OP.3[夜毎、神話がたどりつくところ]-a tale for you- 03


 どいつもこいつも俺に面倒を押しつけやがって、と正直思う。そして自分を置いて、どんどん人外のものへとなっていく。

 クロヌシは魔族の力を制御する術を得るため、精神体となり魔界へと渡った(肉体の保存はルーンに押しつけていった)

 そこに至るまでには彼の息子シズマも関係するそこそこ長い物語があったりしたのが、今はまあ、いいだろう。

 ティンベルの精神も、死後未だにどこかをさまよっていると聞く。ミシェルやその娘が絡んでいるらしいが、詳しいことは分かっていない。カゴルマの復興には随分と力を貸したが。

 クレリアは死んだ後も『ホフヌング』というやっかいな子供を残してくれた。その後どれだけの悲劇を生んだかは語り尽くせない。

 ラズリも助け出さねばならないし、ラグランジェは『世界消滅の危機』なんてこれ以上ないほど面倒なものを持ってきてくれた。(これについては後で皆に詳しく話すつもりだ)

 そうでなくても自分は義理の妹やマフィのこともあったし(何とか解決したが、これまたそこそこ長い波乱万丈の物語があったりした)、娘との間には修正不可能と思える程の大きな溝ができてしまっているし(これが一番の悩みの種だ)、そもそも自分は面倒なことは大嫌いだし平凡に暮らしていきたいと思っているのにどうしてみんながみんなやっかいごとを押しつけていくのだろう。
 気が付けばみんな、正常な時の流れを生きていない。一番マトモな自分でさえ、5年という時を飛び越してしまった(そういやオペリオもだが、アイツは<オペラ時空>なんていう人外な力を手にしているので論外)

 永遠の孤独。そんなものだけは誰にも味わってほしくないと思うが……

フウゲツ:「……どうかしました?」

ファン・ルーン:「あ、ああすまない。頭の中でちょっと愚痴ってしまった。……で、そうそう、ガルフは無理矢理精神のみの存在となって出ていってしまった。が、不完全だったため、どんどん記憶も人間性も失って……そんなとき、この街の男と出会ったようだな」

フウゲツ:「オーキッドか。……で、ここに来た、と」

ファン・ルーン:「『神を倒す』という目的と実は冷徹で殺戮衝動の塊である本性は、一番心の深いところに刻まれていたんだろうな。ほとんど抜け殻になってたガルフのその部分を目覚めさせたのが……メイリアだ」

メイリア:「そんな目で見ないでよ。どんな姿かたちであろうと、強ぉおーい男がよかったんだもん。子供産むなら」

ファン・ルーン:「…………。だがどうやらガルフは、ある目的のためにメイリアに操られるフリをしていたようだ。ほとんど抜け殻の状態で恐れ入るが」

メイリア:「そんなッ」

ファン・ルーン:「アイツの目的はもう一枚の『蒼天の合わせ鏡』だったんだろう。『祭器』の中でも一際強い力を持つとされている『合わせ鏡』を使い、自分の精神体を”飛ばした”」

フウゲツ:「飛ばすって、どこに」

ファン・ルーン:「……『紫の中空』だ。ガルフは鏡と、おそらくその場にいたトパーズの力も利用して、自分をラズリの元へ転送したんだ」

ゲイン:「そんなことが……可能なのですか?」

ファン・ルーン:「全ては憶測だ。だがアイツもヴァルト=ラィヒ族の血を引くものだし……いろんな『意思』が干渉した可能性もある」

メイリア:「そんな……」

ファン・ルーン:(それに……ガルフの身体は今『紫の中空』に沈めてあるんだよな……)

「……あたしたち、これからどうしたらいいんだろ?」
 

 干し葡萄が練り込まれたふわふわのパン(すごくおいしい上に、贅沢だ)を小さくちぎって口に放り込みながら、アリアは誰ともなしにつぶやいた。
 

 足元で魚(生の魚なんて久しぶりに見た)をつついているリトナは、興味なさそうに尻尾を振った。

 蒸し鶏と香味野菜の包みパイ(カラフルでビッグサイズ)を食べるのに忙しいビオは話すら聞いていない。

 そしてヴァンダイクは、すっかり冷めてしまったハーブティー(絶品!)に口をつけることなく、ため息をつきながら窓の外を眺めるばかり。

 ドモ・ルールは今ここにいない。

 キュアとラグランジェ、スティールはまだ見つかっていない。
 

「どうかしましたか」
 

 追加注文していたシチューを持ってきたスティールが、アリアの顔を覗き込んだ。
 

 アリアたちレプス04小隊は、ゼナたちと共にアーケインの酒場へ来ていた。(スティールがいると聞いてついてきたのだが別人だった。顔もよく似ていたが、本人は「アルカディアに知り合いはいませんねえ」と言って、少し寂しそうに笑っていた)
 

「ファン・ルーンさんが後で説明してくれるらしいんで、それまで待ちましょうよ」
 

 自前のコーク(という飲み物らしい。茶色くて泡がぽこぽこ出ていて最初は不気味に思ったが、一口もらってあんまりおいしくてビックリした)を飲みながら、ゼナが言った。
 

「うん……。でも、あたしたちは帰らなくちゃ。ここは<真なるアルカディア>かもしれないど、あたしたちがここに来たことと<帝国>を──アルカディアを救うことは、直接はつながっていないから」
 

 そのアリアの言葉に、初めてリトナが顔を上げた。
 

「最初の目的は<真なるアルカディア>にたどり着くことだったじゃない。そしてオレたちはたどり着いた。──それじゃダメなの?」

「ダメ」
 

 レプス04小隊が揃ってから後、リトナは普通に人前でしゃべるようになった。

 周囲の人間は驚いたようだが、なぜか深くは追求してこない。
 

「待ちましょう。……たぶん、ルーンさんの話はあなたたちの星を救うことにもつながってるはずだから」
 

 そう言って、ゼナはにっこり笑った。

アリア:あ。そうそう、あと、キュアたちも探しにいかないと。

ヴァンダイク:そもそも……牛姫とスティールは『扉』をくぐったのでしょうかな。

アリア:……え?
 

 ……どうだっただろうか、よく分からない。
 

ヴァンダイク:少なくとも、ラグランジェはこちらの世界にはいない。(ぼそっと)……ホモセンサーに反応がない。

一同:(苦笑)

リトナ:でも、それは説得力あるなぁ(笑)。

GM:それに、ドモが『扉』をくぐるとき宿主だったスティールは『扉』にはじかれたしね。

リトナ:それを早く言ってよ。それなら、"スティール"を追ってこんな街まで来なかったのに。

アリア:まあまあ、帰れそうだからいいじゃない。

ヴァンダイク:ふーむ……ヴィエイユ人は『扉』をくぐれないとか?

GM:そんなこたーない。

ビオ:いいんじゃねーか、一回アルカディアに帰れば。そんでキュアがいなかったら、もいっかいここに来ればいい。

アリア:……うん、分かった。

GM:(ふう……)



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