補給部隊のおじさん:「おう、だったら身分証出しな」
ビオ:突き付けてやる。
リトナ:身分証くわえて、リュックから顔を出す。
アリア:……あたし、あるの?
GM:アリアはね、「レプス 小隊」ってなってる身分証に、手書きで「04」と書いてある。
キュア:偽物くさいな……。
補給部隊のおじさん:「運がよかったな、今回は補給の量を少し多くしてやるよ」
キュア:「なぜ?」
補給部隊のおじさん:「ここで戦闘があったんだが、そのとき<幸運の谷>から来た──」
ビオ:そんなの聞かずに、馬車から好きなだけ運び出そうとするぞ。
補給部隊のおじさん:「おいおいおいおい!」
ビオ:「ん?」
補給部隊のおじさん:「さすがにそんなには無理だ。……ホントは一週間分のところを、10日分やるよ」
アリア:「助かりました〜」
キュア:<幸運の谷>って……?
GM:えっと……(地図を描いて)ここが<虚ろの森>ね。そこから西に進んで、今いるのがこの平原。戦場跡。ここから道は3つに分かれていて……ひとつは南の方にのびる一番太い道。こっちへ行くと<連合国>との国境がある。もうひとつは北へのびる細い道。こっちへ行くと<氷の大河>がある。そして最後、西へ進むと渓谷があって、その先にあるのが<幸運の谷>だよ。その更に先には国境がある。
アリア:あたしたちの目的地は西。だから西へ進むべきね。
キュア:このまま西へ進むと……<幸運の谷>があるのか。
アリア:「西の方は、どうなってるんですか?」
補給部隊のおじさん:「ふむ……(地図を広げて)<幸運の谷>の先に、国境があるだろ? ここで戦闘があってな、国境軍を破った<連合国軍>が渓谷を越えてここまで攻めてきた。で、この平原で<帝国軍>と衝突。見事<帝国軍>が勝利を収めたってワケさ」
キュア:私たちを追い抜いていった<帝国軍>が?
GM:そう、ここで戦ったのだな。その<帝国軍>はここから南へ進んでいったらしいよ。
補給部隊のおじさん:「この食料は、<連合国>のヤツらが持ってたヤツだ。中身は質素だが、結構量があったんで助かったよ」
リトナ:じゃあモンプチスペシャルは……
GM:そんな高級品はないですなー。
リトナ:……大事に食べよう、モンプチスペシャル。
補給部隊のおじさん:「我々はこれから<幸運の谷>を越えて国境沿いに進むんだが、お前さんたちは?」
アリア:「西へいくんです。よかったら途中まで一緒にいきませんか?」
補給部隊のおじさん:「一緒に、と言っても……こっちは急いでいるしな」
リトナ:「馬車に乗せてよ」
補給部隊のおじさん:「さすがにそのトカゲを乗せるスペースは余っちゃいないよ(笑)」
ヴァンダイク:「残念だったな」
ビオ:「え? え?」
キュア:「……ビオさんおいてけぼり?」
リトナ:(キュアのリュックに入り、小声で)「防腐剤もらっておけ。あやしまれなくて済むから」
キュア:「……分かった」
GM:それから時々下品なギャグを飛ばさないとドモ・ルールらしくないぞ。
キュア:じゃあ、防腐剤ももらっておこう。
アリア:それにしても……いっぱいあるね、食料。
リトナ:遠征するつもりなら、これぐらい普通なんじゃない?
ヴァンダイク:うむ、<帝国>のかなり内部まで攻め込むつもりだったのだろうな。そして<虚ろの森>で巨人に襲われる、と。……大変だのう、なにせあの地下には80万匹もの巨人がおるから。
キュア:80万……。
ヴァンダイク:そう考えれば我々が相手にした8匹なんて、たったの10万分の1だ。
アリア:それは……ちょっと何だかなぁ(笑)。
GM:元からいっぱいあったというのもあるけど、おじさんの話だとどうやら<連合国軍>は<幸運の谷>で結構略奪してきたらしい。
補給部隊のおじさん:「滅多にお目にかかれない『ピース・オブ・ラック』もいくつか積んであったし、まあ間違いないだろうな」
キュア:ピースオブラック……?
GM:知りたかったら『心』で判定するのだ。
ヴァンダイク:(コロコロ)05で成功している。……というか、元文官として知らないとヤバイ気もする。
GM:05で成功なら問題なく分かるね。『ピース・オブ・ラック』──幸運のかけらというのは、<幸運の谷>の名前の由来にもなった石のことです。谷で採れる特別な石を特別な方法で精製すると……(手で10センチ四方の四角を作って)この位の、不思議な色をした板状の石になるのね。んで、これを願いを込めて割ると、“幸運が宿る”石──『ピース・オブ・ラック』ができる。
ヴァンダイク:──なのだよ。
GM:割れ方は様々だから、世界にひとつしかないカケラができるワケだね。ルール的に言うと、これを持ってると判定の失敗を成功に、あるいは大失敗を失敗にすることができる。
リトナ:一生に一回?
