3年後のあとがき

第一部が終了してから数カ月後──第二部を行うことが決定した。
GMが新キャラクターを作るように指示したところ、ガルフのプレイヤー以外はみんな前のキャラがいいとのこと。
よって話は前回の続き、ということになった。
設定だけはあったが詳しくは語られていなかった『魔界』──これへつながる『扉』をめぐる話にしよう。
てことで「ラズリが『扉』を開く『鍵』である」という設定ができ、そこから話は膨らんでいった。

聖剣伝説3というゲームがある。これに出てきた「トライアングルストーリー」(2人×3人、計6人の主人公がおり、ストーリーが3つある)を応用しようとGMは考えた。
ラズリ&アユモとロートシルト。クロヌシ&フローラとツェラー。テェンベル&クレリアとミュスカディ(このとき彼女はまだ敵という設定だった)。
三つの対立を作り、それをからめてストーリーを練り上げるという方法を取ることにしたのだ。今思うと、話がややこしくなったのはこれが原因なんだろうね。
とにかく、そういうことで『鍵』であるラズリを狙うロートシルト、『十六夜』を持つクロヌシとそれを狙うツェラー、クレリアが持つ指輪を狙うミュスカディという構図が出来上がったのだった。

 第壱話「鼓動」
第一話ってことで、前回ばらばらになったキャラクターたちを集めなければならない。
新キャラクターであるグレンとカレンを登場させ、後は全員を一カ所に集めての戦闘。
で、伏線としてクロヌシに『十六夜』を渡し、クレリアを襲撃して、ジャスティスレンジャーを出す。シナリオは、あっさり出来上がった。 

そういえば結局明かすことができなかったからここで書くが、亀人を操ってクロヌシたちを襲わせたのはツェラー。
クレリアを襲った暗殺集団(名は『真昼の夢』)もツェラーの差し金である。  

後からグレンのプレイヤーに「もっとグレンの登場シーンを考えてほしかった」と言われた。あの展開だと他の人たちと仲間になれない(笑)とのこと。
確かに……。ごめんね。

 第弐話「巡り逢いの街」  
さて、第二話である。このセッションでやることは「レミーラとフローラを再会させる」こと、それだけ。てことで話の後半は「見合いつぶし」になった。
前からやりたいネタだったのだ、これ。これからだんだん話が暗くなっていくから、この話までは明るい展開でいこうってのもあった。
結果は読んでの通りである。時間がなくて最後の方ばたばたしたのがちょっと残念。本当はまだロートシルト出すつもりはなかったんだけどなぁ。  

このときから、レミーラは『祭器』として死ぬことが決まっていた。姉に殺されることは、まだ決まってなかったけれど。

 第参話「父なる森 母なる湖」  
このへんから土地神をからめていこうってことで、ラピスの森へ。「土地神たちの紛争」が起こったという展開へ持っていった。
後々の『儀式』で協力してもらう土地神たちと知り合いになっててほしかったのだ。  

そういえば『雪の神子』の力を使って全員をラピスの森へ呼んだのはいいが(行きたくないとか言われたらシナリオ崩壊しちゃうので)
「どうして」呼んだのかまで考えてなくて非常に困ったことを覚えている。「運命」だ、なんて我ながらよく分からん理由である、ホント。  

ラズリの家族を出して、シャルトルーズの森へ行くように話を持っていって、オルディネール登場。このへんはシナリオ通り。戦闘をして、このセッションは終わりである。

マラカイトの「Aか、Bか、Cか?」の話が伏線だったって気づいた人、いないだろうな……。

 第四話「こぼれ落ちる雫」  
前回の続き。シャルトルーズの森に入るときの個人面談(?)はなかなか面白かった。それぞれ個性が出てて。なかなか奥が深いし。  

女性陣をさらって海底宮へ。身ぐるみはいだのは読者サービス、かな。挿絵ないけど。後は男性陣と女性陣が出会うように誘導してやればいい。
そしてロートシルトとの決戦。このときは(ロートに)死んでもらうわけにはいかんと思って逃がしたが、今思うとロートシルトはここで死んでた方が幸せだったかも。

ガルフだけ年を取らないように彼も海底宮に来ていたことにし、脱出。かくて舞台は五年後へ移る。  

アユモが魔族だってばれたのもこのセッションだった。いつばれてもいいと思ってはいたんだけど、ちょっと早すぎた気もする。

そうそうこの四話、プレイしたときはセッション4とセッション5に分かれていた。んだが、何の間違いかセッション4がわずか四十分で終わってしまって……。
あんまり短かったんで、リプレイでは一つにまとめた。  
 

