一体、何が起こっているのか。
一体、この状況を誰が望んでいるのか。
何も判らないまま……僕たちは、時を繰り返す。
ばあちゃん:「金太郎、早よ起きや」
金太郎:「んー……あと1年」
一同:1年かッッ!
ばあちゃん:「じいちゃんなんか、もうマラソンしてジョギングしてひとっ風呂浴びて帰ってきたんやで」
金太郎:「……風呂入ってから帰ってきたんかいな。──今日、何曜日や?」
ばあちゃん:「金曜日」
金太郎:(また……繰り返しとる……)「……今日は、学校いってみよか」
澪:「起きろー遅刻するぞー」
涼:「………………」(動かない)
澪:「ハムエッグー! ……スクランブルエッグでもいいけど」
涼:「……今日、何曜日」
澪:「……金曜日」
涼:「体育の日、まだ来てない?」
澪:「来てない」
涼:「今年から体育の日、移ったの知ってる?」
澪:「そのくらいはトーゼン……そうだったの?」
涼:「……で、金曜日」
澪:「そ、10月6日、金曜日」
涼:(のそのそと起き出して)「……いいよ、作るよ、ハムエッグ」
隆志は、考え込んでいた。
日曜日の夜──『2回目』の、10月8日の夜……小鈴が、帰ってこなかった。
ほんの気まぐれで……生まれて初めて妹よりも早く家に帰ったのが、災いした。
玄関前でPHSの信号が途切れ……隠しカメラには、ふらふらと遠ざかっていく妹の姿が写っていた。
小鈴:「義姉さん、おはゆ〜!」
いくら探しても見つからなかった妹が、今目の前にいる。
もう二度と……あんな思いをするのはゴメンだ。
一連の奇妙な出来事。一体何が起こっているのか。
隆志:(考えてみる必要がありそうだ……)
GM:んじゃ、服装チェックよろしく。
浩之介:──ってまさか……小沢が。
GM:いるよ、君の隣に。
金太郎:くぉの、ロリコン変態ヤローッ!
浩之介:わしは……(『2回目』の日曜日の)ニュースとかで小沢のこと知ってていいのか?
GM:いいよ。小沢のことも、平が殺されたのも知ってていい。詳しくは知らないだろうけど。
浩之介:ふむ。
GM:お仲間がいるな〜って、見ててくれ。
浩之介:ちょっと待て、わしはロリコンじゃ……。
涼:え、違うのか? 違うってことはないだろう。
浩之介:ちっ。……後で何か借りにいこうかな(笑)。
ホームルームも終わって……数学の時間である。
GM:さ、数学は……抜き打ちテストだ。
涼:やっぱ……やるのな。
GM:それが陸奥先生の生き甲斐だからね。
金太郎:フフフ、今度こそ、男子生徒の凶行止めたるで〜。
チャーリー:放っておいても大丈夫デース。
金太郎:なんちゅーかほれ、こっちの気分の問題や。
GM:では御期待に答えて……テストが終わる直前、後ろの方に座ってる男子生徒がカッター片手にダーッシュ!
金太郎:このときのために、今日は前の方に座ってたんや!
GM:(いつの間に(笑))
金太郎:「今日こそキマレ、『金太郎キーック』!!」
GM:では、判定するのだ。プラス20の修正を上げよう。
金太郎:(コロコロ)よっしゃあ、成功や! カッターナイフ蹴り飛ばすでー!
チャーリー:更に、後ろからタックルしマース!
GM:ならそれで、男子生徒は取り押さえられるな。
涼:で、飛んでいったカッターナイフが黒板をキィィィィ〜ッ! と引っ掻く。
一同:のああああ……!
女子生徒:「成瀬クン、サイアク〜」
金太郎:「ぬ、ぬをををををを〜!!!(叫)」(キレた)
GM:さ、古典だよ。
隆志:「今日は『ロボット三原則』の話をします」
涼:SF古典か。段々時代が新しくなっていってるな。
隆志:いつものように配ったプリントを関係ない話をしていよう。
GM:そうすると……九尾麗香がガターンと立ち上がる。
涼:そーいやそうだったな。
GM:んで、手にペーパーナイフを握ったまま、隆志にツカツカと歩み寄っていくよ。
隆志:「君、授業中は席につきなさい」
GM:麗香は止まらない。で、ペーパーナイフを振り上げる。
涼:それは止めよう。手をつかむぞ。(コロコロ)あ、失敗(笑)。
隆志:手首をつかんで、ナイフを落とさせよう。(コロコロコロ)『技』と『体』どちらの判定も成功している。『体』の方はクリティカルだね。
涼:手首、折れてるんじゃないか……?
隆志:(淡々と)「席につきなさい」
GM:麗香はカタカタと震えていたかと思うと……ダッと教室を出ていってしまう。
隆志:ふむ。
GM:走って出ていっちゃったよ。
隆志:ふむ。
GM:(後を追わないのか……。それじゃ)小鈴が、後を追おう。
隆志:なら、その後を追おう。
一同:こ、こいつはぁ……(あきれてる)。
GM:麗香は音楽室(授業はやってない)に飛び込むと、中から鍵をかけてしまった。で、窓を開けて片足をかけた……のが、扉の上の方にある丸い窓から見えた。
隆志:ふむ……。タックルしてみようか。(コロコロ)失敗しているねぇ。
「お兄ちゃんどいて!」――小鈴が叫ぶ。そして扉に手をかけると……
ばきょん ぐわららッ! びたーん!
