DAY1 【戦いは誰のために】 07


 月明かりが彼を照らす。
 

 「おなかいっぱい食べられますわね」
 

 トムは食事中にケイの言った何気ない一言を反芻していた。

 ……そうだ、もう減量する必要はない。あの地獄の苦しみを味わう事はない。

 それは同時に試合前の研ぎ澄まされた刃物のような感覚を、勝利した後の至極の快感を味わう事もないということだ。

 些細なミスから右拳を砕いて既に3ヶ月。

 肉体が衰えた気はしない、いや、むしろ筋肉はバランス良くついてる。トレーニングを欠かしてない証拠だ。

 しかし精神(こころ)は毎日のように、いや、一秒ごとに腐敗していくのを感じる。
 

 「筋はよいが覇気が感じられぬ」
 

 あの坊主の台詞を思い出す。
 

 ビュッビュッブンッ
 

 不安をかき消すようにシャドーを続ける。しかし彼の目にはいかなる影も映っていなかった。

(written by BK)

GM:では、そろそろお食事はおしまいってことで。

金太郎:「ふー、よう食うた。ごちそうさーん」

GM:夕食後のお茶&お酒で、トランプでも……というのが定番?

利迎院:ワシは寝る。一度隠しておいた刀を取りにいってからな。

金太郎:それぞれのグループに分かれるやろうけど。

GM:では、どう分かれるの?

金太郎:いや、高校生と、客と、オーナー系と。

GM:なるほど。

チャーリー:客とオーナーが一緒になる可能性もあるけども。

金太郎:そんでわいらは枕投げ。

マコ:外に向かって。

チャーリー:枕に硬いものを仕込んで。

金太郎:お決まり。

GM:おこちゃまめ。

マコ:昔の硬い枕を投げる。

GM:それは利迎院専用では。

チャーリー:うっかりぷにぷにしたくなるような枕も投げる。

金太郎:てんぴゅーる。

GM:テンピュールって高くないの?

金太郎:ぬぅ。

チャーリー:高いけど、お金持ちだから。

GM:それもそうか。──じゃあ、窓開けてるならちょうどいい。視覚判定だ。

金太郎:この寒いのに。

トム:あ、俺は外にいるからな。

チャーリー:誰、窓開けたの。

GM:窓の外に投げてるんじゃなかったんだ。

チャーリー:それは枕投げじゃないと思いマスが。

金太郎:チャーリーの枕だけ。それ採用。

マコ:ひどい意地悪だ。

チャーリー:ゴムひもついてるんデスよ。

マコ:ついてるだけなんだけどね。あるいはゴムひもが20メートルくらいある。

金太郎:「あかん手が滑ったぁ!」といってから投げる。……で、なんや、視覚判定?

GM:窓の外を見てる人、あるいは外にいる人は、どーぞ。

金太郎:ちょっと不自然やな。窓。まぁええか。

チャーリー:ま〜、窓の外を見てるかどうかだけなら、偶然そっち見てたとかでも。

金太郎:窓の外に投げた人は?

チャーリー:ほんとに投げたんデスか(笑)。だったらそっち(窓の外)見てそうデスネ。

金太郎:「あらぁ〜〜」といいながら見ていると。

トム:(コロコロとサイコロを振って)65。

金太郎:判定、23。余裕で成功、のはず。

チャーリー:ちなみに59。視覚だから失敗っぽいデスネ。

GM:トムと金太郎が成功だな。

金太郎:トム65で成功か。

GM:目がいいので、彼は。

トム:体がついていかないほどの超動体視力の持ち主なんだよ。

金太郎:意味ないというか、かえって怖いなそれは(笑)。

トム:弾丸がMATRIXのように見えるんだ。けど体が動かないの。怖い。

GM:窓の外に広がる別荘群と白い雪。その白い中、黒いコートを着た二人組の男が立っているのが見える。

金太郎:「お? あんなところに人がおるで。エージェントや、エージェント!」

チャーリー:「What? こんな時間に人デスカ?」(といいながら窓の外をよく見る)

金太郎:「ここはマトリックスなんや、謎は全て解けたでー!」

GM:チャーリーが見たときには、もう誰もいない。

金太郎:「あら、見失ってしもうた」

チャーリー:「こんな開けた場所で見失うデスカ? 見間違いじゃないデス?」

金太郎:「なんやとー、わいの目を疑うんかー!」

GM:ぎらぎらしたこの瞳を。

金太郎:くわっ、と見開いて。

チャーリー:「金ちゃん、誰しも過ちはあるものデス、罪を憎んで人を憎まずデ〜ス」

金太郎:「何でも見えるでー、あの遠くの看板も」

チャーリー:「なんて書いてありマスカ?」

金太郎:「ちゅ、ちゅ、……漢字読めへんけど見えてるねん」

チャーリー:(ふぅ、とアメリカンなカンジで肩をすくめる)

GM:うわー、むかつくー。

金太郎:ぐ、チャーリーのくせに……。

GM:殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやると願うのだ、さあ。

金太郎:そないネクラちゃうわ(笑)。「ほな自分読めるんかー、ああ?」

チャーリー:「愚問デスネ、もちろん読めまセン!」

GM:香港系なのに。

チャーリー:なのに読めないからこそ。

GM:なるほど。

金太郎:「ほれ見ぃ、目が良いぶんわいの勝ちや!」

GM:トムも人影に気づいたはずだけど。

トム:アレ? くらいには思うけど特に反応はしない。明らかに怪しい行動を取ってない限り。

GM:了解。

トム:突っ立ってるだけっしょ?

金太郎:それは怪しい。

マコ:いるだけであやしいけど。

GM:動いてないのには興味がないんだね、きっと。

トム:そこまで頭が回らない。従業員かも知れんし。このときトムは悩みごとを抱えているので本当に危険がデンジャーな時以外は無関心だよー。

GM:じゃー、あとは寝るだけかね?

金太郎:せやな。

GM:じゃー……最後に、『心』で判定してみて。
 

 サイコロを振る一同。
 

GM:(成功度を聞いて)じゃあ、チャーリーだけかな、気づくのは。

チャーリー:ほいほい。

金太郎:ぐ、負けた。

GM:うとうとと夢うつつの中、君は女性の悲鳴を聞いた気がした。でも睡魔に逆らうことはできず、そのまま夢の中へ……──というところで、今日はおしまい。

金太郎:言い逃げやな(笑)。

チャーリー:……その終わり方だと、めっちゃひどいやつに思えるんだけどっ(笑)。

GM:いいところで成功してくれる、そんな君が素敵だ。

チャーリー:さ、最低だぁ……(くぅ)。

<DAY1 END>

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