ゆっくりと東へ流れていく雲を、ぼんやりと見送っている。
ちょっとした休憩のつもりで寝そべった緑の草の上は、思った以上に心地よかった。
青い空。白い雲。
深紅のスカート。そこからすらっとのびた足。
「……足?」
空が墜ちてきた。深紅の空が。
空から突如降ってきた少女に、青年は押しつぶされた。
アリア・ミリアル・エルズミーア:「ここが……<真なるアルカディア>……?」
知ったことか、と青年は──アルバスは思った。
アルバス:空からアリアが落ちてきた、んだな?
GM:そうだね。
アルバス:……無事なのか、オレ。
プレイヤーC:あまり無事ではない気がするな。
プレイヤーP:そこはまぁほら、漫画的お約束というヤツで。
アリア:とりあえず、ふわふわとアルバスの上から降りる(←アリアは飛べるので)。スカートの裾とか直すね。
アルバス:「誰だ、お前は」
アリア:「申し遅れました、わたくしアリアと申すものです……──って言葉通じるんですね、スバラシイ〜。……で、ここはどこですか?」
アルバス:「どこですか、じゃないだろう。謝れ、とりあえず。降ってきたことに対して」
アリア:「……申し訳ありません」
アルバス:「申し訳ありませんじゃなくてさ、人に謝るときというのは、もっとそれなりの態度というものがあるんじゃないか? なんでお前の手のひらはそんなにキレイなんだ? ん?」
一同、失笑。
アリア:「いえ……あまり家事とかしたことなくて……」
アルバス:「何を言ってるんだ?」
プレイヤーP:伝わってないし。
アルバス:「頭下げろって」
アリア:「ここ、どこ?」
アルバス:「だから頭下げろって。どこですか、ってそれは人にモノを尋ねる態度じゃないと言ってるだろう」
プレイヤーD:筋を通せ、と。
アリア:(ぼそっと)「……言葉が通じない人はキライです」
アルバス:「まあいい。きちんと聞く気がないヤツに、答えるつもりはない」
アリア:今召喚魔法を使うと、ミケは召喚できるの?
GM:ミケに限らず、召喚魔法は使えない。
アリア:飛ぶことはできるんだよね?
プレイヤーP:魔界の魔法とかは使えるのか?
GM:召喚魔法だけ使えない。特殊魔法なんで。
アルバス:近くに召喚獣の配送センターがないんだな。
プレイヤーP:なるほど。
GM:なるほど、って……納得したの?
プレイヤーP:いや、なんとなく。
アルバス:まあいい。オレはいくぞ。
アリア:その後を、ふよふよとついていこう。
アルバス:……ついてきたいなら、ついてくるがいい。
アリア:「──というワケで、気がついたらあたし、アルバスさんの上にいたんです」
ゼナ&リルル:「「え?」」
アルバス:……ゼナもそういうことを考える年頃になったんだなぁ(しみじみ)。
アリア:「で……ここはどこなんでしょう?」
ゼナ:「ここはボクの家ですけど」
アリア:「……そうじゃなくて(びしっ)。──ここは何という国の、何という街なのですか?」
ゼナ:「国、っていうか……南キャンバス大陸の、イシュタルという街ですよ」
アリア:魔界的に、聞いたことある?
GM:ちっとも。
アリア:「あう〜、異世界に来てしまった〜」
ゼナ:「はあ」
アリア:「だって、空が青いんだもん!」
一同:「「「はあ?」」」
アリア:「空が青いんだよ! 一面、緑の草原とかあるんだよ!」
リルル:「………………。……こ、これ、片付けてきますね」(コーヒーカップを持って立ち去る)
ゼナ:「………………。──じゃ、いきましょうかアルバスさん」
アリア:「え、あの、話はまだ……」
GM:これはもう、無理矢理納得するしかないんじゃないかな?
アルバス:納得する必要はないんじゃないかな。
プレイヤーC:黙って俺についてこい。もしくは訛って俺についてこい。
アリア:「あうー。あうー」
ゼナ:「……で、どこにいけばいいんですか?」
アルバス:「それが分からないからお前のところに来たんだ」
ゼナ:リューセさんの居場所、ですか。
アルバス:何か情報集めてないのか? テレビとか見てるだろ?
GM:テレビでやってるのか(笑)。
アリア:『今日のリューセ』みたいなコーナーが。
アルバス:皇族みたいに。
ゼナ:「たぶん、ニャルラトホテプにいると思うんですけど」
アルバス:「じゃあそこに」
GM:大陸縦断だね。
プレイヤーP:リューセの方がアルバスを訪ねるってことはないのか?
ゼナ:それに、何でこのタイミングで?
アルバス:別に5年というのにイミはないんだけど、アールマティの復興も一段落して、新しい町長も決まって──
プレイヤーP:アルバスって町長だったん?
