GM:知ってていいよ。商店街から中央広場を通っていくのが一番分かりやすい道だ。
ユリア:ではその通りに。
GM:中央広場は円形の多重交差点になってて、真ん中に噴水がある。
噴水の前に赤い人影を見つけ、ユリアは足を止めた。
馬車はここに到着する。後でまたお酒を受け取りにこないといけない。
そしてスティールが「誰かに頼め」と言っていたのを思い出した。
そこで、さっそく人影に声をかけてみる。
ユリア:「ロボさんロボさん、後で荷物運ぶの手伝って」
ユリアに声をかけられ、レイチェル=ローゼンブラットはそちらの方に顔をむけた。かすかにモーターが回る音がする。省電力モードが解除され、ユリアを認識する。
プレイヤーD(以後レイチェル):「……分かった」
短く答えた。アンドロイドであるレイチェルは無口だ。必要なこと以外はほとんど口にしない。
だが根がいいひと(?)なのかロボットだからなのか、頼み事を断れない性格だ。
プレイヤーP:レイチェルっていつも街の真ん中にいるんですよね?
レイチェル:いつもというワケではない(笑)。ちゃんと動ける。
GM:実は噴水の一部で、普段は頭まで埋まってるとか。
シュリ:扇子持っててそこから水が出てるとか。
ユリア:逆さまに刺さってて足だけ見えてるとか。
レイチェル:………………。
ユリア:「では、あとでよろしくお願いします、ロボさん」
レイチェル:「了解」
自分はレイチェルであってロボさんという名前ではない。そう思いつつも……わざわざ口に出したりはしない。
そうしてるうちに、ユリアは走り去ってしまっていた──お菓子をほおばりながら。
アーケインの教会は孤児院も兼ねている。だから教会特有の静けさというものとは無縁だった。
GM:子供たちがワイワイと騒いでる向こうに、二人の女性の姿。ひとりがシルヴァばーちゃん。もうひとりがエミリー=リーディング。
プレイヤーP(以後エミリー):「はいはい、子供たち〜、今日こそはちゃんとお勉強しましょうね〜」
子供たち:「わいわい」(聞いちゃいねー)
ユリア:(ぽてぽてとシルヴァに近づいて)「はい、これお皿です、ミルヴァさん」
GM:微妙に間違っておるな。
シルヴァ(エミリー):「おおこれはこれは、ありがとさんよ」
GM:………………(しばしの沈黙の後)ああ、今シルヴァの方のセリフを言ってくれたのか。てっきりエミリーがそういう口調なのかと思ってビックリしたぞ。
エミリー:あらあらまあまあどうしましょう。
ユリア:実は年をかなりごまかしているんだね。
エミリー:そんな、年をごまかしてると言っても、たった8歳サバよんでるだけで──
シュリ:なるほど、子供の生気を吸い取って若く見せてるのね。
エミリー:あ、このことは秘密ですよ。お願いしますね。
レイチェル:そのための孤児院、というワケか……。
GM:エミリーおそるべし。
エミリーの話なんか誰も聞いちゃいねー……。
エミリー:教会で何を教えているかというと、腕ひしぎからいかに美しくキメポーズに持っていくか、とかですね。あとは──
シュリ:あと、タバコの吸い方とか。正しい万引きの仕方とか。
レイチェル:生き抜くための知恵……。
ユリア:格闘技を教えてるの?
エミリー:趣味でプロレスを教えてるだけです。
ユリア:ふーん……。──では、用事を済んだし、帰ろうかな。
GM:お菓子お菓子。
ユリア:え? もう半分ぐらいしか残ってないよ?(笑)
子供たち(エミリー):「あ、おねーちゃんお菓子持ってるー! わー! きゃー!」
エミリー:「これこれ、あれはユリアさんのお菓子なんだから、ユリアさんがいいと言うまではダメでありましょうや」
ユリア:そう言われてこのお菓子を渡すんだったことに気づく。子供たちにしぶしぶ渡すね。……ムースの部分だけ舐めとったポッキーを。
レイチェル:すごい嫌がらせだ……。でも味のないプリッツだと思ってしまうかも。
ユリア:じゃ、今度こそ用も済んだし、アインの道場に遊びにいこうかな。
ユリア:そのときレイチェルを見て、お酒のことを思い出すよ。
GM:(思い出してくれたか……)ではレイチェルと噴水のところでちょっと待ってると、マロンスキーの馬車が──
ユリア:クリンスキーでしょ?
