ACT16.0[贖罪]06

ゴルディッシモ:ボクは血の海にモヤシを植える男。

ビオ:それはかなり怖ええぞ……。

アリア:事態は収まったんだ……よね?

リトナ:みんな死んだなら、もう血の雨も降らないだろ。

アリア:そーゆうんじゃなくて……みんな正気に返るとか。ボルサオの呼びかけは、終わったんでしょ?

キュア:呼びかけと<パンとワイン>は別物でしょ。

リトナ:だろうね。例の食料がどれぐらい出回ってるか知らないけど、肉体的変化は起こってしまった後だろうね。

ヴァンダイク:メーヴェが『ラーヴ』を持つ存在に……。わーいわーい。

GM:メーヴェとオゥリンの存在と関係、これから少しずつ変わっていくんだろうね。

リトナ:ところでビオさん。その胸の、なに?

ビオ:おう、実はよ──
 

 雨が、『血』を洗い流していく。

 遠雷。

 光の竜が、空を駆ける。

 幾本もの竜が──集う。
 

アリア:「なに……?」

キュア:「<ヴリトラ>……?」
 

 異変が起こった。

 雲間を縫うように光の竜──<ヴリトラ>が集まってきたのだ。まるで、避雷針に引かれる雷のように。
 

カラスィータ:(キュアの角を見て)『そうか、<混沌収束点>!』

キュア:「混沌……収束点……?」

カラスィータ:『文字通り、混沌が集まる場所だ。それがまさかこの娘の角だったとは……──って、来るぞ、伏せろー!』

一同:「うわああああー!!!」
 

 閃光。

 視界が真っ白に染まり、何も見えなくなる。
 

キュア:あ、あああああああああああ……ッ!
 

 光が、キュアの角に吸い込まれていく。
 

GM:キュアの角はどんどん大きくなっていき……両手で握れるぐらいの大きさになる。

カラスィータ:『いかん、<混沌>に侵食されるぞ!』

アリア:「え、え、え……。……どうしたらいい?」

カラスィータ:『抜くしかあるまい』

アリア:「抜く? 抜けるの?」

カラスィータ:(どちらにしてももう……いや、今は、抜くしかあるまい)『抜ける。<混沌収束点>とはすなわち<生まれる場所>だ』

アリア:どうしよう……。抜いちゃう……?

リトナ:抜いちゃえ抜いちゃえ。

アリア:……キュア、ちょっとごめん(角に手をかける)。

リトナ:顔に足をかけて。

キュア:痛い痛い(笑)。

ヴァンダイク:しかもピンヒール。

キュア:もっと痛い。

アリア:そんなの履いてないもん。……いくよ?
 

 ゆっくりと、引っ張る。

 角が動き……鈍く光ったそれは、ずるずると引き出されていく。
 

GM:まるでマジックを見ているように、キュアの角は額から伸び……1メートルぐらいになったところで、すっぽり抜ける。

キュア:………………。

GM:そして角は形を変え、先が奇妙な形に曲がった剣になる。

アリア:ふわわ。

カラスィータ:『それは……<ヴリトラの剣>だ。<混沌>の力の結晶だな。そして<混沌>を御するものでもある』

キュア:「そんなものが……私の角だったなんて」

ドモ・ルール:キュアのおでこはどうなってるんだ? 穴が開いているのか?

リトナ:穴が開いてて、そこが鞘になるんだよ。

ヴァンダイク:そして剣を納めたつもりで頭蓋骨をざっくりと。

GM:穴は開いてないよ(笑)。なんか、つるんとしたおでこになってる。

リトナ:じゃあ、別に鞘があるんだね。

ビオ:沙夜が鞘なんだ。

リトナ:なるほど、そこでまた新たな悲劇が。

GM:(それは……没になった設定(笑))

アリア:キュア、何ともないの?

キュア:今のところ……特に何とも。

GM:むしろ、ズキズキ痛んでた親知らずが抜けたようなすがすがしい気分。

キュア:そうなの?

GM:それは冗談だけど。何だかぽっかりした気分。

キュア:虚ろというか、空っぽというか……そういうかんじ?

