GM:(コロコロ)老人が、ついに倒れた。栄養失調と疲労が原因だろうね。
リトナ:「やっぱりか。いつか倒れるだろうとは思ってた」
ドモ・ルール:「よし、今のうちに作業を進めよう」
ビオ:「賛成だ。ヤスリは俺の手には小さすぎる。……面倒だ。取っ払ってしまおう」
バキバキと鉄格子を引きちぎるビオ。
ヴァンダイク:「一本は残しておくのだぞ。老人に切らせるから」
GM:つーか……老人倒れたんだから、ベッドにぐらい運んでやれよ(笑)。
リトナ:え? 運んでなかったの?
GM:TRPGでは言ってないことはやってないことになるんだから。このままだと「老人が倒れた、ラッキー」「今のうちに切ってしまえ〜」ってことになってるぞ。
リトナ:ベッドには運んであげよう。──じゃ、あとよろしく。
ビオ:おうよ。
ヴァンダイク:引きちぎったら、バレるのではないか?
ビオ:ちぎった後、ヤスリをかければいい(笑)。
ヴァンダイク:それはいい考えだ(笑)。
ビオ:(また一本引きちぎって)「わっはっは、やっぱこうでなくちゃな!」
いつの間にここまで切ったのか、覚えていない。
彼らが手伝ってくれていたのは……何となく、覚えてはいる。
もう、記憶もあいまいだ。
ただひとつ確かなのは……あの一本を切れば、息子が門を通れるということだ。
GM:身体がいうことをきかないのか、それとも感激からなのか、老人は震える手で最後の一本を切り落とした。
一同:パチパチパチ!(拍手)
老人:「ありがとう……。──ああ、これで通れます……」
リトナ:さ、どうなるんだ……?
老人はふらふらとゴミの山へ歩いていくと……中から、頭蓋骨を取り出した。
リトナ:「頭蓋骨……」
ドモ・ルール:「あれが、息子……?」
ヴァンダイク:「どうやらそうらしいな」
大事そうに頭蓋骨をかかえると、名も知らぬメーヴェの老人は『門』をくぐった。そして、奥へと歩いていく。
ドモ・ルール:「後を追おう」
おぼつかない足取りで、老人は歩を進めた。
やがて崖が崩れた場所にたどり着き──彼はそこに、頭蓋骨を置いた。
どこか、ほっとした表情だった。
老人:「これで……息子は<真なるアルカディア>へ行けました……」
その言葉を最期に──老人は、倒れた。
GM:そうだね。もう、死んでいる。
ドモ・ルール:「<真なるアルカディア>は天国だった、ってことか?」
ヴァンダイク:「彼にとっては、そうだったのだろう……」
ドモ・ルール:「それはさておき……彼はどんな能力を持ってるんだ?」
GM:(はあ?)
ヴァンダイク:死んでから30分以内なら、大丈夫だからな。
GM:そういうこと、しないんじゃなかったの?
リトナ:そのへんの死体から手当たり次第はしない、って話だったろ? チャンスがあれば、やってOKだろう。あとは本人とパーティの倫理観にかかっている。
GM:で、彼から能力を奪うワケね。
ヴァンダイク:生き残るためには仕方のないことだ。
ドモ・ルール:で、おっさんはどんな能力を持ってるんだ?
GM:(ふう……)<明かり>の魔法にしようか。「鉄格子切り」でもいいけど。
ドモ・ルール:じゃ、<明かり>を。
GM:りょーかい。
リトナ:「死体はどうする?」
ヴァンダイク:「火葬してから、頭蓋骨を息子の横に並べてやろう。どんな形であれ……我が子と一緒なら本望だろう」
ヴァンダイク:「結局、<真なるアルカディア>の情報は手に入らなかったか……」
ドモ・ルール:「今回は無駄足だったってことかァ?」
リトナ:「まあいいじゃない。孤独な老人の死を、見取ってあげたんだから」
一同:「そうだな」
GM:(ぼそっと)……最後だけきれいにまとめてんじゃねーよ(笑)。
レプス04小隊は再び歩き始める。
名も知らぬ老人が眠る、名も知らぬ村を後にして……
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「あたしはアリア」
「アリア?」 「そ。アリア・ミリアル・エルズミーア」
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