ACT12.0[供犠]05

ビオ:「……何だよこりゃ……」
 

 ずりゅ……ずりゅ……ずりゅ……ぬちゃん……
 

GM:天井から床まで届く巨大なシリンダー状の機械。石臼のように回転する中央部ですりつぶされているのは……『メーヴェ(魔族)』の死体だ。

アリア:………………ッッ!

キュア:「………………」

リトナ:「『メーヴェ』……? じゃあさっきの赤い液体は『ラーヴ』じゃなかったってこと?」

ヴァンダイク:「更に上の階があるのだろう」

GM:そのようだね。地下1階・1階・2階と、巨大シリンダーが貫いてる構造のようだ。

リトナ:「んで、さ……これは何のためにすりつぶしてるのかな?」

ヴァンダイク:「さっき食べたではないか」

リトナ:「ああ、さっき食べたヤツか……納得」

アリア:「やっぱり……そうだったんだ……」
 

 これは……この巨大なシリンダーは、『食料』生産装置なんだ……。
 
 

 「忘れないでほしい……この村の姿を。この光景を、おれのことを……忘れないでほしい」

 「うん……忘れないよ」



アリア:あのとき、忘れないって約束したけど……ホントに、ホントに忘れられなくなっちゃった……。
 

 『ピース・オブ・ラック』──幸運のかけら。

 最後の幸運を……願いを。あの少年は、最期に何を願ったのだろう……?
 

アリア:言葉が出ないよ……。……さっき口の中で『ピース・オブ・ラック』噛んだとき……涙が出そうになったもん……。
 

 黒炎は、このことを知ってたんだろうか。

 知ってて……あたしたちにこれを見せるために……自分たちが何を口にしてきたかを、強く、痛く、激しく、心に刻ませるために……ここへ……。

 そう……。

 これが、この星の『現実』なんだ。

 いとおしい、死にゆくこの星の、姿なんだ……。
 

 言葉にできない……いろんな想いが、込み上げてきた。

 頭の中はまっしろになっていくのに。

 声を上げて泣きたくて。泣きたいのに……
 

 ──不思議と、涙は出なかった。

リトナ:………………。

ビオ:機械ぶっ壊して……上の階へいく。

ヴァンダイク:食料の生産をストップさせるというのだな?

ビオ:当然だ。

リトナ:何を食べたのか納得はしたけど……決して気分がいいわけじゃないから。……毛玉吐いとこうかな。

アリア:……目を、そらす。

キュア:私も。……正視なんてできない。

ビオ:「……こんなものッ!」
 

 ずごぎゃッッ……!!!
 

 ビオの渾身の一撃で……『機械』は、その回転を止めた。
 

ビオ:「いくぞ……上」

GM:上の階に着いたよ。先程と同じようなシリンダーがある部屋。

アリア:すっごく見たくない。……もう、見れない。

キュア:えぐい、よね。

リトナ:見たくなくても……これが『現実』だから見ないわけにはいかない。

GM:下の階のシリンダーが『メーヴェ』用で、こっちが『オゥリン』用。『メーヴェ』の肉と『オゥリン』の肉、そして『ラーヴ』を混ぜて、食料──非常食として配ってたヤツ──を作っていたようだ、ね。

キュア:……もうカ〇リーメイト食べられない……。

アリア:「こんなの……ひどい……」

キュア:「うん……ヒドイな、これは」

ヴァンダイク:そうだろうか? <帝国>も見習わねばと思ったりするのだが。

ビオ:おいおい。

ヴァンダイク:ワシ、裏設定として<帝国>の食料を管理していた、というのがあるんだが……実は隣国がこういうのをやってるということを、前から知ってたりはしないのだろうか。

GM:知ってたかもね。

ヴァンダイク:効率がいいから我が国でもやろうと提案して却下されてた、という過去が(笑)。

GM:んで──『機械』の前には人影が3つ。2つは魔族の男たち。たぶんここのスタッフだろうと思われる。そして……



 <黒巫女>の少女が、そこにいた。
 

ビオ:「沙夜……」

GM:そう、ボルサオの館で行方不明となってた沙夜がいる。

ヴァンダイク:……実は悪い人だった、と。

ビオ:ちげえだろ。

沙夜:「…………ビオ…………」

ビオ:「……何やってんだよ」

沙夜:「来ちゃった……んだね……」

ビオ:何やってんだって聞いてんだよォ!!!
 

 飛びかかり──ビオは、ハルバートの刃を沙夜の喉元に突きつけた。
 

ヴァンダイク:……これから彼女もそこに放り込まれようとしているのではないのか?

