ACT16.0[贖罪]02

GM:なんかいろんなネタが出てきたせいでとんでもない宴になってるイメージが……。

アリア:だいじょぶだいじょぶ。

リトナ:そろそろ肩凝ってきたから、服脱いで猫に戻っていい?

ビオ:周りに関係なく、食べまくり。

アリア:ふふふ、この城にあたしという存在をアピールするのよー。

キュア:アピールって……婿でも探すつもり?

リトナ:それもひとつの手かも。気に入った相手ができたのなら、<帝国>にとっても一石二鳥。

ヴァンダイク:というか、最初からそのつもりで来たのではなかったのか。

アリア:えー、だってお嫁にいくにはまだ早いしぃー。

ゴルディッシモ:早くないわッ!

キュア:……わ?

ビオ:んー……? ──まあみんな、食え食え。

アリア:食べていいの? みんなが食べない方が分け前増えるよ?

ビオ:大量にあるときは気前がいいんだ。

リトナ:ビオさんはモヤシでも食べてろ、その魚はオレんだ!

ビオ:猫はこれでも食ってろ。

ゴルディッシモ:それはモヤシの刺し身とモヤシのタタキのことだね。

キュア:タタキ……?

リトナ:(ビオに近づいて)すりすりすり。

ビオ:寄るんじゃねー!(←ビオは猫が苦手)

アリア:宴ぇー! 宴ぇー!

リトナ:(魚を食べながら)そーいや結局キュアって着飾ったの? そろそろ婿でも見つけないとどちらもヤバイと思うんだよね。

アリア:(きゅぴーん)「どっちも」って何……? あたしのこと……?

ゴルディッシモ:婿か……。やはり同族がよいのかな。

ヴァンダイク:では牛と。

リトナ:リカちゃん、うちのおじーちゃんよ(伝統にんにく卵黄)。

アリア:……いらなーい。

リトナ:──で、どうなのキュア。少しは自分を着飾ってアピールしようという気持ちはないの?

キュア:(しみじみと)ないねぇー。

リトナ:あっそ。…………飽きた。

GM:飽きたらしい(苦笑)。

キュア:じゃあ……渋々着飾って出てこよう。

リトナ:その頃にはみんな忘れてるって。

ゴルディッシモ:いや、『はっぱ隊』(笑う犬シリーズ)の衣装なら。

キュア:それぐらいで。

GM:え、はっぱ隊でいいの!?

キュア:そっちじゃなくて……みんなが忘れた頃に。

ゴルディッシモ:はっぱタイツでもいいぞ。

ヴァンダイク:激しく爆発したね。

リトナ:それは発破タイツ(笑)。

ゴルディッシモ:もはやタイツですらない。

アリア:『発破隊』って……そういう職人集団なんだ……(笑いが止まらない)。おなかいたい〜。
 

 ホントに忘れられてるっぽいキュア様。

 発破隊とモヤシで変なテンションな面々。

 そうこうしてるうちに、やがて宴も終わり……
 

リトナ:(プレイヤーが)そろそろ眠くなってきた……。

アリア:このセッションが終わったら、ちょっと休もうね。

GM:そこらへんで雑魚寝になるけど。

リトナ:オレは寝袋があるから。男と添い寝する主義はない。

ビオ:……『添い寝をする主義』ってのは、もともとあんまりないんじゃねえか?

ゴルディッシモ:『女と添い寝する主義』なんだね。

リトナ:(苦笑して)いや、それはどうなんだろう……。主義というか、それが自然というか……。

ヴァンダイク:主義はなくても主張はあるかもしれんが。

ゴルディッシモ:「あなた、他の男と寝たのね!」という主張。

一同:………………。

ゴルディッシモ:……さ、ゲームの続きをしようか。

ビオ:奇妙な発言だったな(笑)。

GM:えー…………宴、おしまい!

ビオ:収拾のつかなくなった宴会を終わらせる幹事のようだ。

GM:そんな気分かも……。

 夢を見てたんだと思う。

 わずかに口にしたアルコールが見せた、幻だったんだと思う。

 キュアは自分の部屋で。あたしは個室でひとりで。

 深夜。枕もとに立つ人影。わずかな光があたしに落とす影。

 ──ラグランジェだった。ラグランジェ・カイユ・レオヴィール。

 かつて姉が愛した人。かつて姉を愛した人。

 寄り添う彼らは幸せそうだったけれど、どこか悲しげだったのをよく覚えている。

 彼は剣を持っており、その切っ先はあたしの喉元にあった。冷たい刃の感触がすぐ近くにある。
 

 「アリア・ミリアル・エルズミーア」
 

 彼が、あたしの名を呼んだ。あたしの存在を示す音を。けれどその声は、あたしの存在を否定しているようだった。
 

 「僕は知っています……<扉>の先にある<楽園>の姿を」
 

 彼の言葉にあたしは目だけでうなずいた。自分でも驚くほど冷静だった。
 

 「止めようと思ったこともあった。……君を、殺してでも」

 「うん」
 

 今度は声が出た。喉にかすかに鋼の冷たさ。
 

 「今は……。短い間だったけど一緒に旅をして、いろんな君を知った。君のお姉さんのことを思い出したこともあった。……ある、女性のことも」
 

 優しい瞳だった。吸い込まれそうな色。姉が好きだった色。揺れてる。
 

 「たくさんの大切なことを想い出したから…………もう、止めない」
 

 静かに、刃があたしから離れた。そのままラグランジェは剣をしまう。
 

 「何が正しいかは分からない。でも、<扉>の先には答えがあるから。それぞれの答えが。──君らしい答えが」
 

 ちょっと、微笑む。
 

 「信じちゃいますよ」

 「うん……いいよ」
 

 あたしも、笑う。時間の流れを一瞬、超える。幸福の残像。言葉という名の魔法と、それを超える魔法。
 

 「おやすみなさい」
 

 それはさよならの響きを持つ言葉。彼は去り、あたしは瞳を閉じる。
 

 ゆっくり……闇の中へ……



PREVNEXT

MONDF目次

リプレイTOPへ