ここは……?
「あ、目が覚めました?」
声の方を向くと、メイドの服を着た女性がベッドのすぐ傍にいた。
「ここ……は……?」
口の中が乾いていて、かすれた声しか出てこない。
「シモーヌ様の屋敷よ。……覚えて、ない?」
ああ、そうか……思い出した……
潜地艦の上の無数の十字架──それを見たショックで、リューセさんはまた、倒れてしまった。
みんなの体調も優れなかったし、エスペルプレーナの応急処置も必要だった。
だからボクたちはモトの下級貴族であり、少し前にお世話になったシモーヌさんを頼った。
おそらくあの変な魔法のせいなんだろう。
その後、アルバスさんたちは逆に体調を崩し、ボクもまた、倒れてしまった。
「ボク……どのくらい眠ってました?」
「倒れてから、まだ半日ぐらいね。体の調子、どう?」
水の入ったコップを受け取り、喉を潤してから、ボクは答えた。
「もう……大丈夫だと思います」
「そう、よかった……。やっぱり若さなのかしら、アナタ以外に目を覚ましたの、リルルちゃんだけよ」
「リルル……。彼女、どこにいます? 寝室ですか?」
「さっき、テラスで見かけたわよ」
「そうですか。ちょっと、行ってみます」
GM:状況は把握できてるかな?
ゼナ:ええと、みんな治療中で、ゼナとリルルだけ早く回復した、と。(ユンケ・ガンバは論外)
GM:そうそう。とまあそういうことなんだが──どうする?
ゼナ:へ?
GM:そうだな……リルルは今、テラスにいる。ちょっと元気がない。
ゼナ:こんな状況だもんね……。
GM:(理由はそれだけじゃないんだが……)星を見上げてたまにためいき。で、ゼナに気づいて──
リルル:「あ、ゼナ君……」
ゼナ:「リルル……」
彼女の翡翠色の瞳に、ひきこまれそうになる。
リルル:「もう……いいの?」
ゼナ:「うん、ボクもどうやら大した事無かったみたい」
リルル:「そう……よかった……」(ちょっと安堵)
ゼナ:(ふっと表情が暗くなって)「でも……リューセさんたち、まだ意識が戻らないみたいで……」
リルル:「そうなんだ……」
ゼナ:「うん……」
鬼の霍乱と言ったら、怒られるだろうか……
リルル:(ちょっと考えて)「──ねえ、外いかない?」
GM:……ホントはいけないんだけどね。
ゼナ:え?
GM:貴族都市だから。『奴隷出歩くべからず』
ゼナ:なるほど。
ゼナ:「ボクらだけで?」
リルル:「うん。こっそり……ね?」(小首をかしげる)
ゼナ:(いたずらっぽくわらって)「そだね! 面白そうだし」
リルル:「よし、きまり! じゃあ、こっそり。こっそりね。シモーヌさんに見つからないように」
ゼナ:「あ、でも……外で誰かに見つかるかもしれないよ?」
リルル:「そのときはそのときよ」
ゼナ:「よっし!! 行こう!!」
リルルらしくないな……と思った。でも……逆にそれだけムリをしていたのかもしれない。
GM:ではこっそりと外へ──
ゼナ:変装とかしなくていいかな?
GM:マントぐらいは羽織ろうか。豪華なやつを。
ゼナ:蔵からとってきて?
GM:うん。
ゼナ:警備システムはボクがごまかすから。
GM:なら特に問題はないかな。では変装して夜の街へGO!
ゼナ:夜の街かァ……。
GM:いちお、ね。文字通りの。
ゼナ:さて。じゃあ歩いていってみよう。どんな街なのかな。
GM:建物の造りは中世風。別名「花の都」ってぐらいだから。
ゼナ:煉瓦作り。
GM:概観はね。設備は近未来的だけど。あと、潜地艦の攻撃で一部壊れてる。
ゼナ:ああそうか。大惨事だったのかな?
GM:このへんはそうでもない。
ゼナ:いきなり走り出してちょっと先でリルルを振り返ったり。
GM:ん?
ゼナ:あ、いや。遊んでんの。
GM:はいはい。
リルル:「ああ、いい気持ち。やっぱり外がいいね。生き返るかんじ」
ゼナ:「しばらく寝てばっかりだったからね」
リルル:「そうね。……ひさしぶりだね、ふたりで歩くの」
ゼナ:「前は……」──どこだっけ?(爆)XX(ぺけぺけ)の時かな。
GM:そうそう。
ゼナ:街の名前は──
GM:アガートラーム。中身は大阪。
ゼナ:あっはっは☆
ゼナ:「あの時は変な事になっちゃったよねー(笑)」
リルル:「よく分かんないままね……」
GM:でまあ、そうやって歩いている、と。んじゃ、ここで「心」判定をするのだ。
判定は──ファンブル(笑)
ゼナ:げげ!!?
GM:あっはっは☆ リルルの方しか見てなかったな、コイツめ……。
ゼナ:……どーなるの?
しょーがないんで、リルルも判定してみる、と──
GM:……リルルもファンブル……。
ゼナ:じゃーん、最悪ゥ。
GM:「もうアナタしか見えない」状態。
ゼナ:暗がりに入り込んで?(爆)
GM:ちゃうがな。──てことでひとつめの路地を通り過ぎ、次の路地。ここでもう1回判定だ。
ゼナ:86……。
リルル:03。
GM:今度はおっけ。
ゼナ:おお、リルルがクリティカル!
リルル:「ねえ、今なにか聞こえなかった?」
GM:路地の奥(暗い)から何やら人の声がした、らしい。
ゼナ:「え、ボクは聞こえなかったけど?」
リルル:「ホントだもん」(ふくれる)
ゼナ:「………。何が聞こえたの?」
リルル:「人の……うめき声みたいな……」
ゼナ:「え゛?」
ゼナ:リルルを背に路地を覗き込む。
GM:暗くてよく見えない。
ゼナ:ペンライトを取り出す。
ライトで照らしてみると──
GM:人が倒れている、ように見える。
ゼナ:「……誰か倒れてる!!」
リルル:「やっぱり! ──たすけなきゃ」(駆け寄ろうとする)
ゼナ:「待って!」
ゼナ:周りを照らして何も無い事を確認する。
GM:ほう。
ゼナ:「他には誰もいないみたいだ。よし、行こう」
GM:では近づいて、よく見ると倒れているのは老人だ。身なりは立派。でもぼろぼろでよれよれで怪我してる。
ゼナ:知らない人?
GM:知らない人。
しゃがみこみ、老人の顔をライトで照らすゼナ。
ゼナ:「おじいさん、おじいさん、大丈夫?」
老人:「う……ああ……。……ん……誰じゃ?」
ゼナ:「あ、えっと……たまたま通りかかったんです」
老人:「何だ、子ども……ではないか……」
リルル:「おじいさん、とにかく傷の手当てを」
ゼナ:(リルルに)「近くに病院ってあったっけ?」
リルル:「分かんない。それに病院に行っても追い返されるだけだと思う。下手すれば殺されるわ」
ゼナ:「あ、そうか、ボクら見つかっちゃヤバイんだっけ……」
リルル:「どうしよう……」
ゼナ:「シモーヌさんの所に戻ろうか。それなら、怒られるだけで済むかもしれない」
リルル:「それしか……ないかァ」
ゼナ:「よし。──おじいさん、立てる?」
老人:「ああ、そのくらいは……イツツ」
ゼナ:おじいさんの腕を支えて、立つ。
2人は老人を連れてシモーヌの屋敷へ。