沙夜:「いろいろ話、聞いてたから。……おばあちゃんが命の恩人って言ってたけど、何されたの?」
リトナ:何された、って言い方はどうだろう。
沙夜:「育てられちゃった、とか?」
リトナ:育てられちゃった、って言い方はどうだろう。
沙夜:「おばあちゃんが飼ってたトカゲ? ……違うの?」
ビオ:ぶちぶちぶち(頭の血管が切れる音)。
ヴァンダイク:大きくなりすぎたから自然に返した、と。
沙夜:「あははは(ごまかし笑い)。──で、そのビオちゃんが何でこんなところに?」
リトナ:ちゃんと答えてあげないと。姪だよ、姪。
ビオ:姪になるのか? ……まあいい、そんなことはどうでもいいや。
リトナ:「おじさん」って呼ばせないんだ。
ビオ:「そういうお前は、何でこんなところにいる?」
沙夜:「あたしはぁ……ほら、つかまっちゃったから」
ビオ:「そのワリには、ずいぶんのんびりしてるじゃねーか」
沙夜:「それはだって……しょーがないじゃない」
ビオ:「何が『しょーがない』んだ(笑)」
沙夜:「下手に逃げようとしたら、殺されちゃうよ?」
ビオ:「なら、殺されないように逃げよう」
アリア:逃げる前に、仲間のこと忘れないでねー。
ビオ:仲間?(リトナを見る)
リトナ:オレは猫だニャー。
アリア:あたしたちのことッ!
ビオ:なんだ? 捕まったのか?
アリア:まあいいわ、話を進めて。
ヴァンダイク:「ふむ……茶も出ないようだし、そろそろ戻りたいのだが」
ビオ:「だな」(沙夜を肩にかつぐ)
沙夜:「ちょっ、ヤっ、放してよぉ〜!」(じたばたじたばた)
ビオ:「んだよ、うるせーな」
沙夜:「あたし、ここから出れないの! 殺されるのぉ!」
ビオ:「殺される……?」
リトナ:「彼女がここから逃げたら、村の人が殺されるんじゃない?」
沙夜:(ギクッとした後)「……わーい、猫がしゃべったー」
リトナ:「オレは猫だニャー」
ビオ:(低い声で)「……そういうことなのか?」
沙夜:「んー、まあ、そういうことになるかなー」
ビオ:「……マジメに話をしろよ」
沙夜:「……こんな話、マジメにしてらんないわよ」
ビオ:「俺は、お前を助けてぇんだよ……。村のみんなも待ってるしよぉ……」
リトナ:「あのさ、何でここにさらわれてきたの?」
沙夜:「言えない……。……言えないことだって、あるよ……」
リトナ:確かに。オレだって、「実は猫じゃない」とはとても言えないな……。
ビオ:猫だろ、お前は。
リトナ:いえいえ。めっそうもない。
ビオ:「──あー、じゃあよ、お前は……ここにいてOKなのか?」
沙夜:「OKだよ……って……思うしかないじゃない……」
ビオ:「あー、また回りくどい言い回ししやがって! 俺は頭ワリぃんだから、もっと分かりやすく言えよ!」
沙夜:「いなきゃいけないのぉ!」
ビオ:「なら、オールOKなんだな?」
沙夜:「………………。オールOKだよ」
ビオ:「今の間はウソだろぉ、おい」
アリア:ビオが人を説得している……(笑)。しかもかなり有効な方法で。
沙夜:「分かった……。分かったよ、トカゲ君」
ビオ:「俺は、ビオ・サバールだ」
沙夜:「じゃあ、ビオちゃん。それとも、サバールちゃん?」
ビオ:「好きなように呼べよ」
沙夜:「じゃあ……ビオ」
ビオ:「おう」
沙夜:「少し、時間をくれないかな。……あたしが、決心する時間を」
ビオ:「ああ、いいぜ」
沙夜:「1時間……。それとも2時間? 3時間?」
リトナ:増えてる増えてる。
ビオ:「2時間だ」
沙夜:「2時間10分」
ビオ:「2時間」
沙夜:「2時間20分」
ビオ:「2時間」
沙夜:「2時間30分」
リトナ:増えてる増えてる。
沙夜:「さあ、止めないとどんどん増えるわよ!」
ビオ:「2時間だって言ってるだろーが。……2時間経ったら、迎えにくる」
沙夜:「うん……。……ありがと、ごめんね、ビオ」
ビオ:じゃあ、一度部屋を出よう──リトナをおいて。
リトナ:「ニャ!?」
GM:ビオたちは部屋を出るんだね。
リトナ:そしてオレだけ残される……って、なんで?
