ビーノ:「……止めないのかよ。仲間なんだろ? 止めないのかよ……?」
リトナ:「何を?」
ビーノ:「略奪に決まってるだろ! おれの<谷>のみんなが、汚されてるんだぞ!」
リトナ:「仕方ないだろう。こうしないと、オレたちは生きていけない」
ビーノ:「……そうかよ……」
アリア:「だから、強くならないといけないんだぞ」
ビーノ:「こんな強さ、おれはいらない……」
リトナ:「生きている者なら尊重する。でも……死体はモノだ。死体をどうしようが、オレは構わない」
ビーノ:「………………」
リトナ:「死体そのものに何かするなら……オレも許さない。切り刻むとか、切って干すとか、そういうことをするなら、オレも許さない」
アリア:「それは冒涜だからね」
リトナ:「だけど死体が身につけているモノは……仕方ない。オレたちだって、同じ集団だ」
ビーノ:「死体引きずりだして、放ったままかよ!」
リトナ:「ちゃんと埋葬するさ」
ビーノ:「やってねえじゃねーか、アイツらは」
リトナ:「なら、やらせるだけの話だ。……ビオさん」
ビオ:「俺?」
リトナ:「オレじゃムリだよ、埋葬は」
ビオ:(死体を埋める穴を掘りつつ)「お前らも手伝えよ」
GM:彼ら──レプス17小隊は聞く耳を持たない。
ビオ:「手伝えって」
レプス隊の傭兵1:「うるせえよ。こっちは忙しいんだ」
ビオ:「そんなのは後からでもできるだろうが」
レプス隊の傭兵3:「おーい。こっちに食い物があったぞー」
ビオ:ナニぃ!(笑)
リトナ:カス番なら仕方ないな(レプス隊は番号が若いほど強いということになっている)。大目に見てやるか。
アリア:「食事はお墓の後で、だよ」
リトナ:「そして死体は、基本的に動かさない」
アリア:「生きていくために必要なことは大目に見るけど……誇りを持って行動しなさい」
リトナ:「死者への尊厳は忘れるな」
レプス隊の傭兵2:「ちょっとさっきからうるさいよ〜。アンタら何様のつもり?」
リトナ:言うこと聞かないか。レプス隊同士は仲良くしようとか、番号が若い方が強いとか、そういう認識はないの?
GM:末の番号になってくると、逆にないね。ビオさん以外はネコと女と老人だから、見た目弱そうだし。
レプス隊の傭兵1:「さっさと消えないと……殺すよ?」(剣を抜く)
リトナ:「剣を抜いたな……? 軍規違反だぞ」
アリア:「剣を納めなさい。そうしないと……アナタたちをただの野盗と認識する」
レプス隊の傭兵1:「うっせえ、女」
アリア:ここまでみたいね。再三通告は重ねたのに。
リトナ:コイツらは……味方でも何でもないな。ただの、野盗だ。
アリア:そうだね。
リトナ:先に剣を抜いたのは向こうだし。売られたケンカは買わなきゃね。
GM:では……戦闘だ。相手は5人。戦士系が3人。魔法使いが一人。職業不明のおじさんが一人。
サイコロを振る一同。イニシアティブを取ったのは、GM。
リトナ:これで専守防衛という名目が立つね。
戦いが始まった。
レプス17小隊の先制攻撃がリトナにクリティカルヒット。リトナは一気に『重傷』に。
レプス隊の傭兵1:「どうしたどうした口だけかぁ?」
キュア:回復魔法をリトナに! 「塵は灰に 灰は肉に 聖杯の血肉をもって傷を癒したまえ」
GM:キュアーポイズン!
リトナ:ポイズンいらない(笑)。
戦いは続く。
お互いが傷つき、傷つけあう攻防。
ビオ:(ハルバートを地面に突き刺し、素手で殴りかかる)「うぉぉぉらあああぁぁぁぁ!!!」
一同:をををー!(感嘆)
ビオの拳が、相手の腹にめり込む。
そこに続けてしっぽの一撃。大怪我を負う傭兵2号。
傭兵1号は攻撃が絶好調。またもリトナにクリティカルヒットが炸裂。
リトナ:なんでオレばっかり〜! 猫の姿に戻ってちょろちょろ逃げ回ろう。
召喚魔法に集中するアリア(標的はジリジリと後退していってる傭兵4号)。
ヴァンダイクとラグランジェは傭兵3号にコンスタントにダメージを与えていく(逆に攻撃を食らったりもしてるのだが)。
GM:──そして集中していた傭兵5号が火炎魔法をビオさんに。
レプス隊の傭兵5:「あの馬鹿者に正義の鉄槌を!」
ビオ:(ダメージを聞いて)ガッハッハッハッハ……『重傷』だ(笑)。
ヴァンダイク:見た目に反して炎に弱かったのだね。
キュア:回復魔法が追いつかない〜。ビオさんの火傷の治療を。「灰は灰に 肉は肉に あるべきものをあるべき姿に」
GM:くるっと回ってキュア〜! ぴろぴろぴろのくるくるりん♪
アリア:キュアキュアぽーん! ……って似合わないね〜(笑)。
キュア:ちぐぁーう!
