アリア:昨日は飲み過ぎたかも……。頭イタイよぉ……。
キュア:そんなに飲んでたっけ……?
ゴルディッシモ:モヤシ酒を飲み過ぎたか。でもモヤシ酒は頭は痛くならないはずなのだが。
リトナ:何を根拠に。……モヤシ酒って、モヤシを発酵させたの?
キュア:モヤシに糖分ってほとんど含まれていないんじゃ……。
ゴルディッシモ:えー……というワケで、次の日です。
GM:そう、次の日です。
リトナ:(コロコロ)ん、大丈夫だ。
GM:二日酔いの判定?
リトナ:いや、猫判定(ファンブルを振るとその日は普通の猫としてしか行動できない)の方。
アリア:二日酔い判定した方がいいのー?
GM:飲み過ぎた自覚があるならね。
アリア:実はほとんど飲んでなかったんだけどね。匂いだけでへろへろに。
GM:(素であんだけテンション高かったのか……)
リトナ:へー、お酒弱かったんだ。てっきり酒豪だと。
キュア:うんうん、私もうわばみかザルかと思ってた。
GM:プレイヤーと一緒なんだね(アリアのプレイヤーはお酒に弱い)。(ゴルディッシモを見て)そこ、「シュゴーシュゴー」言わない!
ゴルディッシモ:(ダースベーダーのように)シュゴー……!
ヴィエイユ王:(開いたままの扉をゴンとたたいて)「うぉーい、邪魔するぜぇ」
アリア:あ、キュアパパだ。
ヴィエイユ王:「どうやら……分かったみたいだぞ」(たたまれた紙をひらひらさせる)
ボルサオの居場所が……判明したのだ。
ビオ:「よし、いくぜ!」
アリア:「待って待ってビオ。……ボルサオはいったいどこに?」
ヴィエイユ王:「この城より更に西へいったところだ」
リトナ:「まだ西にいくのかぁ……」
ヴィエイユ王:「西にある大樹──<太極樹(たいきょくじゅ)>。ヤツはそこにいる」
キュア:「太極樹……」
ビオ:「舌を噛みそうな名前だな。……とにかく、でっけえ木のとこにいるんだな?」
アリア:「王様王様」
ヴィエイユ王:「ン?」
アリア:「ひょっとしたらちょっとだけ騒ぎを起こすかもしれませんが……そのときはゴメンネ?」
ヴィエイユ王:(一瞬きょとんとした後)「がっはっはっはっは、いいねえいいねえ。構わねえからドーンと暴れてきな」
リトナ:「言われるまでもなく大騒ぎになると思いますが」
ヴィエイユ王:「多少のことでは驚かねえよ。……別のことで、すでに大変なことになってるみたいだからな」
アリア:「大変なこと……?」
そこへ、兵士が走り込んできた。
兵士:「ご報告いたします! やはり、先程の報告に間違いはありませんでした! 人々が……続々とこの国に……!」
アリア:「人が集まってきてるって……どういうこと……?」
ヴァンダイク:皆で盆地に集まって、一斉にジャンプするのではないか?
ビオ:崩れるだろ(笑)。
リトナ:「どこの人たちが、何が目的で集まってきてるの?」
ヴィエイユ王:「詳しいことは何も分からん。<帝国><メネトゥ><ドゥリクス>……国は様々、兵士だけでなく女子供まで集まってきていると聞くが」
アリア:「いつからなんですか?」
ヴィエイユ王:「それも分からんが……歩いてきたとすれば、一日二日じゃねえだろうな」
ヴァンダイク:実は我々のすぐ後ろにぞろぞろといたのではないか?(笑)
リトナ:振り返ればヤツがいっぱいいる、と。
ヴァンダイク:「国境はすんなりと通してもらえたのかね?」
アリア:「えー、それじゃいぢわるされたのってあたしたちだけ?」
ヴィエイユ王:「もちろん止めようとしたのだが……無理矢理、押し切られたらしい。今、国境は大変なことになってるだろうぜ」
キュア:「ちょっと普通じゃないわね……。……誰かに操られてる……?」
アリア:それって東の国境よね? 西からは誰も来ないの?
GM:西の方は──<太極樹>の更に西は、険しい山脈なので。その先に道らしい道はない。
キュア:世界の果てなのね。
ヴァンダイク:その樹に登ってジャンプすれば越えられるのではないか?
