ACT1.0[それがはじまり] 05

エミリー:「とにかく、伝えましたからね!」

シュリ:「だから、行かないってば」

エミリー:「行ってください! 自警団でしょ?」

GM:エミリーもね(笑)。

シュリ:そーね、じゃ、エミリーがんばって〜。

エミリー:「いや、そんな、わたしじゃ腕は立たないから……」

シュリ:(聞いてない)「タバコ屋のミケが逃げたらしいんだけど、誰が探しにいく〜?」

スリーアイ「……オレがいこう」

一同:お前か(笑)。

GM:何をするにも一生懸命だからね、彼は。

シュリ:なら、スリーアイにお願いしようかな。──んじゃ、対猫探し装備をッ!

GM:はい?

シュリ:ものすごいハイテクで厳重な扉を開けると、中にねこじゃらしとネコ缶が入ってる。

レイチェル:いや、何もない真っ白の空間で、遠くから大量のねこじゃらしがガーッと迫ってくる。

GM:マト○ックスか。

レイチェル:で、立ち位置を間違って激しく衝突。

シュリ:鼻のところをぶわーっとなでていってもイヤだね〜。

GM:そーゆー妄想はさておき、スリーアイは猫探しに行くよ。

シュリ:ホントに行っちゃったんだ。……悪いことしたかな。

GM:マジメだからね、彼は。

シュリ:じゃ、次に水道管の修理を……。

エミリー:自警団て一体……。

レイチェル:普段はだべってるだけ?

ユリア:自警団とは名ばかりで、実は街のチンピラの集まり。

GM:チンピラではないけど……自衛隊みたいなもん?

ユリア:あるイミそうかも。

シュリ:ネコ探しとか水道管の修理とか祭りの準備とか、結構忙しいんじゃない?

ユリア:なんか……自警団っていうより青年団ってかんじ……。

シュリ:今、何時ぐらい?

GM:昼の2時ぐらいかな。

シュリ:「おなかすいたね」

カーキ:「そーいや昼飯まだだったな」

エミリー:「あ、そうそう、領主様のとこ、今夜カレーだって言ってました」

シュリ:「よし、食べにいこう」

エミリー:「……はい?」

カーキ:「よし、いくか」

シア:「わーい、ごはん〜」

エミリー:(頼りないなぁ……。ロボ子(レイチェルのこと)にも声かけた方がいいかも……)

 酒場『デメルング』──

ユリア:「え、カレーですか? 食べたいです連れていってください」

レイチェル:「………………」

エミリー:なんか違う気もするけど……いいことにしましょう。
 

 こうして、ユリア・エミリー・レイチェル・シュリ・カーキ・シアの6人はゲインの家へ向かった。

 領主ゲインの家──

エミリー:「お招きいただいて恐悦至極〜」

シュリ:さあみんな、マイスプーンを出すのよ!

GM:どういう集団なんだか……。

エミリー:「で、頼み事とはいったい何です?」

ゲイン:「まあ……カレーを食べながら聞いてくれ」

シュリ:(一口食べて)「もうちょっと煮込んだ方がいいかも」

セツ:「ごめんなさいね、なにせ夕飯用だったから、これから煮込むとこだったのよ」

ユリア:「でもおいしいですぅ」

レイチェル:「……みんな、話を聞こう」

ゲイン:「実はね……最近街の外れでゴブリンが出るらしいんだ」

シュリ:ゴブリン!

ユリア:そういうモンスター、この世界<キャンバス>にいたんだ。

GM:うん、今までメジャーなモンスターって出したことなかったなぁって思って。TRPGの基本中の基本をやっておこうかと。

ユリア:第四部(今回の『F』のこと)にしてやっと、だね。

レイチェル:『結界』の効果はなかったのか?

GM:『結界』は森の一部も含んで街を囲んでるからね。そのへんにゴブリンのねぐらがあるんだろうと思われる。

シュリ:森に住んでるのか……。

ユリア:(ぽつりと)ゴブリンが……五分刈りの人だったらイヤだね。

シュリ:五分刈りと五厘刈りの集団?

