、心が……っていう。

フウゲツ:でもなぁ……このままそこから逃げてたら、一生そのままだぞ?

GM:──と、エミリーが言えるワケもなく。

エミリー:引きずっていきます。

カーキ:「それは説得じゃねーだろ。それはただの自己満足だろ」

エミリー:引きずっていく。

カーキ:「ちぃっ。……シア、立てるか?」

シア:「……うん」



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