GURPS・EDO―薩摩編―(九)

GM:さて、次の日の朝だよ。

彩:あれ? 尋問は?

GM:したよ。でも所詮三太は下っ端。

桂川:つまりたいした情報は得られなかったのね。

GM:そういうこと。で? 今日一日どうする?

彩:どうする、って言われても……。

レモン:手がかりがないんじゃ、ねぇ……。

桂川:しばらくゴロゴロしとこうかな。

大内:では俺は賭場に……。

GM:また行くのか。

桂川:でも賭場って朝からやってるの?

レモン:やってないでしょう。

トン:しかし賭場に行くというのも悪くないかもしれない。

彩:確かに。何かあるとしたら、今のところそこしかないよね。

ヤン:じゃ、賭場が開くの待とうか。

桂川:散歩にでも出てよう。夕方には開くよね?

GM:そだね。で、めんどくさいから夕方にしてしまおう。

桂川:(笑)

GM:はい、時は流れて夕方です(笑)。

彩:じゃ、参ろうか。

レモン:関取もついて来る?

旭海:うむ。

大内:何言ってやがる。テメーは今日もマキ割り。

桂川:がんばってー!(笑顔で手を振る)

旭海:うそぉ!?

ヤン:(ぼそっと)マキ割りメッセ……。

レモン:……何か言った?

ヤン:んーん。

GM:(旭海は今回も留守番か……)では、力士を置いて、残りはゾロゾロと……。

桂川:みんなで賭場にいくのも不自然じゃない?

トン:じゃあさりげなく外にいよう。

ヤン:同じくウロウロしてる。

大内:俺は入るぞ。

桂川:ついて行こっと。

GM:OK、この二人で入るんだね。

桂川:うん。

あんちゃん:「さぁ、張った張った!」

大内:さぁて、まずは銀十枚を……。

GM:まだ賭けるのか。

大内:おう。藩の金だし(笑)。

客A:「丁だっ!」

客B:「丁!!」

大内:(買った賭け札を揃えながら)お前にはインチキ見破ってもらわなきゃならんからな。

桂川:まかしといて! ……技能なし値だけど。

客C:「半!」

客D:「丁に」

あんちゃん:「半方ないか? 半方」

大内:「では、半!」

姐御:「……入ります」
 

 賭けが始まった。大内はなかなか勝てないでいる。で、彼が立て続けに三回ほど負けたところで……
 

桂川:(コロコロ)「あっ、今の! おかしいよ、絶対!!」

GM:桂川のその言葉に、突如場の雰囲気が険悪になる。

胴元:「おいねーちゃん、つまんねぇ因縁つけんのはやめてくれねぇかい? あぁん?」

桂川:「因縁って……。今のおかしかったじゃないですかぁ」

胴元:「はっはっは、言ってくれるじゃねぇかお嬢さん。証拠はあるのかい? え? 証拠は」

桂川:「そんなぁ……」(←すっかり弱気)

胴元:「出てってくんな。胸糞悪い。おい! 誰かこのお嬢さんをつまみ出せ!!」

桂川:ねぇGM、ここで判定成功したら証拠見つけたことにしていい?

GM:いいよ。成功度にもよるけどね。

桂川:「どこを見たらいい?」

大内:「そうだなぁ……(しばし考え中)……サイコロだな。とりあえずサイコロ見せてくんな」

胴元:(ちょっと動揺)「なっ……何ぃ?」

大内:「そのサイコロを見せろ、と言っている」

胴元:「何言ってやがる! そんなことが……」

桂川:「あれぇ? 何か見せられない理由でもあるんですか?」(←いきなり強気)

胴元:「うっ……そんなものは無ぇ」

桂川:「じゃ、見せてくれますよね?」

胴元:「いーだろう。ほらよ」

GM:<賭博>で判定してね。大内は通い慣れてるだろうからプラス2の修正で。

桂川:(コロコロ)……1成功。

GM:いちぃ? 1じゃ、なぁ。……やっぱ怪しいなぁ、くらいしか……。

大内:(コロコロ――失敗)俺にはよく分からん。外の連中呼んでくるか。

桂川:そだね。行ってくる。

大内:というわけで……。

GM:了解。

彩:どたどたどた。

ヤン:「なになに?」

桂川:「これ、変なんだけど」

彩:「どれどれ?」
 

 ドヤドヤと上がり込んだ彩、ヤン、トンが順にサイコロを調べてみるが――
 

彩:「だめだ、全然分かんない」

ヤン:「博打なんてしないからなぁ」

胴元:「ほーら見てみろ。この落とし前、どうつけてくれるんでぇ?」

トン:もう一人いたよね?

彩:あっ、レモねぇ。

桂川:一緒に上がってきたよね?

GM:NPCに頼るなよ……。

大内:しょうがないじゃん、こうなったらさ。

レモン:(部屋に入ってきて)「何?」

桂川:(サイコロを渡して)「これなんだけど……」

レモン:(コロコロ)「こういうのはね、こうすると……」(サイコロを奥歯で噛み割る)

トン:すごい力だな。

GM:加工されたものだから、多分桂川でも割れるよ。

ヤン:「何か分かった?」

レモン:「ほら」

GM:といって差し出されたサイコロ。見ると鉛が……。

彩:出たなぁ(笑)。

ヤン:王道だ(笑)。

桂川:「これは一体どういうことです?」

GM:周りも騒然となるよ。

客C:「騙してやがったのか!」

客A:「金返せぇ!!」

彩:あー、やっぱりそうなっちゃうか……。

大内:「胴元を押さえろ!」

ヤン:「どこにいる!?」

GM:騒ぎに乗じて逃げていくのがちらっと見える。

大内:「追う!!」

 胴元・仁兵衛は暗い夜道を走った。あんな決定的な証拠を突きつけられたのではかなわない。

 それにあの人数ではやりあったところで結果は目に見えている。こいつぁ逃げるが勝ちだ。

 どれほど走っただろうか。仁兵衛は足音を耳にしてふと立ち止まった。

 暗闇なのでよくわからないが、誰かが追って来ているようだ。
 

胴元:「ちっ」
 

舌打ちした途端だ。いきなり足元をすくわれ、前のめりに地面に倒れこんだ。
 

胴元:「てめぇ、何しやがんでぇ!!」
 

 見上げた先の男が口を開く。
 

大内:「……たとえ仏が見放そうとも………」(←トン:君が見放されてるんだよね)
 

 尻餅をつく形になった仁兵衛の足元に錫杖が突き立てられる。
 

大内:「この私は、決してお前を許さない。………南無阿弥陀仏、ナムアミダブツ………」

胴元:(立ち上がりながら)「サシで勝負しようってのかい」

大内:「その通り。得物を取るがよい」

胴元:「しゃらくせぇ、食らえ!!」
 

 仁兵衛はドスを腰だめにしていきなり突き立てた。

 突き刺した感覚は、確かに、あった。

 しかし……
 

大内:クリティカル。杓場でフルスイング。

胴元:「ぐへっ!」
 

 あっという間に、二間も向こうに吹っ飛ばされていた。火消し桶が派手な音を立てて崩れ落ちる。

 仁兵衛はあたふたと立ち上がると、一目散に夜の町並みへと走り去って行った。