ACT7.0[いつもみている]08

フウゲツ:「……自然にできた水路、ではなさそうだな……」
 

 縄ばしごで涸れた地下水路に降りたフウゲツは、上から降ってくる水に注意しながらカンテラをかざした。
 

ヴァイス:「そうですね。でも、人工物にしては岩肌がゴツゴツしているような気も……」

フウゲツ:(上を見上げて)「あとは誰も来ないのかー?」

シュリ:「ゴメン……足がすくんじゃって全然ダメ……」(←暗所恐怖症判定でファンブルを振った)


 シュリは、ギリッと奥歯を噛んだ。

 我ながら情けないが……こればかりはどうしようもない。

 闇。全てを包む闇。自分を押しつぶそうとする闇。

 闇の中での日々。たったひとりでの日々。

 気が狂うかと思った。狂わない方がおかしかった。

 暗くて。孤独で。さびしくて。

 そんな中で身につけた、欲しくもない『技』

 生きるための知恵。手段。生と死をつかさどる。

 『生』の技能は、ちゃっかり使わせてもらっている。

 回復魔法は、生きるための手段だ。

 でも……

 (誰が使うもんか……)

 『死』の技も、自らの血が持つ力も。

 父が……憎かった。

 人のぬくもりが……恋しくなった。
 

スノウ:「あたしが、シュリの傍にいますからー」

レイチェル:「私も」

フウゲツ:(苦笑して)「分かった。シュリのこと頼んだぞー」

ユリア:「ユリアはいくれす。……イヤな気配がするけど」

GM:地下水路に降りたのは、ヴァイス・フウゲツ・ユリアだね。水路の片方は、地盤が崩れて埋まってしまっている。たぶん、この土砂の向こうに水があるんだろうね。反対側はずーっと奥まで続いてて、闇の中に消えている。

フウゲツ:「奥にいくか」
 

 水路は途中で分岐しながら、随分と奥まで続いていた。
 

GM:やがて、水のせいで進めなくなってるトコにたどり着く。奥に明かりをかざしても、延々と水が続いているようだ。

フウゲツ:「分岐点があったよな。そこまで戻って、別の道をいこう」

GM:では分岐点まで戻った。──ヴァイス、ちょっと魔力感知してみて。

ヴァイス:(コロコロ)ギリギリで成功してるけど。

GM:この水路全体から弱い魔法力を感じることができるんだけど、分岐点の天井に特に強い魔力の波動が。

ヴァイス:何だろう? 上を見てみる。

GM:魔法装置だね。

ヴァイス:何の魔法か分かる?

GM:高いところにあるからよく見えないけど、『水』に関係するものだ。流れを制御する、みたいな。

ヴァイス:水路の流れを操作する装置なのかな……?

フウゲツ:「先に進むぞ」
 

 歩を進める3人。だが結局──どの水路を進んでも、水で行き止まりとなっていた。


幽霊屋敷見取り図(地下水路)

フウゲツ:「何なんだ、ここ」

ヴァイス:「ホントに」

ユリア:「戻りましょー。何だかどんどんイヤな予感が強くなってきたれす」

GM:じゃ、元の縄ばしごのトコまで戻ってきたよ。

フウゲツ:(上を見上げて)「シュリー、大丈夫かー?」

シュリ:「な、何とか……。スノウをぎゅーっと抱きしめてたから」

フウゲツ:「ぬを(なんてうらやましいことを……)

GM:ではここで気配感知ー!

ヴァイス:(コロコロ)99。……ファンブル。

GM:わはは、ちょうど土砂崩れのところに背を向けていたのだな。──岩から、すうーっと光の筋が出てきたかと思うと、ヴァイス目がけて突っ込んでくる。

ヴァイス:え?! それはかわそうとするけど。

GM:ファンブルしたからダメ。足がもつれたヴァイスは、その光──霊魂に弾き飛ばされる。

ヴァイス:霊魂!? 何でそんなものがー!

GM:次々を姿を現す霊魂――思念体、あるいは残留思念――たち。崩れた岩盤のところを出たり入ったりしながら、暴れまわっている。──あ、石畳の部屋の方にも何体か出ていくから。

レイチェル:(恐怖で固まってる)

スノウ:「いやあああああああッッ!」

フウゲツ:「ユリア、早く縄ばしごで上に!」

ユリア:猿のように上っていく。

フウゲツ:それに続いて俺も。

ヴァイス:ああああ、待って〜!

GM:霊魂たちが消える気配はない。水と土砂崩れの辺りをウロウロしてる。

ヴァイス:「水に関係あるのかな……」

フウゲツ:水があふれてる方も地下水路なんだよね? 誰か中を覗いてみるか?

ヴァイス:……誰が。

フウゲツ:ヴァイス。

ヴァイス:やっぱり。

GM:どーする?

