ACT16.0[贖罪]03

GM:では次の日であります。

アリア:昨日は飲み過ぎたかも……。頭イタイよぉ……。

キュア:そんなに飲んでたっけ……?

ゴルディッシモ:モヤシ酒を飲み過ぎたか。でもモヤシ酒は頭は痛くならないはずなのだが。

リトナ:何を根拠に。……モヤシ酒って、モヤシを発酵させたの?

キュア:モヤシに糖分ってほとんど含まれていないんじゃ……。

ゴルディッシモ:えー……というワケで、次の日です。

GM:そう、次の日です。

リトナ:(コロコロ)ん、大丈夫だ。

GM:二日酔いの判定?

リトナ:いや、猫判定(ファンブルを振るとその日は普通の猫としてしか行動できない)の方。

アリア:二日酔い判定した方がいいのー?

GM:飲み過ぎた自覚があるならね。

アリア:実はほとんど飲んでなかったんだけどね。匂いだけでへろへろに。

GM:(素であんだけテンション高かったのか……)

リトナ:へー、お酒弱かったんだ。てっきり酒豪だと。

キュア:うんうん、私もうわばみかザルかと思ってた。

GM:プレイヤーと一緒なんだね(アリアのプレイヤーはお酒に弱い)。(ゴルディッシモを見て)そこ、「シュゴーシュゴー」言わない!

ゴルディッシモ:(ダースベーダーのように)シュゴー……!

ヴィエイユ王:(開いたままの扉をゴンとたたいて)「うぉーい、邪魔するぜぇ」

アリア:あ、キュアパパだ。

ヴィエイユ王:「どうやら……分かったみたいだぞ」(たたまれた紙をひらひらさせる)
 

 ボルサオの居場所が……判明したのだ。
 

ビオ:「よし、いくぜ!」

アリア:「待って待ってビオ。……ボルサオはいったいどこに?」

ヴィエイユ王:「この城より更に西へいったところだ」

リトナ:「まだ西にいくのかぁ……」

ヴィエイユ王:「西にある大樹──<太極樹(たいきょくじゅ)。ヤツはそこにいる」

キュア:「太極樹……」

ビオ:「舌を噛みそうな名前だな。……とにかく、でっけえ木のとこにいるんだな?」

アリア:「王様王様」

ヴィエイユ王:「ン?」

アリア:「ひょっとしたらちょっとだけ騒ぎを起こすかもしれませんが……そのときはゴメンネ?」

ヴィエイユ王:(一瞬きょとんとした後)「がっはっはっはっは、いいねえいいねえ。構わねえからドーンと暴れてきな」

リトナ:「言われるまでもなく大騒ぎになると思いますが」

ヴィエイユ王:「多少のことでは驚かねえよ。……別のことで、すでに大変なことになってるみたいだからな」

アリア:「大変なこと……?」
 

 そこへ、兵士が走り込んできた。
 

兵士:「ご報告いたします! やはり、先程の報告に間違いはありませんでした! 人々が……続々とこの国に……!」

アリア:「人が集まってきてるって……どういうこと……?」

ヴァンダイク:皆で盆地に集まって、一斉にジャンプするのではないか?

ビオ:崩れるだろ(笑)。

リトナ:「どこの人たちが、何が目的で集まってきてるの?」

ヴィエイユ王:「詳しいことは何も分からん。<帝国><メネトゥ><ドゥリクス>……国は様々、兵士だけでなく女子供まで集まってきていると聞くが」

アリア:「いつからなんですか?」

ヴィエイユ王:「それも分からんが……歩いてきたとすれば、一日二日じゃねえだろうな」

ヴァンダイク:実は我々のすぐ後ろにぞろぞろといたのではないか?(笑)

リトナ:振り返ればヤツがいっぱいいる、と。

ヴァンダイク:「国境はすんなりと通してもらえたのかね?」

アリア:「えー、それじゃいぢわるされたのってあたしたちだけ?」

ヴィエイユ王:「もちろん止めようとしたのだが……無理矢理、押し切られたらしい。今、国境は大変なことになってるだろうぜ」

キュア:「ちょっと普通じゃないわね……。……誰かに操られてる……?」

アリア:それって東の国境よね? 西からは誰も来ないの?

GM:西の方は──<太極樹>の更に西は、険しい山脈なので。その先に道らしい道はない。

キュア:世界の果てなのね。

ヴァンダイク:その樹に登ってジャンプすれば越えられるのではないか?