GM:無理無理。
ビオ:「んなこたぁどーでもいい。早くボルサオのとこいこうぜ!」
アリア:「そうだね……。──それじゃ王様、がんばってくるねー」
GM:軽いなぁ……。
アリア:GOGOぉー!
一同:GOGOぉー!
アリア:再び沸き上がってきたこの怒りを、ボルサオにぶつけるぞぉー!
ヴィエイユ王:(突然)「キュアー!」
キュア:「はい」
ヴィエイユ王:「たまにはずばーっと男を見せてこい、男を!」
キュア:「私、女です」
ヴィエイユ王:「女を見せてこい女を! ──女には、やらなきゃならない時があるんだぜ?」(親指をグッと立てる)
キュア:「……それ、お兄様にも言ってませんでした?」
ヴィエイユ王:「アイツには男版で言ったさ」
キュア:「つまり、男にも女にもやらなきゃならない時があるんですね?」
ヴィエイユ王:「おぅよ。たまには気合を見せてみろ、気合を。そこの、アリアの嬢ちゃんみたくよぉ」
アリア:「え、なになに?」
ヴィエイユ王:「今度、うちの子にならねーか?」
アリア:「ごめん、勘弁して(笑)」
ゴルディッシモ:今度、『うちの子にかぎって』に出てみないか?
アリア:『うちの子にかぎって』って何?
ヴァンダイク:ドラマか何かではなかったか? 新聞の誤字で『うちの子にぎって』になってたことがあるらしいが。
ビオ:そいつは愉快だな。
ラグランジェ:(剣を携え)「では……出発しましょうか」
ビオ:「おうよ。俺は早くボルサオを殴りてぇんだよ!」
ゴルディッシモ:「そのボルサオとかいう人に……モヤシを食わせてやりたいものだ」
アリア:「ボルサオに、会いにいこう」
これはきっと怒りだ。そう思う。
許せないと思ったから……あたしはいくのだ。
何が正しいのかなんて今は分からない。何が間違っているのかも。
でも……いこう、西へ。ボルサオのところへ。その先にある<真なるアルカディア>へ。
<太極樹>は、巨大な樹だ。大きいだけで、他にそれといった特徴はない。異常なまでに、大きい──それだけだ。
四方にのびた巨大な枝はねじくれ、乾いた樹皮は白くひび割れている。
GM:巨大な木の下に、ボルサオが立っている。祈りを捧げるように<太極樹>を見上げていたのだけど、君たちが近づいてきたのに気づくと、ゆっくりと振り返るよ。
アリア:「見つけたぞ、ボルサオぉー!」
ボルサオ:(にっこり微笑んで)「一番乗りは、アナタたちでしたか」
アリア:「一番乗りって、何のことよ……」
ゴルディッシモ:一番ノリノリの略です。
アリア:賢者様ぁ……(脱力)。
リトナ:今のはカラスの賢者様が言ったワケではないでしょ……? つーか、賢者様って何者?
アリア:(気を取り直して)「一番乗りだか何ノリだか知らないけどね──」
ビオ:「問答無用だぁー!」
アリア:「そう、そういうこと!」
ボルサオ:「やれやれ、野蛮な人たちだ」
アリア:「……アンタほどじゃないと思う」
ボルサオ:「ほう……それは心外ですね」
ビオ:ボルサオってどこにいるんだ?
GM:木の根っこのあたりかな。
リトナ:木にしがみついてるワケじゃないんだね。
ビオ:バカと何とかは高いところが好きだからな。
アリア:……それはビオなんじゃ。
ゴルディッシモ:バカとハサミは何とかが好き。
キュア:間違ってる間違ってる……。
ヴァンダイク:その木──<太極樹>とやらはどのくらいの大きさなのかね? 屋久杉ぐらいかね?
GM:縄文杉より……まだまだ大きいだろうね。
ゴルディッシモ:半径100万メートル。
GM:それはまた……中途半端に大きいような。
リトナ:とにかく、オレが言いたいのは一言だけ。
キュア:なに?
リトナ:あの木、登ってみたいな……。
キュア:そっちか。
アリア:(再び気を取り直して)「で……こんなところで何をやってるのよッ」
ボルサオ:「待っているのですよ──人々が集うのを」
アリア:「集う? 集まって、何になるっていうのッ?」
ボルサオ:(やれやれ、と首を振って)「では……お話ししましょうか──分かり合うために」
アリア:「いいわね。望むところだわ」