MOND REPLAYV


epilogue:00『終焉の始まり』

GM:みんなが願いを叶えてほええっとしてるとこに、シャナスから通信が入る。

シャナス(通信機):『みんな、無事?』

リューセ:「なんとかダイジョーブです〜。……キコリが一回死んだりしましたけど」

シャナス(通信機):『外は、大変なことになってるぞ』

サリース:「大変なこと……?」

シャナス(通信機):『光がニャルラトホテプからあふれて……とにかくカーに映像を送る!』
 

 カーからつないだゼナの端末のモニターに、エスペルプレーナ2から撮った映像が映し出される。
 

ゼナ:「これ……ニャルラトホテプ……?」
 

 真昼の日差しに照らされた街が、ぼんやりと光っているのが見える。

 やがて『光』は、『大いなる遺産』の部屋で見たのと逆方向に──ニャルラトホテプ<神の世界>からイシュタル<人の世界>に向かって流れていく。

 世界は今……『光』に覆われようとしていた。
 

リューセ:これって……どういうこと?

GM:南キャンバス大陸中が、『願いが実現するフィールド』に覆われたってこと。つまり──

アルバス:大陸中の人の、『願い』が叶う?

GM:そう。でも一般人は、君たちのように強い、鋼みたいな精神の持ち主ではない。

オードー:鋼っていうより、ニブイっつーか図太いっつーか……。

GM:だから『願い』を強く思う前に、欲望や恐怖に押し潰されて……変異してしまう。

サリース:……てことは……

GM:より欲望に忠実な姿に『変わって』いく──醜く。恐ろしく。まがまがしく。そしてそれを見て恐怖心に飲まれた人たちが、今度は恐怖を具現化したような姿に『変わって』いく。

リューセ:………………。
 

 人々が変わっていく──人ではない『何か』へ。

 『願いを実現する力』は流れを変え、人々を飲み込む──まるで、新たなる『終焉』に導くように。
 

アルバス:「これじゃ『疫風』の再来だ……」

リューセ:「どうしよう……。どうしたらいい?」

アルバス:「『力』の流れを止めるしかないだろう。……でも、方法はあるのか?」
 

「方法はあるさ」

 力強い言葉に、全員の視線が扉の方に集中する。

 そこに立っていたのは、『箱』を脇にかかえた傷だらけのタナトス、そして──
 

アルバス:「げ……」
 

 伝説の封印士、フレイヴス=ファルバティスであった。

アルバス:お、親父だ……。……今までどこにいたんだ?

GM:すぐそこ。この部屋の向こうにある、とある場所に、ずーっといたの。

G−X:では我々がトールで会ったのは……

GM:影武者です。

リューセ:ここで、何をしてたの?

GM:『終焉』の力の暴走を、外から押さえていたんだよ──10年間もね。

リューセ:え? それじゃ……

GM:アルバスの『力』が今まで暴走しないで済んでたのは、フレイヴスのこういう陰の努力もあったからなのだ。

リューセ:いいお父さんだね〜。

フレイヴス(『結晶体』の方に目をやって)「……俺は、『大いなる遺産』がこういうものだということを知っていた。知っていたからこそ、あらゆる手段を使い……これを封印した」
 

 フレイヴスは視線をアルバスたちに移し、言葉を続けた。
 

フレイヴス:「それでもこの『遺産』を手にしたいと願うものがいて、それを手にしたなら……それは仕方がないと思った。そいつの願いがそれだけ強かった、ということだからな。だが……まさかここまで『暴走』するとは、思わなかった」

ゼナ:「こうなることまでは予想できなかった?」

フレイヴス:「ああ。(複雑な笑みを浮かべて)……お前たちは、いつも俺の予想を越えていく。それはそれで喜ばしいことだが……この状況は、さすがにマズイ」

サリース:「で……どうすればいいんですか?」

フレイヴス:「幸いここには、『メルカバー』がある。あれがあれば、かなりの人数を収容できるはずだ」

アルバス:「なるほど、無事な人だけでも拾ってこいってことか」

オードー:「まるで、『箱舟』だべ……」

フレイヴス:「まるでも何も、あれはもともと『箱舟』なんだが……」

タナトス:「その箱舟は、永久凍結されてしまった」

一同:あああああ〜そうだった〜!

フレイヴス:「……マジかよ。──では予定変更、お前らの『船』でいけ。収容人数はかなり減るが、まあ仕方がない。上空に逃れれば、『光』も届かないはずだ」

ゼナ:「根本的な解決策はないんですか?」

フレイヴス:「変異してしまった人たちを元に戻すのは難しい。だが、『光』の流出を止めることはできる」

ゼナ:「それは……」

フレイヴス:「『力』の制御──すなわち、女神オファニエルの復活」
 

 それはつまり……
 

フレイヴス:「リューセ、お前が『神』になるんだ」

リューセ:「ほ……ほえ……?」

一同:そ、そうなんだ……。

リューセ:さっき冗談で言ったことが、ホントになっちゃった……。──それで、どうすれば『神』になれますか?

フレイヴス:「今から『儀式』を行う。──カー、うちの嫁さんと娘たちをここに呼んでくれ。それからクックルックルーフたちはここに残れ。ユナもだ」

サリース:はあ?

ガンバ:101万匹クックルちゃん大行進だね。しかも縦積み。

フレイヴス:「ゼナとサリースは『船』で街を回れ」

ゼナ:「分かりました。エスペルプレーナ2で、ガンバります」

フレイヴス:「『アイオーン』は、そのサポートだ。──頼んだぞ、“初めて”の命令だ」

シェオール:「了解」

トパーズ:「みんなを、救ってきます」

フレイヴス:「アルバス……お前は、どうする?」

アルバス:「オレは、頼まれればいくさ。だがそのときどこに手がないといけないかというと──」

リューセ:「残ってほしいけど……やっぱり、みんなといって、アルバス」

アルバス:「いや、だからそう思うならまず誠意をだな……」

リューセ:「はよ、いけッッ!」 (蹴り)
 

 エスペルプレーナ2が、空へ飛び立つ──『箱舟』となるために。
 

フレイヴス:「さ、『女神復活』には時間がかかるぞ。……覚悟は、いいな?」
 

 フレイヴスはニヤリと笑い、リューセの肩に手をおいた。
 
 

epilogue:01[智恵<コックマー>/アドラメルク]

GM:どこからいく?

アルバス:やっぱ、手近なところからだろ。

サリース:てことは……遊園地?

アルバス:あそこ、ヒトいたっけ?

GM:いないよ。道化師や係員は……全て幻だ。生きてる存在では、ない。

ゼナ:吉田上官も?

GM:そ。残留思念の一種だね。

アルバス:じゃ、ここは通過でいいな。
 

 遊戯都市アドラメルク──

 命なき道化たちは、飛行機雲を見てはしゃいでいた。

 それ以上に、孤独だった道化たちは、新たに生まれてきた『仲間』──それはおもちゃの馬だったりぬいぐるみだったりブリキの兵隊だったりした──に、大はしゃぎしていた。

 孤独からの解放──それが道化たちの『願い』だったから。

 遊園地に明かりが灯り、パレードが始まる。

 無人だったこの街だけが、幸せな結末を手に入れていた。



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