FINALACT[ぼくのセカイがおわるとき] 01


 
 何をやっても誰かに負けている。そう、思う。

 取り立てて魔法が得意というわけではない。特に師であるサフトさんにはてんで及ばない。

 力や技術があるわけでもない。剣術や体術ではフウゲツさんやユリアにはかなわない。

 冷静な分析能力があるわけでもない。そういうことはレイチェルに任せておけばいい。

 人をまとめていく力もカリスマ性もない。シュリが、本当に羨ましいと思う。

 自分に対する自信や愛着もない。エミリーみたいに自己を主張することもできない。

 スノウに自分がふさわしいとも思えない。だから、告白なんてできない。本当に好きなのかさえ、曖昧だ。

 街の人たちを守りたいという気持ちに嘘はない。

 でも……じゃあ自分には何ができるのか。それが分からない。

 自分の居場所が、存在理由が分からない。

 深く考えることも……怖くてできない。
 

 そんな僕だから。そんな自分だから。
 

 何で生きてるんだろう、と思うことがある。

 自分という存在がたまらなく許せなくなることがある。

 こんな自分を、もう見たくないと、知りたくないと、思う。

 どうしてあのとき、死ななかったんだろう、と思う。

 あんな大怪我をしてまで、なぜ生き延びてしまったんだろう、と思う。
 

 消えてしまいたい……と思う。



 『門』が閉じてから随分と時間が過ぎてしまった。

 街の治安は乱れ、食料は残り少ない。

 スノウが命を落とし、そして遺体が消え……2日が過ぎた。
 

 今にも泣き出しそうな空の下、細々と教会へと足を運ぶ人たちの姿があった。──神に、祈るために。
 

エミリー:神頼みとはねぇ……。

GM:お前が言うなよ(笑)。

エミリー:いつの間にかシスターではなくプロレスラーが本職になってしまったから。

ユリア:そう思ってるのは本人だけだったり。

GM:更に、スノウ死亡の知らせを聞いて集まってくる『スノウ親衛隊』の面々。

フウゲツ:いたのか、そういうヤツらが。

GM:「お前らがちゃんとしてないから死んだんだ」とかって言ってくる連中もいる。

ヴァイス:ぐ……。

シュリ:親衛隊を名乗るぐらいなら、自分たちで守んなさいよ。

ユリア:それに、そういう輩のためにチンピラたちを首まで埋めて、さらしてるんだから。

GM:(いつの間に……)それに加えて、自警団に対する不満も増していってる。「こんなに早く食料がなくなるはずない」とか「裏でためこんでるに違いない」とか……その他にもいろいろ。

ヴァイス:みんなそろそろ限界か……。

GM:「ひょっとしてこれば自警団のリーダーに統率力がないせいではないか」という話も。

ヴァイス:それは間違いではないけど……。

エミリー:てゆーか、今まで気づいてなかったの?

シュリ:それに、そんな風に言われるのも予定の内よね。そのためにヴァイスがリーダーなんだから。

ユリア:責任を取らせて帝国へ追い返すのれすね。

ヴァイス:そういうシナリオだったのか……。

 そして──
 

GM:(コロコロ)そして……ついに食料が尽きる日が来てしまった。

シュリ:ついに来たか……。

エミリー:でもまあ、『門』が開かないかぎりどうしようもないわよねえ。

ヴァイス:そんな論理が住人に通用するとは思えないけど。

エミリー:だからって、外に出られないことを責められても。

ヴァイス:『古の民』に……食料を分けてもらうしかないのかなぁ……。

シュリ:『古の民』や『魔族ハーフ』って、食料どうしてるんだっけ?

GM:『古の民』は自給自足だね。『魔族ハーフ』は……飢えてるんじゃないかな。

ユリア:『魔族ハーフ』たちはなぜか赤いカ○リーメイトのようなものを食べている、とか。

ヴァイス:うぐ、赤編とそういうところで接点が。

GM:街の人たちは食料もないし、薪とかも残り少ないだろうね。12月の頭、もうすぐ雪も降るかもってときなのに。

シュリ:薪はないけど……木はあるでしょ?

GM:『古の民』がいい顔しないだろうけど。

ヴァイス:非常事態なんだから、それぐらいは許してもらわないと。

シュリ:そのへんも含めて、頼みにいくしかないわね。……ただ──

ヴァイス:ただ?

