シェオール:つまり「プレイヤーが聞いた」イコール「ゼナが聞いた」ってことだな。
GM:そう。だからもしゼナに真相を打ち明けるなら……慎重にね。──じゃ、二人を呼び戻そうか。
リューセ:結局通信機は手に入らなかったね。
シェオール:ゼナツーは目を覚ましたことにしていいのか?
GM:いいよ。
ゼナ:??? ゼナツーは気絶から回復したんじゃなかったの?
シェオール:とある理由で、また気絶したんだ。
マフィ:何となくムカついたから、殴って気絶させたんだね。
オードー:最近の若者かよ、おめえさんはよゥ……。
GM:話はまだシェオールサイドね。ゼナにゼナツーを、アルバスにアンを演じてもらおうかな。
魔法科学研究所を後にした一行は、北にある王宮を目指した。
GM:では王宮前だ。『アヴァロン編』で見た通りの城が、目の前にある。
オードー:一応警戒しつつ……扉を叩きこわす。
シェオール:フツウに開けろ、フツウに。
GM:扉を開けると、薄暗いロビーが広がっている。んじゃ、ここで『心』の受動値マイナス20で判定してみて。
リューセ:(コロコロ)成功してる。
GM:床に点々と血の跡があるのに気づいた。
オードー:古い?
GM:もう乾いてしまってるね。でもそこまで古くはないようだ。
シェオール:血の跡をたどってみるか。
血の跡は、王の間に続いていた。
リューセ:誰もいない?
GM:いない。血は、玉座の後ろで途切れてる。
オードー:いかにも隠し階段がありそうだべ……。
GM:調べてみるなら判定してみてね。
アン:(コロコロ)やった、レベル2の主婦が気づいた(笑)。
GM:ではお察しのとーり、玉座の後ろに隠し戸があった。
ゼナツー:こういうのが後ろにあると、王様も落ち着かないんじゃないかなァ……。
GM:ハシゴが下の方に続いておりますが。
シェオール:降りてみるか。先頭は誰がいく?
オードー:やっぱ『壁』であるおらが。
リューセ:男の人に先にいってほしくないよねー。
オードー:う……スカートだべか……。上を見たら大変なことに。
ゼナツー:なら、最初にいく。
リューセ:その後に続こう。もたもたと。
アン、シェオールと続き、最後におなかのポケットに赤ん坊を入れたオードーが降りる。
ガンバ:わたいを忘れてもらっちゃ困るだわさ。ひゅーんとダイブ。……穴の深さはどれぐらい?
GM:20メートルぐらいかな。
ガンバ:だったらツブれてダメージを受けてるだわさ。
GM:なにやってんだか……。
ハシゴを降りると、人が3人ほど並んで歩けそうな通路になっていた。血の跡は点々と奥に続いている。
シェオール:誰か明かりの魔法使えたか?
一同:(首を横に振る)
シェオール:ライトセーバーを蛍光灯代わりにするか(笑)。
GM:しばらく進むと行き止まり。大きな扉がある。
シェオール:誰か鍵開けとかできるか?
一同:(首を横に振る)
GM:そもそも扉に鍵穴がない。
オードー:押してみるだ。
GM:開かない。押しても引いても横にずらしても開かない。
ゼナツー:じゃあ下から上に。
GM:シャッターじゃないんだから。
リューセ:魔法のカギかな?
GM:扉には凝った装飾がしてあるんだけど……──リューセ、『心』の能動値マイナス30で判定してみて。
リューセ:(コロコロ)成功してるよ。
GM:君、腕輪してたでしょ?(chapter01参照) あれと彫ってある模様がよく似てる。
リューセ:そんなもの、すっかり忘れてましたァ……。きっとこれをどこかにはめるのね。
シェオール:そんなくぼみ、どこにもないぞ……。
リューセ:ほえ?
そんなリューセの頭の中に、声が響いた。
『王の血を継ぎし者である証しを。古きその言葉を我に伝えよ』
リューセ:……ほえ?
GM:もう一回『心』で判定して……成功?(リューセにメモを渡して)そんな言葉が、心の中に流れ込んできた。
リューセ:「これが古き言葉なのかな……。……『エクセ・フォス・エ・ソムノ リベリ・メイ』」
リューセの『力ある言葉』に反応し、扉がゆっくりと開いていく……
GM:どうやら王家の隠し部屋みたいだね。結構広い。で……部屋の奥に、ファルバティス家長女シャナスが倒れてる。
シェオール:副社長がこんなところに……? 駆け寄るぞ。
ガンバ:駆け寄って彼女ソックリにコスプレして、横に倒れておくだわさ。──さあ、本物はどっち?
ゼナツー:う、分からないかも……(笑)。
シェオール:……踏みつけるぞ(怒)。
リューセ:生きてる?
GM:生きてはいるけど、かなりぐったりしてる。
シャナス:「誰だ……? 目がかすんで……よく見えない……」
シェオール:「俺です。『アイオーン』のシェオールです」
GM:キズを調べてみれば分かるけど、古いキズと新しいキズがある。古いキズには応急処置の跡があるね。ここまで何とか逃げのびて……また襲われたんじゃないかな、と思われる。よくこれで生きてたなっていうほどの重傷だ。
シェオール:「リューセ、治療を頼む」
オードー:ファンブル振るなよ〜。
リューセ:(コロコロ)う、91とか振っちゃった。あぶないあぶない……。
一同:こわ……。
GM:なら全快とまではいかないけど、一命は取り留めた。
シャナス:「シェオールか……。それに知らない顔がちらほらいるようだが……」
ゼナツー:そういえば、そうかも。
シャナス:(リューセを見て)「久しぶりね、リューセ」
リューセ:(つられて)「おひさしぶりですゥ〜」
アン:それにあなたはオードーじゃない。久しぶりね〜。
オードー:おら、長女と面識あっただか?
