目の前には、同じく全裸のリューセがいる。
2人は数秒見つめ合い、そして──
エスペルプレーナには大浴場がある。
個室にシャワーもあるのだが、船員のリクエストで追加されたものらしい。
その男湯に、ゼナがいた。
さっきまではアルバスもいたのだが……。
ちょっと目を離した隙に、いなくなってしまったのだ。
そしてアルバスは、女湯にいた。
目の前にリューセがいて(アルバスが仁王立ちでリューセが湯船につかっているから、正確には下の方、だが)、その横にサリースが、少し離れたところにリルルがいる。
視界の端に『蟲』も2匹いたが、アルバスは無視した。
突然のことに全員(アルバスと蟲2匹は除く)が硬直し、
「きゃああああああああ!!」
リルルの悲鳴で我に返った。
「なんで・ここに・いるのーー?!!」
どこからともなく杖を取り出したリューセが、目の前にぶら下がっているモノに向かって振り下ろす!
ひゅん! バチャァァァァン!!!
空を切った杖が、お湯の表面を思い切りたたいた。
「……何をする」
冷静に問いかけるアルバス。
「いいから出てけーー!!」
めちゃくちゃに杖を振り回すリューセ。
アルバスはあっさりそれを見切り、余裕の表情でかわしている。
「魔法使いのくせに、体さばきはなかなかのモノなのよねェ……」
サリースはニヤニヤしながら事の成り行きを見守って(?)いる。
アルバスの裸が見れる、滅多にないチャンスだし。
そこへ、リルルの悲鳴を聞き付けたゼナが走り込んでくる。
「リルル、どうしたの──ってェ?!」
「来ないでェェェ!!」
かぽーーん!
リルルが投げた桶にあっさり撃沈されるゼナ。
そのゼナの一部分を見て、蟲──ユンケとガンバが「「へええ……」」と感嘆の声を上げる。
「アルバスと違うだわさ……」
「……何見てんのよ……」
そう言いつつ、サリースもばっちり見てたりする。
「あっちの方はまだ決着つかないみたいね」
視線をアルバスとリューセの方に戻すと──
いつの間にかアルバスがお湯につかり、リューセが立ち上がって杖を振り回している。
しかもアルバスの手元には、お盆と徳利とお銚子が……。
「はァァ……コーラがうまい……」
「コーラぁ!?」
思わずツッコミを入れるサリース。
温かいコーラ……イヤかも……。
想像しただけでゾッとする。
「いいかげんに、してーーー!!」
珍しくキレたリューセが渾身の一撃を振り下ろす。
いいかげん疲れたのか、アルバスはその杖をパシッと受け止めると、力の流れに逆らわずリューセを後方に投げ飛ばそうとした──のだが──
「あ」
「ほえ?」
力の入れ方を間違えたのか、リューセを抱き寄せるような形になる。そして──
ずめきょッ!
鈍い音とともに、2人は湯船に浮いた──
「えーと……」
いつの間にか、サリース以外(クックルックルーフは除く)は気絶してしまっていた。
リルルはいつの間にかいなくなってしまっている。
あきれたのか、ノリについていけなかったのか……。
「どれ、それじゃじっくりと……」
アルバスに近づいたサリースは、彼のお尻(右側)に六芒星のアザがあることに気づいた。
「これって、リューセと同じ……」
このとき、サリースはまだ気づいていなかった。
アルバスの尻を凝視する自分のさらに後ろで、ユンケとガンバの目が怪しく光っていることを──
そして気がつくと、サリースは食堂にいた────全裸で。
サリース:「えーと……」
エスペルプレーナの食堂。
サリースはテーブルの上にいた。皆が食卓を囲み、ガンバが包丁を持って微笑んでいる。
GM:「そろそろ夕食の時間ですな(笑)」
サリース:「ちょっと……」
アルバス:「なんだ? オレたちは服着てていいのか?」
リューセ:「てゆーか何がどうなったワケ?」
ユンケ・ガンバ:「「気絶したみんなを糸でぐるぐる巻きにして、ここまで運んできただわさ」」
アルバス:「てことはオレたちは糸で身動きが取れないのか?」
ユンケ・ガンバ:「「見えたらヤバイ部分を覆ってるだけだから──ひとりを除いて」」
サリース:「………………」
リューセ:「動けるなら、部屋に戻って服を着てくる」
プレイヤーP:「その前にシャワーで糸を洗い流した方がいいかも……」
アルバス:「オレは面倒臭いからこのままでいいや。腰にタオルで、湯上がりのコーラを飲む」