ビオ:だから、ちゃんと聞いた。「……沙夜、ここで何やってんだ?」

沙夜:「……逃げて」

ビオ:「何やってんだと聞いている!」

沙夜:「それは、その……今からあたしが……『食べ物』……になる、っていうか……そういうこと」

ヴァンダイク:なるほど。彼女は自ら『ミノタウロスの皿』に乗ったのだな。これは止めるワケにはいかん。

アリア:「どうして……どうしてあなたがそんなことしなくちゃいけないの……?」

沙夜:「あたしは……<黒巫女>だから。<黒巫女>の……『お肉』は特別らしくって、それを食べたいってヤツがいて、そうでないと村のみんなが……だからあたし……」

リトナ:「なるほど……そういうことか」

沙夜:「ビオには悪いことしたね。だましたりしたくなかったんだけど……」

ビオ:だます?

GM:ボルサオの屋敷で、沙夜がいなくなったときのこと。皆が外に出た後、ボルサオの部下に頼んでこっそり部屋から出してもらったのだね。ここに来ることを条件に。

キュア:なるほど。

沙夜:「ねえビオ……お願いが、あるんだけど」

ビオ:「何だよ。『助けろ』って言うんなら、言われるまでもなくそのつもりだ」

沙夜:(首を横に振って)「ううん、そうじゃないよ。あたしはこれから……そう、『供物』になるけど、そうしたら……そうしたらビオ、全部はダメだけど、ひとくちでいいから──あたしを食べてね。ビオに食べてもらえるなら……そうなる甲斐もあるかな、って。……ねえ」

ビオ:「………………」

沙夜:「……おねがい……」

一同:「………………」

リトナ:「──ヴァンダイクさんに聞きたいんだけど……これだけのモノを揃えるのって、お金かかる?」

ヴァンダイク:「ふむ、大変なモノだろうな」

リトナ:「1年2年ぐらいじゃ、また揃えることはムリだね。……じゃあやることはひとつだ」

ビオ:「だな。──沙夜、お前の話は、難しくてよく分かんねえ」

沙夜:「え?」

ビオ:沙夜をみんなの方に投げて(笑)、職員であるらしい魔族2人に攻撃。

沙夜:「やめて! ビオ、待って!」

ビオ:……待たねえよ。こっちはとっくにキレてんだ
 

 刃が空を切る音。拳が空を切る音。ひとりの首が飛び──ひとりの頭が砕ける。一瞬の出来事だった。
 

ビオ:「………………」

沙夜:「この……バカトカゲッ!」

ビオ:「バカだぁ……? ──ああ、どうせ俺はバカだよ!」
 

 叫び、猛り、ハルバートを振るう。火花が散り、シリンダーがその回転を止める。
 

沙夜:「あたしは取引したの! ここには、まだまだいっぱい兵士とかゴーレムとか強いのがいるんだ! 侵入したこと、バレてるし! だからあたしは、みんなに攻撃しないように頼んでたのに! 取引で、そういう約束で、あたしがおとなしくその『機械』に入るから、だから!」

ビオ:「うるせえ!」

沙夜:「殺しちゃったら……ダメだよぉ。……殺される。ここから、逃げられないよぉ……」

ビオ:「逃げるさ。選択肢なんてねーだろ?」

リトナ:「だね。やっちゃったもんは仕方ないって」

沙夜:「でも、それじゃ、あたし、村のみんなが……」

ビオ:「うるせえ! ……いくぞ」
 

 沙夜を小脇に抱え……ビオは──レプス04小隊は走りだした。

アリア:「壁でも窓でもいいから、どこか外へ出られるようにして! そしたらおっきな『鳥』を召喚するから」

ビオ:「うぉぉっっしゃァ!」

アリア:「あたしはぁ……あたしは、ボルサオを許せない!」

ビオ:「おうよ、このまま殴り込みだ!」

ヴァンダイク:食料生産の秘密を聞き出そうと?

ビオ:ちげえよッッ!

GM:そうしてる間に、階段からぞろぞろと警備用ゴーレムたちが上ってくるよ。

リトナ:ビオさん、今こそ歌うときだ!

ビオ:歌わねえけど、炎は吐くぞ。

GM:んー、アリ、かな。ビオの『潜在能力』発動だね。

ビオ:それから、この機械は徹底的に破壊するぞ。

リトナ:だね。

アリア&キュア:(うんうん、とうなずく)

ヴァンダイク:……勿体ない……。

ビオ:う、おおおおおおお……!!!

 ドンッ! ゴガァ! ボゥン!

 ズズズズ……ドゴオオォォォ……!!!
 

 荒野の<プラント>に、一筋、二筋、黒煙が立ちのぼる。

 連鎖する爆発。

 やがて建物の壁が爆炎と共に吹き飛び──巨大な『鳥』が、天空へ飛翔した。

 キラキラと、炎の残滓をまといながら。

.be.Continue...
「ゴルディッシモ……?」
「つーか、モヤシ、って……」
「ここが、キュアの故郷なんだね」
「また角が大きくなってる」
「地下に、巨大な空洞があるんだ」
「懐かしいな、ここ。ちょっと感動した」
「かつてこの星は──」



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