GM:あ、いかん混ざってる(笑)。マーロ=クリンスキーの馬車が到着する。商店街の人たちもちらほらやってくるね。服とか武器とか受け取っていく。
レイチェル:何でも運んでるんだ。
GM:この街で作った作物や工芸品──きれいな石を使った細工物とか結構高値で売れる──を売って、そのお金でいろいろ買ってきてくれてるからね。
シュリ:ここに運んできて売りさばく、ってのじゃないのね?
GM:それをやることもあるけど、この街の場合は『買い出し』と言った方が近いかも。ほとんど誰も街の外に出ない生活を送ってるから。
シュリ:そーなんだ。
マーロ:「ユリア、こっちの馬車が酒とかだ。瓶のヤツ割らないように気をつけろよ。──シュリ、下ろすの手伝ってやってくれ」
シュリ:「やだ」
マーロ:「お前なぁー……」
レイチェル:「大丈夫、私が手伝うから」
マーロ:「そうか。じゃ、そっちの樽と……あ、その箱もだな。食い物が入ってる」
レイチェル:「分かった」
ユリア:「はーい」
マーロ:「待て待てユリア、おつり渡すからよ」
ユリア:(荷物を見て)結構な量だね。リアカーを持ってきた方がよかったかな?
GM:きっとレイチェルが変形してくれるよ。
シュリ:2001の機能のうちのひとつ。
レイチェル:そんなにあるのか(笑)。サンダユウよりはるかに優秀だ。
ユリア:「リアカー持ってくるのもメンドくさいな〜。飲んじゃったら軽くなるかな〜」
レイチェル:「子供がお酒飲んじゃダメ」
ユリア:「八重歯で開けちゃおうかな〜」
レイチェル:「やめなさい」
エミリー:わたしも食料とか受け取りにいっていいですか?
GM:普通は商店街で買い物してもらう形になるんだけど……孤児院だし、帝国からの特別支援物資とかあることにしようか。
シュリ:あやしいね。何か裏がありそう。
GM:んなことないって(笑)。
エミリー:ではそれらを受け取ります。
GM:(シナリオを見て)あ、ちょうどいいや。シルヴァばあちゃんもついてきたことにして。
エミリー:え、老人はおいてきたつもりだったんですが。
GM:教会に忘れ物があってね、心当たりがある人を探しにきたんだよ。
シュリ:忘れ物ってなに?
GM:本。
ユリア:本ですかぁ。関係なさそうなので帰りまーす。
レイチェル:いいの?
ユリア:教会いかないし。本読まないし。
エミリー:本って、ネクロノミコン関係とかですか?
シュリ:ネクラな巫女?
GM:俺にもそう聞こえたぞ。──そういうんじゃなくて……でも、魔法関係の本だね。
ユリア:やっぱり、関係なさそう。
レイチェル:魔導書か。
シュリ:まあ、どうしよう。
エミリー:わたし一応魔法使いですけど……何か分かりません?
GM:魔法関係の本だな〜ってのと、わたしのじゃないな〜っての(笑)。結構難解な本だよ。エミリーにもほとんど理解できない高位魔法みたい。
エミリー:「誰か、心当たりのある方いませんか〜?」
GM:媚びてるなぁ……。
エミリー:見栄っ張りですから。
ユリア:裏では子供たちを虐待しているのに。
エミリー:してませんッ!
ユリア:「まあいいや、ロボさんいこういこう」
レイチェル:「はい」
GM:商店街の人たちにも心当たりはないらしい。
エミリー:そうですか……。
シルヴァ:「さて……それじゃエミリー、持ち主探し、頼んだよ」
エミリー:「え?」
シルヴァ:「頼んだよ」
エミリー:「……はい」