DAY5 【思い出は消えて】 03


金太郎:そういや、病院で逃げたケイちゃんというかナユんは今目の前におるんよな。

GM:おるよ。

金太郎:まだ駒が足りひん。どんな推理も成り立つし、どんな言い訳も成り立つような気がする。

GM:エンジが怪しい。でも証拠がない。動機もない。といったとこ?

金太郎:ユウミも怪しい、おじさんも怪しい。

トム:だから殴って(以下略

チャーリー:決定打がないからみんな怪しく見える、みたいなかんじデスネ。

金太郎:チャーリーが一番怪しい。

GM:ユウミの誘惑に勝つなんて、怪しい。

チャーリー:失敬な。

金太郎:童貞なので。

トム:童貞だと誘惑に抗うの大変そうな気がするが、さてどうかな。

金太郎:童貞やと、誘惑されてもどうしたらいいか分からないんや。

トム:なるほど、うまいことを言う。

チャーリー:そもそも誘惑だと理解する頭がない可能性もアリマスネ。

小鈴:手のこみまくった自殺。……ごめん、言ってみただけ。

金太郎:さて、困ったな。

トム:だから殴って(以下略

金太郎:殴ってほしいのか。

チャーリー:後なんか見落としてることないデスかね……。

GM:見落としているところか……。あるといえば、あるかな。こちらから出せる最後のヒントが。

金太郎:ダガーって見えたよな、さっき。どんなもんやったやろうか。

GM:暗かったからよくは見えなかったけど、赤いダガーだったよ。優雅な曲線を描いた。

トム:優雅な曲線を描いて飛ぶ、ブーメランだな。

浩之介:赤いって、刃が? 柄が?

GM:全部。

金太郎:刃渡りは?

GM:刃渡りは……15〜20センチぐらい?

金太郎:曲線って、「?」みたいなのやないよな。ショテルみたいな。

GM:そこまでくにゃくにゃしてないよ。ゆるーいS字。

チャーリー:クリスダガーっぽいね。

金太郎:あとなんやろうなぁ……。ローラの着ていた服がどこにあるか……?

小鈴:下着だけはコテージだったんだっけ。

GM:だね。死体は全裸。

金太郎:それも意味がよう分からんよな。

浩之介:盲腸の傷跡が……とか。

小鈴:コテージに服はなかったんだっけ。

金太郎:なかった。

GM:浴衣とかならあるけど。

小鈴:てことは、死体になってからコテージに移動させられた?

チャーリー:でも移動させた跡はなかったらしいから、コテージで殺された可能性が高いんじゃなかったっけ。

金太郎:首があるうちは動かした可能性はあるんやっちゅーねん。

小鈴:犯人が服も持ってったのかな。下着で冬の外に、自ら出るとは考えにくいし。

利迎院:全裸でコテージにきた。

小鈴:ありえないよ(笑)。

GM:近くに温泉はあるけどね。

金太郎:意味が分からん。

利迎院:全裸になるまでは生きていた。

小鈴:裸にする理由ってなに?

利迎院:それは言えませんがな。

金太郎:もともと裸の死体やったんや。ローラのものと思わせるために、ローラの下着を。チャーリーのさっきの説を採るなら。

利迎院:鶏の血と何らかの薬品の使い道は何だ。

金太郎:それは全くもって浮いとる。そこだけ意味が分からなさすぎんねん。

小鈴:処女性を取り戻そうとしてたとか。

利迎院:どんな迷信だ、それは。

金太郎:部屋で殺したときにちょっと出た血を拭き取るためか?

小鈴:鶏の血って。

利迎院:鶏の血はいらんだろう。

金太郎:いらんなぁ。

チャーリー:壁に書かれてた謎の字はなんなんデショウ? 魔術的な儀式、レベルだよねぇ。

金太郎:異世界の字なんとちゃうか。そんなん分かるかいな……分かる人おった。

GM:マコ、もう1回判定してみる?

金太郎:おったんや、マコ。

マコ:いた。話を聞いてなかっただけ。(コロコロ)23。

GM:おお、成功。――じゃあ教えてあげよう。あれはおまじないの一種で、意味しているのは――愛と死。つまり、心中。

小鈴:ほー。

GM:ただ、素人かじりで、ここをこう直せば実際に呪い殺せたのに、と。

小鈴:こわこわ。

金太郎:誰をや。

チャーリー:ここまで出てきた人間関係で、心中を考えるような関係というと……やっぱあれデスかねぇ。

金太郎:誰を呪い殺すかは分からんか。

小鈴:添い遂げたい人じゃない?