リトナ:いつもと一緒じゃん。

キュア:ほっといて。

アリア:「で……この剣って、何なの?」

カラスィータ:『<鍵>さ──この星の最先(いやさき)と最後(いやはて)のな』

キュア:「鍵……。キーブレードか」

カラスィータ:『星は、混沌<カオス>と秩序<コスモス>の力のバランスが保たれることで存在する。そして、今この星の<秩序>の力は失われて久しい』

ゴルディッシモ:ではこれからはコスモス(秋桜)を植えればいいのだね。

リトナ:山田君、座布団全部持ってって。

カラスィータ:『失われているのは<秩序>だけではない。<混沌>の力も<ヴリトラ>に姿を変え、放出され続けている。地震が多いのもそのせいだ』

キュア:「星が涸れてきているのね」

ヴァンダイク:「それは寿命というヤツなのでは」

カラスィータ:『いや、今回に限っては人為的な──いや、今はこの話はやめておこう』

アリア:「で、話は最初に戻るんだけど……何でその<混沌>の結晶が剣で鍵なの?」

カラスィータ:『それはそいつが<鍵>の力──楽園への<扉>を開く力を具現化したものだからだ』

アリア:「楽園! これを使えば<真なるアルカディア>にいけるの?」

リトナ:「そういうことになるね」

アリア:「そうなんだ……これで……」

ドモ・ルール:意外とあっさりしたもんだったな。

キュア:「でも何か……不吉な言葉があったような……」
 

 『それは、はるか西の果てめざす旅人の前にあるだろう。
  旅立たねば、たどりつけぬ楽園。
  それはあるいは近く、あるいは遠い場所だろう。
  西の最果てのむこう。
  それは<壁>を越えた旅人の、休息の地となるだろう。
  忘却は永遠の休息』
 

キュア:忘却っていうのが、ちょっとね……。

リトナ:キュアには覚えていたい過去なんてないだろう。忘れ去りたい過去ばかり。

キュア:それはまあ……そうかもしれないけど。

リトナ:壁を越える……どこかに扉があるんじゃないかな。そしてそれを、その鍵で開ける。

キュア:なるほど。

アリア:その<扉>てどこにあるの?

GM:<太極樹>のうろのどこかが鍵穴になってるらしい。

アリア:探そー!

キュア:サイコロ振ればいい? (コロコロ)えっと……

リトナ:(キュアのサイコロの目を見もしないで)31。3失敗。

GM:また適当なことを。

キュア:40以上成功してる。

GM:それならじゅーぶん見つかる。正面の、ちょっと高いところにあるし。

キュア:なんだ。もっと分かりづらいところにあるんだと思ってた。

ゴルディッシモ:さあ、うろを探そう。

リトナ:うろ、見つかったんだってば。

ゴルディッシモ:──って、ボクはリーダーか?

リトナ:だから、見つかったんだってば。

ビオ:全然リーダーじゃねえ(笑)。

ゴルディッシモ:いつの間にそんなことに。

アリア:で、鍵穴見つかったんだけど……どうする? 開ける?

リトナ:ここはキュアに決めてもらおう。

アリア:そうだね。

キュア:なんで。

リトナ:ここはキュアの国だしね。

キュア:そんなこと私に言われても……。

GM:確かキュアって初期設定では狂おしいほどに楽園を求める──

キュア:はいはい。開けましょ。……そうしないと、ストーリーが進まない気がするし。

リトナ:それはいらん気遣いだと思うぞ。

アリア:(<鍵穴>の高さまでふわふわ飛んで)GMぅー、鍵穴に、<剣>を差すよー。

GM:うむ。

アリア:「この先に、<楽園>があるんだ……」

ドモ・ルール:後楽園だー。

ビオ:お前はここに残れ(笑)。

キュア:スティール〜!

ドモ・ルール:今はスティールじゃないし。

アリア:「……やるぞッ!」
 

 <鍵穴>に<鍵>が差し込まれる。
 

 世界が姿を変える。

 一面の水の世界。水と空気の、境目の世界。
 

 <太極樹>もその姿を消し、<鍵穴>から、光が縦に伸びる。

 光は更に横に広がり……<扉>の形となる。
 

 光の扉──<真なるアルカディア>への扉。
 

ゴルディッシモ:扉って大きいの?

リトナ:大きいよ。冷蔵庫の扉ぐらい。

ゴルディッシモ:ちっさッ!

GM:もっと大きいよ(笑)。見上げるほどの、光の扉だ。

 <扉>が開いていく。

 その先に見えたのは──満天の星空と……金色のススキ野原だった。



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