MOND REPLAYV


chapter20

[永 遠]

アールマティ編:2

片翼の天使
「君と僕との間に 永遠は見えるのかな」

GM:さて。それじゃ悪いんだけど、アルバスとゼナはちょっと席を外してくれるかな?

アルバス&ゼナ:はい?

GM:ちょっと(ゼナに)聞かれたくない話をするので。(アルバスはその付き添い。演じるキャラがいないしね)下のコンビニで30分ぐらい時間つぶしてて。

アルバス:うーい、しょーがないなァ。(プレイヤーふたり、退室)

GM:──んじゃ、残りの人。リューセ・シェオール・ガンバ・オードー・ゼナツー・アン・リディ。

シェオール:俺とオードーがいるなら、戦闘は問題なさそうだな。

リューセ:タモリと加藤チャゲは?

GM:異次元の彼方へ消えていった(笑)。──んで、君たちは幸運にもエスペルプレーナの中に取り残された。

シェオール&オードー:甲板の上にいたはずなんだけど。

GM:なら甲板にしがみついてるんだろうね。上は空と雲。下は島。その下も空と雲かな。

ガンバ:をや? ……飛んでる?

GM:てゆーか島に向かって墜落していってる。

シェオール:「カリストパラス、何とかならないのかッ?!」

カリストパラス:『ムリですッ! 浮力が足りません!』

GM:眼下にみるみる街がせまってくる。そして──
 

 ズガッ! ガリガリガリガリ……ドオオォォォォッ……!!!

「お前、ひとりか?」

「うん」

「みんなと、遊ばないのか?」

「私、みんなと違うから……」

「オレには一緒に見えるぞ」

「思い出、ないんだ……。家族、いないし。友達と遊んだことないし」

「ふーん。大変だな」

「だから、いいんだ……」

「何がいいんだよ」

「あなたには、関係ないでしょ?」

「そういう言い方はないだろ?」

 視線と視線がぶつかりあう。

「……動くなよ」

 少年が、近づいてくる。

「ダメだよ。私に触れたら、あなた消えちゃう」

「大丈夫、オレは消えない。……目、つぶれよ」

「え?」

「いいから」

 根拠のない自信におされ、言われた通りに目を閉じる。

 瞼の裏が夕日色に染まってる。少年の顔が近づいてくる気配がする。

リューセ:(……今のまた、あの夢……?)

GM:エスペルプレーナは『輝石』の浮力でかろうじて軟着陸できた──ズタボロで、煙ふいてるけどね。

オードー:こ、こわかっただ……。

シェオール:巨人の村から見えてた煙はこれだったのか。

GM:建物をなぎ倒した『船』は、街のほぼ中央に墜ちた。すぐ横に、奇跡的に無事だったオファニエルの像がある。

リューセ:ここ……ひょっとして、アールマティの王都?

GM:そ。──ようこそ、『空中都市アールマティ』へ。

シェオール:……なるほど、それで地図に載ってなかったんだな。

ガンバ:あれ、南キャンバス大陸では『飛べなく』て、『浮く』ことしかできないんじゃないの?

GM:でもこの島は確かに空を『飛んで』いる。──前にも言ったけど、この場合の『浮く』ってのは例えば磁石の反発力でリニアモーターカーとかが浮いてるようなもの。翼で宙に舞う『ヒーメル』は『飛んでる』ことになる。だから「南キャンバスでは飛べない」というより「南キャンバス大陸人には『飛ぶ』という発想がない」ということだな。

シェオール:なんか裏がありそうだが……まあいい。──で、みんな無事なんだな?

GM:おう。

リューセ:「私、ここ『見た』ことあるから何となく分かるよ」

シェオール:「俺も分かる」

リューセ:「そうなの?」

シェオール:「ああ。──他のみんながどうなったか気になるが、エスペルプレーナがこれじゃ通信機は使えないな。(南の方を指差して)こっちに少しいくと研究所がある。そこにいけば通信機ぐらいあるだろう」
 

 魔法科学研究所──

GM:(シェオールのプレイヤーにメモを渡す)

シェオール:「またここに戻ってくるとはな……」

ゼナツー:「ねえ……パパが、ここにいる……」

リューセ:パパって、ゼナパパのことよね?

GM:そうだよ。で、研究所の中なんだけど……アドラメルクの遊園地で行った『剣と魔法のアトラクション』と、全く同じ。

リューセ:シェオールの偽者みたいなのと戦ったところだよね。

オードー:あの遊園地で『見た』のは、シェオールの過去だったってことだべな。

シェオール:(通路を歩きながら)「ここは魔法科学研究所……かつて、『ヒト』を造りし場所だ。そして…………俺たちが生まれた場所でもある」
 

 短い、沈黙の後……
 

シェオール:「俺の本当の名は『ゼナF−1』……」

リューセ:「……へ?」

シェオール:(フッと笑って)「俺は、ただひとつの『望み』のために生きてきた。ヤツを……ゲオルグを殺すために」

オードー:そ、そうきただかァ……(驚)。

ゼナツー:「……─せない……」

シェオール:「ん?」

ゼナツー:「やらせない! お前がパパを殺すというなら、わたしは全力でお前を阻止する!」

シェオール:やはり……そうくるよな……。

ガンバ:ジャマだから一撃で首をはねてみるのはどうかな?

