ACT6.0[約束]07

GM:ビーノは何かをこらえるように拳を握り締めている。

ビーノ:「……止めないのかよ。仲間なんだろ? 止めないのかよ……?」

リトナ:「何を?」

ビーノ:「略奪に決まってるだろ! おれの<谷>のみんなが、汚されてるんだぞ!」

リトナ:「仕方ないだろう。こうしないと、オレたちは生きていけない」

ビーノ:「……そうかよ……」

アリア:「だから、強くならないといけないんだぞ」

ビーノ:「こんな強さ、おれはいらない……」

リトナ:「生きている者なら尊重する。でも……死体はモノだ。死体をどうしようが、オレは構わない

ビーノ:「………………」

リトナ:「死体そのものに何かするなら……オレも許さない。切り刻むとか、切って干すとか、そういうことをするなら、オレも許さない」

アリア:「それは冒涜だからね」

リトナ:「だけど死体が身につけているモノは……仕方ない。オレたちだって、同じ集団だ」

ビーノ:「死体引きずりだして、放ったままかよ!」

リトナ:「ちゃんと埋葬するさ」

ビーノ:「やってねえじゃねーか、アイツらは」

リトナ:「なら、やらせるだけの話だ。……ビオさん」

ビオ:「俺?」

リトナ:「オレじゃムリだよ、埋葬は」

ビオ:(死体を埋める穴を掘りつつ)「お前らも手伝えよ」

GM:彼ら──レプス17小隊は聞く耳を持たない。

ビオ:「手伝えって」

レプス隊の傭兵1:「うるせえよ。こっちは忙しいんだ」

ビオ:「そんなのは後からでもできるだろうが」

レプス隊の傭兵3:「おーい。こっちに食い物があったぞー」

ビオ:ナニぃ!(笑)

リトナ:カス番なら仕方ないな(レプス隊は番号が若いほど強いということになっている)。大目に見てやるか。

アリア:「食事はお墓の後で、だよ」

リトナ:「そして死体は、基本的に動かさない」

アリア:「生きていくために必要なことは大目に見るけど……誇りを持って行動しなさい」

リトナ:「死者への尊厳は忘れるな」

レプス隊の傭兵2:「ちょっとさっきからうるさいよ〜。アンタら何様のつもり?」

リトナ:言うこと聞かないか。レプス隊同士は仲良くしようとか、番号が若い方が強いとか、そういう認識はないの?

GM:末の番号になってくると、逆にないね。ビオさん以外はネコと女と老人だから、見た目弱そうだし。

レプス隊の傭兵1:「さっさと消えないと……殺すよ?」(剣を抜く)

リトナ:「剣を抜いたな……? 軍規違反だぞ」

アリア:「剣を納めなさい。そうしないと……アナタたちをただの野盗と認識する」

レプス隊の傭兵1:「うっせえ、女」

アリア:ここまでみたいね。再三通告は重ねたのに。

リトナ:コイツらは……味方でも何でもないな。ただの、野盗だ。

アリア:そうだね。

リトナ:先に剣を抜いたのは向こうだし。売られたケンカは買わなきゃね。

GM:では……戦闘だ。相手は5人。戦士系が3人。魔法使いが一人。職業不明のおじさんが一人。
 

 サイコロを振る一同。イニシアティブを取ったのは、GM。
 

リトナ:これで専守防衛という名目が立つね。
 

 戦いが始まった。

 レプス17小隊の先制攻撃がリトナにクリティカルヒット。リトナは一気に『重傷』に。
 

レプス隊の傭兵1:「どうしたどうした口だけかぁ?」

キュア:回復魔法をリトナに! 「塵は灰に 灰は肉に 聖杯の血肉をもって傷を癒したまえ」

GM:キュアーポイズン!

リトナ:ポイズンいらない(笑)。
 

 戦いは続く。

 お互いが傷つき、傷つけあう攻防。
 

ビオ:(ハルバートを地面に突き刺し、素手で殴りかかる)「うぉぉぉらあああぁぁぁぁ!!!

一同:をををー!(感嘆)
 

 ビオの拳が、相手の腹にめり込む。

 そこに続けてしっぽの一撃。大怪我を負う傭兵2号。

 傭兵1号は攻撃が絶好調。またもリトナにクリティカルヒットが炸裂。
 

リトナ:なんでオレばっかり〜! 猫の姿に戻ってちょろちょろ逃げ回ろう。
 

 召喚魔法に集中するアリア(標的はジリジリと後退していってる傭兵4号)

 ヴァンダイクとラグランジェは傭兵3号にコンスタントにダメージを与えていく(逆に攻撃を食らったりもしてるのだが)
 

GM:──そして集中していた傭兵5号が火炎魔法をビオさんに。

レプス隊の傭兵5:「あの馬鹿者に正義の鉄槌を!」

ビオ:(ダメージを聞いて)ガッハッハッハッハ……『重傷』だ(笑)。

ヴァンダイク:見た目に反して炎に弱かったのだね。

キュア:回復魔法が追いつかない〜。ビオさんの火傷の治療を。「灰は灰に 肉は肉に あるべきものをあるべき姿に」

GM:くるっと回ってキュア〜! ぴろぴろぴろのくるくるりん♪

アリア:キュアキュアぽーん! ……って似合わないね〜(笑)。

キュア:ちぐぁーう!