ひしゃげるようにして、扉が開いた。並の怪力では、こうはいかない。
小鈴:「麗香さん!」
GM:麗香は窓から今にも飛び降りようとしている。
小鈴(浩之介):「麗香さん、どうして……どうしてそんなことするのッ?」
麗香:「わたくし……人を殺そうとしましたのよ……。そんなこと……わたくしのプライドが許しませんわ!」
隆志:「そんなの大したことじゃないから、こっちに来なさい」
GM:来るワケがない(笑)。
隆志:「そうか……飛び降りたいのか……。グチャグチャになるんだぞ」
そこへ、涼がやってくる。
涼:「先生、どうなりました?」
隆志:「彼女はザクロになりたいらしい」
涼:「さっぱり意味が分かりません」
小鈴:「かくかくしかじか」
涼:なるほど……。……ツカツカと歩いていこう。
GM:麗香は、君たちの方を見たまま、窓に両足をかける。
隆志:パンツが見えるぞ。
涼:(扇子で隆志を指し)「アレは、俺の獲物だ」
GM:そんな、説得が、あるか〜!(笑)
涼:駄目か? (いきなり)「やめるんだそんなことはー!(叫)」
GM:(それならまあ……(サイコロを振って)……クリティカルじゃん)麗香は、窓から降りると、涼の方に歩いてくる。驚くぐらいあっさり冷静さを取り戻したようだ。
隆志:「さ、授業に戻るぞ。まだ15分もある」
浩之介:隆志って……大物なんだか何なんだか……。
ふと……小鈴は気がついた。
麗香の左手にはめてある青い石の指輪が……妙に気になった。
GM:隆志は、次の授業のために……そうだな、D組に行く途中、A組の前を通った。──さ、『心』の能動値で判定するのだ。
隆志:(コロコロ)成功しているねぇ。
GM:そうするとだね、どこからか『カナゾウ……』って声がする。
隆志:(男の声? 今の声……男子生徒か?)
午後の授業はいつも通りに過ぎていく。
居眠りしてた金太郎がノートに正体不明の落書きを見つけたり(金太郎:「なんやこれ? 眼鏡か?」)。
居眠りしたり。マンガ読んだり。
放課後になって。
ガラスが割れたり。部活にいったり。
セ式茶道部室前T04:47 p.m.
GM:で、平くんに会ったり……
涼:ちょっと待って。
GM:ん?
涼:チケットを買いにいかないように話を持っていってみよう。そうすれば、ヤツは死なない気がする。
GM:(お、気づいたか)
涼:「よう」
平:「げ、先輩」
涼:「どこいくんだ? 今から部活だぞ」
平:「あ、いや……それは……」
涼:「デートなら、駄目だぞ」
平:「いや、その準備っていうか……コンサートのチケットを買いに」
涼:「駄目だな」
平:「加藤チャゲ&アショカのチケットなんです。あさってのだから、今日行かないと……」
涼:「駄目だな」
平:「あの……デートっていうか、ちょっと気になる人を、誘いたいなって……」
涼:「誰だ?」
平:「言わなきゃダメですか……? あの……2年の水沢さんです」
涼:(小鈴か……)「あー、駄目だ駄目だ、アイツはチャゲアショは聞かないぞ」
平:「え、そうなんですか?」
涼:「ああ。確かアイツは……平井堅とか聞くんじゃなかったかな」(←それはお前の趣味だろ)
平:「そ、そうだったのか……。じゃあ平井堅のコンサートのチケットを買いに……」
涼:「平井堅のコンサートは、2カ月ぐらい先だぞ、確か。――それに、コンサートに誘うなんて回りくどいことはやめて、男なら正面からぶつかったらどうだ?」
平:「……そうですね……。……じゃ、僕今から告ってきます!」
涼:「あ〜、待て待て、早まるな。その前に、まずは男を磨くべきではないのか?」
平:「え?」
涼:「実はな、今度の試合、お前をシングルで出場させようと思っている」
平:「マ、マジですか?」
涼:「ああ、お前にはそれだけの実力があると、俺は思っている。……嫌か?」
平:「いえ、そんな。感激です」
涼:「よし、ならこれから特訓だ! バシッと決めて、告白はそれからだ。……いいな?」
平:「はい!」
涼:(ふう……)「じゃ、部活いくぞ」
隆志:電話がかかってくるのを待とう。今度は話をちゃんと聞いてみるよ。
涼:でも、俺が『説得』したからたぶん……
GM:うん、電話はかかってこないよ。
隆志:かかってこなかったか。どうしてだろう。(←プレイヤーは知ってても、キャラクターは知らない)
夜が更けていく。土曜日が、やってくる。
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