アリア:だいじょぶだいじょぶ。
リトナ:そろそろ肩凝ってきたから、服脱いで猫に戻っていい?
ビオ:周りに関係なく、食べまくり。
アリア:ふふふ、この城にあたしという存在をアピールするのよー。
キュア:アピールって……婿でも探すつもり?
リトナ:それもひとつの手かも。気に入った相手ができたのなら、<帝国>にとっても一石二鳥。
ヴァンダイク:というか、最初からそのつもりで来たのではなかったのか。
アリア:えー、だってお嫁にいくにはまだ早いしぃー。
ゴルディッシモ:早くないわッ!
キュア:……わ?
ビオ:んー……? ──まあみんな、食え食え。
アリア:食べていいの? みんなが食べない方が分け前増えるよ?
ビオ:大量にあるときは気前がいいんだ。
リトナ:ビオさんはモヤシでも食べてろ、その魚はオレんだ!
ビオ:猫はこれでも食ってろ。
ゴルディッシモ:それはモヤシの刺し身とモヤシのタタキのことだね。
キュア:タタキ……?
リトナ:(ビオに近づいて)すりすりすり。
ビオ:寄るんじゃねー!(←ビオは猫が苦手)
アリア:宴ぇー! 宴ぇー!
リトナ:(魚を食べながら)そーいや結局キュアって着飾ったの? そろそろ婿でも見つけないとどちらもヤバイと思うんだよね。
アリア:(きゅぴーん)「どっちも」って何……? あたしのこと……?
ゴルディッシモ:婿か……。やはり同族がよいのかな。
ヴァンダイク:では牛と。
リトナ:リカちゃん、うちのおじーちゃんよ(伝統にんにく卵黄)。
アリア:……いらなーい。
リトナ:──で、どうなのキュア。少しは自分を着飾ってアピールしようという気持ちはないの?
キュア:(しみじみと)ないねぇー。
リトナ:あっそ。…………飽きた。
GM:飽きたらしい(苦笑)。
キュア:じゃあ……渋々着飾って出てこよう。
リトナ:その頃にはみんな忘れてるって。
ゴルディッシモ:いや、『はっぱ隊』(笑う犬シリーズ)の衣装なら。
キュア:それぐらいで。
GM:え、はっぱ隊でいいの!?
キュア:そっちじゃなくて……みんなが忘れた頃に。
ゴルディッシモ:はっぱタイツでもいいぞ。
ヴァンダイク:激しく爆発したね。
リトナ:それは発破タイツ(笑)。
ゴルディッシモ:もはやタイツですらない。
アリア:『発破隊』って……そういう職人集団なんだ……(笑いが止まらない)。おなかいたい〜。
ホントに忘れられてるっぽいキュア様。
発破隊とモヤシで変なテンションな面々。
そうこうしてるうちに、やがて宴も終わり……
リトナ:(プレイヤーが)そろそろ眠くなってきた……。
アリア:このセッションが終わったら、ちょっと休もうね。
GM:そこらへんで雑魚寝になるけど。
リトナ:オレは寝袋があるから。男と添い寝する主義はない。
ビオ:……『添い寝をする主義』ってのは、もともとあんまりないんじゃねえか?
ゴルディッシモ:『女と添い寝する主義』なんだね。
リトナ:(苦笑して)いや、それはどうなんだろう……。主義というか、それが自然というか……。
ヴァンダイク:主義はなくても主張はあるかもしれんが。
ゴルディッシモ:「あなた、他の男と寝たのね!」という主張。
一同:………………。
ゴルディッシモ:……さ、ゲームの続きをしようか。
ビオ:奇妙な発言だったな(笑)。
GM:えー…………宴、おしまい!
ビオ:収拾のつかなくなった宴会を終わらせる幹事のようだ。
GM:そんな気分かも……。
わずかに口にしたアルコールが見せた、幻だったんだと思う。
キュアは自分の部屋で。あたしは個室でひとりで。
深夜。枕もとに立つ人影。わずかな光があたしに落とす影。
──ラグランジェだった。ラグランジェ・カイユ・レオヴィール。
かつて姉が愛した人。かつて姉を愛した人。
寄り添う彼らは幸せそうだったけれど、どこか悲しげだったのをよく覚えている。
彼は剣を持っており、その切っ先はあたしの喉元にあった。冷たい刃の感触がすぐ近くにある。
「アリア・ミリアル・エルズミーア」
彼が、あたしの名を呼んだ。あたしの存在を示す音を。けれどその声は、あたしの存在を否定しているようだった。
「僕は知っています……<扉>の先にある<楽園>の姿を」
彼の言葉にあたしは目だけでうなずいた。自分でも驚くほど冷静だった。
「止めようと思ったこともあった。……君を、殺してでも」
「うん」
今度は声が出た。喉にかすかに鋼の冷たさ。
「今は……。短い間だったけど一緒に旅をして、いろんな君を知った。君のお姉さんのことを思い出したこともあった。……ある、女性のことも」
優しい瞳だった。吸い込まれそうな色。姉が好きだった色。揺れてる。
「たくさんの大切なことを想い出したから…………もう、止めない」
静かに、刃があたしから離れた。そのままラグランジェは剣をしまう。
「何が正しいかは分からない。でも、<扉>の先には答えがあるから。それぞれの答えが。──君らしい答えが」
ちょっと、微笑む。
「信じちゃいますよ」
「うん……いいよ」
あたしも、笑う。時間の流れを一瞬、超える。幸福の残像。言葉という名の魔法と、それを超える魔法。
「おやすみなさい」
それはさよならの響きを持つ言葉。彼は去り、あたしは瞳を閉じる。
ゆっくり……闇の中へ……