ずりゅ……ずりゅ……ずりゅ……ぬちゃん……
GM:天井から床まで届く巨大なシリンダー状の機械。石臼のように回転する中央部ですりつぶされているのは……『メーヴェ(魔族)』の死体だ。
アリア:「………………ッッ!」
キュア:「………………」
リトナ:「『メーヴェ』……? じゃあさっきの赤い液体は『ラーヴ』じゃなかったってこと?」
ヴァンダイク:「更に上の階があるのだろう」
GM:そのようだね。地下1階・1階・2階と、巨大シリンダーが貫いてる構造のようだ。
リトナ:「んで、さ……これは何のためにすりつぶしてるのかな?」
ヴァンダイク:「さっき食べたではないか」
リトナ:「ああ、さっき食べたヤツか……納得」
アリア:「やっぱり……そうだったんだ……」
これは……この巨大なシリンダーは、『食料』生産装置なんだ……。
「忘れないでほしい……この村の姿を。この光景を、おれのことを……忘れないでほしい」
「うん……忘れないよ」
アリア:あのとき、忘れないって約束したけど……ホントに、ホントに忘れられなくなっちゃった……。
『ピース・オブ・ラック』──幸運のかけら。
最後の幸運を……願いを。あの少年は、最期に何を願ったのだろう……?
アリア:言葉が出ないよ……。……さっき口の中で『ピース・オブ・ラック』噛んだとき……涙が出そうになったもん……。
黒炎は、このことを知ってたんだろうか。
知ってて……あたしたちにこれを見せるために……自分たちが何を口にしてきたかを、強く、痛く、激しく、心に刻ませるために……ここへ……。
そう……。
これが、この星の『現実』なんだ。
いとおしい、死にゆくこの星の、姿なんだ……。
言葉にできない……いろんな想いが、込み上げてきた。
頭の中はまっしろになっていくのに。
声を上げて泣きたくて。泣きたいのに……
──不思議と、涙は出なかった。
ビオ:機械ぶっ壊して……上の階へいく。
ヴァンダイク:食料の生産をストップさせるというのだな?
ビオ:当然だ。
リトナ:何を食べたのか納得はしたけど……決して気分がいいわけじゃないから。……毛玉吐いとこうかな。
アリア:……目を、そらす。
キュア:私も。……正視なんてできない。
ビオ:「……こんなものッ!」
ずごぎゃッッ……!!!
ビオの渾身の一撃で……『機械』は、その回転を止めた。
ビオ:「いくぞ……上」
アリア:すっごく見たくない。……もう、見れない。
キュア:えぐい、よね。
リトナ:見たくなくても……これが『現実』だから見ないわけにはいかない。
GM:下の階のシリンダーが『メーヴェ』用で、こっちが『オゥリン』用。『メーヴェ』の肉と『オゥリン』の肉、そして『ラーヴ』を混ぜて、食料──非常食として配ってたヤツ──を作っていたようだ、ね。
キュア:……もうカ〇リーメイト食べられない……。
アリア:「こんなの……ひどい……」
キュア:「うん……ヒドイな、これは」
ヴァンダイク:そうだろうか? <帝国>も見習わねばと思ったりするのだが。
ビオ:おいおい。
ヴァンダイク:ワシ、裏設定として<帝国>の食料を管理していた、というのがあるんだが……実は隣国がこういうのをやってるということを、前から知ってたりはしないのだろうか。
GM:知ってたかもね。
ヴァンダイク:効率がいいから我が国でもやろうと提案して却下されてた、という過去が(笑)。
GM:んで──『機械』の前には人影が3つ。2つは魔族の男たち。たぶんここのスタッフだろうと思われる。そして……
<黒巫女>の少女が、そこにいた。
ビオ:「沙夜……」
GM:そう、ボルサオの館で行方不明となってた沙夜がいる。
ヴァンダイク:……実は悪い人だった、と。
ビオ:ちげえだろ。
沙夜:「…………ビオ…………」
ビオ:「……何やってんだよ」
沙夜:「来ちゃった……んだね……」
ビオ:「何やってんだって聞いてんだよォ!!!」
飛びかかり──ビオは、ハルバートの刃を沙夜の喉元に突きつけた。
ヴァンダイク:……これから彼女もそこに放り込まれようとしているのではないのか?
