GURPS・EDO『れ・みぜらぶる』〜無情篇〜(壱)


―第七幕『調査(迷走)』―

 影武者・椎名が「殿でーす!」とスキップしながら走り回り、敵側を混乱させようという『オトリ作戦』──……いいのか、それで?
 

唯樹:影武者という立場を最大限に利用しないとね。最悪でも、殿のところに連れていかれて取り調べられると思うよ〜。

お雪:あとは彼に発信機を持たせておけば……。

僧ドットコム:でも椎名自身にヤル気がないヨ〜。『御恩がありますから』とかいっときながら、全然ネ〜!

お雪:命はりましょうよ。

唯樹:死を恐れるな!

出水屋:……とか言いながら自分達は命に執着ありまくるのはどうかと……。

唯樹:こんな世の中だもん、命に執着しないと生きていけないよ〜。

GM:……てゆーか、誰であっても命に執着してないと生きていけないと思うぞ。

椎名:あの……死ぬのは構わないんだけど、無駄死には嫌。

絵夢:むー……、あたしらとしてはこの案を押すよ。もし嫌なら、あなたが他の案を出してよ。

お雪:はい、三、二、一、キュッ!

椎名:……今はない……。

お雪:では確定ですね。

絵夢:影武者クン、覚悟は完了した?

お雪:覚悟なんて関係ないですよ。さっさと情報を流しましょう。

GM:……じゃあ、情報を流すという方向でいいのだな?

一同(椎名以外):おう!

GM:で、具体的にどのへんに情報を流すんだ?

唯樹:蜂須賀の屋敷の周りを『殿でーす』と走り回る。

GM:『殿でーす』は本人がやると言わないと無理だと思うぞ。

出水屋:同業者(ハゲタカ)にも情報を流そう。長曽我部がまだ捕まってないってことになれば目の色変えて探すだろし、そうすれば役人も動くかもしれない。

絵夢:ハゲタカネットワークだね。

お雪:略してHTN。

GM:ハゲタカをハゲ(H)とタカ(T)に分けるのか……?

絵夢:あと……武士が来るような飲み屋とか。

唯樹:(いきなり演技開始)「ねえねえ、聞いた?」

お雪:「何がですか?」

絵夢:「この間捕まった長曽我部、偽者だったんだって」

出水屋:「え、では今捕まってるのは……」

唯樹:「影武者影武者。──ほら、耳をすませてごらん」

絵夢:「『殿でーす』という声が聞こえるでしょ?」

お雪:「『土佐守でーす』って声が聞こえるでしょ?」

GM:『土佐に比べて江戸は寒いきー!』

空雅堂:そして店の窓からそっと覗くと、首からカツオブシを下げて土佐犬連れた殿様がスキップしてるのが見えるんだね。

GM:……椎名はそれでいいのか……?

椎名:仕方ないでしょう。……あ、でも『殿でーす』はやらないからね。

一同:え〜!(御不満)

GM:さっきの会話は妄想だったのだな。──で、具体的に誰がどこに情報を流すんだ?

出水屋:ハゲタカネットワーク(略してHTN)に。……ここなら危険は少ないだろうし。

絵夢:あたしもネットワークにいく。

僧ドットコム:ボク、虚無僧ネットワークにいくね。

GM:……この時代、虚無僧ネットワークはそんなに大きな組織じゃないと思うぞ……?

空雅堂:昔働いていたような場所(遊郭)で、お客さん相手に情報を流す。

GM:そういやそういう設定だったね。……純粋な女性じゃないのに。

唯樹:僕とお雪さんは酒場にいくよ。

お雪:そして普通に飲んでます。

椎名:意味ないじゃん。……拙者は、蔵の中で『の』の字書いてる。

お雪:え、ふんどし一枚でスキップしてるんじゃないんですか?

椎名:それはさすがに……。

GM:では酒場の方。君らがそうやって声高に話していると、ふたつ先のテーブルで飲んでいた男が、顔色を変えて走って出ていく。

お雪:それは……飲み逃げか何かですか?(一同大笑い)

唯樹:つけよう。

空雅堂(天の声):酒場の主人に頼むんだね。

GM:そっちのツケか。

お雪:「ツケといて」とお願いすると尾行してくれるんですよ、きっと。

出水屋(天の声):どんな酒場だ。盗賊ギルドじゃあるまいし。

唯樹:「追いますか。──おばちゃんおあいそ(お勘定)

GM/酒場のおかみ:「毎度おおきに」

唯樹:「ここは僕がおごるから」

お雪:「当然でしょ?」

唯樹:ぐわーん!(笑)
 

 逃げた男を追う唯樹とお雪。尾行技能は持っていないが、それでも気づかれずに追跡することができた。
 

GM:たどり着いたのは、さる屋敷。

お雪:猿屋敷?

唯樹:誰の屋敷?

GM:藤堂家。藤堂高虎の大阪屋敷。

唯樹:みんなに知らせようか。

出水屋(天の声):伝書鳩で?

唯樹:狼煙で。

GM:町中でか。しかも狼煙が上がったら合図とか、全然決めてない(笑)。

唯樹:とりあえずの集合時間や集合場所は決めてあるだろうから、そこへ行くよ〜。
 

 てなわけで合流を果たした一行は、今後の方針を話し合う。
 

お雪:藤堂家が怪しいです。

椎名:じゃあ忍んでもらおうかな♪

唯樹:屋敷さん……いい人だったのに……(←偲んでる)。

GM:屋敷さんが生きてさえいてくれればこのプロジェクトは……くっ……。

唯樹:うあー、どうしよっかな〜、何かテンションが変な方向に上がってきたぞ〜。

僧ドットコム:そしてプレイヤーは眠いぞ〜。

GM:そしてGMは疲労が疲弊に変わりつつあるぞ〜。──うちの父ちゃんはぁ日本一、まじめに生きちゃあ馬鹿をみる♪ ホンジャマカホンジャマカ、ホンジャマカホンジャマカ♪ ハイパぁぁぁぁー、ハーキーぃぃぃッッ!!!(←何だ、このテンションは)

椎名:藤堂の人間に精神探査を行おう。

唯樹:じゃあ……屋敷から出てきた人、拉致っちゃう?

お雪:そうしましょうか〜。

椎名:あ、藤堂の屋敷ってことは……拙者の父とか兄とかいたりしない?

GM:んー……さっきも話したけど(リプレイ未収録)君は影武者になるとき盛親から「お前は戦死した扱いとする。家のことは心配するな」と言われたよね。家のことを心配しないといけないのは、普通長男だ。親父がいれば親父だ。それなのに、君が家の心配をしないといけない。……どういうことか分かるよね?

僧ドットコム:上のふたりはチョウナンじゃなかったってことネ。

椎名:何でそうなる。……みんな死んじゃってる、ってことか……。

GM:で、どうするね?

唯樹:屋敷の前で見張って、出てきたヤツを拉致する。

GM:それでいいんだね?

一同(椎名以外):おう!