オードー:こらこら(苦笑)。

シェオール:「どけ。さもなくば…………殺す」
 

 静かな殺気を放つシェオール。それを敏感に感じ取ったのか赤ん坊のリディが泣き出し、その泣き声が更に緊張感を高めていく──
 

リューセ:「まあまあ。二人とも落ち着きましょう〜」

オードー:言うだけ無駄。なんかもう、口も手も出せない状態だべ……。

シェオール:(ライトセーバーを喉元に突きつけ)「もう一度だけ言う──どけ」

ゼナツー:「ゼッッタイどかない!」

シェオール:言葉での説得はムリか……。

GM:だね。

シェオール:……仕方あるまい。
 

 一瞬の出来事だった。

 ライトセーバーを解除し、光が散った瞬間ゼナツーの首筋に手刀をたたきこむ。
 

GM:がくっとヒザをつき、ゼナツーは気絶する。

シェオール:「許せよ。誰に何と言われようと……俺は自分を止めることはできない」

GM:そのとき──通路の奥から、足音が響いてくる。

シェオール:静かに……そっちの方を向く。
 

 シェオールの目に映ったのは……ゆっくりと歩み寄ってくる、ゲオルグ=オーケンシールド。
 

シェオール:「やはり……貴様か」

ゲオルグ:「忘れ物を取りに戻ってみれば…………まさかお前とここで会うことになるとはな、F−1」
 

 シェオールのライトセーバーに、光の刃が生じる。
 

ゲオルグ:「私を殺すか? だがそうすればゼナが悲しむだろうなァ……。(ニヤリと笑い)それでも……まだ父親を殺そうと思うのか?」

シェオール:「黙れ。俺とお前は親子ではない。云わば自分で自分の分身を斬るだけのこと」

ゲオルグ:「そうだったな…………我がクローン、ゼナユニットのひとりよ」

リューセ:……どういうこと?

GM:つまりゼナF−1・F−2・F−3ことシェオール・ゼナツー・ゼナはゲオルグのクローンであり、親子ですらないということだ。ちなみにシェオールはゲオルグのクローンを肉体的に強化したもの。ゼナツーはゲオルグの遺伝子情報を『フーリー』に埋め込んだもの。ゼナは……不明。

オードー:うーむ……そんな深い過去があったとは。

ガンバ:うーむ……そんな不快な過去があったとは。

シェオール:確かに不快ではあるな(苦笑)。

リューセ:どうでもいいけど、みんなで仲良くってワケにはいかないのですかねェ……。

シェオール:ムリだろうな。

リューセ:ゼナパパ、最初のころはただのギャグキャラだったのに……。よくここまで成長したものですゥ〜。

GM:俺もそう思うよ(笑)。

シェオール:リューセ、補助魔法使えるか?

リューセ:やっぱ、戦うしかないのかなァ……。

GM:ゲオルグの前に奇妙な生き物が──人の内臓とか宝石のような眼球とかをグチャグチャとからめ合わせたような生き物が3体、姿を現す。

オードー:「向こうも戦う気満々みてェだな……」(斧を取り出す)

リューセ:「でも……ゼナのお父さんなんだし……何とか話し合いで……どうにか納得がいくまで……」

シェオール:「コイツが話し合いに応じるようなヤツなら、俺は今頃こんなことしちゃいないさ」

リューセ:「でも……ゼナはお父さんのこと好きなんだし……解り合いたいと思ってるし……」
 

 どこかにお母さんがいるって信じてるんだよ……?
 

リューセ:「私は……戦ってほしくない……」
 
 

 どおおォォォ……ん!




リューセ:なに……? 爆発音……?

ゲオルグ:「……始まったようだな」

GM:ゲオルグはそう言うと、君たちに背を向ける。

シェオール:「逃げるのか!」

GM:ゲオルグは何も答えない。そしてまた爆発音。

シェオール:ここを……爆破するつもりか?

GM:もいっちょ近くでボォーン!

ガンバ:わたいの頭もボォーン!(←またかよ)

シェオール:今にも崩れ落ちそう?

GM:すぐに、ってワケではなさそう。でもぐずぐずしてたらヤバイだろうね。

シェオール:ゼナツーは気絶してるし……女子供もいるし……。……逃げるしかないか。

リューセ:そうだね。

シェオール:(舌打ちして)「いくぞ」
 

 こうして、シェオールたちは崩壊していく魔法科学研究所を後にしたのだった──



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