一話から四話までが、96年の春に行ったセッションである。一晩、ぶっ続けで。GMのシナリオがここまでしかできてなかったので、続きは夏に行うことになった。


さて、続きを考えなければならない。最後まで。
当初の予定ではここから『祭器』と土地神探しの旅となり、『扉』を閉じて終わり、のはずだった。だがこれではあまりにおもしろくない。
てことで「PC総不幸化計画」は発動した(←なぜ?)。  

あらすじはこうだ。
「ちゃくちゃくと進む魔族たちの『扉』を開く計画。そして『ホフヌング』が進める強化人間計画。その計画書(指輪の中に入っている)を持つクレリアは命を狙われる。
そして彼女もまた自分が強化人間として造られたことを知るのだった──よし、不幸だ。『祭器』として殺されるレミーラ──フローラも不幸だな。
双子の姉に翻弄され、対立していくラズリ──ま、不幸っちゃ不幸かな。ティンベルは……後から考えよう。クロヌシは何もないから……魔族化させてやろ。妻も同じ。
よしよし。オペリオ……だけはどうしようもないな。こいつはハッピーでもいいか」  

あらすじになってないな。
えーと、このときはラスボスはツェラー(というかリューデス)だったはず。ま、こんな感じでシナリオは組まれていったのだが──  

クレリアのプレイヤーが参加できないと言ってきたのは、決行予定日の一週間ばかり前のことだった。  

シナリオの、組み直しである。  

  第五話「人として 魔族として」  
五年というのは微妙な時間だと思う。知ってる人はみんな生きてる。でも自分より年下だった人間が年上や同い年になってる。自分だけ取り残されたような、疎外感。
特にラズリは自分の偽者がちゃっかり生活してたりしたからそうとうショックだったみたいだ。  

グレンのプレイヤーが、ある日「やっぱりガルフがやりたい」と言ってきた。中盤での主役メカの交代──ロボットアニメではよくある展開である。
てことでグレンを殺して、ガルフが登場することになった。  

まずはクレリアの処理である。NPCとして登場させてもよかったのだが、それでは影が薄くなる。
ならばいっそラスボスにしてしまおうってことで、クレリアは表舞台から退場した。  

で、「自分が所属していた組織から裏切られる」という展開にしたかったGMは、PCたちが『ホフヌング』に入るように誘導。
もうちょっと『ホフヌング』として活動してもらいたかったんだけど、話の展開上次の話で早くも裏切られることに……。  

グレンがかっこよく死ねるようにいろいろと伏線を張り、物語は後編である六話に続く。  

なお、後半戦から『熱血専用!』のルール(というかノリ)を取り入れている。

 第六話「翼はもう羽ばたかない」  
グレンが死ぬ前に、仲間たちとの絆を深めたい。てことでラズリとグレンは別行動。この二人だけは『ホフヌング』が敵だと知っている。
そしてグレンが手筈どおりに話を進めてくれる。よしよし。  
実は五話から後の展開は、グレン(ガルフ)のプレイヤーと一緒に考えた。
ガルフは全てを知ってて同行してるって設定だったし、誰か一人みんなを誘導してくれる奴が欲しかったのだ。  

ラズリとグレンのプレイヤーのノリノリの演技のおかげで、第六話は非常に熱い話になった。マジでああいうこと口走ってました、あの二人(笑)。いや感謝感謝。  

後は怒涛の展開へ。
前回のシリーズで張った伏線、『精神体』であるロゼの『本体』、グレンの相手として設定していた『魔獣』、このへんを全部くっつけてああいう展開になった。  

この前後編、話的には一番よくできたと、個人的には思っている。

 第七話「常闇の奥で」  
始め、この話は存在してなかった。で、勘違いで一話余ったと思ったGMが付け加えたエピソードなのである。
ティンベルのセリフが少ないってことでティンベルを中心に話を展開させ、変わった試みとして全員の過去の回想。で、ロートシルトとの決着。  

カゴルマの街の後処理、みんなよくやってくれていた。やるときゃやるんだな、とちょっと感心。脱線するときは果てしなく脱線するんだけど。  

ロートシルトとラズリのからみは、ま、予想通りといえば予想通り。ラズリがロートシルトに「うん」と言うとは思えなかったし。ちょっとは……期待したんだが。
それにしても……ラズリはどっちが好きだったんだろう。はっきりしてほしかった気もする。  

  第八話「命の輝きを」  
引っ張りに引っ張ってきた『十六夜』の謎が明かされる第八話。いよいよ物語も終盤である。 この話については語ることはほとんどない。
前半は謎解きでNPCが出ずっぱり。後半はレミーラ救出劇──助けられなかったけど。
この話、プレイヤーたちにはそうとうショックな話だったようだ。本気で怒り、本気で悲しんでいた。そういう意味では「よい」セッションだったと思う。  

