ロートシルト:「なんだ、ミューズじゃねーか──本物の」
ミュスカディ:「なによ、本物って……」
ロートシルト:「いや、カスタちゃんの方にはこの間会ったからさ──そーゆーこと」
ミュスカディ:「相変わらずねー。……変なことしてないでしょーね?」
ロートシルト:「バーカ、するかよ、そんなこと。俺はフェミニストなんだぜ」
ミュスカディ:「初耳だわ、そんなの。──ふーん、そおなんだあ、ゆーとーせいのロートシルト君」
ロートシルト:「へっ、バーカ」
オルディネール:「──相変わらずなのはふたりともですよ」
ロートシルト:「そうか、アンタもこっちに来てたんだったな、オルディネール。
──ロゼには、悪いことしたと思ってる……。あんなことになるなんてな……」
オルディネール:「いえ……私が悪いんです……」
ミュスカディ:「…………」
オルディネール:「ところで、今の黒い物体は何だったんです?」
ロートシルト:「さあな。地下から出てきたぜ」
オルディネール:「ずいぶんと、懐かしい感じがしました……」
ロートシルト:「ああ、アルカディアの匂いがした。アルカディアの……。──なあ、オルディ」
オルディネール:「……はい」
ロートシルト:「すっげー昔、『魔界』と『人間界』の間に『扉』が開いた……。
そして、メーヴェとオゥリンは互いの存在を知った……」
オルディネール:「探求心が欲望を呼び、欲望が憎しみを生んだ……」
ミュスカディ:「でも、愛も生まれたわ……」
ロートシルト:「……ったくよう、迷惑な話だよなぁ……。
お互いのこと知らなかったら……こんな思いしなくてすんだのによ……。
迷惑な話だぜ……ホントに……」
ミュスカディ:「そうね……。知らない方がいいことって案外多くて……困っちゃうわよね……」
ティンベル:ギャリソンは中に入っていったんだよね? 後を追うよ。
ガルフ:オレたちも行くぜ!
GM:部屋の中は薄暗い。で、剣や鎧がずらっと並んでいる。
ラズリ:をを!? なんか怖いね……。
GM:そして床には何か白い物が敷きつめてある。踏むとかわいた音を立てるそれは──人間の骨だ。
ラズリ:きゃ〜! きゃ〜!
ガルフ:ナンマンダーナンマンダーナーンマーンダー♪
ティンベル:ひとつ拾ってカリカリかじる(笑)。
クロヌシ:カルシウムの補給か?(笑) ──なんだ、この部屋は……?
GM:で、ギャリソンは膝をつくと、奥の方に向かって──
ギャリソン:「奥様……おっしゃる通りあの粉をまきました……。奥様……これで私を……」
一同:!?
ラズリ:「きゃーーー!」
ガルフ:ラズリの顔をばさっとマントで隠して、それが見えないようにする。
ティンベル:「ギャリソン!」(ダッシュで駆けよる)
GM:血と骨と肉の向こう側に誰か座っている──その人物はこうつぶやく。
GM/少女:「砕け散る──っていうのは肉屋がすることじゃないわね……」
ミシェル:「何年ぶりかしら。会いたかったわ、姉さん」
ティンベル:「ミ……シェル……」
ラズリ:ミシェルって……ティンベルの妹さん? でもギャリソンは奥様って言ってなかった?
ミシェル:(ギャリソンだったモノを見下ろしながら)「馬鹿な男……。
いくら私が母様に似てるからって何でも言うこと聞いちゃってさ……。
──ロゼとかっていう化け物がここに来たでしょ? 私が呼んだの──ここの結界を取っぱらうために。
……この粉を使ってね」
GM:(コロコロ)クロヌシに襲いかかる。
クロヌシ:なに!?(コロコロ)よけられん!
GM:じゃあ全身に粉を浴びてくれ。で……『十六夜』を持ってるのはクロヌシだったよね。
粉を浴びた『十六夜』は脈動するように淡い光を放つ。
クロヌシ:ほんとに何なんだぁこの剣は〜! ──で、粉を浴びた俺はどうなるんだ?
GM:さあね。今のところなんともないよ(意味深な笑い)。『十六夜』の光もしばらくすると消える。
クロヌシ:なんか気になるぞ……(ひきつった笑い)。
ガルフ:そっちが戦うつもりなら、応戦させてもらうぞ。
ミシェル:「ふふっ、今姉さんたちと争うつもりはないわ。
まずはあの女──ナタリーに痛い目にあってもらわないとね。……私をこんなところに閉じこめたあの女に……」
一同:「ナタリー!」
ラズリ:「またあの人なの……?」
クロヌシ:「ナタリーってあのナタリーだよな? どういうことだ……?」
GM:あ、そうか。まだ話してないんだっけ……。
ラズリ:だって話したらカレンを殺すって脅されたじゃない。
GM:だからジャスティスレンジャーがカレンを助けにいったんじゃないか。戦いの途中でカレンを連れてきたでしょ?
