ACT13.5[わたしがふしぎ] 01

 見たくないものなど見ることなく。

 聞きたくないことなど聞くことなく。

 思い出したくないことなど思い出すこともなく。

 生きていければどんなに楽だろう。

 生きる……? 生きるとは、どのような状態のことをいうのだろうか。
 

 夢と記憶の違いとは何だ。
 

 とりとめのない、つながることのない思考の連鎖。

 聞こえていなかったものが聞こえ、見えなかったものが見えてくる。
 

 レイチェルは……目を覚ました。

 

GM:それじゃ、セッションを始めようか。時間軸的にはどのへんになるのかな。スノウが死んだあたり?

レイチェル:13話のラストか。わかった。

GM:あの辺り前後かと。たぶん、レイチェルは『結界』を解く定期的に『古の民』のところに通っているのだろう。

レイチェル:それより、話のあらすじをまとめてほしいのだけど。

GM:13話、『結界』が閉じてからはレイチェルはほとんど自警団の面々と別行動だった。

レイチェル:(うなずく)

GM:だからまだ、街で起こった悲劇は知らないはず。

レイチェル:知らない……そうだったか……?

GM:ああ、この場合は「悲劇」というのはスノウのこと。

レイチェル:(うなずく)

GM:その頃、レイチェルはまだ『古の民』のところにいる。これまでも『結界』装置関係で何度か訪ねていてるはず。

レイチェル:ずっと『結界』を操作したりしていたのか。

GM:操作、というか独立稼動、自動稼動だから。

レイチェル:

GM:人間の心臓と同じようなもので、レイチェルが自分の意志で操作してるワケではないです。

レイチェル:では私は何をしていたのだ。

GM:「何を」と聞かれると「何も」と答えるしかないな。「『結界』直りました?」「まだです」てかんじで。

レイチェル:それじゃあ、『結界』を操作したのは……? 『結界』を一回り小さくしよう、という試みがあったと思うのだが。

GM:小さく?

レイチェル:内側の『結界』をアクティブにして、何とか、という……。

GM:ああ、『二重結界』か(ACT11.0参照)。あれは、敵から自分たちを守るために発動させようとしてたわけで、敵がいなくなった今となっては発動させるメリットは何もない。

レイチェル:『結界』は誰にも操作できないと……? 発動させるのは誰?

GM:発動権限を持っているのは、『古の民』の長かな。レイチェルはそのパイプというか、ビデオのリモコンのようなものというか。『結界』を発動させてるモノは別にあるんだけど、それへのアクセスを行うのにレイチェルが必要、とでもいうか。

レイチェル:私は『結界』のインターフェイス、というわけか。

GM:そだね。でもそのへんのことをよく分かってない人(古の民)もいるようで、「レイチェルを破壊すれば『結界』が消えるのでは?」と言う者もいる。

レイチェル:なるほど。ゲート(外へつながる門のこと)が開かず、どうしようか、というくらいだな。

GM:うむ。古の民も、何も知らない者の方が多い。……てことで、『古の民』の長――エイドシックとの何度かのセッションの様子をやりますか。セッションというか会話、やりとりね。

レイチェル:分かった。

GM:時間はちょっと戻って、『結界』が閉じてからすぐぐらいの頃だ。──では、ええと、『古の民』の集落です。

レイチェル:私はなぜここに来るのか……?

GM:『古の民』が、『結界』について調べるためでしょう。『結界』へのアクセスにはレイチェルが必要だ。

レイチェル:分かった。

GM:で、エイドシック直属の部下がレイチェルを介して『結界』装置を調べてる間、君はエイドシックと世間話をしている、と(笑)。

レイチェル:できるのか?(笑)

GM:できるのでしょう。

レイチェル:今は、まだ何も起きていないと。

GM:そうだね。食料問題も、古の民には関係ない(自給自足だから)

エイドシック:「こんにちは、レイチェル」

レイチェル:「…………」(うなずく)

エイドシック:「気分はどうです?」

レイチェル:「特に障害はありません。感覚器に微小な不具合があるようですが、誤差の範囲内です」

エイドシック:「そうですか……。それは大変結構……」

レイチェル:「ゲートは開きそうですか。早くしなければ街の人々は……」

エイドシック:「心配、ですか?」

レイチェル:「……………………」(うなずく)

エイドシック:「そうですか……。(笑みを浮かべて)そうですか。あなたは、大変優しい心の持ち主のようだ」

レイチェル:「…………」

エイドシック:「レイチェル、『心』とは何でしょうね」

レイチェル:ぬぅ。

GM:難しい?

レイチェル:「知識・感情・意思の総体。データベースにはそう記されていますが……私は理解できていません」

エイドシック:「あは、あはははははは、楽しい人ですねぇ、あなたは」

レイチェル:「長は、どのように考えていますか…?」

GM:そう来たか

レイチェル:ふふ。

エイドシック:「心は……人の心は『罪の証』です。そして、不完全の証でもある」

レイチェル:「……心を持つ人間は、罪を持ち、不完全である、ということですか……?」

エイドシック:「そう、だから、人はきっと、心を捨てなければ完全なる存在にはなれないのでしょう」

レイチェル:「心を捨てる……? 完全なる存在…………? 私には、やはり理解できません。それが、長の考えですか……?」

エイドシック:(笑って)「『一般論』ですよ。……是非、あなたのデータベースに刻んでおいてください」

レイチェル:「……分かりました」



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