どこかにあったはずの『あのとき』
どこかにあったはずの『あの場所』
リルル:「これで、あたしが知ってることは全部話したと思いますけど……?」
エノク:「あなたのこと以外はね」
リルル:「………………」
エノク:「ちょっとまとめてみますね。
アルバス君は──伝説の封印士フレイヴス=ファルバティスの息子で、今、家から勘当状態、と。
周囲の人間で、彼がファルバティス家の者だと知る人は、案外少ない。
瞬間移動能力を持つが、自分ではコントロールできない。
おしりの右に、六芒星のアザがある。
大司祭様の調べによると、何らかの『封印魔法』がかけられている。
これは父親による『記憶封印』だと考えるのが妥当だが、まだそうだと決めつけることもできない……。
リューセ君は──記憶喪失である。
手紙の主、タナトスに会った。が、正体は不明のまま。
イルカのペンダントは、イルカと交信する力を持ち、また、自らを水のヴェールで覆うこともできる。
腕輪と指輪の正体はまだ不明。
アルバス君と同じアザを左胸に持つ。アザは最近さらに広がった。
そして──今の彼女は『精神体』である……と。
ゼナ君は──ゲオルグ=オーケンシールドの息子である。
彼の父は、魔法アカデミーの理事長であり、ことわざ教の幹部であり、『アポリオンの亡霊』の一員でもある。
彼そっくりの少女、ゼナツー……。彼女は彼を『F−3』と呼んだ……。
サリース君は──元娼婦で元盗賊。
娼婦時代の事件がもとで、子供を産めない体である。
彼女にも何らかの『封印魔法』がかけられている。
トールでの巨人事件と何か関係があるのか……。
ユンケちゃんとガンバ君は──まあいいでしょう。
クックルックルーフはまだまだ謎の多い種族ですが、深追いは危険な気がするんですよね……。
それから私は直接会ったことはないですが、コイジィ・ニールの特殊調査課『アイオーン』……。
北の大陸の少女トパーズと、剣化する女性マフィ。
冷徹な剣士シェオールに、巨大ロボットのゴーヴァ。
クックルックルーフのビッケに、謎の生物カー。
こちらにもまだまだ秘密がありそうですよね。
ヒュプノスがトパーズさんに言ったという言葉──『メファシエル』も気になります。
で、そのヒュプノスですが……彼があなたと接触したのは2回……。
狙いはあなたを──『ヒーメル』を殺すことと考えてまず間違いない……。
タナトス──リューセ君への手紙の主であり、『クーア』を渡した男……。
今のところ、味方っぽいですね。
そして……あなたたちの当面の敵となるであろう、ゲオルグ。
『クーア』を、つまりは『大いなる遺産』を狙う男……。
今『クーア』はアルバス君たちが4つ、ゲオルグが2つ持っている。
残りは4つ……。
街が『セフィロトの樹』に対応し、『クーア』もまたそれに対応していることを考えると、イシュタルにひとつあるはずなんですけどねェ……。
そしてリルル──あなたです。
エスペルプレーナのクルーから『姫』と呼ばれ、古の文明を築いた『ヒーメル』の力を持つ少女……。
あなたは私たちが知らない何かを知っているし、まだ自分のこと全てを語ってくれてもいない……」
リルル:「………………」
エノク:「とりあえず分かることは、こんなところでしょうか」
リルル:「あたしは……」
エノク:「はい?」
リルル:「あたしだって、全てを知ってるわけじゃない……。全てを覚えているわけじゃない……。点と点を知っていても、まだ線がみつからない……」
エノク:「そうですか……。じゃあ、いつか分かったら話してください。私に。そしてみんなに。
──私は……いつも思うんですよ。この世に理由もなく存在するものはない。人も、物も、思いも、全てに『そこにある理由』がある、ってね。……点と点と結ぶ線は、案外単純なものかもしれませんよ。
さ、そろそろ休みま────今、悲鳴が聞こえませんでしたか?」
リルル:「この声……ゼナ君?」
ゼナ:「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!!」
GM:というところで終わったんだったね、前回は。
サリース:プレイヤー的にもキャラクター的にも何が何だかってかんじ。
リューセ:私たちは今、どこにいるんだっけ?
GM:まだ聖都ヴェルザンディにいる。夜のエスペルプレーナ。
リューセ:悲鳴が聞こえたなら、行ってみよう。なにかたいへんそぉー。いーそーがーなーいーとー……。
サリース:全然急いでいるように見えないんだけど。
ガンバ:わたいもいくだわさ。
サリース:あれ? ユンケは?
ガンバ:ん? どこかに消えただわさ。
GM:リルルとエノク先生も甲板に向かうよ。
アルバス:オレ、寝返りをうつ。
一同:寝てんなーーー!!!(笑)
ゼナ:ボク、ピンチなのに……。
GM:では甲板に着いた人。ゼナツーが倒れてて、ゼナが呆然と立ち尽くしている。背中に翼はもうない。で、足元には右手が転がっている……という状態。
ゼナ:のろのろ左手で拾ったりしてみます、右手。
ガンバ:ボトリと落ちたんだっけ?
GM:うん。
ガンバ:石化したとかじゃなくて?
GM:石化とかはしてない。ただ、切り口(?)が非常に滑らかで、断面には骨も肉もない。
ゼナ:均質なんだね。
ガンバ:カマボコみたいだわさ。
GM:せめて粘土とかって言ってよ。……のんきだなぁ。
サリース:普通正気保ってられないわよね。
リューセ:ゼナ……暴れてる?
GM:パニック状態だろうね。
ゼナ:「……ゼナツーが壊れて……翼……が……なんか……右手ぼとって……ぼとって……え……うあ……右手……」
GM:(みんな特に何もしないで見てるだけか……。なら……)エノクが上着を肩にかけながら
エノク:「大丈夫……。大丈夫ですから落ち着いてください……」
GM:落ち着くかどうか、マイナス20で判定してみて。
ゼナ:(コロコロ)07。クリティカルで成功。ふぅぅ……。――羽根はもう消えたの?
GM:うん。しゅるしゅると引っ込んだ。
リューセ:「ゼナ、落ち着いた?」
ゼナ:「は、はい……。なんとか……」
リューセ:じゃあ解決策を探さないといけないね。
GM:幸いここは聖都。神殿関係には事欠かないよ。
リューセ:夜中でも大丈夫かな?
アルバス:24時間営業のコンビニチャーチとかあるんじゃないか?
GM:愛想の悪いにいちゃんがバイトしてるとか?
リューセ:「とにかく行ってみようかアルバス…………ってアルバスは?」
サリース:「いないわよ」
アルバス:寝てる。
オードー:誰も起こしにいこうとは思わないだか? ……思わないみたいだべな。
GM:ゼナツーはどうする?
オードー:おらが医務室さ連れていくだ。
GM:了解。――では、どこの神殿にいくのかな?
リューセ:近いところ!
サリース:アルバスのお母さんがいたところがいいんじゃない?
GM:『月の雫』のとこだね。あそこは襲撃を受けて結構ボロボロになってたりするんだけど。
オードー:あともうひとつぐらいあったべ?
GM:ウェンディがいた『天使の声』ですな。あと、ことわざ教と――
サリース:(聞き流して)『天使の声』には翼がある像がなかった?
GM:女神オファニエルの像、だね。
リューセ:オペリオの像とかあったらイヤだね。
サリース:確かにそれはすごくイヤだわ。
ガンバ:でも十字架に貼りつけたら、神様に見えないこともないだわさ。腰布1枚で、髭面。
サリース:それでもイヤなものはイヤ。