GM:魔法少女キュアって設定じゃなかったっけ(←違ったらしい)。
ビオ:そして俺の番か。魔法を撃ってきた5号に突撃だー!
先程と同じくパンチからしっぽへのコンボが最大ダメージで命中。傭兵5号は吹っ飛び、転がり、首をおかしな方向に曲げて……死んだ。
これで残りはリトナを重傷に追い込んだ傭兵1号。ヴァンダイク&ラグランジェと戦っている傭兵3号。そして何もせずに後退していく傭兵4号。
ヴァンダイク:(コロコロ)鞭が命中しておる。
GM:(コロコロ)そしてラグランジェの剣が傭兵3号の肩口をバッサリ斬り裂いた。これで3号は倒れたね。
ビオ:うおりゃああああ、今度はお前だー!(傭兵1号へ向かって突撃)
GM:うわー!(笑)
あっという間にやられてしまう傭兵1号。
リトナ:……なんでオレのときばっかりクリティカル出すかなぁ……。
GM:残りひとりだね。
アリア:じゃあ、5ターンかけて集中した召喚魔法を。力の差を見せつけて降伏させようと思ってたけど、アナタが最後みたいね。
レプス隊の傭兵4:「ぐ……!」
アリア:「……敵を討て」
魔法陣が輝き、空間のひずみから<竜>が姿を現す。
<竜>の炎が……男の身体を焼いた。
アリア:命だけは、助けてあげるよ。
ヴァンダイク:このまま放っておいたらいずれ死ぬだろうがね。
リトナ:でも積極的に治療する気にはなれないなー。
GM:トドメは刺さないの?
ヴァンダイク:子供に剣を持たせて、親のカタキを取らせるという手もあるが。
リトナ:そうだね。………………。……いつからビーノの親のカタキになったんだ、こいつらは。
GM:じゃあ、放っておくんだね。
キュア:リトナおいでー、傷を治すから。(コロコロ)……ごめん、回復魔法一回失敗した。
リトナ:……バラすよ?
GM:え、『解体する』と書いて『バラす』?
リトナ:それでもいいけど。
キュア:ごめーん!
リトナ:(コロコロコロ)どっちでも成功してる。
GM:東の方──君らが来た方から、ぞろぞろと人影が。
アリア:難民かな?
GM:最初に会ったときに比べて、随分数が減っている。
キュア:え……?
GM:話し合った結果、二手に分かれたらしい。
キュア:あ、なるほど。
GM:彼らはこの谷を抜けて、国境付近から南へ抜けるつもりらしい。
リトナ:「ビーノ、お前はどうする?」
ビーノ:「おれ……みんなといくよ」
リトナ:「そうか」
GM:みんなと別れる前に、ビーノは懐から石を……まだ割ってない『ピース・オブ・ラック』を取り出す。
ビーノ:「おれは、アイツらが言ってたことが正しいとは思えないし……アンタたちが言ってたことが正しいかどうかも分からない」
リトナ:「正しいと思わないなら、はっきりそう言っていいぞ」
キュア:「それが君の現実だ」
ビーノ:「でも、いつか正しかったと思える日が来るかもしれないし……。……やっぱり、今はまだ分からない」
アリア:「うん」
ビーノ:「でも……アンタたちはこんなことはよくあることだって言ってたけど……。忘れないでほしい……この村の姿を。この光景を、おれのことを……忘れないでほしい」
アリア:「うん……忘れないよ」
ビーノ:「だから……これ、受け取ってくれないかな」
そう言って……ビーノは『ピース・オブ・ラック』を割った。
GM:誰かサイコロ1個振ってくれる?
ヴァンダイク:(コロコロ)6。
GM:『ピース・オブ・ラック』は6つに割れた。ひとつはこの子が持つから……残り5つだね。
リトナ:ちょうどPCが5人だ。
GM:じゃあそれで。みんなに1つずつ渡そう。
ビーノ:「忘れないでね。『約束』だぞ?」
アリア:「忘れないよ。『約束』……するから」
『約束』のかけらを残して……少年は去っていった。難民たちとともに、西へ向かって。
GM:そして苦い思いを残しつつレプス04小隊も……って、そうでもない?
リトナ:うん。オレは間違ったことをしたとはこれっぽっちも思ってない。
アリア:自分の気持ちに正直に行動しただけだし。……でも、早く『楽園』にたどり着きたいね。
リトナ:そうだね、それはあるね。
GM:引きずりだされた村の人たちの死体はそのまま?
キュア:え、埋めたんじゃないの?
GM:まだ途中だったよ。『TRPGでは言ってないことはやってない』が原則。
キュア:なら、ちゃんと埋葬しよう。
ヴァンダイク:え? 少年や村人たちは行ってしまったようだし、放置したままでもいいのではないか?
一同:こらこら〜!
リトナ:せっかく今回はきれいにまとまっていたのに、最後でオチをつけるな〜!
ヴァンダイク:やはり魔界編は、こうでないとな。
「いよいよ国境か」
「キュア様ぁー!」 「空を飛んでるみたいだ……」 「君の国はどこにあるんだろうね」 「なあ、『サエ』を知らねえか?」 「……角が大きく……?」 「<ヴリトラ>……」 |