MOND REPLAYV


chapter17

[MIND CIRCUS]

アドラメルク編:1

黄金に変わる前に
 青とピンクが黄金に変わる時間
私はあなたを思い出す……

 ずっと感じていた違和感……
 

「ううん、これは違和感ていうより……」
 

 既視感──
 

 リルルの薬を買うために街に出ていたリューセは、街はずれにあったその家を見上げた。

 ヴィゾフニルに着いたときからずっと感じていた心のもやもや。
 

 私はここに住んでいたことがある…… 私と、タナトスと……それから……
 

 そのとき、ふわっといい香りがリューセの鼻をくすぐった。

 焼きたてのパンのにおいだ。

「なんだかいいにおいですゥ」

 くるりと振り返ると、すぐそこがパン屋だった。
 

 よく焼きたてを買いにいってた店…… 置いてあるアップルティーが、また格別で……
 

 ふらふらと引き寄せられるように、リューセは店の中に入っていった。

「いらっしゃいませ〜」

 見覚えのある店員のお姉さんだ。髪の毛をバッサリ切ってしまってるので、印象がかなり違うけど。

「あ、え〜と……」

「アナタ、さっき向かいの家見てたよね? あそこの家の人と、知り合いか何か?」

 向こうからいきなり話しかけてきた。

「えと、まあ、そんなとこです……」

「そっかァ〜。今さ、どこに住んでるか知らない? カッコイイ男の人が住んでたのよォ、銀髪で、サラサラで、もー超イイオトコでさッ!」
 

 タナトスのこと……?
 

「ごめんなさい、私も知らないんです」

「そっかァ〜残念ねェ〜。……元気にしてるのかなァ、あの3人……」
 

 ……気づかないのかな? 私が覚えてる(正確には思い出した)ってことは、向こうも顔ぐらい覚えててくれてもいいのに…… タナトスのことはしっかり覚えてるワケだし……
 

 それなのにパン屋のお姉さんは、全然、これっぽっちも、リューセのことを知らないようだった。

GM:ゴーヴァの修理から数日。ゴーヴァはまだ完全には機能が回復してない。ルーベルも意識を失ったまま。ゼナも肉体にダメージが残ってる。リルルはやっと動けるようになったかな。

リューセ:みんな大変ですゥ。

サリース:人が増えたしねー。食事の用意が大変だわ。

オードー:あ、だったらおらが……。

サリース:……アルバスのママ殺す気?

GM:――さてアルバス。

アルバス:いきなりか。――さてアルバス、気がつくと君は布団の中にいる。

GM:んー、ちょっと違う。横になってるのは確かだけど、布団の中ではない。そう――『棺』のようなかんじかな。
 

 ガラスの棺……なのだろうか。棺を通して天井が見える。

 魔法的にイミがありそうな模様が、薄暗い天井や壁に描かれている。
 

ガンバ:イミがありそう、としか分からないんだね(笑)。

サリース:ま、アルバスだし。
 

 そしてまた、眠りの世界へ……
 

アルバス:ZZZ……。

GM:今、次女……ルーベルの傍にいるのは誰? アルバスママ──ニーヴェはいるけど。

シェオール:部屋の外で見張り。

アルバス:部屋の前を不自然にうろうろしてる。いちおー、心配だし。

GM:(ぷっと笑って)カワイイヤツめ。

リューセ:アルバスって、ほんとカワイイよね♪ じゃ、私が傍にいる。

GM:リューセね。……んじゃリューセ、看病しながら君はうたた寝をしてしまった。
 

 気がつくと、リューセはどこかの家にいた。小さい、こぎれいな家だ。キッチンには朝食の用意がしてある。
 

アルバス:リンゴの香りがするパンと、こんがり焼けた紅茶だっけ?

サリース:こんがりって、どんな紅茶よ。

GM:逆だ逆だ。

リューセ:それは食べるしかないですねェ。手をのばしますゥ。

GM:触ろうとするんだね? そうすると――

アルバス:パンと紅茶がオペリオの下半身に変わる。

一同:触りたくねーー!!

GM:話の腰を折るな(笑)。リューセが手をのばして触れた瞬間――
 

 パンと紅茶が、テーブルごと『消滅』した。
 

リューセ:「ほええ??」

GM:夢だから消えた、ってかんじじゃないよ。んで、そこにルーベルが入ってくる。

サリース:……夢じゃない? 現実?

アルバス:夢、だろ?

