ACT11.0[コドクのはて] 01

 自警団の砦 12:00

 最初は、渡り鳥か何かの群れかと思った。

 だが、それにしては数が多い。蝗……にしてはあまりに巨大だ。よくは見えないが、人間のようにも見えないこともない。
 

シア:「うにゃ……羽付き人間……?」

カーキ:「何だよ、そりゃ」
 

 鼻で笑ったカーキだが、すぐに彼女の言葉が正しかったことを知る。

 接近してきた『それら』は明らかに人型をしたものだった。体表は赤く、背中には羽がある。

 やがてその大軍の一部が羽を切り離し、降下を開始した。アーケインの門前に、次々と降り立っていく。
 

カーキ:「こっちへ来るぜ……?」

オーキッド:「不気味な連中だな。――いこう、何者かは知らんが、マトモなヤツらではなさそうだ」

カーキ:「とんでもねー珍客が、団体様でお付きかよ」
 

 真昼の太陽を不気味に反射する赤黒い皮膚。それはむき出しの肉のようにも見える。顔は半分近く体にめり込み、首はない。人間らしい顔ですらない。

 目はあるが見開かれたそれはギラギラと輝き、大きく裂けた口は牙を打ち鳴らしヨダレを垂らす。鋭く巨大な爪がジャリッと大地を削る。

 その姿は、まさに魔物だった。
 

オーキッド:「――来るぞ!」
 

 オーキッドが剣を抜いた。カーキもシアを後ろに下がらせながらあわてて槍を構える。その穂先が、震えた。
 

カーキ:(冗談じゃねーぞ……)
 

 初めての実戦。ママゴトのような自警団の日々は……終わりを告げた。



 魔王の森 12:10

GM:パシパシッという音に見上げてみると、『結界』にはりつき、空を覆っている無数の”何か”が見える。

ヴァイス:『結界』の中に、入ろうとしている……?

シュリ:何がぶつかってるのか分からない?

レイチェル:私がズームで見てみよう。

GM:ズーム機能が……ないはずが、ないな(笑)。レイチェルなら見えるだろう。

シュリ:で、どんなのが見える?

GM:赤く焼けただれた人型の生き物に、羽がついたようなかんじのヤツ。

シュリ:言ってる意味がよく分かりません。

フウゲツ:ドロドロゾンビに羽がついたようなのなんじゃないか?

GM:ん、そんなかんじ。それが、たくさん。『結界』にはばまれて中には入れないでいるけど。

ヴァイス:「あのさ……スリーアイのところ(『結界』にヒビが入った場所)にいった方がよくない?」

シュリ:「そうね。(ぼそっと)……ヴァイスにしては珍しく気の利いたことを」

フウゲツ:「それより、『門』が開いたままなんじゃないのか?」

レイチェル:「『門』の方はすぐ近くに砦がある。自警団もいるはずだ」

エミリー:「あの……空にあんなのがはりついてたら、街の人たちがパニックになるのでは」

ヴァイス:「……街に戻らないと、どうしようもないな」

フウゲツ:「てことで、6時間後、『結界石』ができあがったら持ってきてください!」

古の民の男:「あの、どちらまで持っていけば……」

フウゲツ:(走りながら)「柱のところへ! 勝手に直しちゃっていいですからッ!」
 

 『魔王の森』を抜け、街へと走る一行。
 

GM:さ、どうする?

シュリ:とりあえず寮で馬に乗って、砦を目指してみるけど?(←ヴァイスの口マネ)

フウゲツ:またそういうことを言うし……。

レイチェル:上空を見上げると、『羽ゾンビ』が見えるんだな。……ヤツらは生きているのか?

GM:生きてるよ。──というか、『羽ゾンビ』という言い方がおかしいんだな。ゾンビではないんだから。

シュリ:あたしは、さっきも言ったけど、寮経由で砦に向かうべきだと思う。

エミリー:でも砦には自警団もいるし、『結界』のヒビの方にいくべきでは?

フウゲツ:パニックに陥っているだろう住民たちの収拾に当たる人員も必要だと考えるが。

シュリ:「砦に戻る」っていうのは、「中心となる『戦闘指揮所』に戻る」っていうイメージなんだけど。

フウゲツ:なるほど。

ユリア:そして上官に指示をあおぐのれすね。

フウゲツ:上官? 誰だ?

シュリ:村長。

フウゲツ:いねえ(笑)。

エミリー:一番機動力のあるレイチェルに『ヒビ』の方にいってもらって──

フウゲツ:俺たちは寮で馬を拾ってから、街の人に声をかけつつ砦へ向かおう。

GM:馬を拾ってから、街を一気に南下するんだね。

ユリア:しかもライダー乗りで。

GM:寮から砦まで……馬なら5分ということにしておこう。てことで、今12時20分ぐらいね。

ヴァイス:タイムテーブルつけてるし……。

レイチェル:私は、森から出たらすぐに『ヒビ』の方へ向かっているから。

シュリ:レイチェルって馬より速いの?

レイチェル:そんなには変わらないと思う。

エミリー:『羽ゾンビ』たちが『ヒビ』から入ってきてるとして……そんなグロテスクなヤツらを殴りたくないなぁ、というのが本音。

ユリア:殴る必要なんてないれすよ。自称プロレスラーなんだから、関節技で。

エミリー:イヤぁぁぁぁーッッ!

シュリ:そして動きを封じたところで、エミリーだけ刺す。

エミリー:ひどい……。



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