prologue[降臨]04


 明かりを灯し、奥へ進む。

 生き残ったレプス隊の一部も、ここへ逃げてきているようだ。
 

ヴァンダイク:こうしてパーティはどんどん大所帯に。

GM:そんなことはしないけど。

ドモ・ルール:(自分の身体を見て)そろそろ防腐剤を飲まないとヤバイな……。

リトナ:げ、こんな狭いところで腐り始めないでくれよ?

ヴァンダイク:周りがだんだんしかめっ面になっていくのだね。

ドモ・ルール:早く新しい『宿主』に移りたいんだが。

リトナ:移動中だからムリだろ。

ビオ:指先から腐っていったらイヤだな。

ドモ・ルール:そんなことになったら、いきなりシャクトリムシ状態じゃないか。

ヴァンダイク:寒いところへ行ったら大変だ。凍傷で指がなくなってしまうぞ。

ドモ・ルール:行かないように気をつける。

GM:この抜け道はどこにつながってるんだろうね。

リトナ:隣の家。──近ッ!(←ひとりボケツッコミ)

GM:よし、砦から離れた岩場に出ることにしよう。

ビオ:大きな亀裂の底みたいな?

GM:そうだね。

リトナ:傭兵たちは何人ぐらいついて来てる?

GM:20人ぐらいかな。他の抜け道から逃げたのもいるだろうし……。……もちろん死んでしまった者もいる。

リトナ:死人が出てしまったか……。今回のMONDは『誰も死なない』を目標にしようと思っていたのに。

GM:戦争をしているこの世界では、それは無理な話だね。──さて、ここでちょっと大きな地震がある。上から岩が振ってくるから各自よけたり砕いたりするように。目標値はそうだな……(コロコロ)74で。

リトナ:(コロコロ)よし成功。姫に抱きつくようにして岩をよけるぞ。「あぶなーい!」

GM:あぶニャーい!

リトナ:確かに今は人型。じゃ、「ニャー!」と。

ビオ:(コロコロ)俺も抱えてる女も問題ない。

ドモ・ルール:(コロコロ)こちらも。

GM:(コロコロ)黒炎も平気。余裕でタバコをふかしてる。

ヴァンダイク:(コロコロ)……岩が腕に当たったしまったようだ(笑)。コマ絵の通りに今度は左腕を負傷してしまったのだね。

ビオ:大丈夫なのか、おっさんは……。元文官のワリに頭悪そうだぞ……。

GM:目標値は全員同じはずなんだけど……。

ヴァンダイク:頭の中で考えてることに身体がついていってないのだね。老人だから。

GM:所詮はオペリオのそっくりさんということか(笑)。

ヴァンダイク:うむ。
 

 ヴァンダイクの治療をしようとしたそのとき──空が一際強い光に包まれた。

 一面の白い世界に目がくらみ、顔をそむけ……目を開けたときには、消えてしまっていた。

 『種』も『触手』も『羽』も。空を覆っていた『光』も。

 あとはただ、赤く染まった雲がいつもと同じように広がっているだけ……。
 

リトナ:結局……『あれ』は何だったんだ?

ヴァンダイク:今までのことは……アルカディアではよくある天気なのかね?

GM:まさか。聞いたこともないね。一体何だったのか、見当もつかない。

ドモ・ルール:前兆とかあるのか?

GM:前例がないから何とも……。ただ、空全体が光ってから、ああいうことになったような気はする。

ヴァンダイク:前例がなくても、誰か解説してくれる者はいないのかね? 「あれはカニに似てるから蟹座から来たに違いない!」とか。

ビオ:んなアホな。

GM:この中で一番こういうことに詳しいのは元文官のヴァンダイクの気もするけど……分からないね。姫や黒炎にも心当たりはないようだ。

ビオ:じゃあもう考えるのはやめようぜ。頭を使うのは苦手だ。

リトナ:そうだね。──光が収まったんなら、砦まで戻ってみようか?

GM:砦はガレキの山と化している。死体もゴロゴロ転がっている。

リトナ:「………………」

GM:不幸中の幸いは、レプス隊の死体の方が少ないことかな。……それでも、人数は半分ぐらいに減ってしまったけど。

ビオ:「生き残りは50人、ってとこか」

リトナ:「お墓、作ってやらないと……」

フェルチアイア:「あら?」
 

 雲間から、光がもれた。

 小さな光がひとつ、キラキラと落ちてくる。
 

リトナ:なんだ? ボール?

GM:ソフトボールぐらいの光の玉だね。ゆっくりと、君たちの上に落ちてくる。……誰か受け止める?

リトナ:いや、地面に落ちるのを待ってから、前足パンチだ。

ビオ:で、転がるボールにビクッとなるんだな。

リトナ:そうそう。猫だから。

ヴァンダイク:ビオが口を開けて待っているのではないのか?