アルバス:おう。町長として、他の議員と戦ってきたんだ。
プレイヤーP:何て恐ろしい……。
アルバス:で、リューセの方はまだ『神様』の仕事を終えてないかもしれないけど、一度こちらから訪ねてみようかなーと。──いろいろ考えてるんだ、俺も。成長してるんだ、俺も。
アリア:……5年間、一度も会いにいってないのに?
アルバス:それは言うな。
アリア:うわー……。
アルバス:忙しかったんだ、いろいろ。──さ、いくぞニャルラトホテプ。
ゼナ:「『船』を出さないといけないですね。──リルルー、アルバスさんと、ちょっと出かけてくるよー」
プレイヤーC:ちょっと、大陸縦断。
リルル:(キッチンから)「はーい、気をつけてー」
アルバス:がらがらがら。
ゼナ:だから何で引き戸なんですか。
アルバス:こっちが聞きたい。いいのかそれで。
ゼナ:そんな……。
リルル:「あ、それから明日はお客さんが──あれ、もういない」
GM:というワケで、アルバス、ゼナ、アリアの3人は、ニャルラトホテプを目指すことに。
ゼナ:ついて来たんだ?
アリア:だっていくアテありませんし。
アルバス:だから、一緒に来たいならそれなりの態度なり誠意なりを──
プレイヤーC:詳しいことは、ゼナに聞いたらいいじゃないの?
GM:「どこにいくんですか?」「『神』に会いにいくんです」なんて会話になる可能性はあるけどね。
ゼナ:「で……あなた、誰なんですか?」
アリア:「あたしはアリアだけど……ここがどこなのかも分からないし……いくアテもないし……」
ゼナ:「ひとつ言っておきたいんですけど……あなた、メチャメチャ怪しいですよ(笑)」
アリア:「自分でも、浮いてるかなとは思うんですけどぉ……」
プレイヤーP:文字通り浮いてるしね。
ゼナ:「どこから……来たんですか?」
アリア:「<帝国>」
アルバス:帝国って……。こっちの世界に帝国ってあったっけ。
GM:北キャンバスにオーレオリン帝国があるよ。
ゼナ:「南キャンバスに帝国は……というか、『国』はないから……」
アリア:「どこか遠い遠いとこから来たんだと思います」
ゼナ:「うーん……。テレポートの力でも暴発したんですかねぇ……」
アルバス:「で。お前はどうしたいんだ? ついて来たいのか?」
アリア:(うなずく)
ゼナ:「でも南キャンバスじゃない場所にいきたいなら、北にいった方がいいですよ。ボクたちこれから南の端にいくんで」
アリア:「でも、どうやって北にいけばいいか分からないし……」
GM:巨大山脈に阻まれて、北キャンバス大陸にはいけないしね。
ゼナ:あれ、トパーズさんたちは?
GM:彼女らは『空間』斬って、無理矢理『道』を作ったから。
アリア:「だからしばらくご厄介に……──」──って、何て言って頼めばいいの〜? アルバスに頭下げたくないよぉ〜!
GM:それが前提条件なんだ(笑)。
アリア:「たぶん、連れがどこかにいると思うんで……誰かに会えるまでは一緒に……」
ゼナ:「ボクは構いませんけど……会える保障というか根拠というか……」
アルバス:(大陸を縦断すれば、それだけ多くの街を通る。その連れとやらが南キャンバスにいるなら出会える可能性もないことはない、か)「ここ(イシュタル)にも人はたくさんいる。ここから探したらどうだ」
アリア:「……ひとりで?」
アルバス:「甘えるな」
ゼナ:「もうちょっと、詳しく教えてもらえませんか。あなたのこととか、あなたのいた国のこととか」
アリア:「名前はアリア・ミリアル・エルズミーア。でもフェルチアイアって名前の方が有名かもしれない。アルカディアの<帝国>にいて、<真なるアルカディア>を探してずっと西にいったの」
アルバス:「さっぱり分からん」
ゼナ:「でもいくつかキーワードは出てきましたよ。──あ、図書館で調べてみるとか」
GM:ヴィゾフニルの中央図書館『永劫回帰』だね。
プレイヤーP:まだヒイラギさんは現役なのか?
GM:うん。
ゼナ:「一緒に、いきましょう」
アリア:「ありがとうございます、ゼナさん」
アルバス:「結局一緒にいくんだな。それならそれなりの態度という──」
ゼナ:「さ、いきましょう」(さっさと歩き始める)
アルバス:「ゼナぁー!」
ゼナ:5年の間にいろいろ造ってると思うけど……一番速いヤツで。
GM:じゃあ、エスペルプレーナ3で。
アルバス:おお、エスペルさん。
ゼナ:カリストパラスも積んでますから。
アルバス:懐かしいな。じゃ、それで。
アルバスたちを乗せ、エスペルプレーナ3は一路、南へ。