#1 『LOVEPASSION』 08


 土屋邸09:24 p.m.

チャーリー:(ソファーに座ってクールに)「──で、何があったのか、話してもらおうか」

金太郎:(問答無用でぶん殴る)

チャーリー:「アゥチ&ホワーイ!!」(イスから転げ落ちる)

涼:この痛みを、覚えておけー!

金太郎:「お前なあ……栞ちゃんがいなくなってもうたんや」

チャーリー:「ホワ〜イ?」

金太郎:「ホワイなんは、こっちや」

進吾:「コロースッ!(叫)」

一真:(後ろから羽交い締めにして)「落ち着けって。とりあえず話を聞こうぜ。……それで殺さなくちゃいけなくなったら、俺も手伝うから」

二葉:「あたしも手伝うよ」

小鈴:「うんうん」

隆志:(土屋邸の外で、うんうん)

金太郎:「……お前、いつ、どこで栞ちゃんと別れたんや?」

チャーリー:「どこって……門限前に、彼女の家まで送りマシタね」

金太郎:「家まで送った〜? だったら何でいなくなってるんや? ──進吾、お前、何時頃家に帰ったん?」

進吾:「あの後、すぐのバスに乗ったから……7時20分ぐらいには、家に着いたと思う。で、母さんに聞いたら、『まだ帰ってない』って……」

金太郎:「チャーリー、お前ホントに家まで送っていったんか?」

チャーリー:「間違いなく、彼女が『ここだ』という場所に、送っていきマシタ」

金太郎:その場所が実は違ったってことは……

GM:さすがに、ないみたい。

金太郎:「家に入るとこ、見たんか?」

チャーリー:「それは……。……だって彼女、僕が見えなくなるまで手を振ってたから──ポッ(赤面)」

進吾:「一度でいいから刺させろ〜!」

金太郎:「わいにまかせろ」(問答無用でチャーリーを殴る)

チャーリー:「なにするデスか〜!」

金太郎:「特にイミはない」

チャーリー:「ところで……何でこういうメンバーで来たデスか?」

金太郎:「う……(小声で)バカのくせにいらんとこに気づくな……」

一真&二葉:(しばらく見つめ合ってから)「「友情ッ!」」

チャーリー:「Oh〜! 僕、とっても感動しマシタ〜! アイムーヴドッ!」

金太郎:「……やっぱバカや」

一真:「ここにいても仕方がない。手分けして探そうぜ。俺と二葉は、遊園地まで戻ってみるから、金太郎と小鈴は駅周辺を。チャーリーと進吾は……学校の方を頼む」

チャーリー:「僕、進吾と一緒デスか? ……死の予感がしマース」

GM:がんばらないと、明日の太陽拝めないかもよ。

涼:ま、どんなにがんばっても明日の太陽は拝めないんだけどな。

GM:……そうなんだ……。

隆志:では、何か分かったらここに連絡するように。

小鈴:ああッ! いつの間にかお兄ちゃんが対策本部を設置してるッ!(笑)

チャーリー:しかも人の家に……。

GM:ホントにやるの?

隆志:ただの妄想だよ。──でもそろそろ急がないと、もう2時間以上過ぎてるよ?

GM:ん?

隆志:早く『ウィダーinゼリー』をチャージしないと。10秒キープ、2時間チャージ。

金太郎:あれ、10秒で飲むのが難しいんや(笑)。

隆志:そうだね。

金太郎:「進吾、警察には電話したんか?」

進吾:「まだだ……」

隆志:ファーストフード店で押収した、紙ナプキンを警察に届けるのはどうかな?

GM:チャーリーが栞の口を拭いたヤツか。……いつの間に(笑)。

涼:でも、警察にどう説明するんだ?

隆志:ああ、そのへんツッコまれると痛いね。……てことで、ボツ!

金太郎:「いくで、捜査は足や〜!」

 千歳高校10:06 p.m.