ビオ:やるかッッ。

GM:ちょっとトイレ行ってくるから、その間にその光の玉をどうするか決めておいてね。

リトナ:(GMが出ていくのを待って)今のうちにとんでもないことにしておこうか。

ビオ:だが……壷の中に受け止める、ぐらいしか思いつかんぞ。

リトナ:壷に入れて蓋をして、地中深く埋めてしまおう。

ヴァンダイク:あるいは生き残った人全員が手をつないで輪になって、光が降りてくるのを待つとか。

ビオ:UFOじゃないんだぞ。

GM:(戻ってきて)決まった?

リトナ:壷に入れて地中深くに埋めるという案が。

GM:何だそれは(笑)。

ドモ・ルール:触れないようにしながら、様子を見るしかないな。

GM:柔らかな光を放つ、エネルギーの塊みたいだね。

ヴァンダイク:放射能測定器で測定して「これは5億5000年前のものに違いない!」と。

ビオ:5億5千万年前じゃないんだな(笑)。

GM:……誰も触らないなら、姫が拾っちゃうぞ。

リトナ:それを、姫の足の後ろに隠れながら見てる。

ビオ:いや、俺が拾おう。

GM:ビオが拾うのね。──ものすごいエネルギーを秘めた、魔晶石みたいなものみたいだ。

ドモ・ルール:じゃあこれで魔法使い放題だ!

GM:そう言えるかもしれないね。

ヴァンダイク:誰か魔法を使えるものが……──指輪だけか。彼は身体をよく変えるから、物を持たせるには向いていないな。

ビオ:なら、俺が持っておこう。

ドモ・ルール:事態が一段落したなら、いよいよ『宿主』を変えようかな♪

ビオ:そうだったな。死体……死んでない死んでない……女はほれ、そこに寝かしてあるぞ。

リトナ:美人?

GM:若くて美人だよ。判定したとき成功度が高かったから。

ドモ・ルール:よし、やるぞ。
 

 ドモ・ルールは、横たわる女性の白い手をそっとつかんだ。

 自分の生気の抜けた死人の手とはまるで違う美しさに、しばし見とれる。

 指輪をはめた左手で女の左手を握り、右手で器用に指輪を外す。そしてそのまま女の左中指に”自分を”はめた。サイズが自動的に調整され、金の指輪がキラリと光る。
 

ドモ・ルール:(さ、乗っ取るぞ……)
 

 ここからが肝心なのだ。

 ゆっくりと、相手の意識を乗っ取っていく。

 名前とか素性とか、そんなものは興味ない。乗っ取ってしまえばこの女は『ドモ・ルール』なのだ。

 興味があるのは、能力だけ……。
 

リトナ:猫としてはちょっかい出したいとこだけど、リセットされるのはさすがに気の毒だしな。

GM:動かさないなら、しばらくして『乗っ取り』は成功する。

ドモ・ルール:よし、これで回復魔法が使えるぞ。しかも今度は生きてる若い女だ。

リトナ:でも中身はドモさんだしな……。

ビオ:人型のメスには興味ないし。

ヴァンダイク:ワシ、ホモ。

ドモ・ルール:なんつーパーティだ……。

フェルチアイア:「レプス隊も半分になってしまいましたね……」
 

 負傷者の治療が終わるのを待って、フェルチアイアが口を開いた。
 

フェルチアイア:「この星は……アルカディアは長きに渡る戦いで病んでいます。泥沼化した無意味な戦争。慢性的な物資不足。そして先ほどの光……。引き裂かれた荒野、遠い雷鳴、続く地響き。……この星は、もうすぐ滅びるでしょう……」

一同:!!?

GM:一言でいうと、「ナメック星爆発5分前」状態なのだな。

ヴァンダイク:ではあと5分で爆発するのか?

GM:いや、あれのゆるいヤツだから、今すぐってワケじゃない。

ヴァンダイク:ではあと20分。

リトナ:をを、なんと4倍!

ビオ:でも20分。

GM:てことは今回のキャンペーンは正味20分の話を延々とやるのか?(笑) ……でも、いつか滅びてしまうかもしれないってことは忘れないでね。

リトナ:いつか滅びる世界か……。

フェルチアイア:「みなさんにお願いがあります。──<真なる楽園<アルカディア>を探してほしいのです」

ヴァンダイク:「<真なるアルカディア>ですと……?」

フェルチアイア:「伝説かもしれませんが、もし本当に存在するのなら……この星を救うすべはそこにありましょう」

黒炎:「方法はそれぞれにまかせる。(タバコに火をつけて)俺は俺で動く。姫を<帝都>に送り届けてからな」

フェルチアイア:「レプス隊のみなさん……どうかお願いします」

リトナ:どこにあるのかとか、何か情報はないの?

GM:西の方にある、ってことしか。──目指せ天竺ってことだね。

ヴァンダイク:では、全員バラバラの方向に歩きだして「未来へ!」というのはどうか((C)「11人いる!」)

GM:いきなり終わりかい。

ヴァンダイク:全員で同じ方向に歩きだして「西へ!」でもよいが。

GM:どっちにしろ、終わりじゃないか。──ここからが始まりだよ。
 

 レプス04小隊は西へ向かう──楽園を目指して。



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