縄ばしごで涸れた地下水路に降りたフウゲツは、上から降ってくる水に注意しながらカンテラをかざした。
ヴァイス:「そうですね。でも、人工物にしては岩肌がゴツゴツしているような気も……」
フウゲツ:(上を見上げて)「あとは誰も来ないのかー?」
シュリ:「ゴメン……足がすくんじゃって全然ダメ……」(←暗所恐怖症判定でファンブルを振った)
シュリは、ギリッと奥歯を噛んだ。
我ながら情けないが……こればかりはどうしようもない。
闇。全てを包む闇。自分を押しつぶそうとする闇。
闇の中での日々。たったひとりでの日々。
気が狂うかと思った。狂わない方がおかしかった。
暗くて。孤独で。さびしくて。
そんな中で身につけた、欲しくもない『技』
生きるための知恵。手段。生と死をつかさどる。
『生』の技能は、ちゃっかり使わせてもらっている。
回復魔法は、生きるための手段だ。
でも……
(誰が使うもんか……)
『死』の技も、自らの血が持つ力も。
父が……憎かった。
人のぬくもりが……恋しくなった。
スノウ:「あたしが、シュリの傍にいますからー」
レイチェル:「私も」
フウゲツ:(苦笑して)「分かった。シュリのこと頼んだぞー」
ユリア:「ユリアはいくれす。……イヤな気配がするけど」
GM:地下水路に降りたのは、ヴァイス・フウゲツ・ユリアだね。水路の片方は、地盤が崩れて埋まってしまっている。たぶん、この土砂の向こうに水があるんだろうね。反対側はずーっと奥まで続いてて、闇の中に消えている。
フウゲツ:「奥にいくか」
水路は途中で分岐しながら、随分と奥まで続いていた。
GM:やがて、水のせいで進めなくなってるトコにたどり着く。奥に明かりをかざしても、延々と水が続いているようだ。
フウゲツ:「分岐点があったよな。そこまで戻って、別の道をいこう」
GM:では分岐点まで戻った。──ヴァイス、ちょっと魔力感知してみて。
ヴァイス:(コロコロ)ギリギリで成功してるけど。
GM:この水路全体から弱い魔法力を感じることができるんだけど、分岐点の天井に特に強い魔力の波動が。
ヴァイス:何だろう? 上を見てみる。
GM:魔法装置だね。
ヴァイス:何の魔法か分かる?
GM:高いところにあるからよく見えないけど、『水』に関係するものだ。流れを制御する、みたいな。
ヴァイス:水路の流れを操作する装置なのかな……?
フウゲツ:「先に進むぞ」
歩を進める3人。だが結局──どの水路を進んでも、水で行き止まりとなっていた。
幽霊屋敷見取り図(地下水路)
フウゲツ:「何なんだ、ここ」
ヴァイス:「ホントに」
ユリア:「戻りましょー。何だかどんどんイヤな予感が強くなってきたれす」
GM:じゃ、元の縄ばしごのトコまで戻ってきたよ。
フウゲツ:(上を見上げて)「シュリー、大丈夫かー?」
シュリ:「な、何とか……。スノウをぎゅーっと抱きしめてたから」
フウゲツ:「ぬを(なんてうらやましいことを……)」
GM:ではここで気配感知ー!
ヴァイス:(コロコロ)99。……ファンブル。
GM:わはは、ちょうど土砂崩れのところに背を向けていたのだな。──岩から、すうーっと光の筋が出てきたかと思うと、ヴァイス目がけて突っ込んでくる。
ヴァイス:え?! それはかわそうとするけど。
GM:ファンブルしたからダメ。足がもつれたヴァイスは、その光──霊魂に弾き飛ばされる。
ヴァイス:霊魂!? 何でそんなものがー!
GM:次々を姿を現す霊魂――思念体、あるいは残留思念――たち。崩れた岩盤のところを出たり入ったりしながら、暴れまわっている。──あ、石畳の部屋の方にも何体か出ていくから。
レイチェル:(恐怖で固まってる)
スノウ:「いやあああああああッッ!」
フウゲツ:「ユリア、早く縄ばしごで上に!」
ユリア:猿のように上っていく。
フウゲツ:それに続いて俺も。
ヴァイス:ああああ、待って〜!
ヴァイス:「水に関係あるのかな……」
フウゲツ:水があふれてる方も地下水路なんだよね? 誰か中を覗いてみるか?
ヴァイス:……誰が。
フウゲツ:ヴァイス。
ヴァイス:やっぱり。
GM:どーする?
