ACT14.0[供犠]09


 ビルディングの谷間にある、小さな社だった。

 

リトナ:「さすがに灯明とか油とかないよな……」
 

 立ち止まる。目を閉じる。想い出の中に、しばし身を委ねる。
 

リトナ:────……
 

 かつて飼い主だった人の名を、呼んだ。
 

リトナ:「………………」
 

 リトナはないた。鳴いて、泣いた。

アリア:「あ、帰ってきた。──なに、そのお皿」

リトナ:「ビオさんにおみやげ。──ありがとう、連れてきてくれて。これが見れただけで、ホントによかったと思ってる」

アリア:「あたしは、何もしてないよ。……でも、よかったね」

カラスィータ:『さて、もう一カ所案内してやろう。今後の旅の、参考になるはずだ』
 

 <賢者>に案内された場所には、石碑が立っていた。比較的新しいその石碑には文字が彫られている。
 

アリア:「これって……」
 

 『それは、はるか西の果てめざす旅人の前にあるだろう。
  旅立たねば、たどりつけぬ楽園。
  それはあるいは近く、あるいは遠い場所だろう。
  西の最果てのむこう』
 

アリア:「古文書にあった一節だ。──あたしが、<真なるアルカディア>を探そうと思ったキッカケ……」
 

 『それは、はるか西の果てめざす旅人の前にあるだろう。
  旅立たねば、たどりつけぬ楽園。
  それはあるいは近く、あるいは遠い場所だろう。
  西の最果てのむこう。
  それは<壁>を越えた旅人の、休息の地となるだろう。
  忘却は永遠の休息。
  それは螺旋(以下削れている)
 

アリア:「続きがあったんだ。でも、これって……」

リトナ:「<楽園>は……ホントにあるのかな……? 旅を続け、疲れ果て、眠りについたその先にあるなら、<真なるアルカディア>って……」
 

 不吉な印象を覚えたことを……アリアは黙っていた。
 

カラスィータ:『<ヴリトラ>を知ってるな? <ヴリトラ>は<混沌>の力。<秩序>と対を成す星の力だ』

キュア:「そうらしいわね」

カラスィータ:『<秩序>と<混沌>は星を保つ力。そのどちらが欠けても、星は死ぬ』

アリア:「………………」

カラスィータ:『その力の流れを守る──それが<星守(ほしもり)の役目。我らの役目であり、<黒巫女>の役目。……だが、<秩序>の力無きこの星で、我らに出来ることは──もう、ない』

アリア:「そんな……」

カラスィータ:『この星は……死にゆく星なのだ』
 

 『忘却は永遠の休息。それは螺旋──』

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「人々が……続々とこの国に……!」
「そんなことのために……?」
「逆に、穢れることによって──」
「なんだこりゃ……。心臓……?」
「赤い──雨──」
「ああ、私たちはこんなにも愚かです!」
「この先に、<楽園>があるんだ……」



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