GM:「てことは──服を着たリューセ・ゼナ・リルルがいて、フリーズしたサンダユウがいて、テーブルの上に裸のサリースがいると(笑)」
ガンバ:「わたいが料理してるだわさ!」
ユンケ:「『船』の外で糸を垂らしたらなぜか釣れた魚を(笑)」
ガンバ:「しかも目がない魚」
GM:「深海魚……?」
そもそも『船』の外には海も湖もないはずなのだが、蟲たちが「釣れた」というなら釣れたのだろう。世の中そういうものなのだ。
ガンバ:「さ、料理を皿の上に盛るだわさ」
サリース:「皿ってのはあたしのことかーー!?」
アルバス:「女体盛りか? ……食いたくないな」
ガンバ:「いや、よく焼けた魚をサリースの上に(笑)」
サリース:「熱いわーー!! ──てゆーかその前にテーブルから降りるってば!」
ゼナ:「……えーと……ボク、どうしたらいいんだろ……」
サリース:「リルルやゼナはこの状況を見て、止めようと思わないの?」
プレイヤーP:「あきれてるのか、固まってるのか……」
ゼナ:「ここにいなかったりして……。リルルと2人で扉の外でため息をついてる、とか」
GM:「リルルは君たちになじもうとガンバってるのかもしれないぞ?」
ゼナ:「そんなことガンバらないで……お願いだから……」
サリース:「とにかく! さっさとテーブルから降ります」
ガンバ:「その前に! 大きな白い布を、サリースの上からかぶせるだわさ」
一同:「???」
ガンバ:「で、さっと布を取ると、サリースがいなくなっている」
一同:「おおォーー!」(ぱちぱちぱち)
ガンバ:「そしてダストシュートを指差すと、そこからサリースが出てくる」
一同、大笑い。
サリース:「………………。……シャワー浴びてくる……」
裸(でゴミまみれ)のまま、部屋を出ていくサリース。
アルバス:「ここでガンバがサッとダストシュートを指差すと、そこからまたサリースが出てくる」
一同、再度大笑い。
サリース:「いいかげんにしてーーー!!(涙)」
サリース、今度こそ食堂から退室。
んで、しばらくしてから夕食となった。
サリース:「結局あたしが作るわけね……」
アルバス:「早くしろよ。オレ、味噌煮込みうどんな」
プレイヤーP:「またシブイものを……」
GM:「ゼナはやっぱりコーンフレーク?」
ゼナ:「それは朝だけです! やっぱりハンバーグとかスパゲティとかカレーとか……」
サリース:「まるっきりお子様メニューね……」
GM:「お子様ランチだな。……ユンケとガンバのおまけつき」
ユンケ・ガンバ:「「人形がついてるんだね」」
アルバス:「きびきびとよく動く人形が」
ユンケ・ガンバ:「「最後は自ら口の中に飛び込む人形だわさ」」
ゼナ:「絶対イヤ(笑)」
んで──
リューセ:「そういえば私、アルバスのおしりのアザ見てないよね?」
GM:「見たのはサリースだけ、かな」
サリース:「ゼナは知ってんじゃない?」
ゼナ:「見て見ぬフリを(笑)」
ユンケ・ガンバ:「「わたいらはずいぶん前から知ってた、はず」」
アルバス:「オレは知らんのか?」
GM:「風呂上がりに鏡で自分の尻を見ることがあるのなら、知ってるかもね」
アルバス:「なら知らないだろうな……」
リューセ:「見たかったな……アザ……」
サリース:「ゼナが知ってるなら、このことはパーティー周知の事実なんじゃない?」
ゼナ:「でもボクは、リューセさんにそういうアザがあること知りませんよ」
サリース:「てことは2人に同じようなアザがあることを知ってるのは、今のところあたしだけか……」
GM:「あとね、リューセのアザ……六芒星の周りに、さらにゴチャゴチャと模様が現れているから。最近」
リューセ:「増えてる!?」
アルバス:「昇り竜とか、唐獅子とか」
ゼナ:「般若の面とか」
ユンケ・ガンバ:「「そして下腹部には鷲のマークが(笑)」」
ないない。
プレイヤーP:「で、サリースはそのことをみんなに話すの?」
サリース:「話さないわよ。最近のハヤリなのかなァ、とか思うぐらいで」
プレイヤーP:「ンなワケないでしょ」
アルバス:「わざわざ語るようなことでもないだろ」
リューセ:「十分語るようなことだと思う……」
結局サリースは何も語らなかった。
そして数日後──エスペルプレーナは水上都市トールに到着した。