レミーラが死ぬとき、胸が痛かった。ほんとに痛くなるとは、思ってもいなかった。

 第九話「祭りの始まり」  
「ツェラーとの決着をつける」──やることはこれだけ。てことでこのセッションは延々と戦闘が続いた。
リプレイでは分からないかもしれないが、実に三時間もの間戦っていたのだ。
しかもここまでぶっ続けでやってきた(何と十二時間以上!)うえ、レミーラの死のショックがまだ抜けていない。精神的に限界だったのか、非常につらいセッションとなった。  

GMは今回、ちょっと凝った戦闘をしようと思っていた。三人のツェラーに精神攻撃のリューデス、触手を伸ばす橋──設定を生かしきれなかったのが残念である。  

途中険悪なムードになったりしてひやひやもののセッションだった。

 第拾話「凍る砂」  
「火の土地神を探す」というのはいっっちばん始めから決まっていた話。かくてPCたちは砂の海へ。  

ここまで暗い話が続いていてプレイヤーたちの感覚がマヒしてたんで、このセッションは明るくいくことにした。内容も土地神と空中戦艦を探すだけだったしね。  

で、まー見事にいつものノリを取り戻してくれて、話が脱線する脱線する(笑)。GMも調子に乗ってあることないことべらべらしゃべって船の上は大騒ぎ。
……クロヌシ、すまん。彼のホモ疑惑はこの話でさらに深まった。  

ド派手な戦闘をしたいと思っていた。
始めは空中戦艦に積んであった巨大ロボット対『砂蟲』というシチュエーションを考えていたのだが、ルール的に無理そうだったんでボツ。
砂漠を疾走しながらの戦いとなった。

「つぶれたカエルのようなポーズ」がみょーにハヤり、プレイヤーたちは終始笑いっぱなしだった。  
 

ここで、いったんプレイは終わり。みんな熟睡モードへ突入する。

 最終話「最後から二番目の真実」  
ついに、ここまできた……。

GMが大急ぎでシナリオを組み(プレイ開始ギリギリまでやってた)とうとう始まった最終話。  
シナリオの完成度は……七割弱、ぐらい。あとはぶっつけ本番である。  

実は、リプレイ最終話はかなり加筆されている。プレイヤーの台詞がないところはほとんどそうだ。台詞もちょこっと付け加えた。
ホントはリプレイでの過剰な書き足しは邪道なのかもしれないが、あえてそうさせてもらった。

ただ誤解しないでいてほしいのは、台詞そのものにはほとんど手をつけていないということだ。
もちろんいくつか書き加えた台詞はあるし、あのままどもらず、笑わず、スラスラとしゃべれたワケではない。が、あのテンション、あのノリは本物である。  

話を戻そう。  

TRPGの難儀なところは、小説やマンガのように、複数の視点で物語を語れないところである(と僕は思ってる)。
基本的にプレイヤーはキャラクターの視点でしか物語を見ることができない。だから敵側の動向とか、NPCの裏事情とか、知らないままプレイを終えるのだ。
第二部なんて裏設定がてんこもりなので、プレイヤーたちはリプレイを読むまで、半分も話を理解していなかったに違いない(今でも理解していないかもしんない)。  

もちろんGMの力不足というのも大いにあるのだが……。  

とにもかくにも、第二部はこのような結末を迎えた。  
半分予想通り、半分予想外と言ったところだろうか。  

だが、彼らの物語は終わったわけじゃない。まだ、終わってはいない。  
 
 
 
 

先日、久しぶりに第二部を通して読んだ。 「死」と「かなしみ」に満ちた物語だった(特に後半)。  

これは第二部に限ったことではない。 未だきちんと描かれてはいないが、MOND本編にも「死」はあふれている。  

僕は血を見るのが苦手だ。幸いにも血縁や知り合いの「死」に直面したこともない。

 でもなぜだろう。

僕の描く物語には、いつも「死」がある。しかも、あらがいようのない「死」だ。  
「死」は決して美談ではない。自己犠牲に満ちた、人の心を打つようなものばかりではない。そう思う。  

でも。だから。物語は続いていく──  
 

最後に。 この素晴らしい物語を紡いでくれたプレイヤーたちに、ありがとうを。  
特にガルフのプレイヤーには、ルールだ設定だといろいろ世話になりました。 やっぱ熱血バカってのは、貴重な存在なのかもしれない……。  

では、いつの日かラズリがガルフと出会えることを信じて……



  
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