GURPS・EDO『れ・みぜらぶる』〜無情篇〜(弐)

GM:では藤堂の屋敷の前だ。屋敷の中は何だか騒がしい。そして、馬に乗った武士がだーっと出ていく。

出水屋:しまった、馬か。

GM:そして、馬に乗った武士がだーっと屋敷の中に入っていく。また、出ていく。……そういうことが五、六回。

唯樹:これじゃ、拉致は無理かなー……。

GM:ではここで視覚判定。修正はマイナス10。
 

 さすがにこれは全員失敗。
 

GM:じゃあ、誰も分からないか。

唯樹:もう夜だしね。

空雅堂:夜だったの?

GM:飲み屋とか行ってただろ?

空雅堂:昼間から飲んでたのかと。

GM:君らじゃあるまいし。──今、夜の十一時か十二時ぐらいね。

椎名:やはり中に侵入しないと駄目だな。──頼んだ。

僧ドットコム:了解ネ〜! ──って何が?(←半分寝てた)
 

 メンバーの中で「軽業」とか「忍び」とかの技能を持ってるのは、ガタイのいい西洋人虚無僧だけなのである。
 

僧ドットコム:んあ……(コロコロ)合計いくつ?

唯樹:起きろよ〜……。

僧ドットコム:(半分寝ながら)侵入成功したネ〜。誰かに変装するネ〜。

GM:君のガタイとしゃべりかただと、かなりの修正がつくよ。

僧ドットコム:じゃあじゃあ、物陰にひそんで(笑)、きこえてくるはなしに耳をかたむけるヨ。

GM/武士1:「おい、長曽我部の本物が見つかったらしいぞ?」

GM/武士2:「それはまことか? ではここにいるのは誰なのだ?」

武士1:「それに情報を持ってきたアイツ……アイツは何者だ」

武士2:「あの男、我々を騙して金だけせびり取ったのか……?」

僧ドットコム:……あれ、椎名ってつかまったの?

唯樹(天の声):君、話聞いてなかったね。「捕まってる殿は偽者だ」って噂をばらまいんたんだよ。

椎名(天の声):つまり、こちらが本物ということになっている。

僧ドットコム:それと……『アイツ』ってだれ?

GM:それは預かり知るところではありませんなぁ(ニヤリ)。
 

 続いて、僧ドットコムは天井裏に忍び探索してみることに。
 

GM:敏捷力で3回判定してみて。

僧ドットコム:(コロコロコロコロ)はうう、2回目で失敗してるネ〜!

GM/武士:「む、くせもの!」(槍で天井を突く)

僧ドットコム:(コロコロ)……そ、それは何とか回避したヨ……。──長曽我部のいばしょとか、わからない?

GM:忍び込んだの母屋だよね? それじゃ分からないな。他に離れが一つ、蔵が四つぐらいあるけど。

僧ドットコム:じゃあ、一回もどるのネ〜。
 

 一度戻った僧ドットコムは、皆に中の様子を説明した。
 

出水屋:お前さんね、もっと調べてから戻ってこいよ。

唯樹:まあまあ、少なくともここにいることは分かったんだし。──あとは突入すれば……。

お雪:突入!? そんなことしたら、あっという間に捕まってしまいますよ。何人いると思ってるんですか。

唯樹:母屋にいないことは分かったんだし、あとは離れか蔵を調べれば……。

空雅堂:突入というか、潜入はアリかも。

絵夢:もう一度離れの方を調べてきてもらったら?
 

 ということで、僧ドットコム再び潜入。今度は離れの方に向かった。
 

僧ドットコム:さっきとおなじように天井裏にしのんで、いろいろ調べるヨ。

GM:そうすると、真ん中にどうやっても天井裏からは入れないスペースがあることが分かった。

僧ドットコム:ぶっとい『大黒柱』ネ〜!

GM:どんな太い柱だよ、それは。木の壁で四方を囲んだ部屋、かな。

僧ドットコム:そんなのしらないネ〜! 日本家屋すごいネ〜! かえって報告するネ〜!

僧ドットコム:「……だからぶっといDAIKOKUメインポールがコテージにあってもうにほんのぶんかスゴイネ、ぶらぼーね……」

空雅堂:ポウル? 湖底寺?

GM:という風なワケ分からん報告を受けるんだね(笑)。

お雪:知力判定とか、した方がいいですか?

唯樹:クウちゃん、虚無僧の頭の中探っちゃえ!(笑)

一同:なるほど(笑いと拍手)。

GM:つーか、母屋に関する報告は普通に受けてたじゃん。

絵夢:そーいえばそうだね……。

お雪:「今度は、その怪しい空間の中に何があるか調べてきてください」

僧ドットコム:「それって『大黒柱』のことネ? 柱しらべたってしかたないヨ〜?」

お雪:「いいから行ってきてくださいッ」
 

 僧ドットコム、三度侵入。
 

僧ドットコム:『大黒柱』のまえまで来たのネ〜。

GM:……で?