ビオ:なんとなくだ。
リトナ:ひどーい……こんなになついているのに。
ビオ:それがイヤなんだ(笑)。
GM:ではここで、場面を移そう。
キュア:チビ・ハゲ・デブの三重苦じゃなかったんだ……。
ボルサオ:「ようこそ、<欲望の館>へ。──いや、この呼び名はあまり好きではないな。ここは、人が本来の姿を取り戻す場所ですから」
アリア:「あの……あたしたち、旅の者でして、それで、保存食を分けていただきたのですが……」
ボルサオ:「保存食──そのようなモノを口にする必要はありません。旅も、続ける必要などないでしょう。ここには全てがある。旅のことなど、忘れてしまいなさい」
アリア:「忘れることなんてできません」
ボルサオ:「すぐに忘れますよ。ここは、外の世界より素晴らしい」
アリア:んー……、あたしにとっては、苦痛でしかないんだけど……。
ボルサオ:「あなたたちもすぐに気づくでしょう──『真の快楽』がどのようなものか」
リトナ:真の快楽とやらが、『魂の解脱』とか、そういうものすごく抽象的なモノだったらイヤだね。
アリア:真の快楽っていうか、迷惑なんですけどぉ……。
ラグランジェ:快楽なんて……もういらない(涙)。
リトナ:ラグランジェはいくつか真の快楽を知って、悟りの境地に至ったんじゃないの?
ビオ:つーかよ、ヴァンダイクとのアレは快楽なのか? 苦痛じゃねえのか?
ラグランジェ:いや、もちろん苦痛ですけど……。
アリア:「とにかく、そういうのは結構なんで……」
ボルサオ:「あなたも強情な方だ。……分かりました、携帯食は差し上げましょう。ただし、3日後です。3日間ここに滞在していただいて、それでも決心が変わらないようなら出ていけばいい」
アリア:「今かなり決心固いんで……。食料の御恩は忘れませんから」
リトナ:お前が死んだ後3日間だけここにいてやる。
GM:なんじゃそりゃ。
リトナ:いや、仮通夜、本通夜、葬式って3日間滞在してやるから、今は勘弁してくれと。
GM:そんなバカな(笑)。
ボルサオ:「そちらの方も同じ意見ですか?」
キュア:「全く同じです」
ボルサオ:「そうですか、自分の意見というものがないのですね。クックックックッ」
キュア:……そう言われるとイタイけど。
ボルサオ:「さて……残念ながらわたしがここに滞在してほしいと願った以上、それが変わることはありません。──3日間、ごゆっくりお楽しみください」
アリア:「うー……」(ふくれる)
リトナ:貴様、この屋敷で一番偉いつもりかー!
GM:全くもってそのとーり。
リトナ:……やっぱり?
GM:てことで、退室してくれたまへ。
再び廊下を歩く3人と『ノイジィ・フォー』たち。
アリア:(周りを見ないようにしつつ)「うー……。キュアぁ〜、こんなとこ、早く出ようよぉ〜」
キュア:「そうね……長居したい場所ではないわね……」
アリア:「うー、ホントにヤダぁ〜!」
キュア:「で、どうするの?」
アリア:「さっきの部屋に戻って自分の服に着替えて……最初の部屋でみんなと3日間だべっていよう」
キュア:「3日間もだべるの?」
アリア:「食べ物はそこらじゅうにあるみたいだしね……」
ミネルヴォワ:「まったく、アンタたちも強情ネー……」
アリア:「いや、強情なのはそちらな気がするんですけど……。こっちはずいぶん下手に出たつもりだったのに……(ブツブツ)」
ヴェルティナ:「あんまり勝手なことしてると、殺されるわよ」
アリア:「殺される? なんで?」
セーヴル:「死ぬよ。この館はトラップもいっぱい」
ヴィラージュ:「トラップで死ぬところを楽しむんだ」
キュア:「トラップ、か……」
GM:(ボルサオは君たちの正体にわざと気づかないフリをして、泳がせて楽しんでるんだぞ……?)
アリア:「うー、それじゃ、できればみんなのところに案内してもらえたらうれしいんですけど……」
ヴェルティナ:(はあ、とため息をついて)「分かったわ、ついてらっしゃい」
アリア:「ホント、お世話になります……」
ヴェルティナ:「楽しそうにしててね。そんなこわばった顔してると、怪しまれるわよ」