GM:いや、一個につき一回。
リトナ:じゃあいっぱい持っておけばいいんだね。
GM:そうとも言えるけど……希少品なので、お目にかかれるだけでもそれこそ幸運だよ。
補給部隊のおじさん:「じゃ、我々はいくぜ。お前さんたちも、せいぜい死なないようにな」
アリア:「うん、ありがとう」
西へと進む馬車を見送り……一行は、地図(おじさんからもらった)に目を落とした。
アリア:「いくつか別れ道があるけど……西にいくんだから関係ないよね」
ヴァンダイク:「そろそろ国境が近い。いよいよ敵国領土へ入っていくことになるな」
アリア:「渓谷を抜けて、<幸運の谷>へ、だね。……よし、いこう!」
リトナ:人ひとり通るのがやっと、とか?
GM:いや、そこまで狭くはないよ。馬三頭ぐらいは余裕で並んで歩ける。
キュア:それでも、こんなとこではスライサーは使うべきではないね。……<連合国軍>は、こんなところを通ってきたのか……。
リトナ:別に珍しいことじゃないでしょ?
アリア:どうでもいいんだけどね。あたし、飛べるし。
GM:ではここで視覚判定をするのだ。
リトナ&キュア:普通に成功。
GM:君たちが向かう方から、難民がゾロゾロドロドロと歩いてきている。
ヴァンダイク:さあ、ひとり何人殺さないといけないのかね?(←実は残忍)
アリア:どこにいくんだろ? ……こっちに向かってきてるの?
GM:そうだね。
リトナ:すれ違い始めてるんだ。てことはオレたちは一列に並んでいるんだね。
GM:崖っぷちの方に。
リトナ:普通逆でしょ?
キュア:リーダーらしき人に話を聞いてみよう。「どこへいくんだ?」
GM:いきなり話かけられて、向こうは警戒してるよ。<帝国軍>って見て分かる?
ヴァンダイク:分かるのではないか? <帝国>の顔しておるし。
リトナ:どんな顔……?
GM:まあ、何か印があるんだろうね。
ヴァンダイク:ビオのハルバートの反対側は<帝国>の旗になっておるのだろう?
ビオ:……いや、それはないと思うぞ。
アリア:だいじょーぶ、難民には手を出さないから安心してー。
GM:<帝国>の兵だと分かって、向こうは警戒を解くね。
難民のリーダー:「我々は<幸運の谷>から来たものです」
キュア:(小声で)「そうか、<幸運の谷>で略奪があったって言っていたな……」
リトナ:<幸運の谷>に砦とかあるの?
GM:砦はないよ。
始まりは、国境での争いだった。
そのせいで、<幸運の谷>に国境付近から難民が流れついたのだ。
更に<連合国軍>が国境を越え侵略を開始し、<谷>は略奪のターゲットとなった。
そこに大きな地震があり……<幸運の谷>はほぼ壊滅状態に陥った。
GM:どうしようもなくなった国境付近および<幸運の谷>の人々は、少しでも肥沃な土地を求めて流れてきているわけだ。
難民のリーダー:「我々はこれから南を目指して進むつもりです」
アリア:「南? 南の方はこれから戦場になるらしいからやめといた方がいいよー」
ヴァンダイク:それよりは東へいって、巨人の森の地下空洞に隠れて住むがいい。
GM:おいおい。
アリア:東にいくとそういう危険があることも伝えておくね。
リトナ:北の方はよく分からないけど、東の方はそんなかんじだから足元気をつけた方がいいよ。
キュア:北の方は<氷の大河>っていうぐらいだから、難民が進むべきではないだろうね。
リトナ:そうすると、やっぱ東かな?
GM:でも東の方もだんだん戦争が激化してきているからねぇ。
リトナ:そうするとどこにいっても一緒かぁ……。西にいっても補給部隊に追いつくわけないし。追いついたって足手まといになるだけだし。
アリア:やっぱ、東にいくのが一番自然、かな?
キュア:西に……蹂躙された土地の方に戻るのは、精神的にもつらいだろう。
リトナ:オレらが荒らした土地があるじゃん、あそこはダメなの?
GM:荒らした……? ……鉄格子切った村のこと?(笑)
リトナ:2週間も歩けば着くでしょう。
ヴァンダイク:途中食料を補給できる場所が一切ないがね。──とりあえず、がんばってくださいとしか言えないな。
リトナ:「よかったら食料分けてあげてください」っていう書状を渡してもいいし。
アリア:サインを入れてね。
リトナ:それは、書ける人が。
アリア:(うー……どうしようかな)
キュア:そういえば……このパーティのリーダーって誰?
ヴァンダイク:おらんよ。
キュア:アイタタタ……。
GM:仕切ってるのはアリアだけど。
アリア:何か妙に図々しいよね(笑)。
リトナ:最初から上官気分だよね。
ヴァンダイク:赤い服を着ているからしようがない。
キュア:赤い服……赤い角……そうか、そういうことか!(ガ〇ダムネタ)
ビオ:赤い角は俺だ。
GM:そしてキュアはただの角。
ビオ:はっはー、俺の勝ちぃ!(勝利の笑い) ほーれほーれ(角をフリフリ)。
キュア:くッ……!
アリア:うんうん、よしよし(なだめてる)。