ACT1.0[それがはじまり] 03

プリイヤーC(以後ユリア):教会までの道は知ってるの?

GM:知ってていいよ。商店街から中央広場を通っていくのが一番分かりやすい道だ。

ユリア:ではその通りに。

GM:中央広場は円形の多重交差点になってて、真ん中に噴水がある。
 

 噴水の前に赤い人影を見つけ、ユリアは足を止めた。

 馬車はここに到着する。後でまたお酒を受け取りにこないといけない。

 そしてスティールが「誰かに頼め」と言っていたのを思い出した。

 そこで、さっそく人影に声をかけてみる。
 

ユリア:「ロボさんロボさん、後で荷物運ぶの手伝って」
 

 ユリアに声をかけられ、レイチェル=ローゼンブラットはそちらの方に顔をむけた。かすかにモーターが回る音がする。省電力モードが解除され、ユリアを認識する。
 

プレイヤーD(以後レイチェル):「……分かった」
 

 短く答えた。アンドロイドであるレイチェルは無口だ。必要なこと以外はほとんど口にしない。

 だが根がいいひと(?)なのかロボットだからなのか、頼み事を断れない性格だ。
 

プレイヤーP:レイチェルっていつも街の真ん中にいるんですよね?

レイチェル:いつもというワケではない(笑)。ちゃんと動ける。

GM:実は噴水の一部で、普段は頭まで埋まってるとか。

シュリ:扇子持っててそこから水が出てるとか。

ユリア:逆さまに刺さってて足だけ見えてるとか。

レイチェル:………………。

ユリア:「では、あとでよろしくお願いします、ロボさん」

レイチェル:「了解」
 

 自分はレイチェルであってロボさんという名前ではない。そう思いつつも……わざわざ口に出したりはしない。

 そうしてるうちに、ユリアは走り去ってしまっていた──お菓子をほおばりながら。

 オゴーレ教会──

 アーケインの教会は孤児院も兼ねている。だから教会特有の静けさというものとは無縁だった。
 

GM:子供たちがワイワイと騒いでる向こうに、二人の女性の姿。ひとりがシルヴァばーちゃん。もうひとりがエミリー=リーディング

プレイヤーP(以後エミリー):「はいはい、子供たち〜、今日こそはちゃんとお勉強しましょうね〜」

子供たち:「わいわい」(聞いちゃいねー)

ユリア:(ぽてぽてとシルヴァに近づいて)「はい、これお皿です、ミルヴァさん」

GM:微妙に間違っておるな。

シルヴァ(エミリー):「おおこれはこれは、ありがとさんよ」

GM:………………(しばしの沈黙の後)ああ、今シルヴァの方のセリフを言ってくれたのか。てっきりエミリーがそういう口調なのかと思ってビックリしたぞ。

エミリー:あらあらまあまあどうしましょう。

ユリア:実は年をかなりごまかしているんだね。

エミリー:そんな、年をごまかしてると言っても、たった8歳サバよんでるだけで──

シュリ:なるほど、子供の生気を吸い取って若く見せてるのね。

エミリー:あ、このことは秘密ですよ。お願いしますね。

レイチェル:そのための孤児院、というワケか……。

GM:エミリーおそるべし。
 

 エミリーの話なんか誰も聞いちゃいねー……。
 

エミリー:教会で何を教えているかというと、腕ひしぎからいかに美しくキメポーズに持っていくか、とかですね。あとは──

シュリ:あと、タバコの吸い方とか。正しい万引きの仕方とか。

レイチェル:生き抜くための知恵……。

ユリア:格闘技を教えてるの?

エミリー:趣味でプロレスを教えてるだけです。

ユリア:ふーん……。──では、用事を済んだし、帰ろうかな。

GM:お菓子お菓子。

ユリア:え? もう半分ぐらいしか残ってないよ?(笑)

子供たち(エミリー):「あ、おねーちゃんお菓子持ってるー! わー! きゃー!」

エミリー:「これこれ、あれはユリアさんのお菓子なんだから、ユリアさんがいいと言うまではダメでありましょうや」

ユリア:そう言われてこのお菓子を渡すんだったことに気づく。子供たちにしぶしぶ渡すね。……ムースの部分だけ舐めとったポッキーを。

レイチェル:すごい嫌がらせだ……。でも味のないプリッツだと思ってしまうかも。

ユリア:じゃ、今度こそ用も済んだし、アインの道場に遊びにいこうかな。

GM:んじゃ、ユリアは中央広場を通って『月の民』エリアに向かった、と。

ユリア:そのときレイチェルを見て、お酒のことを思い出すよ。

GM:(思い出してくれたか……)ではレイチェルと噴水のところでちょっと待ってると、マロンスキーの馬車が──

ユリア:クリンスキーでしょ?

