遠い遠い、知らない言葉の唄を、なぜかあたしは知っている。
それは森が教えてくれた唄。風が教えてくれた唄。
遠い──遠い音楽。
歌声が風に乗って緑の草原を渡っていく。
唄を風に乗せ、瑠璃色の髪を風に揺らしながら、少女は空を見上げた。
エメラルドの瞳が不思議な色をおびる。
少女の名はラズリ=ルルー。森の民と呼ばれる『ヴァルト=ラィヒ族』の娘だ。
ヴァルト=ラィヒ族独特の衣装に身を包んだ彼女は旅人にしては驚くほど軽装で、荷物はほとんど何も持っていない。
目を引くのは黒い、漆塗りの短刀──刃渡り30センチはある、直刀のものだ──ぐらいだろうか。
「バティストゥータ」
手を伸ばし、名を呼ぶ。上空を旋回していた鷹が一直線に舞い降り、木の皮で編んだ手甲が巻かれたラズリの腕にとまった。
「何か見えた?」
ラズリの問いかけに、バティストゥータは鋭く一声鳴いた。
「──え、建物が見えたの?」
バティストゥータの『言葉』を聞き、ラズリの顔がぱっと明るくなる。そして、後ろを歩いていた旅の連れ──ぼさぼさの茶色い髪の少年の方を振り返った。
彼の瞳もまた、ラズリと同じ翡翠色だ。
「ガルフ、もうすぐ着くよ」
少女の呼びかけに、少年が顔を上げた。油断なく動いていた鋭い視線がふっとなごみ、口元に笑みが浮かぶ。
「そうか」
短く答え、
「やっぱり正義だな」
と意味不明の言葉を続けた。
正義とは何か。
その問いかけに、ガルフ=プルーシャンは答えられない。
正しいこと。まっすぐなこと。きっとそうなのだろう。
心の中で燃えている熱い思い。それもきっと正しい。
しかし……ガルフは答えられない。
ラズリと共に旅をするようになって、どのくらい過ぎただろう。
森を抜け、草原を渡り、国境を超え──ガルフは、ずっとラズリを守ってきた。
彼女を守ることがオレの使命。オレの正義。
そうかもしれない、と思えた。
少し前を歩いていたラズリが振り返った。背中に届くほどのまっすぐな瑠璃色の髪がふわりと広がる。
「ガルフ、もうすぐ着くよ」
うなずき、言葉を返す。
「あー、おなかすいたなー」
ラズリは両手を天に上げ伸び上がり──そのまま、突然、何の前触れもなく、倒れた。
ガルフの横を歩いていた犬──ポチが激しく吠える。
「ラズリ!!!」
走り寄ろうとし、自らも激しい眩暈を感じた。たまらず、ひざをつく。
先程まで歩いていたのがウソのように、手足は動かず、意識は急速に遠ざかっていく。
これは……このかんじは……。
今まで何度も体験してきた、この感覚は──
懸命に、ラズリに向かって手を伸ばす。
ラズリを守らないと……。
どんなものからだって──
──例え、空腹からだって。
闇の底に沈んでいくように、ガルフは意識を失った。
風が、やさしく背をなでていくのを最後まで感じながら。
花の香りが鼻をくすぐった。自然のものではない。おそらく香水だろう。
正直、香水は苦手だ。
その香りの元を確かめるように目を開けると──目の前に、厚化粧の顔があった。
「ひゃあ!」
ラズリは思わず悲鳴を上げた。
「あら、そんなに怖がらなくてもいいのよぉ」
女はそう言って、つつつ、とラズリの頬をなでた。
改めて、その近くにありすぎる女の顔を見ると、化粧は厚いがなかなかの美人。鮮やかな赤いマントがよく似合っている。
……だが、何か変だ。女にしては顎の輪郭が妙にごつく、肩幅がやけにがっしりしている。
「アタシはフローレンス=ファン=ストライクイーグル。フローラって呼んで。──アナタは?」
「ラ、ラズリ。ラズリ=ルルーです」
「へえ、アナタ、ヴァルト=ラィヒ族なんだ」
胸の首飾りを見たのだろう。ラズリはこくんとうなずいた。
「フフフ……。そう、あの部族の娘なの……。──きれいな瑠璃色ね」
ラズリの髪がフローラの指の間をさらさらと流れた。
「またやってるんですか…?」
冷たい声とともに入ってきたのは白髪の少女だった。手にスープの入った皿を持っている。
「あら……妬いてるの? クレリア」
「違います!」
クレリアと呼ばれた少女は、ばんっとテーブルの上にスープを置いた。
その時。
ラズリの隣で眠っていたガルフが跳ね起きた。手に忍者刀を構えている。
「出たな! 悪霊!!!」
フローラに刀を突きつけ、大声で叫んだ。元気がいい。
「ちょ、ちょっと待ってください。私たちは──」
「黙れ! 妖怪白髪ばばあ!!」
「ばば……あ……」
クレリアが絶句した。顔にはニコニコと笑顔を浮かべているが、明らかに怒っている。
「ちょっとガルフ。この人たちは──」
ラズリの言葉に耳も貸さずガルフはフローラに斬りかかった。
フッと笑みを浮かべるフローラ。
そしてラズリをかばう様に抱き寄せると小さくつぶやいた。
「──爆裂火球」
ちゅどどどどぉ〜ん!
