そこは、人がふたり並んでやっと通れるような幅しかない洞窟だった。
南へ向かって、ゆるやかに下っている。
GM:やがてドーム状の地底空間に出る。ヴァイスが灯した魔法の明かりに浮かび上がったのは、巨大な湖だ。空間のほどんどを埋め尽くしてるようなかんじだね。半径500メートルぐらいかな。
フウゲツ:おっきいなぁ……。
GM:特に何か飾りとか建造物とかあるわけではないけど、どことなく荘厳な雰囲気だ。
レイチェル:彼らにとって神聖な場所……。
GM:レイチェル、『心』で判定。現在位置の確認だ。
レイチェル:(コロコロ)問題ない。
GM:距離や方角から考えて、どうやら湖の中心が街の中心──君がいつも立ってる噴水の真下ではないかと。
レイチェル:なるほど……。みんなに、そのことを話そう。
エミリー:え、そんなに歩きましたっけ?
GM:直線距離にしたら、森からここまでそんなに遠いワケではないからね。森の中で何時間も迷う方が本来おかしいワケだし。
シュリ:道案内が悪いのよ。
フウゲツ:さあ、『孔雀石』を探そうぜ〜!
ユリア:ツルハシ片手にそこらじゅうを掘って。
レイチェル:そういうことをしてはいけない。
エミリー:どんな石か分かってるんですか?
シュリ&ユリア:(一瞬間をおいて)……書いてあるんじゃない?
GM:そんな見事にハモらなくても(笑)。
フウゲツ:どんな石なのか聞いてくるのをすっかり忘れてた……。
GM:じゃ、まず知ってるかどうか判定してもらおうか。
ヴァイス:(コロコロ)05。……ものすごくよく知ってる。
ユリア:「この石と同じモノを……」とポケットから取り出すのれすね。
GM:自分が知ってるから、みんなも知ってると思ったのか……?(笑)
ユリア:ヴァイスは秘密主義れすから。
ヴァイス:じゃあ、みんなにどういう石か説明するけど。
GM:まず、水の中にある。
フウゲツ:(フンドシ一枚になって)「よし、俺がいきます! 寒中水泳だぜ!」
GM:そして、『魔力感知』すると光って見える。
フウゲツ:……魔力感知できない(笑)。
ヴァイス:……僕だけ潜って探せと?
シュリ:あたしもエミリーもできるけど、魔力感知。
GM:エミリーが泳ぐと化粧が落ちて大変なことに。
エミリー:それは大丈夫だけど──化粧なんかしてないから。
GM:……それはウソだよ。28歳が20歳と言ってるくせに。
エミリー:やかましい。……でも裸にならないといけないのがちょっと。
シュリ:服着たままでもいいじゃない。
エミリー:濡れるのいやん。
シュリ:下着だけでも。
エミリー:それでも濡れるのには変わりないでしょ?
GM:……つーか、エミリーの裸ってなーんか見たくないぞ(笑)。
シュリ:年齢は……28なら、問題ないか。……やっぱ、性格の問題?
フウゲツ:黙ってれば美人なのに。
ユリア:島崎和○子みたいなかんじ?
GM:ああ、なんかそんなかんじかも。
エミリー:ヒドイ……。
シュリ:ちょっと待って。湖って、結構大きかったよね?
GM:うん。直径約500メートル、深さ約200メートルの、すり鉢状の湖。水の透明度は高いよ。
シュリ:それだと、素潜り辛くない?
フウゲツ:<水中呼吸>や<水圧軽減>の魔法を使えばいいだろ。持続時間や効果が小さいヤツなら、レベルが低くても使えるはずだ。
GM:そういう補助系の魔法を使えるのはエミリーだね。
エミリー:魔法使ってへろへろになってから、泳いでいって潜るのはツライです。
フウゲツ:じゃあ、魔力感知できて、体力もある人。
ヴァイス:体力がない(笑)。
シュリ:あたしがいこうか。
ユリア:それと、呼吸も水圧も関係ない人がいるじゃないれすか。
レイチェル:私か。
シュリ:じゃあ、あたしとレイチェルがいくってことで。
レイチェル:……あまり気が進まないが。
ヴァイス:そうなの? でも命令には逆らえないんでしょ?
レイチェル:それはそうだが……。
シュリ:レイチェルが来ないと始まらないし。──明かりは魔法があるとして……服を脱がないといけないのが。
ユリア:緑色のヤツの目を潰すだけで、簡単に問題解決。
シュリ:……フウゲツに見られるのがどっちかと言うと……。
フウゲツ:見ない! 俺は見ないぞ!
シュリ:それが信用できないんだってば。
フウゲツ:いや、見ない!(湖に背を向ける)
ヴァイス:僕も……。
シュリ:その前に、銃の先に<明かり>つけてよ。
ヴァイス:はいはい。
エミリー:では、シュリに<水中呼吸>と<水圧軽減>の魔法を。(コロコロ)1回ファンブル(笑)。余計な疲労を……。
シュリ:(呪文がかかったのを確認して)じゃ、いってくる。
手早くを服を脱ぎ下着姿になると、シュリは湖の中へ入っていった。魔法のおかげで、水もそこまで冷たくは感じない。
そしてレイチェルは──
レイチェル:(じっと水面を見つめてる)
シュリ:「……どうかした?」
レイチェル:「いや……」
シュッと軽い音を立て、『ローゼンクランツ』──全身を覆っていた『鎧』がバックパックに収納された。
それと同時にピッタリと身体にフィットしていた黒いスーツも脱げ、『鎧』同様収納される。
バックパックがゴトリっと地面に落ち……レイチェルの白い裸身があらわになった。
フウゲツ:うはぁ……。
シュリ:見るなって言ってるでしょーが。
フウゲツ:ごめん、今のはプレイヤー発言ってことで。
レイチェル:いこう。
泳ぐというより湖底を歩くようにして、ふたりは水の中を進んでいった……。