利迎院:ちあり殿か。

GM:呪い殺せたのに、は半分冗談。マコなら更に手を加えてそっちの方向に持っていけるって意味ね。――GMの出せるヒントはここまでかな。
 

 その後、PCたちからいろいろな推理が飛び交い――ある、ひとつの結論に到達した。
 

GM:んじゃ、解答編といきますか。

 食堂

 こちこちと置時計が時を刻む音と時々聞こえる誰かの咳払い。食堂内はとても静かだった。

 先程まで何かぼそぼそと話し合っていた自称高校生探偵たちも今はおとなしく真琴が入れた紅茶をすすっている。

 やがてトムが気分転換のためかストレッチを始めた。彼はまだ梅中エンジを疑っているらしく、時々挑発するようにエンジの方を見ているが、エンジは相手にせず持ってきていた文庫本に目を落とした。

 「よっこらせ」

 年寄りくさい掛け声と共に利迎院が立ち上がり、台所へと歩き出す。台所へいくにはエンジとトムの傍を通らねばならない。

 利迎院が通れるようにストレッチをやめるかと思ったがトムは彼に気づかないのか右足を大きくそらし、案の定それが利迎院の腰の刀に当たった。
 

利迎院:「待たれい福岡どの!」

トム:「あぁ? どうしたよ坊主」

利迎院:「そなた今、この宗麟公よりいただいた差料を足蹴にしたであろう!」

トム:「はぁ? ちょっと触れただけじゃねーか、気にすんなよ、な」

利迎院:「何たる無礼な! そこに直れ!」

トム:「直ったらどうすんだよ? やるのか? おい」

利迎院:(ニヤリと笑って)「足蹴にするに決まっておろう。この刀にそなたがしたようにな」

トム:「はっ、出来んのかよ」

金太郎:「ちょ、待ちいなふたりとも。こんなときに」と声だけかける。

トム:ガン付けからファイティングポーズに移行。

利迎院:「人も殺したことのない貴様の拍打など通用せぬわ!」

トム:「そんななまくらで俺を斬れるとでも思ってんのかぃ!」

GM:突然始まったケンカを、ケイは怯えたような目で見ている。真琴は目をそらしてあえて見ないようにしてるかんじ。ユウミは我関せず雑誌を読んでて、竹上はストーブを調整していた手を止めてそちらを見てるだけ。育郎は表情こそ硬くなってるものの何も言わずパイプをふかしている。エンジは止めてくれないかなーと育郎を見て、無理そうだとあきらめて……仕方ないので、抱えていたかばんをソファーにおいて、立ち上がる。

金太郎:置いたか。

GM:視界の端には入れてるかんじで。

金太郎:取れる位置か?

GM:ええよ。

金太郎:ほな、取って、サーーーっと二人の後ろへ。「もうええで!」

トム:そしてそっちを向いた瞬間にリゲインの抜き打ちが俺の首をはねるわけだな。

利迎院:んむ。

金太郎:んむ、やないっちゅーねん。もうええゆうとるやろう!

GM:「なっ!」と絶句するエンジ。様子に気づいて、育郎も近寄ってくる。

エンジ:「何をする! 返せ!」

利迎院:仕方ない、刀を抜いて切っ先を梅中殿に向けよう。

トム:さて、今度は金太郎を守ろうかね。エンジにダッシュして当身。

金太郎:まるで息があってへん(笑)。

GM:さすがにそれはエンジもびっくり、育郎もびっくりだ。「な……にを……」がく。エンジはひざをつく。

金太郎:かばんの中にナイフはあるかな?

GM:あるよ。

トム:それを持った瞬間に金太郎の目つきが悪くなるんだな。

GM:ダガーはほのかに赤い光を放っている。

金太郎:光っとるんか。

GM:脈打つように光ってるね。

利迎院:2つの世界をつなぐ鎖を切れるほどの切れ味だぞ、そのダガーは。

金太郎:触るのはやめとこかな。

育郎おじさん:「金太郎君……何をしてるんだね」

金太郎:「ちょ、わけありでしてね」

育郎おじさん:「一体どんなわけがあってそんなマネを……」

利迎院:梅中殿に切っ先だけは向け続けとこう。

GM:それだとエンジもさすがに何も言えないかな。使用人も育郎おじさんも動けない。ケイと真琴も固まっている。

育郎おじさん:「と、とにかく、刀をおろしてくれないか」

利迎院:えー。

トム:えーじゃねー(笑)。

利迎院:まぁ、よかろう(刀を鞘に戻す)。

金太郎:「えー……、まぁ、なんというか」

育郎おじさん:「うむ」

金太郎:「ナイフはあとで返しますけど。はっきりさせたいことがあるんですわ」

利迎院:崖はいらんのか。

金太郎:この吹雪の中崖まで行くんかい。

利迎院:あぁ、信州は海から遠かったな。

育郎おじさん:「はっきりさせたいこと? ……何かね、それは」

金太郎:「わいが言うのもなんかあれやけど。ローラ殺しの犯人は――エンジはん、あなたですね?」


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