これが、月の輪とともに回り始めた運命の始まりだった。
時にテーレ1119。物語は幕を開ける──
GM:みなさんこんばんは。
GM(ゲームマスター)です。
さあ、いよいよ華麗にて荘厳──壮大な『MOND』ワールドの幕開けだ(一人で燃えている)。
──物語の舞台となるのは、イーゼリアと呼ばれる世界にある、北キャンバス大陸です。。
それではこちらから自己紹介。
プレイヤーA:オレから?
名前はガルフ=プルーシャン。18歳の忍者だ。
そんだけかな? あ、あと犬を連れている。
名前はデンヂサンバルグレートイカロスJ(メス)、通称ポチ。
プレイヤーD:どうしてポチ?(笑)
プレイヤーF:お前のこと、なんて呼べばいいんだ?
プレイヤーA(以下ガルフ):ガルフでいいよ。
あとね、「曲解」って言う特徴を持ってて……変な方向に思いこんだまま突っ走るから。
それと銘菓ドゥラ=ヤッキ(丸く焼いた生地に砂糖と小豆を練った物を挟んだお菓子。青いネコ型ロボットの好き
なアレ)に熱狂していてネズミ恐怖症だから(笑)。
旅に出た目的は"悪を滅ぼすため"!!!
プレイヤーD:"悪"って何?
プレイヤーB:次。名前は、ラズリ=ルルー、17歳。外見はアイヌ人な女の子。……まあ、要はナコ○ルです。鷹付き。
鷹の名前はバティストゥータ、通称バシタカ。刀の名前はカムイナカムラ(神威中村)
大自然の声を聞いて旅に出たの。……幻聴とも言う(笑)。――よろしく。
プレイヤーC:ええとね、ウィリアム=G=ブルーノア(60)だ。金持ちで名声もある退役軍人。
剣の名前は名刀"つらぬきまる"。味覚が消失しているくせにグルメ。ウィルって呼んでくれ、本当はヴィルだけ
ど。
GM:あともう一人は?(彼には「仲間」がいる)
プレイヤーC(以下ウィル):ええと飼っている犬の名前が──
プレイヤーB(以下、ラズリ):犬ぅ!?(笑)
ウィル:召使いの名前はティンベル=スート。
GM:愛称はすず。
ウィル:ティンベルは敏捷力が18ある、地の民。盗賊系の技能(スリなど)をたくさん持っている。
もう一つは『月影の民』。『空中都市ジェイド』に住む緑の髪と瞳を持つ一族。高度な"技術"と特殊な"力"を持っている。
最後に『地の民』。茶色い瞳と浅黒い肌を持つ一族。
"力"と"技術"を失い月影の民の奴隷として『地底都市ガーヴァ』――その名の通り地底にある――に住んでいる。
GM:次いって。
プレイヤーD:クロヌシ=オオトモ=ラ=ソウリン(30)。コートとスーツを着た侍だ。
ガルフ:なんて呼べばいいんだ?
プレイヤーD(以下クロヌシ):クロヌシだな。
ガルフ:クロちゃん。
クロヌシ:クロちゃんはやめろ。──えぇとな、月の民だ。船の上で放浪の旅をしていたら地上に落ちて、本当に放浪の旅をすることになってな……。
それで、、今はウィルさんとこで用心棒をしている。
プレイヤーE:えーと、次いっていいですか?
名前はクレリア=リーベンガード、白髪族(はくはつぞく)で、神官です。
口調とか物腰は丁寧なんだけど性格は基本的に大阪商人だから。
プレイヤーF:名前はフローレンス=ファン=ストライクイーグル、通称フローラ。
で、たっぱが185cmある28歳。
えーっと、あとオカマだから。
自信過剰な性格。酒乱で好色(女の子が好き)。呪文は火系とゾンビ系。
で持ってる技能が、隠匿、催眠術、笛……(中略)……偽造、鍵開け、読心術、賭博。
プレイヤーE(以下クレリア):お……おかま……。
プレイヤーF(以下フローラ):そ〜よぉ。
プレイヤーG:(オペラ調で)♪オペリオビッチ=ハイドレンジャー〜、31歳。吟遊詩人をやってます〜♪
一同:(爆笑)
プレイヤーG(以下オペリオ):♪(やっぱりオペラ調で)オペリオと呼んでくださ〜い♪
GM:ではそろそろ始めようか。