ルーベル:「どうしたの?」

リューセ:「それが……こうなってこうなってこうなったんです」

ゼナ:それじゃ全然分かりませんよ。

ルーベル:「そんなことあるはずないじゃない。……ちょっと、手を見せて」

リューセ:「ダメダメダメ! 触っちゃダメ! こわいこわいこわい!」

ルーベル:「平気だってば」

リューセ:「じゃあ、この杖を触ってみるから、それでいいでしょ?」

GM:杖に触るんだね? なんともないよ。

ルーベル:「ほら、ね?」

リューセ:「本当だ。わーい、握手握手」

GM:握手する? そうすると、手のひらからパァッと光が出て、ルーベルの手が消え始める。

リューセ:ほら、私の言った通りですゥ〜(うれしそう)。

サリース:うれしそうにしてどーすんのよ!

リューセ:消えるって……どんどん進行していってるの?

GM:うん。

アルバス:それはもう……ベタベタ触るしかないだろう。

リューセ:そうね(笑)。

GM:そうすると、触れたところから『消滅』していくよ。

リューセ:マジ!? どんな表情してる?

GM:痛みはないみたい。消えていく自分の身体を見て呆然としてる。

リューセ:「しっかりして!」

GM:そう言ってつかんだ肩から、また消えていく。

リューセ:イヤ! イヤ! イヤァァァァァァ!!!
 

 混乱する意識。視界がぐるっと回転する。

 そして最後に見たのは、長い銀髪がゆれる……タナトス……
 

 ……ああ、来てくれたんだね……
 

GM:――というところで目を覚ます。

リューセ:(ルーベルは)いる?

GM:ベッドにいるよ。で、ニーヴェがいて、タナトスがいる。

リューセ:ををぅ!?(驚く)

ゼナ:夢…………じゃねぇぇぇーーー!!!(叫ぶ)

アルバス:おひさしぶーりぃね♪(歌う)

リューセ:「お元気でしたかァ?」

タナトス:「おかげさまで、ね」

リューセ:アルバスママは、タナトス知ってるんだっけ?

サリース:みんなで写真写ってなかった?

リューセ:そうでした、みんな知り合いでした。これで円満解決です〜。

ゼナ:……そうかなァ……。

タナトス:「君たちは……元気、ってわけじゃなさそうだね」

リューセ:「そうなんですよ、ゼナは右手なくなるしゴーヴァは壊れるしリルルはケガするし……」

タナトス:「君も、人のことは言えないと思うけど?」
 

 タナトスが手をかざすと、リューセの胸に六芒星のアザが浮かび上がった。アザはさらに広がり、肩や上腕部にまでルーン文字のような模様が広がっている。
 

リューセ:(服の肩ヒモをほどいて)「いつの間にこんなに……」

サリース:リューセ、見えちゃうってば。

リューセ:「あうあう……(服を直してから)ルーベルさんの意識も戻らないし……」

タナトス:「だろうね。……あれだけの重傷だったんだから」

サリース:……何を知ってるの?

アルバス:何を知ってるのでしょーーかッ!

一同:さー、みんなで、考えよー!

アルバス:ミリオーン、スロット!!

リューセ:「――で、何を御存知なんです?」

タナトス:「いや……今はまだ、知らなくていいことだから……」

リューセ:「ぶー、ご不満」(ふくれる)

タナトス:「さ、もうおやすみ……。いいこだから……」
 

 そっとリューセの肩に手を置くタナトス。リューセを、眠りの世界へと誘っていく……
 

GM:リューセはまた夢を見る。だだっ広い草原の、小高い丘の上。大きな木の根元に、ちょこんと座ってる。

アルバス:このーきなんのききになる♪

一同:きになるきになるきになるきになるきになるきになるき〜♪
 

 輪唱すな!(笑)
 

アルバス:きにぃーぃなるでしょぉぉお♪ ひとはきーでーたたず……あれ?(我に返る)

GM:気はすんだか?

 どこまでも続く草原。背中に、樹の感触。遊んでいる子供たち。

 大きな大きな夕日が、ゆっくりと沈んでいく。全てを、赤と金に染めていく。

 一際強い光に目を細め、ふと視線を上げると……少年が立っていた。年は5、6歳に見える。

「おい」

「うん?」

「お前、ひとりか?」

「うん」

「みんなと、遊ばないのか?」

「私、みんなと違うから……」
 

GM:――というところで目が覚める。

リューセ:ほえ? ……ここ、どこ?

GM:ルーベルの部屋だよ。ニーヴェはいなくなってるけど、タナトスはまだいる。

リューセ:「あなたもおヒマですねェ、タナトスさん」

ゼナ:他に言うことはないんですか?

タナトス:(リューセの髪をなでて)「僕はもういくよ。……また逢おう」

リューセ:「はい〜、それまであなたもお元気で〜」

オードー:はッ! まさかリューセとタナトスは性的関係に……。

サリース:……なんでそーなるのよ?

オードー:髪を触るのは、体のふれあいより後だっちゅー話だべ――ぐあ!(サリースに殴られた)

GM:マントをばさっとひるがえし、タナトスはすううっと消える。

リューセ:相変わらず不思議な人……。



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