ラズリ:あ、ああ……そうか……そういうことだったのね(納得)。
クロヌシ:「ナタリーが、どうしたって?」
ラズリ:「あのね──」
オルディネール:「──ええ、ラグランジェがちょっと……」
ロートシルト:「また……なのか?」
ミュスカディ:「ええ……ちょっとね、また壊れちゃったみたいなのよ」
オルディネール:「我々はラグランジェを探しに行きます。──あなたは?」
ロートシルト:「俺はもうちょっとここにいるよ。……やることがあるんだ」
オルディネール:「そうですか……。では……お元気で」
ロートシルト:「ああ……。あ……ミューズ!」
ミュスカディ:「ん……?」
ロートシルト:「お前にまた会えて……ウレシカッタゼ」
ミュスカディ:「……バカ。……じゃあね、べーだ!」(舌を出す)
ロートシルト:「へっ。(つぶやくように)……最期の別れ……か……」
クロヌシ:──なるほどな。
ティンベル:なんでナタリーはミシェルをこんなところに閉じこめたの?
GM:まあいろいろと理由はあるんだけど……何かに利用しようと思っていた、のかな。
ミシェル:「あの女は……私が殺す!」
ティンベル:「ミシェル〜!!!」
ラズリ:うわー、ガレキが降ってくる〜!
ガルフ:(マントでばさっとラズリをかばう)
ティンベル:「ギャリソン……ミシェル……なんでこんなことに……」
ラズリ:ふいー、やっと外に出れた……。──そういえばロートシルトは?
GM:外にいるよ。ひとりでぽつんと立ってる。
クロヌシ:とりあえず広場に戻ろうぜ。街が大丈夫か気になるしな。
ロートシルト:「俺はラズリちゃんに用があるんだけど……付き合ってもらえるか?」
ラズリ:(あっさりと)「いいよ」(と言いながら目でガルフに合図を送る)
ガルフ:(黙って目でうなずく)
ロートシルト:「街はまだざわついてるから……森の方に行こうぜ」
ラズリ:分かった。──何の話かな、ちょっと気になるよね。
ガルフ:オレは忍法姿隠しとか使ってこっそり後をつけるぞ。──アユモめ、ラズリを頼むって言ったのに……。
ヨジロー広場──
ティンベル:うーんとね、姉妹そろって脳みそ飛び散らせるのが好きってことが分かった(笑)。
フローラ:「……なにそれ。──ラズリとガルフは?」
クロヌシ:「ああ、あいつらはちょっとな……」
ロートシルト:「ラズリ──俺の子を産んでくれないか?」
ラズリ:「ひぇ?(しばらく声も出ない)……と、と、突然何を言い出すのよ!?」
ロートシルト:「子供だよ、こ、ど、も」
ラズリ:「あのね、こーゆーことは女の子にとってすっっごく大切なことで、だから──」
ロートシルト:「──俺はたぶん、ツェラーに殺される。その前に俺の子を産んでくれ。
そうすれば俺の心は救われる。お前も……解放される」
ラズリ:「……よく分かんないよ。ちゃんと理由を説明して」
ロートシルト:「理由を話して抱かせてもらうなんてのはゴメンだ。
俺のこと好きか嫌いか、抱いてほしいのかほしくないのか──答えはふたつにひとつだ」
ガルフ:そろそろいいな。(ずいっと出てきて)「そこまでだ」
ロートシルト:「──時間がねえんだ。悪いが引っ込んでてくれないか」
ガルフ:「そうはいかん、馬鹿みたいに見えるオレにも任務があるんでね」
ロートシルト:「俺はラズリちゃんに話があるんだ。男は下がってな」
ガルフ:「──ふっ、どうやら貴様とは言葉が通じんようだな」
ラズリ:「ガルフ、お願い。下がってて」
ガルフ:「……分かった。オレはみんなのところに戻ってるから」
ロートシルト:「イエスか、ノーか。ノーなら……俺の子を産めないんだったら……俺を殺してくれ、あんたの手で」
ラズリ:「どうして……? どうしてすぐに死んじゃうって話になるの? しかもあたしに……」
GM:ずいっと近づくロートシルト。
ラズリ:一歩下がる。ずさっ。
GM:もう一歩、ずいっ。
ラズリ:下がる。ずさっ。
GM:そうすると木が背中に当たる。もう逃げられないぞ(笑)。んで、ロートシルトは君の顔の横にばんと手をつく。
ラズリ:「………」
GM:さらに右手が剣に変わり、ラズリの上着をすうっと切り裂く。胸がはだけるよ。
ラズリ:手で押さえるよ、それは。「……ねえ、ちゃんと話してよ。あたし……」
ロートシルト:(ふっとため息をついて)「しょーがねえな」
ラズリ:「え……?」
ロートシルト:(くるっと背中を向けて)「お別れだ。……もう会うこともねーだろ……」
ラズリ:「そんな……」
ロートシルト:「なあ、最後にひとつ聞いていいか? ──あんた、ガルフとラグランジェ、どっちが好きだったんだ?」
ロートシルト:「そうか……。──俺のことは忘れてくれ。俺はあんたのこと、地獄の果てまで持っていくことにするよ」
ラズリ:ずぶぬれだね、あたし。でも、ずっと森の中でぼーとしてる。なんか今、そんな気分……。
GM:ガルフ、ラズリが戻ってこないよ。
ガルフ:夜になったんなら迎えに行くぞ。森の方だったな。
ラズリ:「ガルフ……」
ガルフ:何も言わない。黙ってマントでばさっとくるんで抱きよせる。
ラズリ:(小声で)「ありがと……ガルフ……」