GM:てなワケで、襲い来るモンスターを蹴散らし、君たちはシャルトルーズの森へと向かっている。
一同:うむ!
GM:……なんか気合入ってるな。
グレン:……そうでもないぞ。
GM:あんたはね。
GM:周りに木がしげっているところをずんずん歩いていると、だんだん霧が出てくる。
クロヌシ:いやな天気だ……。
GM:もやぁ〜と濃い霧が辺りを覆い始める──目の前もろくに見えないよ。
ラズリ:いやだなぁ……。
GM:さあここで全員視覚判定をしてもらおうか。修正はマイナス5。
クロヌシ:5? それは結構つらいな。(コロコロ)失敗してる。くそ、何も見えねぇ。
クレリア:成功してます。
グレン:オレもだ。
GM:成功した人は、霧の向こうに建物が見えた気がした。
クレリア:建物? ラズリさん、この辺に村かなにかあります?
ラズリ:さあ、聞いたことないよ。
グレン:何かありそうな気がするけど何も言わない。
GM:ではここで、今度は聴覚判定をしてみて。修正はなし。
ラズリ:成功してるぅ。
クレリア:成功です。
フローラ:OKよ。
グレン:ふっ。
GM:成功したのはいつものメンバーか。
クロヌシ:ふっ(←いつも失敗している人)。
GM:でね、女の人の泣き声が聞こえてくる。
グレン:しくしくしくしくしく……。
クレリア:こういうのにありがちな幽霊ものですか?
ラズリ:獣の耳、発動。
GM:どうやらしげみの向こうから聞こえてくるようだ。
オペリオ:♪女のあえぎ声が?♪
GM:泣き声!
ラズリ:もちょっと詳しく分かんない?
GM:んー、若い女の子の声……かな。ラズリは聞き覚えがあるかもしれない。
ラズリ:それはもうしげみの奥へGOよ、GO!
GM:しげみの向こう側。黒い髪の女の子が泣いている。
グレン:衣服が乱れて──
GM:いないいない。彼女の前には狼の死体が転がっている。
ラズリ:狼に見覚えない?
GM:ないね。さて、ここで全員知力判定するのだ。修正はプラス3あげよう。
一同:せいこーしてる。
GM:ふっと顔を上げる少女──黒い髪、赤い瞳。で──顔はラズリそっくり。
ラズリ:え……?
グレン:ひょっとして服は紫?
GM:そうだね。白地に紫の縁取り。
ラズリ:目はつり目?
GM:いや、そんなことはない。
フローラ:肌は黒く──
GM:ないない。
ラズリ:どっかで見た顔じゃない?
GM:毎日見てるだろうね。鏡で。
グレン:胸はラズリより大きい?(笑)
GM:大きいね。
ラズリ:ぢ〜。(見比べて)そ、そうかなぁ(ひきつった笑い)。
GM:どこからともなく高笑いが聞こえてくる。
グレン:はーはっはっはっはっはっ!
クレリア:ほーほっほっほっほっほっ!
ラズリ:……どっち?
グレン:天知る地知るチルチルミチル──じゃないの?
GM:当たり(笑)。
一同:ええええええぇー!?(笑)
ジャスティスレンジャー:はーはっはっはっはっ!
天が轟く、大地が震える! 雷が空を駆け抜ける!
正義の怪傑、ジャスティスレンジャー──参上!!!
(木の上で高笑い)
ラズリ:どっかで聞いたことあるような……。
クレリア:どっかで見たことあるような……。
GM:で、だ。ジャスティスレンジャーさんは女の子の傍にすとっと着地すると──煙幕ぼうん!
クロヌシ:うを! いきなりだな!
GM:もくもくもく……何も見えなくなる。
ティンベル:ごほごほごほ……。
GM:──で、煙が晴れるともう彼の姿はない。
クロヌシ:……なんだったんだ?
クレリア:──なるほど、女の子を回収に来たんですね。
GM:そーゆーこと。女の子の姿も消えているよ。狼の死体もね。
ラズリ:初めて見たけど……なんかすごいわ、ジャスティスレンジャー!(笑)
GM:それからさっき建物が見えた人。もう見えなくなったよ。
フローラ:……消えた?
クレリア:何だったんでしょうね……。
グレン:そして、ジャスティスレンジャーの正体は?
一同:それが最大の謎だ(笑)。
アユモは燃えるたき火を見つめていた。交代で見張りをしているのだ。
「炎は……あんまり好きじゃないな……」
ぽつりとつぶやき、たき火から目をそらす。
炎は血と殺戮を連想させる。そしてそれが昔のことにつながっていく。
だから……あまり好きじゃない。
彼は隣で眠っているラズリの毛布を掛け直すと、火の中に薪を放った。
と──
「ラグランジェ……」
顔を上げるアユモ。彼をこの名で呼ぶ者はひとりしかいない。
「オルディ……。起きてたの?」
「たった今目が覚めました。……変わりましょうか、見張り」
うそだった。彼がずっと起きていたのは気づいていた。気づいていて知らないふりをしていたのだ。
──話をしたく、なかったから。
「いや、いいよ。目、見えないんだろ……」
「『感じ取る』ことはできますけど?」
オルディネールはゆっくりと上体を起こし、アユモの方に顔を向けた──少し、笑っている。
「あなたの顔も『感じ取れ』ますよ。……髪、切ったんですね」
「うん……」
そのまま黙り込む。
薪がぱちっと爆ぜた。静寂が辺りを包み込む。
やがて──
「………ねぇ」
アユモが──口を開いた。
「なんでこっち……来たの?」
ちょっと考えてから、オルディは答えた。
「ロゼについてきたんです」
「ロゼは……何しに来たの?」
「自分を探しに……。あとは……あなたに、会いに」
「そう……なんだ」
ひざを抱え込む。
「……ロートに、会ったんですか?」
オルディネールが静かに口を開いた。アユモは炎をぼんやりと見つめながら、
「会ったよ……。遠くから、見ただけだけど。たぶん向こうも……気づいてると思う」
消えそうな声で続ける。
「会いたくなかった……。できればオルディにも………」
そう言うとひざに顔をうずめた。
「……逃げ出した、から?」
何も映していないオルディネールの瞳が、かなしみの色に染まる。
アユモは何も答えない。
そして後は沈黙が続くだけ──