ビオ:だから、ちゃんと聞いた。「……沙夜、ここで何やってんだ?」
沙夜:「……逃げて」
ビオ:「何やってんだと聞いている!」
沙夜:「それは、その……今からあたしが……『食べ物』……になる、っていうか……そういうこと」
ヴァンダイク:なるほど。彼女は自ら『ミノタウロスの皿』に乗ったのだな。これは止めるワケにはいかん。
アリア:「どうして……どうしてあなたがそんなことしなくちゃいけないの……?」
沙夜:「あたしは……<黒巫女>だから。<黒巫女>の……『お肉』は特別らしくって、それを食べたいってヤツがいて、そうでないと村のみんなが……だからあたし……」
リトナ:「なるほど……そういうことか」
沙夜:「ビオには悪いことしたね。だましたりしたくなかったんだけど……」
ビオ:だます?
GM:ボルサオの屋敷で、沙夜がいなくなったときのこと。皆が外に出た後、ボルサオの部下に頼んでこっそり部屋から出してもらったのだね。ここに来ることを条件に。
キュア:なるほど。
沙夜:「ねえビオ……お願いが、あるんだけど」
ビオ:「何だよ。『助けろ』って言うんなら、言われるまでもなくそのつもりだ」
沙夜:(首を横に振って)「ううん、そうじゃないよ。あたしはこれから……そう、『供物』になるけど、そうしたら……そうしたらビオ、全部はダメだけど、ひとくちでいいから──あたしを食べてね。ビオに食べてもらえるなら……そうなる甲斐もあるかな、って。……ねえ」
ビオ:「………………」
沙夜:「……おねがい……」
一同:「………………」
リトナ:「──ヴァンダイクさんに聞きたいんだけど……これだけのモノを揃えるのって、お金かかる?」
ヴァンダイク:「ふむ、大変なモノだろうな」
リトナ:「1年2年ぐらいじゃ、また揃えることはムリだね。……じゃあやることはひとつだ」
ビオ:「だな。──沙夜、お前の話は、難しくてよく分かんねえ」
沙夜:「え?」
ビオ:沙夜をみんなの方に投げて(笑)、職員であるらしい魔族2人に攻撃。
沙夜:「やめて! ビオ、待って!」
ビオ:「……待たねえよ。こっちはとっくにキレてんだ」
刃が空を切る音。拳が空を切る音。ひとりの首が飛び──ひとりの頭が砕ける。一瞬の出来事だった。
ビオ:「………………」
沙夜:「この……バカトカゲッ!」
ビオ:「バカだぁ……? ──ああ、どうせ俺はバカだよ!」
叫び、猛り、ハルバートを振るう。火花が散り、シリンダーがその回転を止める。
沙夜:「あたしは取引したの! ここには、まだまだいっぱい兵士とかゴーレムとか強いのがいるんだ! 侵入したこと、バレてるし! だからあたしは、みんなに攻撃しないように頼んでたのに! 取引で、そういう約束で、あたしがおとなしくその『機械』に入るから、だから!」
ビオ:「うるせえ!」
沙夜:「殺しちゃったら……ダメだよぉ。……殺される。ここから、逃げられないよぉ……」
ビオ:「逃げるさ。選択肢なんてねーだろ?」
リトナ:「だね。やっちゃったもんは仕方ないって」
沙夜:「でも、それじゃ、あたし、村のみんなが……」
ビオ:「うるせえ! ……いくぞ」
沙夜を小脇に抱え……ビオは──レプス04小隊は走りだした。
アリア:「壁でも窓でもいいから、どこか外へ出られるようにして! そしたらおっきな『鳥』を召喚するから」
ビオ:「うぉぉっっしゃァ!」
アリア:「あたしはぁ……あたしは、ボルサオを許せない!」
ビオ:「おうよ、このまま殴り込みだ!」
ヴァンダイク:食料生産の秘密を聞き出そうと?
ビオ:ちげえよッッ!
GM:そうしてる間に、階段からぞろぞろと警備用ゴーレムたちが上ってくるよ。
リトナ:ビオさん、今こそ歌うときだ!
ビオ:歌わねえけど、炎は吐くぞ。
GM:んー、アリ、かな。ビオの『潜在能力』発動だね。
ビオ:それから、この機械は徹底的に破壊するぞ。
リトナ:だね。
アリア&キュア:(うんうん、とうなずく)
ヴァンダイク:……勿体ない……。
ビオ:「う、おおおおおおお……!!!」
ドンッ! ゴガァ! ボゥン!
ズズズズ……ドゴオオォォォ……!!!
荒野の<プラント>に、一筋、二筋、黒煙が立ちのぼる。
連鎖する爆発。
やがて建物の壁が爆炎と共に吹き飛び──巨大な『鳥』が、天空へ飛翔した。
キラキラと、炎の残滓をまといながら。
・
「ゴルディッシモ……?」
「つーか、モヤシ、って……」 「ここが、キュアの故郷なんだね」 「また角が大きくなってる」 「地下に、巨大な空洞があるんだ」 「懐かしいな、ここ。ちょっと感動した」 「かつてこの星は──」 |