チャーリー:「開け、オープンセェサーミ! ──って開くわけないデース……」

進吾:(門を飛び越えて侵入する)

チャーリー:ぐ、能力値低いのに……。ここで失敗するのが僕なの──(コロコロ)あ、クリティカル。

GM:イミもなく華麗に侵入したんだね。

チャーリー:ここはやっぱ……屋上デスかね。

GM:屋上は鍵がかかってるよ。

進吾:「栞〜!」
 

 暴走する進吾に、一歩遅れてる上に要領を得ないチャーリー。

 やっと帰ってきた不良舎監・浩之介や、宿直していたモグラ先生を巻き込んで学校中を探したが……栞は見つからない。

 駅前広場11:21 p.m.

金太郎:「こういうときは、やみくもに動いても駄目や。頭を使わねば」

小鈴:「さっきと言ってることが違うね」

金太郎:「………………。──まず、彼女が家まで送ってもらったのは確かや」

小鈴:「チャーリーの言うことを信じるならね」

金太郎:「………………。……家の前まで来たのに家に入ってない、これは彼女が何か用事を思い出したからや」

小鈴:「案外チャーリーの家にいたりして」

金太郎:「………………。……この場合は忘れ物や。つまりッ! 栞ちゃんは遊園地におる! もろたッ! もろたで〜ッ! さっそく一真に電話や。──もしもし一真、わいや、栞ちゃんおったやろ? ……おらん? あ、そうか。そりゃそうや。わいは最初から分かってたで。……じゃッ!」
 

 ブツッ! プープープー
 

小鈴:「………………」

金太郎:「………………」
 

 プルルルル……!
 

金太郎:「はいもしもし──ああ、進吾か。学校にいない? そりゃそうやろー。こっちはもう居場所見つけたんで、あと10分もすればそっち連れていくよって。期待して待っててや。うん、うん、いやいや、そんな礼なんて後でええから……ん、ほな、切るでー。じゃーなー」
 

 ブツッ! プープープー
 

小鈴:「………………」

金太郎:「ふふふ、もう分かったで。──彼女は一度家に帰った、その前提は変わりません。しかし、彼女にとっては初めてのデート、言いたいことはいろいろあったやろ。せやけどチャーリーはさっさと帰ってしまった……。チャーリーを追う栞ちゃん、せやけどここはどこわたしはだれ──つまりッ! 栞ちゃんは、チャーリー邸の近くにいるっちゅーこっちゃ。今度こそもろたッ! もろたでーッ! ……って、小鈴ぅー、どこや〜(笑)」

 土屋邸周辺11:32 p.m.

金太郎:そろそろ電話が来そうやな……電源切っとくかなぁ。

浩之介:おいおい。

金太郎:それとも醤油一気飲みして入院するか……。うーん……やっぱ、電源切っとこ。

 土屋邸11:41 p.m.

進吾:「ありがとうみんな、今日はもういいよ……」

一真:「進吾……」

金太郎:「すまんなぁ、力になれなくて……」

進吾:「いや、手伝ってもらっただけで──って成瀬ぇ! お前、分かったって言ってたじゃないかーッ! どうなったんだ? え?」

金太郎:「い、いや、それが……急にばあちゃんの法事が……」

進吾:「んなワケあるかーッ!」

一真:「落ち着けって。……とにかく今日はもう遅いし、また明日探そう」

進吾:「そうだな……。──ありがとな、奥居も水沢も」

隆志:そうか、明日は体育の日で休みか。

GM:ん?

隆志:もちろん、分かっててこの日付にしたんだよね?

GM:お、おう……もちろん(……そーいやそうか、気づいてなかったよ)

進吾:「ほな、また明日な」

チャーリー:「AHAHA、関西弁移ってマース。『金ちゃん菌』おそるべしデース!」

進吾:「そもそもお前のせいだろーがぁぁー! 笑ってんじゃねー、この大バカヤローッ!」
 

 ド、ゴォォン!
 

チャーリー:「オー、マイ、ガーッッ!」(←バカ)

 浩之介は夢をみた。
 

 桜が舞い散る高校。

 黒い学生服。

 校舎裏。

 恋文。告白。
 

「ごめんなさい……何かこういうの、気持ち悪いし……」
 

 痛み。

 引き裂かれそうな心の痛み。
 

 アレはいつのことだったか……知らない。そんなこと……全然、知らない。
 

To be Continued

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