ヴァイス:やる。やりますよ。──水に顔を突っ込んで、中を見てみる。

GM:霊魂がうようよといる中、そういうことをするワケやね。

一同:うー……。

ヴァイス:で、どんなかんじ?

GM:暗くてよく見えない(笑)。

ヴァイス:ぐッ……。なら、魔法の明かりを水の中に落としてみるけど。

GM:水の中を照らし出しながら沈んでいく魔法の光。そうすると……水の底の方に、白いモノが見えた。人の骨みたいだね。

ヴァイス:この霊魂たちの死体が、アレ……?

フウゲツ:てことは、供養してやれば消えるのか?

ヴァイス:どうやって?

シュリ:骨を拾って供養すればいいんじゃない? それか、ここの岩盤ブチ抜いて水が流れるようにしてやるか。

フウゲツ:両方しよう。供養はトキオさんに頼むとして……

ヴァイス:骨を拾ったり、トンネル掘ったりするのは?

一同:ヴァイス。

ヴァイス:……やっぱりか。何で僕なのさ。力だったらフウゲツさんの方があるし。

GM:<水中呼吸>とか<トンネル>とかの魔法使えるのヴァイスだけだろ。エミリーいないし。

ヴァイス:……そういう魔法、使えていいの?

GM:いいよ。今回、魔法はイマジネーションだから(笑)。

ヴァイス:くうううう……。

シュリ:トンネルを掘るヴァイス。勢いよく流れていく水。それに飲み込まれていくヴァイス。……カッコイイわねー。

ヴァイス:どこがだよ。

シュリ:かっこいいじゃない。エアロスミスの曲を流したいぐらいカッコイイわよ。

GM:じゃ、そういうことで。

ヴァイス:はああぁぁぁ……(ため息)。

 2日後──

GM:地下水路の水も無事流れるようになり、白骨死体とワイン漬け死体の供養も無事終わりました。大掛かりな改修はまだだけど掃除も一通り済んで、何とか人が住めるようになったし。

ユリア:よく考えたら……死体が誰だったのかも、それを行った人物のことも、何も分かってないんじゃ。

レイチェル:あの地下水路が何だったのかも。

GM:そうだね。とりあえず、住む場所を確保しただけ。謎だった部分は何一つ解けてない(笑)。

フウゲツ:……いいのか、それで……?

ヴァイス:GMがまとめに入ってるから、いいのでは?

GM:(謎が解けるのは、まだまだ先のことだしね)──さて、今日は『寮』の食堂で『寮ができておめでとうパーティ』です。

一同:ほうほう。

GM:どんちゃん楽しくやってくれい。

シュリ:飲むぞぉー! ……プレイヤーは飲めないけど。

ヴァイス:僕も、ちびちび飲んでおこう。

スノウ:「あによ、あらしの酒がのめらいっていふのぅ?」

ヴァイス:「……スノウ、メチャメチャ酔ってるね」

ユリア:「ところでこのワイン、どこから持ってきたんれすか?」

シュリ:「ブフッッ、まさか地下から……」

ユリア:「さあ。ユリアは知りませーん」

スノウ:「きゃはははははははは」(←笑い上戸)

ユリア:「でね、でね、ユリアは猫を見たんれす」

レイチェル:「猫はいなかった。間違いなく」

ユリア:「絶対見たんれす! アレは、猫の目ッ!」

レイチェル:「落ち着け、ユリア」

GM:では、ここで気配感知の判定を。

シュリ:(コロコロ)98のファンブル! 泥酔してるみたい。弱いくせに飲み過ぎたのね(笑)。

ユリア:(コロコロ)100でファンブルとか振ってしまったれす。ヘロヘロれすね。

フウゲツ:(コロコロ)07で成功。きっと飲んでなかったんだな。……プレイヤーと一緒で。

GM:フウゲツが気づいたか(ちょうどよかったな……)。──フウゲツ、何か視線を感じる。

フウゲツ:(シュリを見て)……よかった、見られてない。

GM:いや、シュリの視線ではなくて。
 

 廊下へと続く扉が、少し開いている。そしてそこに──女性が立っていた……気がした。

 扉の陰から、じっとこちらを見ていた……
 

フウゲツ:(そんな……バカな……)
 

 頭が混乱する。 でも。
 

フウゲツ:(酔ったか……? ──って、飲んでないだろ、俺……)
 

 確かに見た。
 

フウゲツ:(あれは……ノエルだった……)
 

 じっとこちらを見ていたのは……スノウの姉、ノエル=オルドレースに間違いなかった……。
 
 

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来訪者たちが、危機を告げる。
『結界』の修復を行うため、
僕らは森の奥へ向かった。
地底湖に眠るモノ。
歪みの向こうに見えたモノ。
それは古からの秘密。
それは……<ウロボロス>



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