ACT2.0[傷心]03

リトナ:「あの……あなたは誰ですか? というか、ここで何をしているのですか?」(←猫型の時は話せる)
 

 リトナの言葉に、老人がゆっくりと振り返った。ロクに食事も睡眠も取っていないのか、やせ細り目は落ち窪んでいる。彼はしわだらけの口を開くと、しわがれた声でこう言った。
 

メーヴェの老人:「息子がここを通るんです。だからわたしが門を開けるんですよ」

一同:は……?

リトナ:息子が……通る?

ドモ・ルール:こっちから行くのか? 向こうから来るのか?

リトナ:通るとしか言ってないから、どちらとでも解釈できるな……。

ドモ・ルール:「どっちから通るんだ?」

GM:もう作業に没頭してて答えてくれない。

一同:「………………」

ビオ:「──じゃ、がんばって」

ヴァンダイク:「手伝ってあげた方がよいのでは?」

ビオ:「そうか? ──ならみんな下がってろ。俺が引きちぎればスグだ」

GM:無差別に取り払おうとすると、老人が怒りの声を上げる。

老人:「な、何をするのですか! こうやって一本おきに切らないといけないのです。そうしないと息子が通れないじゃないですか」

一同:「………………?」

ビオ:「……珍妙な話だ」

ヴァンダイク:「そうだな」

GM:老人の周りには鉄の棒と、それからゴミの山のようなものがある。

ヴァンダイク:ゴミ? 燃やしてあげようか。

GM:ヒドイことするなァ。

ヴァンダイク:ヒドイこと? ゴミを燃やしてあげるだけなんだが。

リトナ:さあビオ、火を吐くんだ。歌え!

ビオ:嫌だ。

ドモ・ルール:「あのー……理由を説明してもらえませんか?」

老人:「息子が通るんです」

ドモ・ルール:「いや、一本おきの理由」

老人:「だから、息子が通るんです」

ドモ・ルール:「………………」

ヴァンダイク:「手伝ってはいけないようだ。……傍観しておくか?」

ドモ・ルール:「そんな余裕、ないぞ?」

リトナ:ねえ、鉄格子を切るのはいいんだけど、上の方はどうしてるの? まさか5メートルのところには手が届かないでしょ?

GM:老人がちょっと手をのばしたところぐらいで切ってある。だからそこから上は鉄格子がビッチリ元のまま残ってるよ。

ビオ:……老人が次に切るはずのヤツをバキッと外してみよう。

老人:「ヤスリで切ってください」

ドモ・ルール:「……どういうことなんだ……?」

GM:そうしてるうちに端っこまでいき、鉄格子の隙間は6センチになった。そうするとまた一本おきに切り始める。今度は14センチ幅だね。

ドモ・ルール:効率の悪い方法だ……。

リトナ:というか、通るだけなら幅10メートルも切る必要ないだろ?

ドモ・ルール:やはり何かのルールみたいなのがあるのか? ……儀式?

リトナ:「息子さんはいつ通るんですか?」

老人:「この門が開いたときに通るんですよ」

リトナ:「門はいつ開くんですかね?」

老人:「息子が通るときに開くんですよ」

リトナ:「はあ……ん?」(今一つ納得いってない)

ヴァンダイク:「これだけ切るのに、どのくらいかかったかね?」

老人:「息子が通るんですよ」

ビオ:「ムスコって……やっぱ、アレ?」

一同:おいおい(笑)。

老人:「かわいいひとり息子です。気立てがいい、やさしい子です」

ヴァンダイク:「ふう……。――この作業が終わるのを待っていると、我々の食料がもたないな」

ドモ・ルール:「まださっきの家しか調べてないだろ? 他のところにも行ってみればいい」

ヴァンダイク:「そうだな。彼の作業は、まだまだ時間がかかりそうだし」

ビオ:俺たちがいなくなった途端、ものすごく作業スピードが速くなったりして。

リトナ:次の日行ったら、「もう息子は通りましたよ」と言われる(笑)。

ヴァンダイク:それは残念すぎる結末だ。

ドモ・ルール:「んじゃ、あさりにいきますか」

GM:村を見てまわるのか。えーと……空き家か、死体(村の住人)が転がってるか、だね。

ビオ:「そこらじゅう死体だらけだ……」

リトナ:とりあえず皆殺しってかんじか……。あのおじさん、よく生きてたね。

ヴァンダイク:メーヴェの死体ばかり? 牛の死体とかはないのかね?

リトナ:魔界の牛。魔牛だね。

ビオ:魔牛と言うと、また別のものを想像してしまうな。

GM:じゃあ、牛魔王。

ビオ:牛魔王が家畜で飼われてたり死体がゴロゴロ転がってたりしてるは、ものすごく嫌だぞ(笑)。

GM:誰かサイコロ1個振ってみてくれる?

リトナ:(コロコロ)5。

GM:食料が5日分見つかった。──誰かもう一回振って。

ドモ・ルール:(コロコロ)4。

GM:4日分は腐ってた(笑)。

ドモ・ルール:問題ない。腐ったものを食べたって、苦しむのは宿主だから。

リトナ:え、そうなの?

ヴァンダイク:宿主の意識はあるが、あらがうことはできないのだな。

リトナ:……悲惨だ。

GM:んなワケあるかい(笑)。

ドモ・ルール:ダメ?

GM:ダメに決まってるだろ。ちゃんと責任持って宿主を管理しなさい。

ドモ・ルール:チッ。──腐ったのを食べるのはあきらめよう。
 

 村を一巡りし、一行は門のところへ戻ってきた。
 

GM:何本か鉄格子が切れてる。老人はなおも作業続行中。

ビオ:「あ〜、もう、イライラする! 放っておいて、先に進もうぜ!」

ヴァンダイク:「だが我々は<真なるアルカディア>の情報を何も持たずに、西へ向かってるだけだ。闇雲に進んでも意味が無いだろう。それに……この門の先に何があるのかも気になる」

ドモ・ルール:「<真なるアルカディア>ねえ……。このおっさんが知ってるとも思えないが」

老人:「アルカディア……」

ドモ・ルール:「何か知ってるのか?」

老人:「息子がこの門を通って<真なるアルカディア>へ行くのですよ」

ヴァンダイク:「なに?」

ドモ・ルール:「その話、詳しく聞かせてもらおうか」

老人:「………………」

ドモ・ルール:「こんのオヤジはァ〜……」

リトナ:「オレ、先がどうなってるか覗いてこようか?」

ドモ・ルール:そうか、猫なら通れるな。

リトナ:14センチあれば十分だ。6センチでもいける、外見は子猫だから。……中身は戦国武将だけどね(←いつからそうなった)。

ビオ:「よし、頼んだ」

リトナ:「おう」
 

 リトナはひょいっと門の隙間をくぐり抜け……奥へ姿を消した。



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