レイチェル:それで『五分厘』……くく……くくくくく……(笑)。
 

 一同、笑いが止まらない。
 

ユリア:(なんとか笑うのをやめて)それで……ゴブリンってどういう人たちなんですかぁ? よく知らないんですけど。

シュリ:だから、五分刈りにした連中でしょ?

ユリア:確かにそれだったら、少なくとも話は通じそうですね。

レイチェル:(ぼそっと)ゴブリンはイワシの頭が苦手……。

エミリー:ちょっと話それるんですけど──この街って、どういう構造になってるんです?

GM:元々『古の民』(というのは後から来た人たちが付けた呼び名なのだが)が住んでいた場所に、移住してきたんだな。

ユリア:『古の民』を追いやって。

GM:そういう見方もできる。一応都市国家の形を取ってるけど、帝国が干渉してないワケでもないので、”半独立都市”なんて中途半端な呼び方をされている。──で、15年前にさらに『月の船』から脱出してきた『月の民』とか『ホフヌング』に利用されてた魔族ハーフの生き残りたちがやってきて、現在に至る。

シュリ:『ホフヌング』……懐かしいね。

GM:中央広場を中心に『居住』エリア(教会や領主の家はここ)、『商業』エリア(商店街や酒場はここ)、『月の民』エリア、『魔族ハーフ』エリアに分かれてる。で、街の北側と森の一部に住んでるのが『古の民』。

レイチェル:『結界』というのは?

GM:『古の民』が自分らを守るために使ってた古代の魔法装置だと思ってもらえばいいかな。

シュリ:それじゃまるっきり侵略じゃない、『古の民』にとっては。

GM:『古の民』にも全然メリットがないワケじゃないから一概にそうとも言えない。そのへんは話し合いが持たれて一応双方納得したことになってるんだけど……実際のところ、お互いよく思ってない連中も多い。

シュリ:話をゴブリンの方に戻しましょ。

エミリー:──被害は?

GM:今のとこない。街の外れの……家畜を飼ってる人たちが怖がってるってだけで。

シュリ:自警団というからには……専守防衛でいたいよね。被害もないのにゴブリンを退治するってのはちょっと……。

GM:(お、そう来ますか……)

シュリ:彼らには彼らの生活があるだろうしね。

ユリア:五分刈りの普通の人だったりしたら特にね。

シュリ:自然保護団体がうるさいだろうし。

GM:別に殺せとは言わない。追っ払ってくれるだけでいいよ。

レイチェル:(ぼそっと)「イワシの頭を使おう……」

エミリー:「それ、無理です」

シュリ:「追い払う、か……。それでもやはりあたしは……」

ゲイン:「そうか……。被害が出てからでは遅いという者もいるが、君らの意見も一理ある。任せるよ」

シュリ:「では、しばらくは様子を見てみます」

エミリー:「街の人たちには警戒するように呼びかけて、何かあったらすぐ連絡するように伝えます」

GM:分かった。……結局、カレーを食べにきただけだったね。

シュリ:これが報酬代わりなのよ。

レイチェル:カレー一杯で命を張る自警団。

ゲイン:「それから──」

エミリー:「はい?」

ゲイン:『魔王の森』に行くときはくれぐれも注意するように」

ユリア:『まおうのもり』ってなんでぅか?

GM:アーケインの街の北の方──ゴブリン騒ぎがある辺りでもあるんだけど──の森がそう呼ばれている。

シュリ:魔王の総理大臣なの?

GM:それは森違い。

エミリー:魔王がいるんですか?

GM:噂というか古の民の伝承なんだけどね。森の奥に、魔王の住処があるらしい。

一同:ふーん……。

エミリー:ゴブリンの話が一段落したので本の持ち主探しを再開したいんですけど……今度は『月の民』エリアですか?

GM:神社の巫女さんとかに聞くの?

ユリア:巫女さんとか道場の人とかは教会には行かないんじゃないですか?

エミリー:それもそうね……。じゃあ、『月の民』のところには行きません。



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