GM:えーと。『沈黙の森』でみんなと別れたフウゲツたちは、カゴルマに戻ってきた。
フウゲツ:シュリのそばにいるぞ。
シュリ:あたし、テンション低めで。
ユリア:さあ、エミリーを連れてアーケインに戻るのれす。そして逆転裁判を。
ここにいないレイチェル:逆転してどうする。
ユリア:ちなみにユリアは『声』がしたので、アーケインではなくクリムソンにいくれす。
GM:クリムソンの山奥、だね。
フウゲツ:なぜ?
ユリア:ユリアが師匠と修行した場所だかられす。その師匠に呼び出しを食らったので。
フウゲツ:さっきぼぉーっとしてたのはそれか……。──てことは、アーケインに戻るのは、俺とシュリとエミリーだけ?
シュリ:リトナもね。……あたし、エミリーと一緒に帰りたくないんだけど。
メイリア:私が、エミリーさんを連れていきましょうか?
フウゲツ:それは危険な気が……。むしろ、俺とエミリー、シュリとメイリアでいくべきだな。
GM:あ、トパーズも一緒にいくや。
フウゲツ:どっちにしろ、女性ばかりだぜどきどき。──じゃあ、俺とエミリー、それから猫。んで、シュリとトパーズ、メイリア。
リトナ:猫を頼ってはいけない。
フウゲツ:只者ではないと思っているので(笑)。
GM:まあいいけど。どうせ道中何もないし。
レイチェル:そんな身も蓋もない……。
シュリ:トパーズは、何でアーケインにいくの?
トパーズ:アーケインにいくというか……ガルフお兄ちゃんを追って、南キャンバスにいかないと。
シュリ:ガルフって……ブルーのことだよね? で、彼がGシリーズで、神を倒そうとしている……。
GM:そう。で、トパーズは『雪の神子』に「カゴルマでガルフを止められなかった場合は、南に向かえ」と言われたらしい。
トパーズ:南キャンバスかー。神様ってのに、すごーく心当たりがあるんだよねー。
ドモ・ルール:リューセだな。
リトナ:アレを倒しても、ちっとも強さの証明にならない気がするんだけど。
トパーズ:なんでガルフお兄ちゃんがリューセのことを知ってるのかってのも謎だけど……。
メイリア:急いだ方がいいのは確かです。さっさといきましょう。
というワケで、ユリアはクリムソンの街の裏山の奥へ。
フウゲツ、エミリー(およびドモ・ルール)、リトナ、シュリ、トパーズ、メイリア、それからミケが二手に分かれてアーケインへ。
GM:じゃあユリアの方からいこう。──かつての修行場に足を運んだ君を待っていたのは、師匠ではなくティンベルだった。今まで君の前に何度か姿を現していた猫の人だね。
ユリア:師匠は死んだ──ユリアが殺したはずなので、おかしいとは思っていたのれすが。
ティンベル:……やっと戦う決心がついたか。
ティンベルはべろりと血に濡れた爪をなめ、ユリアを見据えた。
高速で繰り出される拳を紙一重で避ける。そのまま関節を取ろうとするが、力の流れを変えられ、その手はむなしく空を切る。
獣人の街クリムソンの北。ベール山中腹の洞窟を抜けたところにある、かつての修行場。
そこで、ユリアはティンベルと戦っていた。
かつて師の身体を貫いたこの拳で、また戦っている。また殺そうとしている。
なぜ戦っているのか。なぜ彼女と殺し合わねばならないのか。それすら分からぬまま。
ティンベル(GM):(コロコロ)いきなりクリティカルとか振ってしまったぞ。
ユリア:いきなり重傷なのれす。(コロコロ)こっちは当たってはいるけど……ダメージが2点。
GM:さすがにそれはヘーキ。
ユリア:思いっきり攻撃を食らって、反射的に攻撃を返したら当たったけど効いてないって状態か……。「つ……強い……」
第2ターン。先制したのはティンベル。
ティンベル:(コロコロ)おっと外した。
ユリア:足払いいきます! (コロコロ)ダメだ、当たってるけど当たっただけ。……ますます戦闘力の差を見せ付けられてるような。
第3ターン。足技を繰り出したユリアが、ティンベルを転倒させた。
続く第4ターン、そのまま先手を取ったユリアがティンベルに関節技を繰り出す。
ユリア:(コロコロ)なんとここで失敗してしまったのれす。絡めたけど、キメきれなかった。
ティンベル:(コロコロ)振りほどきには成功している。
ユリア、もう一度関節技を試みる。今度は首しめ。
ユリア:(コロコロ)100でファンブル。悪い方に偏ってるなぁ……。
ティンベル:「詰めが甘いな、ユリア」
ユリア:「強い……」
GM:さあ……どうする?
ユリア:「勝ちたい……強くなりたい……」
ティンベル:「ほう……」
ユリア:──ここは師匠と戦って勝った場所。勝てないと思っていた相手に勝てた場所。そのときのことをイメージできれば……
GM:あのときはどうして勝てたのだろう、と考え始めるわけだ。
ユリア:(腕を見て)あのときと、明らかに長さも太さも違う気がする。あのときより成長しているはずなのに、なぜこんなに腕が細い……?
……あのとき戦ったのは本当にユリア?
ユリア:「ユリア……ユリア……? わたしは……ユリア?」
次のターン。先手はティンベル。
ティンベル:「戦いの最中に考え事とは余裕だな」
渾身の一撃がユリアを襲う。ユリア、更に重傷。
ユリア:重傷2つ来たよ。やばいやばい。
GM:追い詰められたときこそ、真の力が発動されるときなのだ!!!
ユリア:──と誰が言ったんだろう。
GM:……師匠かな。母の魂(ミシェルのこと)は助けてくれないの?
ユリア:母の特殊能力は空を飛ぶぐらいしかないので。
GM:あとは人肉を食うぐらいか。
ユリア:パンサーズファングももうないし。
遠のいていく意識。
死を覚悟した瞬間──ユリアの力が、そしてユリアの『肉体』が……目覚めた。
ティンベル:「──!?」
鈍い音と共に、今まで届かなかったはずのパンチがティンベルの頬にめり込んだ。
たまらずティンベルは束縛を解く。
ユリア:「思い出しましたよ……。ここで戦っていたのは──『僕』だ」
ユリアの声が、低く変化していく。
ユリアの体つきが、少しずつ変化していく。──丸みを帯びていたそれから、男性的な、それでいてしなやかな肉体へと。
ユリア:「……思い出した……僕はユリウスだ……」
ティンベル:「………………。──はっ!!!」
立場は完全に逆転していた。ティンベルが、最後の突撃を行う。
ティンベル:「魂ヲ……ッ! コノ手に!!! コノ……テ……ニィィィ!!!」
ユリア:拳を軽く握って……前に突き出す。アインの道場でやってように、自然な動きで。
ユリアの繰り出した一撃は、ティンベルの左胸を──心臓があるべき場所を貫いた。その存在を、消し去るために。