GURPS・EDO―薩摩編―(壱)

―其の壱『鶴丸城に強者どもの集まること』―

侍:「一同の者、面を上げい」
 

 声に促され、七人は顔を上げた。居並ぶ顔をゆっくりと見回したあとで、家老の有園が口を開いた。
 

有園:「その方らの見事な動き、この守義、しかと見させてもらった」
 

 再び平伏する一同。中には番士に促されて初めて頭を下げるのもあったが。
 

有園:「その方らには只今より我が薩摩藩の藩士として、存分に腕を振るってもらう。時にお主ら……名は何と申す?」
 

GM(ゲームマスター):取りあえず自己紹介からしてもらうかな。簡単に。じゃ……そだな、こっちから。

プレイヤーB:私から? じゃあ……
 

 桂川、居住まいを正して、
 

プレイヤーB(以下桂川):京の公家の娘で、千鳥町桂川(ちどりまちけいせん)と申します。十九歳。ふら〜っと旅してて……辻札見かけて、気晴らしに受けたら、受かってしまいました。

プレイヤーD:気晴らしって……(笑)。

桂川:そういうわけで、よろしくお願いします。

GM:補足ね。桂川は彩(後述)の学んでいる風水塾、そこで寝起きしている。

プレイヤーH:へえ?

GM:あと、千鳥町家は従五位中務少輔の名家。

桂川:ん。

GM:覚えといて。――じゃ次。

プレイヤーE(以下旭海):旭海でゴワス。以前は江戸で相撲取りやってました。で、順調に小結まで上がったんだけど、そこで大関に背骨折られて引退しちゃいましてな。背骨は仙人に治してもらったものの角界には戻れず、故郷に帰ってた折、あの立て札を見たでゴワス。

有園:「その方、しこ名は?」

旭海:「旭海。旭海為三郎(あさひうみためさぶろう)でゴワス」

有園:「ほう、旭海といえば旗本徳田家のお抱えだった、あの名力士だな」

プレイヤーH:そうなの?

GM:そうです。次。

プレイヤーH(以下彩):は〜い。えーっと、ケイねえ(桂川姉さんの略。つまり桂川のことだ)と一緒に京都から来ました、いんちき風水師の四条彩(しじょうあや)です。十五歳です。

プレイヤーD:自分でいんちきって言うかね。

彩:ちなみに城下の瓦版に『今日の風水』というのを連載してます。

GM:伝説の風水の書を求めて旅している途中なのです。

彩:そうなの?

GM:…って君からのキャラ紹介にあったよ。……まぁいいや。千鳥町家とは先祖代々の長い付き合い。もっとも四条家は今や完全に没落したけどね。

彩:が〜ん!

プレイヤーA:次は俺か。えぇ〜っとぉ、自称、破戒僧の……

プレイヤーD:自称って……(笑)。

プレイヤーA(以下大内):大内勉啓(おおうちべんけい)。破戒の理由は酒と女。で、破戒僧としての修業(←どんな修業だ?)で全国回っているうちに、ここにたどりついた、と。

彩:しつも〜ん。

大内:はい?

彩:内弁慶な性格なの?

  (場のそこここで「Oh,ウチベンケイ」というヒソヒソ声)

大内:おお! うち、勉啓(笑)。

桂川:Oh! ……では次。

プレイヤーD(以下ヤン):……アタシか。ななしのヤン。

旭海:名無し?

ヤン:七篠(ななしの)。ヤンは、『ツバメ』と書いて燕(ヤン)。てゆーか、本名は七篠燕(しちじょうつばめ)なんだけど。で、通称が「名無しのヤン」ってワケ。沖縄出身の小娘。十六歳。薩摩から琉球に流れ着いた抜け忍がいて、その人から教わった忍びの術を少々、心得てます。

彩:忍者なんだ。

ヤン:でまぁ、ある事件があって、家族みんないなくなって、しょうがないんで本土に渡ってあっちこっち旅しようかな、ってここに来たわけです。

GM:ある事件についてはそのうち語る事にしよう。

旭海:何か考えてるでゴワスか?

GM:全然。――では最後だ。

プレイヤーC(以下トン):ワタシは、フツーの――というか、出身はインドなんだけれど――中国で修業していて、で、琉球経由で薩摩に不法に来た坊さんです。小松氏(薩摩藩士)の所に居候になっていて、あまり居座り続けるのも悪いなって事で……。それに家の人に不気味がられているので、追い出されるような形でここに来ました……トンカンキューです。

GM:トン……?

トン:漢字で書くと、ひがしに、みきに、ひさと書いて(東、幹、久)……
 

 一同、笑。
 

ヤン:タイガー・ウッズと読む。
 

 一同、さらに笑。
 

桂川:七人って言ったよね? あと一人は?

GM:NPCだね。

NPC(以下レモン):朝鮮から来ました、ファン=レモンです。

旭海:一文字加えると……

ヤン:ファンレモンタ。

GM:そこにつけるなよ(笑)。

レモン:漢字で書くと、皇来夢。

彩:へええ、いい名前だねぇ。

GM:容姿の説明しとくと、目は片方が茶色、もう一方が灰色。髪の色はちょっと茶色がかった感じかな。色白で、やせ形。身長は163センチくらい。

トン:163? えらく高いな。当時の日本人女性は……

GM:気にするな。

レモン:出身は朝鮮の南の端の方。朝鮮王庁の博多出張所で通訳やってます。忙しい時期が終わったんで休暇もらって、温泉入りに来たんですけど、何となく参加しちゃいました。

ヤン:日本語大丈夫なの?

GM:そりゃ勿論。

旭海:ギャグも分かってくれるかな。

レモン:あなたのは……ちょっと……(笑)。

旭海:…………。
 

その後、お互いの名前の呼び方などで話し合う。

で。
 

GM:じゃ、仕事の話をするよん。

   家老の有園の話をまとめるとこうだ。

   磯(現在の鹿児島市北東部)のあたりで若い娘達が次々とかどわかされ、姿を消している。その原因を調査してこい。――以上だ。
 

桂川:どこをどうまとめたのですか?

GM:まぁそういうな。取りあえず今日はこれで解散。次回の集合は……

有園:「明後日とする。以上だ」

GM:だってさ。