GM:ないです。
アン:『人喰いオードー』と言われたあなたがよくここまで……。
オードー:だからおらは人喰いじゃねーってば。
リューセ:……私、シャナスさんと会ったことあったっけ?
GM:chapter01以降、会ったことはないよ。
リューセ:ほえ?
シャナス:(ふっと息をついて)「で……一体何がどうなってるんだ? こんなメンバーで、どうしてこんなところへ?」
アン:いきあたりばったりで。
リューセ:確かにそうかも……。
シェオール:(ため息をついて)「この人たちはアルバスさんのツレで……」
アン:『アルバシズム』を継承するものたちなのです。
んなアホな。
リューセ:ゼナツーのことは何て説明しよう?
GM:ゼナツーのことはシャナスも知ってる。コイジィ・ニールを襲ったこともあったし。
シェオール:気づかぬフリをしてるんだな……。
ガンバ:アルバスと母親のことも話しておかないと。
シェオール:そうだったな。……これは任務失敗ってことになるのか?
リューセ:ならないんじゃない? 自らの意志で向こうにいったんだし……。次女は見つけたんだし。
シェオール:またばらばらになったけどな。
シャナス:「そうか……母とアルバスが……」
リューセ:「で……私とあなたはいつお会いしたのでしょう?」
シャナス:「やはり覚えてないみたいね……。……ま、小さいころのことだし……」
GM:一緒に写ってた写真があったでしょ。図書館で見つけた。
リューセ:ああそういえば。これで問題解決です〜。
シェオール:「そうだ。副社長、他のヤツらと連絡は取れませんか?」
シャナス:「あ、すっかり忘れていたな。カーとならこの通信機で連絡が取れる」
シェオール:(通信機を受け取りドスの効いた声で)「こらカー」
カー(通信機):『カー!』(おびえてる)
シェオール:「今どこにいる?」
カー(通信機):『………………。……ゴーヴァに代わるカウ』
一同:イミねーッ!(笑)
シェオール:「今俺たちはアールマティの王宮にいるんだが……そっちはどこにいるんだ?」
カー(通信機):『ちょうどよかったカウ。こっちも王都に向かってるところカウ』
シェオール:「分かった。着いたらまた連絡してくれ(通信を切って)──だ、そうです」
シャナス:「そうか……。ならアイツらがここに来るまで、休んでおいたらどうだ?」
リューセ:「そうします〜」
てことで、しばらく休憩しつつ雑談で時間をつぶすことに。
シャナス:「私たち三姉妹とアルバス……一番魔法の力が強いのは誰だと思う?」
リューセ:「ルーベルさん……かな……?」
アン:「案外イリスちゃんかも」
シェオール:「俺は副社長だと思う」
オードー:「じゃあおらは……残ったアルバス(笑)」
一同大笑い。
シャナス:「三姉妹の中で一番強かったのはルーベルだ。イリスはまだまだこれからだしな。……私は魔法はからきし駄目でね。それがあったから、せめてバックアップができるようにと副社長なんかをやってたワケだが」
シェオール:「そうだったのか……」
シャナス:「そして……アルバスは私たち3人をはるかにしのぐ能力の持ち主だった」
アン:過去形なのね。
シャナス:「伝説の封印士と言われる、父にも匹敵するほどの……いや、あるいはそれ以上の……」
オードー:冗談で言ったのに、当たっちまっただ。
シャナス:「今から10年前のことだ。アイツの……アルバスの魔力が急激に落ち込んだのは」
オードー:「10年前、何があっただ?」
シャナス:「私も詳しいことは知らない。ただ……あの頃私たちファルバティス家はアールマティに住んでいた」
リューセ:そうだったんだ。
シャナス:「ちょうどその頃ね、タナトスやゲオルグがいたのも──アールマティ最後の国王フレイヴス、王宮騎士タナトス、宰相ゲオルグ……」
シェオール:「………………」(こめかみにピキッと血管が浮かぶ)
シャナス:「ルーベルが調査に出たのもその頃……天に『月』が輝き出したのも……(目を細めて)本当にいろんなことがあったのね……」
リューセ:「あんまりしゃべると体に障りますから……」
シャナス:「ああ、そうだな。……ゴメン」
リューセ:(ポツリと)私……私は……何なんだろう……。
アルバスの家族と写っていた写真。
ルーベルとタナトスと過ごした日々の記憶。
夕日の丘での思い出……
あの丘は、ここの──アールマティの丘なんじゃないだろうか。
遠いむかし、『ソフィア』が見たのと同じ、夕日の記憶……
リューセの全身に、ルーン文字のような紋様が広がっていく。
リューセ:「ほえ?」
紋様が淡い光を放ち、光が胸元に収束していく。
そしてリューセの胸元に浮かび上がったのは――半透明の『黄金の林檎』
シャナス:「そう……リューセが持っていたのね……──『禁断の果実』を」