GM:魔法少女キュアって設定じゃなかったっけ(←違ったらしい)。

ビオ:そして俺の番か。魔法を撃ってきた5号に突撃だー!
 

 先程と同じくパンチからしっぽへのコンボが最大ダメージで命中。傭兵5号は吹っ飛び、転がり、首をおかしな方向に曲げて……死んだ。

 これで残りはリトナを重傷に追い込んだ傭兵1号。ヴァンダイク&ラグランジェと戦っている傭兵3号。そして何もせずに後退していく傭兵4号。
 

ヴァンダイク:(コロコロ)鞭が命中しておる。

GM:(コロコロ)そしてラグランジェの剣が傭兵3号の肩口をバッサリ斬り裂いた。これで3号は倒れたね。

ビオ:うおりゃああああ、今度はお前だー!(傭兵1号へ向かって突撃)

GM:うわー!(笑)
 

 あっという間にやられてしまう傭兵1号。
 

リトナ:……なんでオレのときばっかりクリティカル出すかなぁ……。

GM:残りひとりだね。

アリア:じゃあ、5ターンかけて集中した召喚魔法を。力の差を見せつけて降伏させようと思ってたけど、アナタが最後みたいね。

レプス隊の傭兵4:「ぐ……!」

アリア:「……敵を討て」
 

 魔法陣が輝き、空間のひずみから<竜>が姿を現す。

 <竜>の炎が……男の身体を焼いた。
 

アリア:命だけは、助けてあげるよ。

ヴァンダイク:このまま放っておいたらいずれ死ぬだろうがね。

リトナ:でも積極的に治療する気にはなれないなー。

GM:トドメは刺さないの?

ヴァンダイク:子供に剣を持たせて、親のカタキを取らせるという手もあるが。

リトナ:そうだね。………………。……いつからビーノの親のカタキになったんだ、こいつらは。

GM:じゃあ、放っておくんだね。

キュア:リトナおいでー、傷を治すから。(コロコロ)……ごめん、回復魔法一回失敗した。

リトナ:……バラすよ?

GM:え、『解体する』と書いて『バラす』?

リトナ:それでもいいけど。

キュア:ごめーん!

GM:では傷の手当が済んだ頃。視覚か聴覚で判定して。

リトナ:(コロコロコロ)どっちでも成功してる。

GM:東の方──君らが来た方から、ぞろぞろと人影が。

アリア:難民かな?

GM:最初に会ったときに比べて、随分数が減っている。

キュア:え……?

GM:話し合った結果、二手に分かれたらしい。

キュア:あ、なるほど。

GM:彼らはこの谷を抜けて、国境付近から南へ抜けるつもりらしい。

リトナ:「ビーノ、お前はどうする?」

ビーノ:「おれ……みんなといくよ」

リトナ:「そうか」

GM:みんなと別れる前に、ビーノは懐から石を……まだ割ってない『ピース・オブ・ラック』を取り出す。

ビーノ:「おれは、アイツらが言ってたことが正しいとは思えないし……アンタたちが言ってたことが正しいかどうかも分からない」

リトナ:「正しいと思わないなら、はっきりそう言っていいぞ」

キュア:「それが君の現実だ」

ビーノ:「でも、いつか正しかったと思える日が来るかもしれないし……。……やっぱり、今はまだ分からない」

アリア:「うん」

ビーノ:「でも……アンタたちはこんなことはよくあることだって言ってたけど……。忘れないでほしい……この村の姿を。この光景を、おれのことを……忘れないでほしい」

アリア:「うん……忘れないよ」

ビーノ:「だから……これ、受け取ってくれないかな」
 

 そう言って……ビーノは『ピース・オブ・ラック』を割った。
 

GM:誰かサイコロ1個振ってくれる?

ヴァンダイク:(コロコロ)6。

GM:『ピース・オブ・ラック』は6つに割れた。ひとつはこの子が持つから……残り5つだね。

リトナ:ちょうどPCが5人だ。

GM:じゃあそれで。みんなに1つずつ渡そう。

ビーノ:「忘れないでね。『約束』だぞ?」

アリア:「忘れないよ。『約束』……するから」
 

 『約束』のかけらを残して……少年は去っていった。難民たちとともに、西へ向かって。

GM:そして苦い思いを残しつつレプス04小隊も……って、そうでもない?

リトナ:うん。オレは間違ったことをしたとはこれっぽっちも思ってない。

アリア:自分の気持ちに正直に行動しただけだし。……でも、早く『楽園』にたどり着きたいね。

リトナ:そうだね、それはあるね。

GM:引きずりだされた村の人たちの死体はそのまま?

キュア:え、埋めたんじゃないの?

GM:まだ途中だったよ。『TRPGでは言ってないことはやってない』が原則。

キュア:なら、ちゃんと埋葬しよう。

ヴァンダイク:え? 少年や村人たちは行ってしまったようだし、放置したままでもいいのではないか?

一同:こらこら〜!

リトナ:せっかく今回はきれいにまとまっていたのに、最後でオチをつけるな〜!

ヴァンダイク:やはり魔界編は、こうでないとな。

.be.Continue...
「いよいよ国境か」
「キュア様ぁー!」
「空を飛んでるみたいだ……」
「君の国はどこにあるんだろうね」
「なあ、『サエ』を知らねえか?」
「……角が大きく……?」
「<ヴリトラ>……」



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