ヴァイス:やる。やりますよ。──水に顔を突っ込んで、中を見てみる。
GM:霊魂がうようよといる中、そういうことをするワケやね。
一同:うー……。
ヴァイス:で、どんなかんじ?
GM:暗くてよく見えない(笑)。
ヴァイス:ぐッ……。なら、魔法の明かりを水の中に落としてみるけど。
GM:水の中を照らし出しながら沈んでいく魔法の光。そうすると……水の底の方に、白いモノが見えた。人の骨みたいだね。
ヴァイス:この霊魂たちの死体が、アレ……?
フウゲツ:てことは、供養してやれば消えるのか?
ヴァイス:どうやって?
シュリ:骨を拾って供養すればいいんじゃない? それか、ここの岩盤ブチ抜いて水が流れるようにしてやるか。
フウゲツ:両方しよう。供養はトキオさんに頼むとして……
ヴァイス:骨を拾ったり、トンネル掘ったりするのは?
一同:ヴァイス。
ヴァイス:……やっぱりか。何で僕なのさ。力だったらフウゲツさんの方があるし。
GM:<水中呼吸>とか<トンネル>とかの魔法使えるのヴァイスだけだろ。エミリーいないし。
ヴァイス:……そういう魔法、使えていいの?
GM:いいよ。今回、魔法はイマジネーションだから(笑)。
ヴァイス:くうううう……。
シュリ:トンネルを掘るヴァイス。勢いよく流れていく水。それに飲み込まれていくヴァイス。……カッコイイわねー。
ヴァイス:どこがだよ。
シュリ:かっこいいじゃない。エアロスミスの曲を流したいぐらいカッコイイわよ。
GM:じゃ、そういうことで。
ヴァイス:はああぁぁぁ……(ため息)。
2日後──
GM:地下水路の水も無事流れるようになり、白骨死体とワイン漬け死体の供養も無事終わりました。大掛かりな改修はまだだけど掃除も一通り済んで、何とか人が住めるようになったし。
ユリア:よく考えたら……死体が誰だったのかも、それを行った人物のことも、何も分かってないんじゃ。
レイチェル:あの地下水路が何だったのかも。
GM:そうだね。とりあえず、住む場所を確保しただけ。謎だった部分は何一つ解けてない(笑)。
フウゲツ:……いいのか、それで……?
ヴァイス:GMがまとめに入ってるから、いいのでは?
GM:(謎が解けるのは、まだまだ先のことだしね)──さて、今日は『寮』の食堂で『寮ができておめでとうパーティ』です。
一同:ほうほう。
GM:どんちゃん楽しくやってくれい。
シュリ:飲むぞぉー! ……プレイヤーは飲めないけど。
ヴァイス:僕も、ちびちび飲んでおこう。
スノウ:「あによ、あらしの酒がのめらいっていふのぅ?」
ヴァイス:「……スノウ、メチャメチャ酔ってるね」
ユリア:「ところでこのワイン、どこから持ってきたんれすか?」
シュリ:「ブフッッ、まさか地下から……」
ユリア:「さあ。ユリアは知りませーん」
スノウ:「きゃはははははははは」(←笑い上戸)
ユリア:「でね、でね、ユリアは猫を見たんれす」
レイチェル:「猫はいなかった。間違いなく」
ユリア:「絶対見たんれす! アレは、猫の目ッ!」
レイチェル:「落ち着け、ユリア」
GM:では、ここで気配感知の判定を。
シュリ:(コロコロ)98のファンブル! 泥酔してるみたい。弱いくせに飲み過ぎたのね(笑)。
ユリア:(コロコロ)100でファンブルとか振ってしまったれす。ヘロヘロれすね。
フウゲツ:(コロコロ)07で成功。きっと飲んでなかったんだな。……プレイヤーと一緒で。
GM:フウゲツが気づいたか(ちょうどよかったな……)。──フウゲツ、何か視線を感じる。
フウゲツ:(シュリを見て)……よかった、見られてない。
GM:いや、シュリの視線ではなくて。
廊下へと続く扉が、少し開いている。そしてそこに──女性が立っていた……気がした。
扉の陰から、じっとこちらを見ていた……
フウゲツ:(そんな……バカな……)
頭が混乱する。 でも。
フウゲツ:(酔ったか……? ──って、飲んでないだろ、俺……)
確かに見た。
フウゲツ:(あれは……ノエルだった……)
じっとこちらを見ていたのは……スノウの姉、ノエル=オルドレースに間違いなかった……。
来訪者たちが、危機を告げる。
『結界』の修復を行うため、 僕らは森の奥へ向かった。 地底湖に眠るモノ。 歪みの向こうに見えたモノ。 それは古からの秘密。 それは……<ウロボロス> |