ガタン キリキリキリ…… ガチャン
遠くで、歯車が回る音がする。
やがて……『セフィロトの樹』の上部に、2本の台座がせり上がってきた。
GM:台座には『再生』と『終焉』、2つの『結晶体』をはめ込むようになってる。
ガンバ:(みんなの顔色を伺いつつ)「『大いなる遺産』て、どんなモノだっただわさ?」
アルバス:「解放してみれば、分かるだろ」
ガンバ:「そだね」
ガンバの手によって『結晶体』があるべき場所に置かれ…………しばしの、静寂。
アルバス:「さあ……どうなるんだ……?」
光が……生まれた。
イシュタルの場所。王国<マルクト>の『クーア』が輝き……
光は道を──王国<マルクト>から至福<ケテール>への『神に至る道』を巡り、『セフィロトの樹』全体が光に覆われる。
そして……2つの『結晶体』が脈動し──ひとつとなった。
『再生<ビデオ>』と『終焉<デッド>』の力を持つ『万能の力<オファニエル>』の結晶───
GM:ニャルラトホテプ全体が『女神の力』のフィールドで覆われ、『想いが実現する場』となる。つまり……君たちの願いが──一番強い『願い』が、叶う。
アルバス:『願い』か……。そんなこと何も考えずにここまで来てしまったな。
サリース:『大いなる遺産』って、こういうものだったんだ……。
GM:最初から言ってたじゃないか、『全ての願いを叶えるもの』って。
ガンバ:文字通りだったんだね。
GM:さ、『願い』を言うがよいぞ。
マフィ:わたしは……『記憶』を戻してほしい。
GM:父親に殺された、つらい記憶だけどね。
マフィ:じゃあ記憶と……それに耐えられる強さを。
『月の民』であるという事実も。
幼いころの父と母との思い出も。
父に……殺された記憶も。
マフィ:「父さん、何してるの?」
ガトー:「マフィか。……いや、ちょっと調べ物をな」
マフィ:「調べ物って……また母さんに刺さってたっていう刀?
それ調べても何も分からないって言ってたの、父さんだよ?」
ガトー:「やっと分かったんだよ。『何で』殺すかではなく、『誰が』殺すかが重要だったんだ」
マフィ:「……殺す?」
ガトー:「土地神の祭りに必要な『祭器』誕生の条件……それは『月の民』の『肉親』が殺すこと……」
マフィ:「父さん……? 一体何の話?」
ガトー:「殺し屋なんか雇うんじゃなかった……。
あのときこの手で母さんを殺しておけば……殺しておけば…………娘を失うことはなかったんだ……」
すべてがわたしにとって、たいせつなもの……
よろこびも、かなしみも、いたみも……すべてがおなじものでできているなら……
いつか、しずかに、すべては『おもいで』となっていくのだろうか……
GM:マフィの『記憶』は、戻ったよ。
トパーズ:大人になったのね。
マフィ:改めて自分がしてきたことを思い返してみて…………うわッ、恥ずッッ!(赤面)
ゴーヴァ:でも基本は、あのまんまなんだろうな。
GM:ゴーヴァの中で好き放題やってたのが地だろうね(笑)。
カー:ぼくは……どうしようカウ?
GM:オードーの復活を願っとく? ……他に誰も願いそうにないし(笑)。
カー:「じゃあ……オードーの復活をッ!」
オードーは暗闇の中をさまよっていた。……何も、見えない。
おらは……死んじまっただ……?
もう木が切れない……そのことだけが心残りだ。──そう思った瞬間。
『光』が戻った。視界が開け、見覚えのある顔、顔、顔……
視線を落とすと、小麦色のたくましい胸が目に入った。鋼のような筋肉に覆われた腕は、丸太のようだ。
毛むくじゃらの身体の、さらに下の方に視線を落とし……オードーは叫んだ。
オードー:「とッ、とりあえず、服〜!!!」
オードーの『願い』、終了。
GM:ゴーヴァは……どうしよう?
アルバス:もっと性能を上げて、とか。
サリース:しゃべれるようにしてほしい、とか。
GM:(あーっと……)あ、ごめん。ゴーヴァは人工知能だから、無理だ。『想い』が──精神力が具現化するという設定だから。
ゴーヴァ:なんだァ……チェッ。
GM:シェオールは? まだ、ゲオルグを殺したい?
シェオール:いや、今は……ゼナとゼナツーの身体が正常に戻ってほしい。
GM:ゼナのことは、リルルも願ってるけどね。
シェオール:なら、ゼナツーを。……それでアイツが喜ぶかどうかは、分からんが。
復讐することしかない自分が、本当にそんなことを願えるのだろうか……?
『妹』の、ことを……?
似合わない。ふさわしくない。そんなの、急にはムリだ。
心に浮かぶのは、否定の言葉ばかり。
だが……今は、願ってみよう。
『妹』のために。自分のために。
そして自分のことを心配してくれた、北の大陸の少女のために……
できるはずだから……
俺にも、願うことはできるはずだから……
GM:ゼナは……
ゼナ:もちろん………リルルを、元気にしてほしい。
GM:日に焼けて、むきむきとたくましくなった?
ゼナ:そ、そーゆーのはイヤだァァァ〜!
ずっと、探してた……
生きていける方法を
ふたりで歩いていける、方法を
基本的に無口で無表情で
ときどき何考えてるか分からなくて
突然泣いたり怒ったり
でも、笑うととてもかわいい
そんな『天使』を……今にも消えてしまいそうな『天使』を、ボクは好きになった
幼い恋なんだ
まだまだこれからのふたりなんだ
どうか……
どうかリルルに『未来』を……
ゼナは知らない。
このとき『ヒーメル』の少女が、同じようにゼナのために祈っていたことを。