GM:あ、いかん混ざってる(笑)。マーロ=クリンスキーの馬車が到着する。商店街の人たちもちらほらやってくるね。服とか武器とか受け取っていく。

レイチェル:何でも運んでるんだ。

GM:この街で作った作物や工芸品──きれいな石を使った細工物とか結構高値で売れる──を売って、そのお金でいろいろ買ってきてくれてるからね。

シュリ:ここに運んできて売りさばく、ってのじゃないのね?

GM:それをやることもあるけど、この街の場合は『買い出し』と言った方が近いかも。ほとんど誰も街の外に出ない生活を送ってるから。

シュリ:そーなんだ。

マーロ:「ユリア、こっちの馬車が酒とかだ。瓶のヤツ割らないように気をつけろよ。──シュリ、下ろすの手伝ってやってくれ」

シュリ:「やだ」

マーロ:「お前なぁー……」

レイチェル:「大丈夫、私が手伝うから」

マーロ:「そうか。じゃ、そっちの樽と……あ、その箱もだな。食い物が入ってる」

レイチェル:「分かった」

ユリア:「はーい」

マーロ:「待て待てユリア、おつり渡すからよ」

ユリア:(荷物を見て)結構な量だね。リアカーを持ってきた方がよかったかな?

GM:きっとレイチェルが変形してくれるよ。

シュリ:2001の機能のうちのひとつ。

レイチェル:そんなにあるのか(笑)。サンダユウよりはるかに優秀だ。

ユリア:「リアカー持ってくるのもメンドくさいな〜。飲んじゃったら軽くなるかな〜」

レイチェル:「子供がお酒飲んじゃダメ」

ユリア:「八重歯で開けちゃおうかな〜」

レイチェル:「やめなさい」

エミリー:わたしも食料とか受け取りにいっていいですか?

GM:普通は商店街で買い物してもらう形になるんだけど……孤児院だし、帝国からの特別支援物資とかあることにしようか。

シュリ:あやしいね。何か裏がありそう。

GM:んなことないって(笑)。

エミリー:ではそれらを受け取ります。

GM:(シナリオを見て)あ、ちょうどいいや。シルヴァばあちゃんもついてきたことにして。

エミリー:え、老人はおいてきたつもりだったんですが。

GM:教会に忘れ物があってね、心当たりがある人を探しにきたんだよ。

シュリ:忘れ物ってなに?

GM:本。

ユリア:本ですかぁ。関係なさそうなので帰りまーす。

レイチェル:いいの?

ユリア:教会いかないし。本読まないし。

エミリー:本って、ネクロノミコン関係とかですか?

シュリ:ネクラな巫女?

GM:俺にもそう聞こえたぞ。──そういうんじゃなくて……でも、魔法関係の本だね。

ユリア:やっぱり、関係なさそう。

レイチェル:魔導書か。

シュリ:まあ、どうしよう。

エミリー:わたし一応魔法使いですけど……何か分かりません?

GM:魔法関係の本だな〜ってのと、わたしのじゃないな〜っての(笑)。結構難解な本だよ。エミリーにもほとんど理解できない高位魔法みたい。

エミリー:「誰か、心当たりのある方いませんか〜?」

GM:媚びてるなぁ……。

エミリー:見栄っ張りですから。

ユリア:裏では子供たちを虐待しているのに。

エミリー:してませんッ!

ユリア:「まあいいや、ロボさんいこういこう」

レイチェル:「はい」

GM:商店街の人たちにも心当たりはないらしい。

エミリー:そうですか……。

シルヴァ:「さて……それじゃエミリー、持ち主探し、頼んだよ」

エミリー:「え?」

シルヴァ:「頼んだよ」

エミリー:「……はい」



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