ACT9.0[ゆがみのむこう] 08


 そこは、人がふたり並んでやっと通れるような幅しかない洞窟だった。

 南へ向かって、ゆるやかに下っている。
 

GM:やがてドーム状の地底空間に出る。ヴァイスが灯した魔法の明かりに浮かび上がったのは、巨大な湖だ。空間のほどんどを埋め尽くしてるようなかんじだね。半径500メートルぐらいかな。

フウゲツ:おっきいなぁ……。

GM:特に何か飾りとか建造物とかあるわけではないけど、どことなく荘厳な雰囲気だ。

レイチェル:彼らにとって神聖な場所……。

GM:レイチェル、『心』で判定。現在位置の確認だ。

レイチェル:(コロコロ)問題ない。

GM:距離や方角から考えて、どうやら湖の中心が街の中心──君がいつも立ってる噴水の真下ではないかと。

レイチェル:なるほど……。みんなに、そのことを話そう。

エミリー:え、そんなに歩きましたっけ?

GM:直線距離にしたら、森からここまでそんなに遠いワケではないからね。森の中で何時間も迷う方が本来おかしいワケだし。

シュリ:道案内が悪いのよ。

フウゲツ:さあ、『孔雀石』を探そうぜ〜!

ユリア:ツルハシ片手にそこらじゅうを掘って。

レイチェル:そういうことをしてはいけない。

エミリー:どんな石か分かってるんですか?

シュリ&ユリア:(一瞬間をおいて)……書いてあるんじゃない?

GM:そんな見事にハモらなくても(笑)。

フウゲツ:どんな石なのか聞いてくるのをすっかり忘れてた……。

GM:じゃ、まず知ってるかどうか判定してもらおうか。

ヴァイス:(コロコロ)05。……ものすごくよく知ってる。

ユリア:「この石と同じモノを……」とポケットから取り出すのれすね。

GM:自分が知ってるから、みんなも知ってると思ったのか……?(笑)

ユリア:ヴァイスは秘密主義れすから。

ヴァイス:じゃあ、みんなにどういう石か説明するけど。

GM:まず、水の中にある。

フウゲツ:(フンドシ一枚になって)「よし、俺がいきます! 寒中水泳だぜ!」

GM:そして、『魔力感知』すると光って見える。

フウゲツ:……魔力感知できない(笑)。

ヴァイス:……僕だけ潜って探せと?

シュリ:あたしもエミリーもできるけど、魔力感知。

GM:エミリーが泳ぐと化粧が落ちて大変なことに。

エミリー:それは大丈夫だけど──化粧なんかしてないから。

GM:……それはウソだよ。28歳が20歳と言ってるくせに。

エミリー:やかましい。……でも裸にならないといけないのがちょっと。

シュリ:服着たままでもいいじゃない。

エミリー:濡れるのいやん。

シュリ:下着だけでも。

エミリー:それでも濡れるのには変わりないでしょ?

GM:……つーか、エミリーの裸ってなーんか見たくないぞ(笑)。

シュリ:年齢は……28なら、問題ないか。……やっぱ、性格の問題?

フウゲツ:黙ってれば美人なのに。

ユリア:島崎和○子みたいなかんじ?

GM:ああ、なんかそんなかんじかも。

エミリー:ヒドイ……。

シュリ:ちょっと待って。湖って、結構大きかったよね?

GM:うん。直径約500メートル、深さ約200メートルの、すり鉢状の湖。水の透明度は高いよ。

シュリ:それだと、素潜り辛くない?

フウゲツ:<水中呼吸>や<水圧軽減>の魔法を使えばいいだろ。持続時間や効果が小さいヤツなら、レベルが低くても使えるはずだ。

GM:そういう補助系の魔法を使えるのはエミリーだね。

エミリー:魔法使ってへろへろになってから、泳いでいって潜るのはツライです。

フウゲツ:じゃあ、魔力感知できて、体力もある人。

ヴァイス:体力がない(笑)。

シュリ:あたしがいこうか。

ユリア:それと、呼吸も水圧も関係ない人がいるじゃないれすか。

レイチェル:私か。

シュリ:じゃあ、あたしとレイチェルがいくってことで。

レイチェル:……あまり気が進まないが。

ヴァイス:そうなの? でも命令には逆らえないんでしょ?

レイチェル:それはそうだが……。

シュリ:レイチェルが来ないと始まらないし。──明かりは魔法があるとして……服を脱がないといけないのが。

ユリア:緑色のヤツの目を潰すだけで、簡単に問題解決。

シュリ:……フウゲツに見られるのがどっちかと言うと……。

フウゲツ:見ない! 俺は見ないぞ!

シュリ:それが信用できないんだってば。

フウゲツ:いや、見ない!(湖に背を向ける)

ヴァイス:僕も……。

シュリ:その前に、銃の先に<明かり>つけてよ。

ヴァイス:はいはい。

エミリー:では、シュリに<水中呼吸>と<水圧軽減>の魔法を。(コロコロ)1回ファンブル(笑)。余計な疲労を……。

シュリ:(呪文がかかったのを確認して)じゃ、いってくる。
 

 手早くを服を脱ぎ下着姿になると、シュリは湖の中へ入っていった。魔法のおかげで、水もそこまで冷たくは感じない。

 そしてレイチェルは──
 

レイチェル:(じっと水面を見つめてる)

シュリ:「……どうかした?」
 
レイチェル:「いや……」
 

 シュッと軽い音を立て、『ローゼンクランツ』──全身を覆っていた『鎧』がバックパックに収納された。

 それと同時にピッタリと身体にフィットしていた黒いスーツも脱げ、『鎧』同様収納される。

 バックパックがゴトリっと地面に落ち……レイチェルの白い裸身があらわになった。

フウゲツ:うはぁ……。

シュリ:見るなって言ってるでしょーが。

フウゲツ:ごめん、今のはプレイヤー発言ってことで。

レイチェル:いこう。
 

 泳ぐというより湖底を歩くようにして、ふたりは水の中を進んでいった……。



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