ACT2.0[傷心]05

 それから1日あまり過ぎた頃……
 

GM:(コロコロ)老人が、ついに倒れた。栄養失調と疲労が原因だろうね。

リトナ:「やっぱりか。いつか倒れるだろうとは思ってた」

ドモ・ルール:「よし、今のうちに作業を進めよう」

ビオ:「賛成だ。ヤスリは俺の手には小さすぎる。……面倒だ。取っ払ってしまおう」
 

 バキバキと鉄格子を引きちぎるビオ。
 

ヴァンダイク:「一本は残しておくのだぞ。老人に切らせるから」

GM:つーか……老人倒れたんだから、ベッドにぐらい運んでやれよ(笑)。

リトナ:え? 運んでなかったの?

GM:TRPGでは言ってないことはやってないことになるんだから。このままだと「老人が倒れた、ラッキー」「今のうちに切ってしまえ〜」ってことになってるぞ。

リトナ:ベッドには運んであげよう。──じゃ、あとよろしく。

ビオ:おうよ。

ヴァンダイク:引きちぎったら、バレるのではないか?

ビオ:ちぎった後、ヤスリをかければいい(笑)。

ヴァンダイク:それはいい考えだ(笑)。

ビオ:(また一本引きちぎって)「わっはっは、やっぱこうでなくちゃな!」

 目を覚ますと、鉄格子は残り一本になっていた。

 いつの間にここまで切ったのか、覚えていない。

 彼らが手伝ってくれていたのは……何となく、覚えてはいる。

 もう、記憶もあいまいだ。

 ただひとつ確かなのは……あの一本を切れば、息子が門を通れるということだ。
 

GM:身体がいうことをきかないのか、それとも感激からなのか、老人は震える手で最後の一本を切り落とした。

一同:パチパチパチ!(拍手)

老人:「ありがとう……。──ああ、これで通れます……」

リトナ:さ、どうなるんだ……?
 

 老人はふらふらとゴミの山へ歩いていくと……中から、頭蓋骨を取り出した。
 

リトナ:「頭蓋骨……」

ドモ・ルール:「あれが、息子……?」

ヴァンダイク:「どうやらそうらしいな」
 

 大事そうに頭蓋骨をかかえると、名も知らぬメーヴェの老人は『門』をくぐった。そして、奥へと歩いていく。
 

ドモ・ルール:「後を追おう」
 

 おぼつかない足取りで、老人は歩を進めた。

 やがて崖が崩れた場所にたどり着き──彼はそこに、頭蓋骨を置いた。

 どこか、ほっとした表情だった。
 

老人:「これで……息子は<真なるアルカディア>へ行けました……」
 

 その言葉を最期に──老人は、倒れた。

リトナ:「倒れたか……。生きては……いないだろうな……」

GM:そうだね。もう、死んでいる。

ドモ・ルール:「<真なるアルカディア>は天国だった、ってことか?」

ヴァンダイク:「彼にとっては、そうだったのだろう……」

ドモ・ルール:「それはさておき……彼はどんな能力を持ってるんだ?」

GM:(はあ?)

ヴァンダイク:死んでから30分以内なら、大丈夫だからな。

GM:そういうこと、しないんじゃなかったの?

リトナ:そのへんの死体から手当たり次第はしない、って話だったろ? チャンスがあれば、やってOKだろう。あとは本人とパーティの倫理観にかかっている。

GM:で、彼から能力を奪うワケね。

ヴァンダイク:生き残るためには仕方のないことだ。

ドモ・ルール:で、おっさんはどんな能力を持ってるんだ?

GM:(ふう……)<明かり>の魔法にしようか。「鉄格子切り」でもいいけど。

ドモ・ルール:じゃ、<明かり>を。

GM:りょーかい。

リトナ:「死体はどうする?」

ヴァンダイク:「火葬してから、頭蓋骨を息子の横に並べてやろう。どんな形であれ……我が子と一緒なら本望だろう」

 暗かった空が、いくらか明るくなってきた。雲間から見える濃い赤色が、朝の訪れを告げようとしている。
 

ヴァンダイク:「結局、<真なるアルカディア>の情報は手に入らなかったか……」

ドモ・ルール:「今回は無駄足だったってことかァ?」

リトナ:「まあいいじゃない。孤独な老人の死を、見取ってあげたんだから」

一同:「そうだな」

GM:(ぼそっと)……最後だけきれいにまとめてんじゃねーよ(笑)。
 

 レプス04小隊は再び歩き始める。

 名も知らぬ老人が眠る、名も知らぬ村を後にして……

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「あたしはアリア」

「アリア?」

「そ。アリア・ミリアル・エルズミーア」
 




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