シュリ:あそこでの8日分の食料が、アーケインの1日分だからね。

ヴァイス:そうなんだよなぁ……。

ユリア:それに、彼らはあまりモノを食べないイメージがあるれすが。

ヴァイス:冬に備えて備蓄はしてるだろうけど……。

シュリ:(計算して)アーケイン全体だとその3カ月分の蓄えを9日で食べてしまうことになる。人数で約8倍、食べる量も違うとしたら……10倍近い量を消費することになるから。

フウゲツ:『結界』の方もまだ開かないんだよな?

GM:うむ。これといって進展があったという報告は受けていない。

ここにいないレイチェル:………………。

エミリー:そちらに関しては全くのお手上げなのよね。何か努力してどうにかなるなら、やるけど。できることがない。

ユリア:そういえば……。

ヴァイス:ん?

ユリア:森の中で何か見た気がするのれすが。

ヴァイス:ああ、キャベツのおばさん(←プレイヤーは知っている)。

ユリア:でもあれは腹が減ったときに見た幻覚だと思っているので。

シュリ:あはは。……でも、あたしらに残されたフロンティアは『魔王の森』しかないよね。そこに木の実があることを願う。

ユリア:木の実がないときは木の根を食えば。

エミリー:望みは薄いわね。

レイチェル:だが、探すしかない。

シュリ:そうなんだけど……。かといって、街の人みんなで森に入って迷っても困るし、だからといって自警団だけで全員分の食料を探すというのもこれまた無理な話。

レイチェル:ある程度の人数をつのって、いくしかないだろう。

ユリア:そうすると今度は、森に人を連れていって処分しているという噂が(笑)。

シュリ:──リーダー。統率力がないと言われているリーダー。何か意見はある?

ヴァイス:……『古の民』の長に頼みにいく、しかないだろうね。

シュリ:せめて『扉』が開くメドが立っていればねー……。

ユリア:いっそ地底湖で目のない魚を釣るというのはどうれすか?

レイチェル:あそこは『古の民』の神聖な場所だから、そういうことをしてはいけない。

ユリア:噴水とつながってるらしいから、噴水を掘れば。

シュリ:位置が一致してるだけでしょ? 街ひとつ上に乗ってるんだから、そんなに岩盤が薄いとは思えないけど。

ユリア:じゃあ寮の地下水路を。

エミリー:そういえばそんなのもあったわね。

ユリア:あそこが外に通じてる可能性も。……まあ、『結界』は球状で地下まで覆ってるとは思うのれすが。──そのへん、どうなの?

GM:ちゃんと調べてないから何とも。

ヴァイス:そこから出れたとしても……今度はどうやって食料を運び込むの?

ユリア:え、我々だけで逃げるのでは(笑)。

ヴァイス:こらこら。

シュリ:でも、調べてみる価値はありそうね。

GM:そーいや死体のワイン漬けも未解決のままだ。

フウゲツ:お、てことはまだワインは残ってるんだ?

GM:いやー、馬食ったぐらいだから、もうワインもないかも(笑)。

ユリア:何も知らない街の人に少しずつ分けて。

シュリ:え。「こりゃーうまい」とエミリーが絶賛して、独り占めしたんじゃ。

エミリー:これこれ。

シュリ:……まー、冗談はこれぐらいにして。

ユリア:水にいくか、森にいくか、れすね。

ヴァイス:水中呼吸できるの、僕だけな気がするんだけど。

シュリ:レイチェルがいるでしょ。その気になればあたしやエミリーもいるし。他の人に魔法かければいいだけだし。それに地下水路全部が水で埋まってるわけじゃ──……(考えて)そっか、地下水なら水かさ増えないけど、川から水を引いてる場合は水量が一定じゃないから水かさ増えるのか。

ヴァイス:そうなると水も凍るほど冷たいね。

ユリア:それだと魚がいるかもしれないれすが。

シュリ:地下水の可能性もあるしね。

ヴァイス:調べてみれば分かることか。……じゃあ探索組と交渉組に分けよう。

シュリ:水中探索組を能力で分けるか……ビジュアルで分けるか。

ヴァイス:そこで決めるんだ(笑)。
 

 話し合った結果……

 森へ交渉組がシュリ、ユリア、フウゲツ、

 水中探索組がヴァイス、レイチェル、エミリーということになった。
 

ユリア:茶色い髪チームとそれ以外チームれすね。

GM:じゃあ……まず、地下水路組からね。



PREVNEXT

MONDF目次

リプレイTOPへ