GM:無理無理。

ビオ:「んなこたぁどーでもいい。早くボルサオのとこいこうぜ!」

アリア:「そうだね……。──それじゃ王様、がんばってくるねー」

GM:軽いなぁ……。

アリア:GOGOぉー!

一同:GOGOぉー!

アリア:再び沸き上がってきたこの怒りを、ボルサオにぶつけるぞぉー!

ヴィエイユ王:(突然)「キュアー!」

キュア:「はい」

ヴィエイユ王:「たまにはずばーっと男を見せてこい、男を!」

キュア:「私、女です」

ヴィエイユ王:「女を見せてこい女を! ──女には、やらなきゃならない時があるんだぜ?」(親指をグッと立てる)

キュア:「……それ、お兄様にも言ってませんでした?」

ヴィエイユ王:「アイツには男版で言ったさ」

キュア:「つまり、男にも女にもやらなきゃならない時があるんですね?」

ヴィエイユ王:「おぅよ。たまには気合を見せてみろ、気合を。そこの、アリアの嬢ちゃんみたくよぉ」

アリア:「え、なになに?」

ヴィエイユ王:「今度、うちの子にならねーか?」

アリア:「ごめん、勘弁して(笑)」

ゴルディッシモ:今度、『うちの子にかぎって』に出てみないか?

アリア:『うちの子にかぎって』って何?

ヴァンダイク:ドラマか何かではなかったか? 新聞の誤字で『うちの子にぎって』になってたことがあるらしいが。

ビオ:そいつは愉快だな。

ラグランジェ:(剣を携え)「では……出発しましょうか」

ビオ:「おうよ。俺は早くボルサオを殴りてぇんだよ!」

ゴルディッシモ:「そのボルサオとかいう人に……モヤシを食わせてやりたいものだ」

アリア:「ボルサオに、会いにいこう」
 

 これはきっと怒りだ。そう思う。

 許せないと思ったから……あたしはいくのだ。

 何が正しいのかなんて今は分からない。何が間違っているのかも。

 でも……いこう、西へ。ボルサオのところへ。その先にある<真なるアルカディア>へ。

 <太極樹>は、巨大な樹だ。大きいだけで、他にそれといった特徴はない。異常なまでに、大きい──それだけだ。

 四方にのびた巨大な枝はねじくれ、乾いた樹皮は白くひび割れている。
 

GM:巨大な木の下に、ボルサオが立っている。祈りを捧げるように<太極樹>を見上げていたのだけど、君たちが近づいてきたのに気づくと、ゆっくりと振り返るよ。

アリア:「見つけたぞ、ボルサオぉー!」

ボルサオ:(にっこり微笑んで)「一番乗りは、アナタたちでしたか」

アリア:「一番乗りって、何のことよ……」

ゴルディッシモ:一番ノリノリの略です。

アリア:賢者様ぁ……(脱力)。

リトナ:今のはカラスの賢者様が言ったワケではないでしょ……? つーか、賢者様って何者?

アリア:(気を取り直して)「一番乗りだか何ノリだか知らないけどね──」

ビオ:「問答無用だぁー!」

アリア:「そう、そういうこと!」

ボルサオ:「やれやれ、野蛮な人たちだ」

アリア:「……アンタほどじゃないと思う」

ボルサオ:「ほう……それは心外ですね」

ビオ:ボルサオってどこにいるんだ?

GM:木の根っこのあたりかな。

リトナ:木にしがみついてるワケじゃないんだね。

ビオ:バカと何とかは高いところが好きだからな。

アリア:……それはビオなんじゃ。

ゴルディッシモ:バカとハサミは何とかが好き。

キュア:間違ってる間違ってる……。

ヴァンダイク:その木──<太極樹>とやらはどのくらいの大きさなのかね? 屋久杉ぐらいかね?

GM:縄文杉より……まだまだ大きいだろうね。

ゴルディッシモ:半径100万メートル。

GM:それはまた……中途半端に大きいような。

リトナ:とにかく、オレが言いたいのは一言だけ。

キュア:なに?

リトナ:あの木、登ってみたいな……。

キュア:そっちか。

アリア:(再び気を取り直して)「で……こんなところで何をやってるのよッ」

ボルサオ:「待っているのですよ──人々が集うのを」

アリア:「集う? 集まって、何になるっていうのッ?」

ボルサオ:(やれやれ、と首を振って)「では……お話ししましょうか──分かり合うために」

アリア:「いいわね。望むところだわ」



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