僧ドットコム:どうしようもないからかえるのネ〜。
 

 一同大笑い。
 

お雪:これで見つかったら馬鹿ですよぉ〜。

僧ドットコム:ただいまなのネ〜。

出水屋:こんの男はぁー……。
 

 これ以上僧ドットコムに調べさせても無駄だと判断した一行は、離れに盛親がいるという前提の元で、侵入作戦を試みることにした。
 

空雅堂:火を放とう──激しく。

お雪:激しくは駄目です。ボヤぐらいでいいですよ。

GM:場所は?

出水屋:離れの反対側、というのが常套だろうな……。

唯樹:要は、人目を引き付けることができればいいんだよね?

空雅堂:影武者を使おう。

GM:ふむ……?

空雅堂:(見取り図を見て)池があるみたいだから……まず、<空中歩行>の魔法で、椎名が池の真上まで来る。

椎名:……で?

空雅堂:そこでおもむろに服を脱いで、『殿でーす』と叫びながら飛び込む。で、口に鰹をくわえた姿で泳ぎ回る。

唯樹:(その姿を想像して大笑い)

僧ドットコム:火をはなつよりだんぜんいいネ!

椎名:でも……火なら消火で時間稼げるけど、拙者の場合だと斬られておしまいだから……。

唯樹:逃げ回ればいいよ。

僧ドットコム:それなら『合わせ技』ネ! 火をはなった離れから逃げればいいネ!

GM:それだと、中にいるはずの本物はどうなるんだよ。

唯樹:あ……影武者に離れの前をうろうろさせてから逃げれば、「逃げたぞー!」って追ってこないかな。

一同:なるほど。

空雅堂:しかも全裸で(笑)。

椎名:なんで全裸……。──その作戦だと、殿と同じ服装をしておく必要があるね。

空雅堂:それをごまかすために、全裸なんだよ。

僧ドットコム:それに確認のためにトビラあけるかもしれないネ。そうすればたすけやすいネ。

唯樹:でも、虚無僧には影武者と一緒に騒ぐ役をやってほしいな。あとは……<閃光>の呪文がいるか──演出的に。

GM:そっちでか(笑)。また凝った演出をやるんだね。(薩摩編参照)

唯樹:更に火を放ちながら逃げれば、注目されること間違いなし!

僧ドットコム:火まではなつと陽動作戦ってことがバレてしまうネ。あきらかに不自然ネ。

GM:不自然がウンヌンと言うなら、『殿でーす』というセリフからしてそうだろう。自分のことを『盛親』とも『宮内小輔(くないしょうゆう)』とも『土佐守』とも言わず、『殿』! しかも明らかに身分の低い者に向かって『です』!

僧ドットコム:『殿であーる!』

椎名:『殿』って言い方がまずいんだってば……。

僧ドットコム:あーあ、プレイヤーG(南国髭将軍)ならノリノリでやってくれるのになぁ〜。

空雅堂:服装まで忠実にね。

唯樹:話をまとめよう。僕たちは三つの組に分かれる。『ボヤで陽動』組と『救出』組と『殿でーす』組。

GM:『殿でーす』もあるのか。……ボヤもやるのか。

僧ドットコム:スモークがいるからネ。

GM:ボヤも演出用か(笑)。

僧ドットコム:ちょっとまじめに話をするよ。

GM:うん。

僧ドットコム:陽動組──影武者は、できるだけ顔を隠して逃げる。

唯樹:顔が見えた方がいいんじゃ?

僧ドットコム:普通、殿を逃がすときって顔を隠すだろ? で、救出組が「あっちに逃げたぞー! 追えー!」と騒いで、なるべく離れの周りに人がいないようにする。全く無人になることはないだろうけど、残った見張りとは戦って、見事離れに侵入。奥の扉を開けたら──やっぱり大黒柱でしたってオチ。

GM:オチまでついたか。

唯樹:じゃあ、陽動と救出、二つに分かれよう。

出水屋:あの……ワタシの能力値じゃ、塀も登れない気が。自分の家で皆を待っていては駄目ですかいのう。帰ってくる場所を確保しておくのも大切でしょう?

お雪:そこに帰ってこない可能性もありますけどね(笑)。
 

 残り六人が二手に分かれる。

 陽動組:椎名・唯樹

 救出組:僧ドットコム・絵夢・お雪・空雅堂
 

僧ドットコム:おんなのこひとりじめね〜。

唯樹:くそー!